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第六部:救済か破滅か

その128 再会

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 ルーナです!

 ついにレイドさんの仲間に会う時がやってきました!

 パパが玉座の後ろにある隠し扉を開け、先に進んだところで階段があり、そこを降りた。
 地下通路を進んだ先にいくつか部屋があり、一つの扉の前で足を止めパパが振り返る。


 「ここにセイラが……?」

 「ああ。さ、入ってくれ」

 カチャ、と普通に開き全員で中に入る。中は広く三つのベッドが並べられていた。そのベッドを取り囲むようにガラスか水晶のような箱? に、覆われていた。

 駆け寄ったレイドさんが透明の壁に手を当てて呟いた。

 「確かにセイラだ……こっちはソキウス……チェーリカも……生きているのか?」

 「間違いなく、な」

 少し涙目になりながら、レイドさんが再びセイラさん達へと向き直る。

 そこでフレーレが手を上げて疑問を口にした。
 
 「それでどうやって目を覚まさせるんですか?」

 私も気になっていた事を口にする。

 「そうね、この箱? これも、どうやって外すんですか?」

 するとパパが眉間にしわを寄せながら呻いた。

 「……そういや、そうだな……あの時は自分から出てきたし……眠りに就くときも覗いたらダメだって見せてくれなかったし。アイディール、知ってるか?」

 「ディクラインが知らないのに知ってるわけ無いじゃない!?」

 ゲルスから助けてもらった時は皆一緒だし、それは仕方がないと思う。

 「何か言い残している事とか無いの? レイドさんが叫ぶとか」

 「それは何か恥ずかしいな……」

 「男が何を言うか! 堂々としろ堂々と」

 顔をしかめるレイドさんの背中をカルエラートさんがバンバン叩く。
 でも、このままだと折角会えたのに肩透かしだよ。

 すると、部屋のあかりが急にフッと消えた。

 「きゃあ!?」

 「なに、どうしたの!?」

 フレーレとママがびっくりしていた。でもすぐに明かりがつき、皆で安堵していたところでレイドさんが叫ぶ。

 「あれ!? セイラが居ない!?」

 「ええ!?」

 私も慌ててレイドさんの隣に行くと、確かにベッドにはセイラさんは居なかった。残り二人は居るのに……。

 すると、どこかで女性のすすりなく声が聞こえてきた。

 (うう……恨めしい……)

 「この声はセイラ! どこにいるんだ!」

 (わたしは薄暗い地下でずっと待っているのにお兄ちゃんは女の子と旅……)

 「くっ……そんな事は……俺はお前が、お前達が死んだと思って……」

 (でも死んだって決まったわけじゃなかった……いつかまた強くなって来てくれる……そう思っていたのに……)

 セイラさんはレイドさんを追い詰めてくるが、私達はある程度事情を知っているので、すごく茶番感がある。だけど真面目なレイドさんには効果が抜群だ。

 「す、すまなかった……」

 (お兄ちゃんはわたしが大切……?)

 「勿論だ! 生きていてくれて……あれ? 生きてるんだよな?」

 ようやく気づいたレイドさん。

 そして……

 「なーんてね!! 久しぶり、お兄ちゃん!」

 「うわ!?」

 レイドさんの目の前に転移してきたのは……セイラさんだった!




 ---------------------------------------------------




 「まったく……お前は……」

 「いいじゃない、普通に再会したんじゃ面白くないでしょ? あ、あなたルーナね? まさかお兄ちゃんと一緒にくるとは思わなかったけど」

 セイラさんが私を見てそんな事を言う。あ、そうか。お父さんに挑んだ時からこの城にいるなら知ってるわよね。

 「ルーナです! あの、正直あまり覚えてないんですけど……」

 「そうでしょうね。ルーナと会ったのは水晶を埋め込まれた時の一回だけだし、わたしもずっと眠っていたしね。でもおかげで……体は17歳のまま……!!」

 くるりとその場で回り、何かをアピールするセイラさん。ママとカルエラートさんが何故かぐぬぬとしていた。
 そしてニコっと微笑み、奥にある怪しげなボタンを押すと、残り二人の透明な箱がゴゴゴと天井へ吸い込まれていった。どういう仕組みなのか気になる……。

 「んあ……? こ、ここは……? か、体がうごかねぇ……」

 「そ、ソキウス? あれ? チェーリカは魔王に殺されたんじゃ……」

 意識を取り戻した二人がそれぞれ口を開く、意識は10年前に戦ったときのままのようで、少し混濁している。
 そこにレイドさんが越え尾をかけた。

 「ソキウス、チェーリカ! お前達も無事で……」

 「おう!? なんだおっさん!? いきなり泣き出して!」

 「ですです、チェーリカたちにおじさんの知り合いは居ないですよ?」

 という二人は確かに若い。私やフレーレよりも幼い感じがする。セイラさんもそうだけど、もしかして歳をとってないんじゃ……?

