109 / 377
第六部:救済か破滅か
その131 掃除
しおりを挟む悲劇の晩餐から少し経ち、私達はお風呂へと入っていた。
エクソリアさんはフレーレのリザレクションで回復し、いじけていたが今は適当な部屋でお酒を飲んでいるらしい。チェイシャ達はそれに巻き込まれて一緒に行ってしまった。お酒を持ってとかなんて人間臭い女神様だろうか……。
本当のところチェイシャはお風呂で尻尾を洗って欲しいと私についてこようとしたが、エクソリアさんに捕まったのは言うまでもない。
ママはカルエラートさんに説教を受けているので、私とフレーレ、フォルサさんにセイラさん、そしてチェーリカというメンバーでお風呂である。
「今日は疲れましたねー……」
「そうね、ビューリックのクーデターに参加して、ケルベロスと王様とゲルスを倒したからね……」
早朝から動いていたので、こうぽかぽかしていると眠くなってくる……あ、そうだ!
「言い忘れてた! フレーレにフォルサさん、助けに来てくれてありがとうございました! すごく嬉しかったです!」
「ふふ、バタバタしてましたからね。でもあの別れ方は無いですよ? レジナ達もすごくがっかりしてましたからね」
「う……ごめん。でもそれはベルダーに言ってよ。元凶はあの人だからね」
「ああ、それならレイド君がさっき絡んでいたわ。ディクラインさんとお風呂に行く途中にね」
そうなんだ! 必死で追いかけてくれてたらしいし、レイドさんにも後でお礼を言っておかないと。何となく顔がニヤニヤしてしまう私にチェーリカが話しかけてくる。
「ふわあ……長く眠っていたせいか体がガチガチでしたがやっとほぐれてきましたよ……それで、ルーナさんはレイドさんとどういう関係です?」
「え? えーっと……お友達? パーティはビューリックに来る前に一度解散しちゃったし……」
するとチェーリカはニヤリと笑い、ススス……と私の横にやってきた。
「ということはまだ負けたわけじゃないということですね! レイドさんは会ったときから目をつけていたんです、そう易々と渡しませんからね!」
どストレート!
何だかんだで歳を取っていないから眠った時のまま14歳の思考なのかもしれないけど、ちょっと素直に言えることが羨ましいと思ってしまった。
そこでセイラさんがにやにやしながら口を挟んできた
「そうねー。もうお兄ちゃんって28歳だけどチェーリカはいいの?」
「です! 逆に渋くなってかっこよくなった気がします!」
「ソキウス君は幼馴染じゃないんですか?」
フレーレも話に混ざってきた。女の子はこういう話が大好物なのだ。
するとチェーリカは眉を曲げて手を振っていた。
「ソキウスはお子様ですからね! わたしが冒険者になるって時にたまたま一緒になっただけですから」
「「(それはチェーリカが心配で追いかけてきたんじゃ……)」」
「ソキウス……」
私とフレーレはほぼ同じ事を思っていたが、口には出さなかった。セイラさんがソキウスの事を哀れんでいた。チェーリカは見た目がまだ幼いので背伸びしている子供に見えてしまうのも内緒だ。
そうしていると、開いた入り口からレジナ達が入ってくるのが見えた。
「あれ? どうしたの?」
「わふ!」「きゅんきゅん」
「きゅーん……」
「にゃんにゃん♪」
「あー♪ わんちゃん達!! 撫でていい? 撫でていい?」
セイラさんが興奮状態で湯船から出てシロップを抱きしめていた。シロップはセイラさんをふんふんと匂いを嗅いでいた。しばらく嗅いだ後、顔をぺろぺろと舐めていた。
何故シロップなのか?
よく見ればシルバはレジナに咥えられていたからだ。さっきの肉の後遺症がまだ残っているようだ。鳴き声が甘える感じになっていた。
無理も無い、あの料理は3口目で命を奪えると言われたら、信じるレベルの破壊力を秘めている。
「猫ちゃんまで。猫って水が嫌いじゃなかったでしたっけ」
「そうね、猫の毛は水をあまり弾かないから体力の消耗が激しいのよ。だから本能的に嫌うんだけど……」
フォルサさんが解説をしてくれていると、てくてくと歩いてきたレジナ達が……。
チャプン……。
浅いところでレジナ、シルバ、猫ちゃんが並んで首だけ出して湯に浸かっていた。
あんなに水洗いを嫌がっていたのに……村の温泉で味をしめたかしら?
