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第四部:ルーナの秘密
その77 到着
しおりを挟む不眠不休で走りつづけ、国境を難なく通過した私達。
五日はかかる道中をわずか三日で戻ってきたのはブルルとアップルのおかげと言える。この子達にも何かご褒美をあげないとね!
時間は惜しいけど、二頭も休まない訳にはいかないので休憩を挟みながらご飯を食べ、ついにアルファの町への帰還を果たしたのだ。
「おい、そこの馬車!」
南側の門番さんが猛スピードで突っ込んでくる私達の馬車を止めようとするが、勢いがついているので門の前で止まれなかった。
「すまん! ブルル、アップル、どう! どう!」
門から少し進んだところで止まり、門番さんが慌てて走ってくるのが見えた。
「な、なんだレイドか……どこの賊が攻めて来たのかと思ったぞ。確認した、もう行っていいぞ。ってお前等ボロボロだな、大丈夫か?」
門番さんが訝しげな顔をして、頭を掻きがら持ち場へと戻って行く。
いやあ、この三日は追手を警戒しながらほとんど寝てないから目にはクマ、髪はぼさぼさで私とフレーレは女の子としてはちょっとヤバイ感じになってるなとは思っていた。
「俺は馬車を置いてくる! ルーナちゃん達はアントン達の所へ!」
「はい!」
<まだ時間はあるはずじゃが急ぐぞ!>
一旦レイドさんと別れ、その足でソフィアさんの家へと向かう。馬車を乗り付けられる場所ではないのでこれは仕方ない。
まだレジナは目を覚ましていないので、私が背負って走る。フレーレの顔も疲労が濃いので、そろそろ限界のハズだ。そんなことを考えていると、フレーレの足がもつれた。
「だ、大丈夫です早く行きましょう!」
「きゅーん……」
早く到着することが休むのに一番早い近道だ。そう言い聞かせて無言で住居区へと向かった。
---------------------------------------------------
バタン!!
「戻りました!」
「ルーナさん! それにフレーレさん!」
ソフィアさんが乱暴にドアを開けた私達を見て驚きの声をあげる。
横に居たメアリちゃんがびっくりしてソフィアさんの足にしがみついていた。
「あ、あらあら、そんなにくたびれて……。はい、お水ですよ」
「あ、ありがとうございます……んぐ、んぐ……」
「そういえば昨日から何も飲んでいませんでしたね」
一気に水を飲みほして、一息ついた。
「早かったですね? もっとかかるとファウダーさんが言ってましたのに」
「色々ありましたけどね……。でもちゃんと不死鳥の血は持って帰りましたから!」
<ぴー。そうよ、あたしに感謝してよね?>
「あら、可愛い小鳥さんね? 感謝ってことは……不死鳥さん?」
あまり驚かないのね、ソフィアさん。ジャンナさんを撫でながら、うふふと笑っていた。
「さ、それじゃあアントン達の部屋へ行きましょう」
<ファウダー、戻ったぞ>
<あら、ファウダーちゃんも居るのね!>
すると凍結されていたドアが元に戻り、ギィっと開いた。
中へ入ると机の上でファウダーがちょこんと座っており、静かに話し始めた。
<や、早かったね。二人はこの通り、出発した時のままだ……ジャンナもいるようだし、ひとまず蘇生ができそうだね?>
<久しぶりね、ファウダーちゃん! 元気だった!>
ジャンナさんは私の肩からパタパタとファウダーの元へ飛んで行き、ファウダーにすりすりと頬を寄せていた。
<はあ、相変わらずだね、ジャンナ……まあ久しぶりだしいいけど……それじゃあやるかい?>
「ええ、二人の凍結を解いてもらっていいかしら?」
<あいよ……これでOKだよ>
パァっと二人の体が光り、霜が取り払われた。傷口もそのままなのでフレーレが顔をこわばらせていた。
それでも目は逸らさないところがフレーレらしい。
いよいよ蘇生開始だ。
<それじゃあ、レジナの時と同じでまずは飲ませて。二人とも死亡しているから、じょうごみたいなもので流し込めばいいわ>
レジナは息があったが、二人はすでに死んでいるので喉の奥までは飲み込めない。
ソフィアさんが持ってきてくれたので、まずはアントンに飲ませる。
<次に血を傷口に。血で傷を覆うような感じで塗るのよ>
私は頷いて、二人の傷へジャンナさんの血を塗りこむ。するとすぐに血が硬化を始めていた。
そこでレイドさんが部屋へと駆けつけて来た。
「はあ、はあ……始めていたか……。どうだい……?」
「今、治療を終えたところです。レジナはこれで呼吸が落ち着きましたけど二人はまだ変化が……」
フレーレが説明していると、段々二人の顔に血色が戻って行く様子が伺えた!
「心臓は……!」
私がメルティちゃんの胸に耳を当てると少しずつ鼓動が聞こえてきた。ついでにアントンの心臓も鼓動が聞こえてくる事を確認した。
良かった……! これで目を覚ませば!
「ああ……メルティ!」
いよいよ息を吹き返し、呼吸始めた娘を抱きかかえ泣いていた。
<後は目を覚ますのを待つだけじゃな。いつになるか分からんから今日の所はわらわ達も休もう>
「ああ、そうだな。しかし、不死鳥の血はすごいな……」
<もっと褒めていいわよ?>
<すぐ調子に乗るんだから……>
ファウダーがジャンナさんを引き離そうとしてながらそんな事を言っていた。
「それじゃ今日は宿で休みましょうか……つ、疲れたー!!」
「今回はホントに危なかったですしね……」
「レジナも起きてくれないかな……まだ起きないし……」
「そうですね、でも息はありますしもう少し待ちましょう」
チェイシャ達はソフィアさんの家で待つと言うので、私、フレーレ、レイドさんとレジナ達で宿へと向かった。
---------------------------------------------------
-????-
「わふ」
「わ! 犬さん?」
「もぐもぐ……狼だそりゃ。というかでけぇな、どっから出て来たんだ? ん? その首にあるスカーフ見たことあるな……」
「ガウ!」
「うわ!? なんだよ! 引っ張るなって!?」
<ああ、ここに居ましたか。突然走り出すからびっくりしましたよ? 丁度いい、あなた達は蘇生されたようです。おめでとうございます!>
「は? マジか?」
「そせいって何? お兄ちゃん?」
「ああ……俺達は生き返れるらしい……一体誰が……? おい、俺達二人ともか?」
<正確に言えばその狼さんもですね。もう生き返れる手はずは整っていたのですが、中々帰ってくれなくて……はい。それじゃ、お食事中申し訳ありませんが、こちらへ>
「ここから……?」
「わふ……」
「真っ暗だよ?」
<真っ暗です。さて、本題ですがこの穴を通ってもらうと目を覚ますことができます。通っている間は後ろを振り返ってはいけませんよ? くれぐれもご注意を。はい、それじゃ次は寿命で会えるといいですねー>
二人と一匹は暗闇の中へと突き飛ばされた。
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