74 / 116
その74 一件落着?
しおりを挟む
「う、ぐううう……」
「あがが……」
【他愛ないな。まったく、度し難い】
地面に倒れた二人を見下ろしながら、フラメが頭上で鼻を鳴らす。
遭遇した瞬間、籠に入っていたフォルスを見てカッとなり、二人をボコボコにしてやった。後悔はしていない。
逃げられないようまず足を貫き、その後顔は元の形が分からないくらいぶん殴った。もちろん止める者などいないため、動かなくなったところで終了したのだ。
「フォルス!」
「ぴぃー♪」
それはともかくフォルスを救出する。
籠を壊すと鼻水とおしっこまみれのフォルスが俺の胸に飛び込んで来た。
「よしよし、怖かったな。すまない油断してしまった」
「ぴぃ! ぴぃー♪」
【大丈夫そうだな】
「ああ。すぐに見つかって良かった」
俺はフォルスを抱きしめながらそう吐露した。ドラゴンを憎む俺だが、なにも知らない赤ちゃんであるフォルスが酷い目に遭うのはやっぱり違う。
「ぴゅい! ぱぁぱ♪」
「……! お、おい、フォルス今パパって……」
「ぴゅい♪」
「フラメ、今フォルスがパパって言ったよな!?」
【ん? いや、すまないこいつらを捕まえていて聞いていなかった】
「ええー……」
絶対喋ったと思うんだけどな……。
とりあえず盗賊の頭は抑えられたので、良しとしよう気絶した二人をフラメが掴み、俺はフォルスを抱えて頭に登る。
「すまないな」
【気にすることはない。オレの頭に乗って移動した方が早いし、安全だ】
「ドラゴンは言うことが違うな」
「ぴゅーい♪」
さて、それはそれとしてセリカ達も心配だ。数に押されたら飲まれてしまう可能性が十分にある。
……と、思っていたんだが――
「あ、帰って来た! ラッヘさんフォルスは!」
「ぴゅいー♪」
「良かったぁ……」
「フォルスちゃん良かったわ!」
セリカは元気よく鳴くフォルスを見て安堵の息を漏らす。アイラも近くに居て、手を振ってくれていた。
「盗賊達は?」
「半分くらい倒して転がっているけど、フラメが巨大化した時点でかなり逃げたわ」
「そうだったか。すまない、フォルスを優先してしまった」
「ううん、私もフォルスが心配だしそれで問題ないよ!」
「そうね。フォルスちゃんはまだ小さいから守ってあげないとだし」
女性二人に謝罪するとそんな答えが返って来た。ありがたいことだと思う。
「でもびっくりラッヘさんがあんな顔で行くとは思わなかったらびっくりしたよ!」
「そうか……? よく分からないが怒っていたのは確かだな」
「ぴゅ♪」
「もう滅竜士《ドラゴンバスター》じゃなくて竜操士《ドラゴンマスター》の方がいいんじゃないかしら」
「頭に乗っているラッヘさんかっこいいよね」
アイラが笑いながら俺に言う。セリカも優しいからできるなら殺すより生かす方が似合っているなどと言っていた。
どうかな、俺はそんなにいい人間じゃないんだが。
「おっと、そろそろ粗相を拭いてやらないとな」
それはともかくということで俺は二人の下へ移動した。目下やらなければいけないことは盗賊達の処理だな。
◆ ◇ ◆
「――再び捕縛、しかもゴリアートを捕まえるとは……」
「一応、頭だと言っていたから間違いないと思う。とりあえず他の人に迷惑がかからないように処分してくれ」
「くそ……」
「うああ、アニキィ……!」
そんなこんなで町まで連れてきて引き渡すことができた。
主犯であるゴリアートはフラメがずっと握ったままで逃げられないようにし、他の盗賊は載せられるだけ一台の荷台に載せてからフラメの尻尾にくくりつけて引っ張ってもらった形だ。
全部で六十七名を捕縛し、門兵が驚いていた。
「顔がボコボコになっていてわからないかもしれないが……」
「いえ、実際ゴリアートの素顔を知っている者はいませんから問題ありません。極刑にするか北の方にある雪原の永久鉱山送りになるかと思います」
「ま、殺人までしているなら妥当か」
セリカがため息を吐いてからゴリアートだと思われる人物を睨んでいた。誘拐に強盗も日常茶飯事の盗賊団はこれでほぼ壊滅したと言える。
……どうやら元々、俺達のところへ来る予定だった人達は殺されたみたいだ。極刑でいいと思う。
「それじゃあ王都へ行く?」
「いや、カルバーキンに挨拶をしていくよ。ドタバタで疲れたろ、少し休んでいこう」
「あ、賛成! デザート食べたいわ!」
「朝食べたのに……」
「デザートは別腹よ!」
セリカが喜びながら馬の首を撫でていた。こいつらも買った馬なのでその内、俺かアイラが名前をつけてやらねばなるまい。