 「俺だ、レイドだよ! ああ……あれから10年だ、見た目が違うのも仕方が無いか」

 「え!? れ、レイドさんですか!? でも確かにチェーリカの好きだったレイドさんの面影は確かにある……」

 「え!?」

 ソキウスがチェーリカを見て驚く。幼馴染は自分が好きだと思い込んでいる典型だと思った。村にも居たのよねそういう人……で、今『好き』って言わなかった……?

 「ああ、俺だ! すまなかったな、あの時は」

 チェーリカの肩に手を置いて微笑むレイドさん。それを見て顔を赤くするチェーリカ。

 「い、いえ……(渋さが出てかっこいい……これはこれで……アリ!)」

 なんだか嫌な予感がする……チェーリカを見てそう思ったけど、ソキウスが続けて話し始めていた、

 「いてて……体がバキバキだ……それにしても10年ってすげぇな……じゃあレイドはもう28……俺も25かよ……」

 何とか起き上がり、ベッドに腰掛けてレイドさんを見ながらため息をつく。
 見た目は14、5歳なんだけどね。

 「それで? お前がここに居るってことは魔王は倒されたのか?」

 「それにそちらに居る方達は……?」

 「それじゃ、二人にも話さないとね。まあ、協力はしなくてもいいんだけど……」

 ママが、戸惑うソキウスとチェーリカに事の経緯を説明し始めた。



 ---------------------------------------------------



 「ふーん」

 ソキウスは全てを聞いた後、それだけ言った。

 「相変わらず軽いなあ。だからアホだって言われるんだぞ?」

 レイドさんが呆れてソキウスの頭を撫でる。こういうレイドさんを見るのははじめてだなあ。やっぱり、元の仲間だから気兼ねしないのかな?

 「う、うるさいな!? とりあえずそこに居る兄ちゃん達が俺達が負けた後魔王を倒してくれた勇者パーティで、レイドの隣に居る可愛い姉ちゃんが魔王の娘……」

 「で、フレーレさんはレイドさんとルーナさんとパーティを組んでいるんですね。そして、元凶は女神でそれを殺すために奮闘……でもルーナさんの体に女神が宿っていてそれを助けるために今から作戦を……」

 「そう。あなた達には選択が二つあるわ。このまま生き延びた事を喜んで、冒険者に戻るか私達を手伝うか」

 ソキウスが腕を組んで考える、

 「でもそれだったら、レイドが俺達を助けた時点でレイドもセイラも戦わなくてもいいじゃないか? なんで俺達だけなんだよ」

 「わたしは魔王から頼まれたからね。それに世界が滅ぼされるのを黙ってみているのも嫌だからディクラインさん達に協力するの」

 ソキウスの疑問にセイラさんが答える。続いてレイドさんも話す。

 「俺はセイラが生きていると、お父……ディクラインさんに聞いてルーナちゃんに着いてきた。でも、真実を知った今、次にやるべきことはルーナちゃんを女神から切り離して助ける事だと思うんだ。パーティはそういうもんだろ?」

 「今、お父さんっていいかけた……!? ま、まさか……ルーナさんとお付き合いを……!?」

 「どうしてそうなる!? チェーリカは昔からそういうところがあるよな……」

 それを聞いてほっとしているチェーリカ。ううむ……。
 そしてソキウスが目を開いて答えた。

 「よし決めた! 俺もここで助けられた身だ手伝うぜ。それに世界が滅ぶって聞いてのんびり冒険者をやってもいられねぇだろうしよ」

 「チェーリカも! またレイドさんと旅が出来るならお安い御用ですよ!」

 能天気そうな二人がそれぞれ手伝うと言い、レイドさんがそれを聞いて真剣な顔で告げた。

 「遊びじゃないからな? それだけは覚悟をしておくんだ……まあ、二人ともそう言うと思っていたけどな。また、よろしく頼むぞ!」

 「おう! 任せとけ、魔王にゃ負けたが女神はばっちり倒してやる!」

 「ですです! 今度は負けませんよ!」

 レイドさんと握手をするソキウスに、ぶんぶんと手を振るチェーリカ。それを見てセイラさんが笑いながら、話を進めていた。

 「もちろん私も参加! ディクラインさん、今後の予定は?」

 「やれやれ……この魔王城も大所帯になってきたな……魔王を倒しに行こうとするような奴らばかりだし、仕方ないか……」

 パパがはあ、とため息をついた後、みんなを見渡して真剣な顔になる。

 その表情に私も緊張が走る……。

 ゴクリ……誰かが喉を鳴らした後、パパはその口を開いた。

 「……明日から城の大掃除だ! まずは寝床を各自確保する事! 空いている部屋はいったぱうんだけど掃除が行き届いていないんだよ。なあに、この人数なら大掃除なんてすぐ終わるさ」

 ははは、と笑うパパに、ゆらりとママが近づいた。

 「みんな! 伏せて!」

 私が叫ぶと、パパ以外は一斉にしゃがんだ。どうやら、意図を汲んでくれたらしい。直後……。

 「みんなが真剣に出した答えの後に大掃除はないでしょうぉがぁぁぁ!!」

 「ぶべら!?」

 またしても壁にめりこむパパであった。
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