120 / 377
第六部:救済か破滅か
その141 開始
しおりを挟む「こっちです! ベルダー殿が木に目印をつけてくれています!」
カイムに案内され、フレーレとセイラが林の中を駆けて行く。そしてベルダー達と同じく、洞穴へと到着した。
「はあ……はあ……ぜ、全然追いつけ無かったですね……」
「ニンジャは瞬発力も持久力も必要ですからね、仕方ないですよ」
「まあ私達は戦士系じゃないからね」
「それでもフレーレさんは冒険者だけありますよ。しっかり着いてきていたと思います!」
「そ、そうですか?」
キラキラした目でフレーレを見るカイム。
フレーレ限定で褒めている事には気づいていないんだろうな、とセイラは思いつつ洞穴へと向かう。
「神聖な空気ね……」
「セイラも分かりますか、流石ですね。でもここってエクソリアさんが作った封印ですよね? 何か空気が違いませんか?」
「そうなの? そこまでは分からないんだけど」
カイムを先頭に、二人が洞穴について意見を言い合う。神職であるフレーレの方がこういう場合鋭いようだ。しかしそれでもかろうじてというくらいなので、とりあえず今は進む。
「む! 声が聞こえます、お二人共ご注意を」
段々と、ベルダーらしき声や斬りつける音が聞こえてきた。そしてついに合流を果たす。
三人が見たのはとてつもなく大きな八つの頭を持つ大蛇であった。
「何これ!?」
「セイラ達か! すまんが手を貸してくれ! ぐあ!?」
<この、この! うにゃ……皮膚が硬いにゃ……目を狙うしかないけど、これじゃあ……>
ベルダーとバステトが蛇に絡みつかれ、脱出しようともがくが締め上げられて呻いていた。鳥居の影で師範が体に生えたような姿をしたユリに向かって手裏剣を投げる。
<無駄な事を!>
残りの首が手裏剣を跳ね返しつつ、師範へと向かう。
向かってきた首に乗り、ベルダーとバステトを巻きつけている首の目を切り裂いていた!
<小癪なジジイだね……!?>
「ほっと! なるほどのう」
「申し訳ない師範」
<フレーレとセイラも追いついたにゃ!>
「大丈夫ですか? 《リザレクション》」
一度集合し、フレーレにより回復で持ち直すベルダー達。師範が全員に告げていた。
「先程から様子を伺っておったが、ヤツの首には恐らく刃が通って無い。避けようともしないのはそのせいじゃろう。その猫の言うとおり、本体は一つ……ユリの中にいるに違いない」
幻影でもないが実体でもない、厄介なシロモノだと師範は言う。セイラがユリの体を見ながら師範へと問う。
「引き剥せるでしょうか」
「分からん。だがやるしかあるまい」
「俺が行く、援護は任せた」
ベルダーが走り、師範が後を追う。
「聖魔光……これで追い払ってあげますね!」
「それいいわね。私も教わろうかしら? そういえばこのトランクって何が入ってるの? 邪魔じゃない?」
セイラがフレーレの置いた荷物を見て気になっていた事を聞いた。トランクだけカバンに入れず持っていたのは何故か分からなかったからだ。
「開けていいですよ! フォルサさんからもらったものですけど、旅立った時から開けてないんです。もしかしたら役に立つものが入っているかもしれませんし!」
フレーレがチラリとセイラを見ながら二人を追いはじめ、慌ててカイムがそれを追う。
「あ! フレーレさん! 私も行きますよ!」
すると、頭の一本がフレーレへ大口を開けて迫ってきた!
<行かせるか!>
「それはこっちの台詞ですよ!」
光輝くメイスを握り直し、下から首にフルスイングをするフレーレ!
ガッ!!
<うごぇあぁぁぁ!? 馬鹿な! その細腕のどこにそんな力が……!?>
さらにジュウジュウと焼けたような匂いが立ちこめ、蛇の皮膚が焼け焦げていた。しかし尚もフレーレに食らいつこうとしていた。
「危ない!」
「あらら、火傷? なら冷やさないとね! 《ブリザーストーム》!!」
カイムが庇おうとしたその時、氷の吹雪が後ろから吹き荒れた。みるみるうちに凍りつき、ごとりと頭が地面へと落ちる。
<し、しまった……!? 氷属性が使えるヤツが居たとは……!>
「蛇は寒いのに弱いってのは、村人なら誰も知ってるわ、まあこんなに効くとは思わなかったけどね」
「ナイスです!」
「すぐ行くわ、気をつけてよね」
「分かってます! (ケルベロスと同じような感じなら足を狙えばバランスを崩せる……? やってみましょうか) カイムさん、すいませんけどベルダーさんの援護をお願いします!」
「え? あ、は、はい!」
フレーレがカイムにお願いをしたところで、セイラがトランクを開けていたところだった。横に居たバステトが呻く。
<……これは……本気かにゃ……>
「いいじゃない! 私のロッドより軽いし、しかもこの棘! 当たったらタダじゃすまないわよ?」
トランクから出てきたのは、フォルサがフレーレの卒業祝いとして送ったモーニングスターだった! 旅立つ時に勿体無いとフォルサがフレーレに持たせたのだ。
「きっと扱いづらいのが嫌だったんだ」と勘違いをしたフォルサが改良を加え、ご丁寧に柄の部分と先端を自由に振り回せるようになっていた……。
フレイルと言えばそうだが、伸ばす事も手元に収納してメイスのように使う事もできる恐るべき武器へと進化していたのであった。
<あ、頭が来るにゃ! 極殺爪! ……やっぱり硬いにゃ……>
蛇の噛みつきを爪で捌くが、逸らす事が精一杯でダメージを与えるには至らなかった。追撃のため再びバステトに狙いを定めて突っ込んでくる。そこにセイラが立ちはだかった。
<お前から食らってやるわ>
「任せて! それっ!」
ぶおん! と、先端が唸りを上げて伸び、頭へと向かう。しかしこれは外してしまった。
<どこを狙っているのやら、死ぬがいい!>
「あわわ……!」
あわやと言うところで、回避するがスカートを食いちぎられた。立ち上がって再びモーニングスター(改)を振り回す。
「うーん、いきなりだから慣れないわね。っと《アイスブレード》!」
<……チッ……>
蛇の攻撃を氷の刃で迎撃しながら、手の獲物をぶんぶん振り回すセイラ。感覚がもう少しでつかめそうだとかぶつぶつ呟いている。
<凄いにゃ、賢者は伊達じゃないのにゃ!>
「あ、そうか。こうすれば……」
<ぶつぶつと何を!>
何度か攻撃を防がれイラだった頭が、セイラを締め上げようと絡みつこうとする。
「こうね!」
モーニングスター(改)をメイスにして横薙ぎに振りかぶるセイラ。蛇の頭はそれを回避するが、直後に先端を伸ばし遠心力で横っ面に棘がヒットした!
<あが!?>
皮膚に傷はつかないが内部にはダメージが通るらしく、一瞬悲鳴をあげていた。
「《ブリザーストーム》!」
<くっ!?>
「やっぱり弱らせるか隙をつくしか当たらないか……バス、私達は遊撃でいくわよ。向かってくる頭は氷の魔法でけん制。懐に飛び込めば複数の頭で攻撃はできないでしょ」
<分かったにゃ!>
セイラがモーニングスター(改)を振り回しながら、バステトと共にベルダーの援護へ向かう。
一方、先行したベルダー達は……
0
お気に入りに追加
4,187
あなたにおすすめの小説
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。