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最終部:タワー・オブ・バベル
その270 挟撃
しおりを挟む「そうだ! レジナ!」
「わん!」
見た目は変わっていないけど、何となく頼もしくなった気がするシルバが、母親の元へ駆け寄っていく。私もシロップを抱いて追いかけると、ラズベも足元できゅんきゅん鳴いていた。
「お母さんはいいの?」
「きゅふん」
とりあえずはいいらしいのか、一瞬ヴィントを見た後、鼻息をふんすと出して鳴き、シルバを追って行った。私も追いつくとママが口を開く。
「気絶しているけどレジナは無事よ」
「良かった……」
「でも……」
ママが何かを言いかけようとしたけど、パパ達のところへ行ったレイドさんが叫んで遮られる形となった。
「大丈夫かニールセン!? ファウダー、ディクラインさんニールセンが!」
<心配しなくていいよ! すぐ倒すから>
【舐められたものだ……!】
「おっと、先に俺を狙った方がいいぞ?」
「ぐ……! 食らえ……!」
見れば、ホーゼと名乗った蛇は空へ舞い上がり、それをファウダーの背に乗ったパパが追いかけて斬りかかる。ニールセンさんは蛇の尻尾に巻きつかれ、ミシミシと鎧を圧迫しているようだった。タダでやられないあたり流石は聖騎士と言うべきか、呻きながらも胴体に向けて剣を振り続けていた。
「ママ、シロップをお願い。 私も援護するわ!」
私が弓を構えて狙いを定めていると、レイドさんが悔しそうに言い放ち、名案を出した。
「くそ、俺も戦わないと……そうだ! ジャンナ! お前の背に乗せてくれ!」
<それはアリね。分かったわ。挟み撃ちする?>
「いや、それだと避けてディクラインさんと同士討ちにされる可能性がある。俺達は頭上を取って上から攻めるぞ」
<オッケー!>
ジャンナが舞い上がり、二人に当たらないよう、矢を放つ。
トストス!
【チィ、一斉に来るか。しかし姉上がやられるとは……あの子狼、恐ろしい力を持っている……だが、負ける訳にはいかん! 蛇ァァァァァ!!!】
ガキィィン!
パパが爪を剣で受け止めると、ファウダーが下からパンチを繰り出し、牽制をする。そこに死角から飛びあがったレイドさん達が急降下を始める!
「行け、レイド!」
「はい!」
【上か! カァァァァ!】
「うお!? げほ……!?」
<わたしには効かないわよ!>
【ぐぼお!?】
毒霧を撒き散らし、視界を遮ろうとするホーゼ。だが、不死鳥であるジャンナには耐性があるのか通用せず、くちばしで背中を裂かれていた。
「……こいつで!」
毒霧にやられながらもレイドさんがすれ違い様に縦に斬り裂いていく。そこに全力で突っ込んできたファウダーと、パパの一撃がボーゼの胴体を大きくなぎ払った!
<空を飛べるのはお前だけじゃない。甘く見たのはそっちだ!>
【ぐぬ……!? こ、このまま黙ってやられる訳には……! 死ね!】
「ぐああああああ!?」
「ニールセン!? 離せこの!」
ニールセンさんが締めあげられぐったりとしてしまった。剣を取り落としたところをみると、気絶してしまった?
「尻尾は俺が! ディクラインさんはとどめを!」
【させるかぁ!】
<きゃ……!?>
<ジャンナ! 危ない!>
ザクリ、と尻尾を狙ったレイドさんとジャンナを攻撃しようとしたボーゼの爪が庇ったファウダーの肩へ突き刺さる。
<……! つ、捕まえた! 今だよ!>
「助かる! トドメだ!」
キキィン……!
素早い剣速でパパがボーゼに斬りつけると、一瞬動きが止まり……。
ブシュ……!
胸から血が噴きだした!
【ソンナ……!? バカナァァァ……!】
ズゥゥゥゥン!
蛇は白目を剥いて落下し、巨体は花畑へ横たわった。ピクピクとしているのでまだ死んではいないようだけど……。
ブゥゥン……。
どこかで音がしたので、魔法障壁がある洞窟の出口を見ると、エクソリアさんやセイラがこちらへ向かってくるのが見えた。
「ふう……何とか勝てたわね」
「わんわん!」
「よしよし、あんたが一番頑張ったわよ」
「くぅ~ん♪」
シルバが褒めてと、私に突撃してきたので受け止めて頭を撫でてやると、嬉しそうに鳴いた。
ひとまず二匹との戦いはこれで幕を閉じた……フレーレがまだ予断を許さないけど、犠牲が出なかったのは本当に良かった……。
◆ ◇ ◆
<バベルの塔 100階>
『50階制覇か、やはり借り物では無理ってところだな』
「フェンリルはエクソリアが作り上げたものですからな。いじればよかったのでは?」
『そう言うなって。あのクソ国王共ならいざ知らず、女神自身が手掛けたやつってのはどうも同等かそれ以上の力が無いといじれないみてぇでな? フェンリルは強化改造できなかったってことは俺の力がまだそこまで力が覚醒していないってことだろう』
なるほど、と、爺さんが顎に手を当てながら納得し、言葉を続ける。
『さらに言えばあの守護獣だったか? あいつらも俺の手には負えないんだわ。改造はできないはずだ。……ま、だからこそ優先的に消すよう仕向けている訳だが……』
クック、と笑う神裂に爺さんが質問をする。
「そう言えば国王共はどうなりましたかのう?」
『もう少しってところだな……次に出るやつはもう決まっているし、お楽しみは後って訳だ。まあ、60階のボスも癖はあるがな……今度は一人くらい始末して欲しいもんだ? 手負いのドラゴンとかいいんじゃないか? なあ?』
「……そうですな(守護獣も結構じゃが、勇者二人と魔王がもっと厄介ではないのか? ワシの所に来た時まで残っておったら面倒じゃのう……もうワシのところである90階まではそんなに遠くない。その時は切り札を使うしかないか……)」
『ああ、そうだ。お前を90階に置こうと思ってたけど、ちょっと事情が変わった。お前は80階へ行ってくれ』
「は?! な、なんですと……!?」
『ちょっといいやつが見つかってな、そいつに任せたいんだ……な、いいだろう? それとももっと早く行くか? ん?』
「(こ、こやつ、見透かしておるのか……? まだ70階はまだまずい……もう少し戦力が減ってからがよい……)……それでは80階で……」
『オッケー♪ お前には期待している! ……何てな! ぎゃはははは!』
「(くっ……恐ろしい男じゃ……こんな回りくどいことをしなくてもあやつらを殺すことなどできそうなものを……)」
ギリギリと歯噛みしながら、モニターを見つめる神裂を睨む爺さんであった。
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