そんなことを考えながら町へ入っていき、ギルドの酒場兼食堂で少し休憩をすることにした――
「本当だって、パパって言ったんだ! なあフラメ」
【オレは聞いていなかったからな】
「喋れるようになったのかな? フォルス、ママって言ってごらん?」
「ぴゅーい♪」
「ふふ、ダメみたいね」
「パパはどうだ?」
「ぴゅーい♪」
尻を拭いてキレイになったフォルスはテーブルの上で俺達のところを嬉しそうに動き回っていた。
よほど怖かったのか甘噛みするわ腕に抱き着いて離れないわで甘えん坊が加速した気がする。
しかし、その後フォルスがパパと呼んでくれることはなかった。残念だ。
「あがが……」
【他愛ないな。まったく、度し難い】
地面に倒れた二人を見下ろしながら、フラメが頭上で鼻を鳴らす。
遭遇した瞬間、籠に入っていたフォルスを見てカッとなり、二人をボコボコにしてやった。後悔はしていない。
逃げられないようまず足を貫き、その後顔は元の形が分からないくらいぶん殴った。もちろん止める者などいないため、動かなくなったところで終了したのだ。
「フォルス!」
「ぴぃー♪」
それはともかくフォルスを救出する。
籠を壊すと鼻水とおしっこまみれのフォルスが俺の胸に飛び込んで来た。
「よしよし、怖かったな。すまない油断してしまった」
「ぴぃ! ぴぃー♪」
【大丈夫そうだな】
「ああ。すぐに見つかって良かった」
俺はフォルスを抱きしめながらそう吐露した。ドラゴンを憎む俺だが、なにも知らない赤ちゃんであるフォルスが酷い目に遭うのはやっぱり違う。
「ぴゅい! ぱぁぱ♪」
「……! お、おい、フォルス今パパって……」
「ぴゅい♪」
「フラメ、今フォルスがパパって言ったよな!?」
【ん? いや、すまないこいつらを捕まえていて聞いていなかった】
「ええー……」
絶対喋ったと思うんだけどな……。
とりあえず盗賊の頭は抑えられたので、良しとしよう気絶した二人をフラメが掴み、俺はフォルスを抱えて頭に登る。
「すまないな」
【気にすることはない。オレの頭に乗って移動した方が早いし、安全だ】
「ドラゴンは言うことが違うな」
「ぴゅーい♪」
さて、それはそれとしてセリカ達も心配だ。数に押されたら飲まれてしまう可能性が十分にある。
……と、思っていたんだが――
「あ、帰って来た! ラッヘさんフォルスは!」
「ぴゅいー♪」
「良かったぁ……」
「フォルスちゃん良かったわ!」
セリカは元気よく鳴くフォルスを見て安堵の息を漏らす。アイラも近くに居て、手を振ってくれていた。
「盗賊達は?」
「半分くらい倒して転がっているけど、フラメが巨大化した時点でかなり逃げたわ」
「そうだったか。すまない、フォルスを優先してしまった」
「ううん、私もフォルスが心配だしそれで問題ないよ!」
「そうね。フォルスちゃんはまだ小さいから守ってあげないとだし」
女性二人に謝罪するとそんな答えが返って来た。ありがたいことだと思う。
「でもびっくりラッヘさんがあんな顔で行くとは思わなかったらびっくりしたよ!」
「そうか……? よく分からないが怒っていたのは確かだな」
「ぴゅ♪」
「もう滅竜士《ドラゴンバスター》じゃなくて竜操士《ドラゴンマスター》の方がいいんじゃないかしら」
「頭に乗っているラッヘさんかっこいいよね」
アイラが笑いながら俺に言う。セリカも優しいからできるなら殺すより生かす方が似合っているなどと言っていた。
どうかな、俺はそんなにいい人間じゃないんだが。
「おっと、そろそろ粗相を拭いてやらないとな」
それはともかくということで俺は二人の下へ移動した。目下やらなければいけないことは盗賊達の処理だな。
◆ ◇ ◆
「――再び捕縛、しかもゴリアートを捕まえるとは……」
「一応、頭だと言っていたから間違いないと思う。とりあえず他の人に迷惑がかからないように処分してくれ」
「くそ……」
「うああ、アニキィ……!」
そんなこんなで町まで連れてきて引き渡すことができた。
主犯であるゴリアートはフラメがずっと握ったままで逃げられないようにし、他の盗賊は載せられるだけ一台の荷台に載せてからフラメの尻尾にくくりつけて引っ張ってもらった形だ。
全部で六十七名を捕縛し、門兵が驚いていた。
「顔がボコボコになっていてわからないかもしれないが……」
「いえ、実際ゴリアートの素顔を知っている者はいませんから問題ありません。極刑にするか北の方にある雪原の永久鉱山送りになるかと思います」
「ま、殺人までしているなら妥当か」
