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最終部:タワー・オブ・バベル

その257 憔悴

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 「俺は魔物を溢れさせないように残ろう。ルーナ、しっかり休めよ? カルエラートは一度休ませた方がいいかもしれん」

 転移陣を抜ける前に、食事を必要としないお父さんが残ると言い、他のみんなは拠点に戻ることにした。


 「カルエラートさん頑張って、もう少しよ」

 「ああ、すまないな年上の私がこんなことで……」

 「カルエラート殿の分は自分が頑張ります! だから今はゆっくり休んでほしいであります……」

 転移陣を抜けて地上へ戻ったものの、カルエラートさんの容体があまり良くなく、私とウェンディで肩を貸して拠点へと戻っていた。
 カイムさんとニールセンさんも顔色は良くなかったが、パパは元気だった。レイドさんも無事だったし、勇者の恩恵ってそういうところもフォローしてくれるのかしら……?

 <ぴー。おかえり、みんな。チェイシャが力を使い果たしたみたいね>

 「ジャンナ……うん……」

 <そんな顔しないで。今のわたし達はそのために存在しているのよ>

 入口で出迎えてくれたジャンナが私の頭に止まり、くちばしでつつきながらそんなことを言う。

 「そんなに割り切るのは難しいよ……」

 <ふふ、ありがとう。そう思ってくれるだけでも嬉しいわ。今はゆっくり休んで!>

 「ルーナ、カルエラートさんを休ませないと」

 「え、ええ、そうね……」

 ジャンナが飛び去っていくのを見届けると、入れ替わりにミトとモルトさんがやってきてシルバ達を抱きしめていた。

 「ルーナお姉ちゃん達おかえりなさい。無事だった、良かったね」

 「わん!」

 「ただいま」

 「無事でなによりじゃ! 見てくれ、拠点もかなり大きくなってきたわい! ……といっても寝床が増えておるだけじゃがな! わっちはっは!」

 豪快に笑うモルトさんだが、やはりというかすぐにチェイシャが居ないことに気付いた。

 「おや? 王女がおらんようじゃが、どこかでさぼっておるのか?」

 「シルバ、くすぐったいよ。チェイシャ王女はどこ?」

 「……そのことなんだけどね……」

 私はチェイシャが戦って消えてしまったことを二人に告げる。今度はもう本当に戻らないことを伝えると、ミトはやはり泣きだした。

 「そんな……まだお話したいことがいっぱいあったのに……」

 「きゅんきゅん」

 「シロップ……うわあああああん!」

 そんなミトの頭を撫でながらモルトさんも苦い顔で呻くように言葉を吐く。

 「折角生きていてくれたってウチ現の王女も喜んでいたんじゃが……何と伝えればいいのかのう……」

 「ごめんなさい……私達がもう少ししっかりしていれば……」

 「いや……王女も覚悟の上じゃったと思えば仕方あるまいよ。元々百年も前に亡くなられていた方だしな」

 「ひっく……おじい……」

 やるせない気持ちだったけど、カルエラートさんを休ませるのも忘れる訳にはいかないため、立ち尽くす二人に挨拶をして私達は小屋に向かった。

 モルトさんの言うとおり。少し見ない内に拡大しているようで、私達が寝泊りしていた小屋の横に二階建ての小屋……いや、もはや家ができていた。
 
 「荷物を移したら小屋を潰して新しい家を建てるので言ってください!」

 と、ブラウンさんが言うので、疲れた体にムチ打ちながら私達は荷物を移動させる。カルエラートさんがベッドで休んだのを見届けてからお風呂へ入るとすっかり日が暮れていた。
 
 ちなみに男性陣の家もしっかりできており、ついにテント生活からはおさらばできていたりする。

 ベッドで一息ついていると、急激な眠気に襲われた。魔族との戦いはかなり消耗していたのだろう、寝転がると全身が気怠い。

 「今日は……ご飯はいいかな……もう寝よう……」

 「くぅーん……」

 「わぅん」

 「あなたたちも寂しいわよね。おいで、一緒に寝よう?」

 「きゅんきゅん」「きゅふんー」

  レジナは足元に寝そべり、シルバ達は布団の中に入ってきたので抱きしめ、そのまま目を閉じるとすぐに寝入ってしまうのだった。

 

 「ルーナ、ご飯……って寝ちゃってるのね。しかも寝ながら泣いてるなんて……」

 「アイディール。ルーナは?」

 「あれ、レイド。ルーナと過ごしにきたのかしら? 残念! 狼達と寝てるわ。ご飯を食べないで寝るなんて相当ショックだったのね」

 「茶化すな。ああ……俺も少なからずショックを受けてるしな。フレーレは?」

 「あの子もご飯はいらないって言ってたわ」

 「……そうか。今日くらいは二人をそっとしておこうか……」

 「そうしましょうか。ディクラインが話があるって言ってたけど、後で教えればいいか」

 「それじゃ、行こう。飯は食える時に食っておかないとな」



 ◆ ◇ ◆


 拠点でそれぞれ休息をしている中、守護獣達は壊される予定の小屋へと集結していた。
 

 <チェイシャが消滅したぴょん……>

 <オイラ達も気付いてたよ。チェイシャはもっと後になると思ってたんだけどね>

 <……俺はヴィオーラの王と戦うまで生きねばならんかったからな……今回はチェイシャに任せた>

 がっくりと肩を落とすカームに、バステトがポンポンと背中を叩く。

 <順番が違えど私達はその内そうなるにゃ……気にすることはないにゃ>

 <ぴー。そろそろわたし達が行きましょうか?>

 <そうだな……道中はチェイシャの代わりに誰か来てもらうか。ジャンナとファウダーはセットがいいだろう。バステトだけが拠点に残る事になるが……>

 <大丈夫にゃ。ここは信頼できる人間も多いからにゃ>

 ドンと胸を叩いて大丈夫だと言い、カームが頷く。

 <罠が段々面倒なものになってきている。空を飛べるお前達はこの先いたほうがいい>

 <了解したよ。カルエラートさんがしばらく休むみたいだし丁度いいかもね>

 <ぴー。それじゃ次はわたしとファウダーがついていくわ>


 ぞろぞろと小屋を出ていくのをバステトは一番最後に歩き一人考えていた。

 <(神裂と戦う前までにわたし達は何人残るかにゃ……一人が残るくらいなら全員消滅した方が理想だけどにゃ……それでもギリギリまでリリーだけは残さないと……)>


 
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