シロップが暴れだしたので、セイラさんも抱っこしたまま浸かり直す。
「わふー……」
一旦汚れきっていたスカーフを外して、私とフレーレが全身を洗ってあげる。ゆっくり温まった後、脱衣所でセイラさん達と別れた。
部屋に戻ってよく乾かし、ブラッシングをしてあげると、レジナ達はそのまま眠ってしまった。そこである事に気づいた。
「……この子達、何か違わない?」
「そうですね……洗って気づきましたけど、毛づやが良くなって色が銀色に近くなってます」
フレーレも違和感があると首をかしげていると、フォルサさんが髪を拭きながら私達に言った。
「魔物だとそんなものじゃないかしら?」
「魔物!? ど、どういうことですか!?」
フォルサさんの衝撃な事実に驚かされる。ガリガリだったけど普通の狼だったわよね。
「この子達、普通の狼だったんですけど……」
「そうなの? 何か特殊な食材でも食べたのかもね。耐えられれば力を増やす事ができるから」
ま、まさか私を追いかけるために?
「ごめんね……ありがと」
謝りながらレジナ達のお腹を撫でると「わふん」と満足そうな声で鳴いた。今度はこの子達にもお礼をしなくちゃね。
そう思いながら私はベッドに入り、目を瞑るとすぐに眠気が訪れた。
---------------------------------------------------
翌日
窓から外を見るといい天気!
……という事は無く、空には暗雲が立ち込めていた。この地域は曇りが多いそうだ。
そして私達はというと引越しと大掃除のため、あちこちを駆け回っている。
私は小さい頃住んでた部屋があるんだけど、皆と離れちゃうからそこはやめたんだよね。
「お父さんはどうするの?」
「そうだな、一人で一部屋を使うようになるだろうけど、できればお前と同じ部屋がいいかな」
「ん、分かった。じゃあもう一個ベッドを運んで……ってお父さんベッド必要……?」
「わふわふ!」「わん!」「きゅきゅーん♪」
「うわ! お、お前達……!? う、うーんルーナは心配だけどこいつらが居るんじゃちょっとなあ……」
レジナ達は私の部屋がいいらしいので三匹を受け入れた。お父さんは骨をしゃぶられるのを危惧してか、私の部屋を断念した。
「ルーナは私の隣の部屋よ! ヴァイゼは怖いから地下行きなさいよ」
「ここ俺の城……後、実の親なんだけど……」
そんな感じで部屋割りを決めていく。
この魔王城、正面から真っ直ぐ歩くと玉座のある謁見の間があるんだけど、一階はそれしかなくて、二階に部屋がたくさんある作りなのだ。
謁見の間に扉の両脇に階段があって、二階から一階を見ると吹き抜けのようになっているのが分かった。私とお父さんが刺されて息絶えた場所もその二階の通路だったらしい。
「俺は階段近くの部屋がいいな。ベルダーはルーナちゃんの部屋から遠くしてくれ」
「何でだよ……」
「チェーリカはレイドさんの隣の部屋がいいです!」
「じゃ、じゃあ俺はその隣!」
そんな調子で次々と決まっていき、それぞれ荷物を引っ越していく。フォルサさんとエクソリアさんは早々に部屋を決めて二人で何やら話しているみたい。
<わらわ達も部屋一つ貰えるのかや?>
<ぴー。私達部屋の開け閉めが出来ないから主の部屋かルーナかフレーレの部屋でいいわ>
<オイラもーチェイシャだけ部屋もらいなよ!>
「にゃにゃーん♪」
<ちょ……!? この猫いつのまに背中についたにゃ!? はがして欲しいにゃ! 私は猫じゃなくて虎だにゃ!?>
<一人は寂しいのじゃ……みんなルーナの部屋に行こうぞ!>
「ベッド、もう一つ持ってきてもらおうかしら……」
結局私の部屋は騒がしくなりそうなので、一番奥の二部屋繋がっている部屋を使うことにした。ジャンナはフレーレの部屋がいいと飛んでいったけど。
そして自分の部屋、洗面台、お風呂、窓、床を全員で掃除。
夜になると真っ暗だったので魔力で点灯する照明も磨いて使えるようにした。
遅めの昼食を取り、夕方になる頃には全て片付いた。
「お、終わった……」
「みんな頑張ったな。ほら、紅茶だ」
食堂に集まった皆に、紅茶を出すカルエラートさん。掃除も一番頑張っていたのにタフだ……。
すると、エクソリアさんとフォルサさんが遅れて入ってきた。
「お、出てきたのか。お前達も掃除手伝ってくれよ……」
パパが二人に疲れた声で愚痴を言っていると、エクソリアさんが口を開く。
『すまないね。ちょっと考える事があったからね』
「とりあえず次の方針を考えてきたの。聞いてもらえるかしら?」
「方針……?」
困惑する全員に、フォルサさんがにこりと微笑む。
二人が考えた方針って一体なんだろう……。
---------------------------------------------------
【後書き劇場号外】
猫の名前が思いつかない……!!
というわけで募集します!
これだ! という名前がきたら採用させていただきたいと思います!
2018年10月13日まで!
0
お気に入りに追加
4,187
あなたにおすすめの小説
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。