セリカがため息を吐いてからゴリアートだと思われる人物を睨んでいた。誘拐に強盗も日常茶飯事の盗賊団はこれでほぼ壊滅したと言える。
……どうやら元々、俺達のところへ来る予定だった人達は殺されたみたいだ。極刑でいいと思う。
「それじゃあ王都へ行く?」
「いや、カルバーキンに挨拶をしていくよ。ドタバタで疲れたろ、少し休んでいこう」
「あ、賛成! デザート食べたいわ!」
「朝食べたのに……」
「デザートは別腹よ!」
セリカが喜びながら馬の首を撫でていた。こいつらも買った馬なのでその内、俺かアイラが名前をつけてやらねばなるまい。
そんなことを考えながら町へ入っていき、ギルドの酒場兼食堂で少し休憩をすることにした――
「本当だって、パパって言ったんだ! なあフラメ」
【オレは聞いていなかったからな】
「喋れるようになったのかな? フォルス、ママって言ってごらん?」
「ぴゅーい♪」
「ふふ、ダメみたいね」
「パパはどうだ?」
「ぴゅーい♪」
尻を拭いてキレイになったフォルスはテーブルの上で俺達のところを嬉しそうに動き回っていた。
よほど怖かったのか甘噛みするわ腕に抱き着いて離れないわで甘えん坊が加速した気がする。
しかし、その後フォルスがパパと呼んでくれることはなかった。残念だ。
0
お気に入りに追加
305
あなたにおすすめの小説
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
イクメンパパの異世界冒険譚〜異世界で育児は無理がある
或真
ファンタジー
二十九歳、所謂アラサーのユウマはイクメンである。
料理?余裕。洗濯?ちょろすぎ。おむつ替え?簡単じゃん。
異世界転移?魔王退治?いや、ちょっとハードルが高いんだが。
どうしてか、我が子と一緒に勇者として召喚されたみたいだ。妻を我が家に残してるので一刻も早く帰りたいんだけど……出口は見当たらないな。
異世界に託児所はあるのだろうか。あるといいな。
イクメンパパが異世界で奮闘する物語。
転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~
桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。
両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。
しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。
幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
はずれスキル「ゴミ強化」で、ゴミ扱いされて追放された俺が鬼強化された。実家から帰ってきてほしいと言われたけどもう遅い。
アメカワ・リーチ
ファンタジー
「――あなたのスキルは、“ゴミ強化”です」
レノックス公爵家の跡取りとして、大勇者になるため育てられてきたレイ・レノックスだったが、
18歳の神託で授かったのは、ゴミのステータスを10倍にする“ゴミ強化”と言う外れスキルだった。
――お前のような<ゴミ>は我がレノックス家にはいらん。
レイは父親からそう言われて実家を追放される。
しかし、レイとそのスキルが“ゴミ扱い”されたことで、スキルの力そのものが“ゴミ強化”で10倍になり、
10倍×10倍で100倍の強化スキルになる。
これによりレイのステータスは100倍に。
しかも<ゴミ>扱いされたものに“ゴミ強化”を使うと、全てのステータスが100倍になりとんでもない魔法具になってしまう。
そしてレイは、クワガタと人間のキメラの奴隷少女、淫乱すぎてゴミ扱いされた聖女とパーティーを組み、
気がつけば大勇者への道を駆け上がっていた。
一方、レノックス家を継いだのは、“神聖剣”のレアスキルを手に入れた異母弟のグラッブだったが、
努力もせず才能もない彼が後継者になったことで、レノックス家は没落していくことになる。
勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~
竹間単
ファンタジー
【勇者PTを追放されたチートなユニークスキル持ちの俺は、美少女と旅をする】
役立たずとして勇者パーティーを追放されて途方に暮れていた俺は、美少女に拾われた。
そして俺は、美少女と旅に出る。
強力すぎるユニークスキルを消す呪いのアイテムを探して――――
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる