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その58 意外なセリカ節
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ひとまず事情を聞かせてくれということで俺達は小屋に招かれた。
中へ入るとセリカが感嘆の声を上げる。
「ふわぁ、中は豪華ですね……!」
「フフ、あたしが作ったのよ。こういうのは自分で作った方が理想の部屋ができるからね」
「拘りがあるって聞いてますから納得しますね」
「ありがと。ま、座ってよ」
セリカが褒めて気を良くしたアイラが見事なソファに座るよう促してきた。セリカと並んで座り、フォルスがポケットに逃げ込んだところでアイラが口火を切った。
「……そ、それで二人は、その……恋人、なのか……?」
顔を赤くして咳ばらいをしつつ俺達をチラチラと見てくる。いつもはもう少し豪快なのだが、どうしたことか。そう思っているとセリカが笑顔で答えた。
「はい! 私から告白して先日から付き合ってます!」
「ごふぁ!?」
「アイラさん……!?」
「ぴゅー……!?」
セリカが答えると、アイラさんはダメージを受けながら崩れ落ちた。フォルスもポケットから目だけ出してびっくりしていた。
「どうしたんだ? なにかショックなことでも」
「うーん、私はわかっちゃったけど」
『自分の口からは言えない』と、セリカは困った顔で笑っていた。少し間を置いてからゆらりと身を起こすと、涙目で訴えてきた。
「あたしも……」
「む?」
「あたしもラッヘのことが好きだったのに……!!」
「なに!?」
なんかとんでもないことを言い出したな!? 俺が驚いていると、アイラさんはそのまま続けた。
「あたしもいっぱいアプローチしたんだよ!? 泊まっていってくれとか一緒にお酒を飲んでもたれかかったりとかさ! でも全然そういう感じにならなくて!」
「そんなことしてたんですか!? あ、危ないところだったわ……素直に告白して良かった……」
「がーん!? 色仕掛けとかなく告白……」
「口でがーんって言う人を初めて見たわね……」
……よく分からないがアイラさんは俺を好きだったらしい。そしてあれはアプローチだったのか……いや、酔うと距離が近いなとは思っていたけど、はっきりと言われたことはないからなあ。
「ラッヘさん、真面目だからハッキリ言った方がいいと思ったのよね」
「くぅ……なんてことだ……! そうだよ! 真面目だからいいんだよ! 分かってるわねセリカ!」
「うんうん」
……なんかここ、居づらいな……
「しかし諦めきれんな……時にセリカよ」
「なんです?」
「その内、ラッヘを一晩でいいから貸してくれ」
「ぶっ!? なに言ってんだ!?」
「このまま一人というのも嫌だし、かといって町にいるようなチャラいのはお断りだ。でも子は欲しい。せめて子種だけでもくれないか?」
「真顔で言うことか……!」
久しぶりに会って軽い挨拶から武具を作ってもらうだけのはずだったのに、どうしてこんな夜の生活の話になっているんだ……?
もちろんセリカは即答するだろう。そう思っていると――
「ふむ」
「あれ!? おい、セリカなんで悩んでいるんだ!?」
「ちょっと二人で話してきていいですか?」
「あ、ああ……」
セリカの真面目な顔を見て困惑するアイラさん。もしかしてダメもとで聞いたのかもしれないな? そのままセリカに引きずられて一旦小屋の外へ出る。
「どうした? 俺は彼女となにもないぞ」
「それは分かっているって! でも、アイラさんの気持ちもわかるの。それと打算もちょっとあって」
「打算……?」
そこでセリカがいくつかメリットを上げ始める。
まず、固定で家を守ってくれる人間が出来ること。これは王都にある屋敷の件と関わりがあって、彼女をあの屋敷に住まわせるというものだ。
陛下や王妃様に頼んで工房も作る。そうすることで武具の調整もやりやすくなる。
次に子供が出来た時だ。
赤ちゃんを抱いて冒険者ってわけにはいかない。そうなると俺一人で戦いに出ればいいのだが、一緒に戦った方がいいことがあるし、その間子供の面倒を見てもらえるじゃない? と。
……女の子はしたたかであった。怖い。
「ぴゅーい」
「おっと、つい強く抱きしめてしまったな。すまないフォルス」
「ぴゅ」
大丈夫らしい。丈夫な子で良かった。
それはともかく、セリカの話をまとめると武具の修繕もできて、子供の面倒を見てくれそうな女性は自分にとってもありがたいとのこと。
「なんでまた。恋人は一人じゃないのか?」
「うーん……話を聞いていて、逆だったら私も同じことを言いそうだなあって思っちゃったんだよね……」
「あー」
「先に出会ったのはあの人が先でしょ? だからチャンスがこっちに回って来ただけでダメだったかもしれないし」
「あの商人は――」
「あれはダメよ。ラッヘさんのことが好きなんじゃなくてお金が好きだもん」
納得がいく答えが返って来て俺は黙り込む。
で、後は俺次第か。
というかおかしいな……俺は一人でドラゴンを狩って死ぬものだと思っていた。
しかし、フォルスを拾った時からなんか違うなって感じになっているのは間違いない。
それに最近セリカと恋人になったのにすぐに、あ、愛人を持つなど許されるのだろうか……
「……万が一、私が死んじゃってもアイラさんは大丈夫だと思うし……」
「……! おい、馬鹿なことを言うな」
「でもほら、私達って冒険者だし、いつそうなるかわからないじゃない? だからアイラさんならいいかなって。とはいってもまだ少ししか話していないからなんとも言えないけど」
「むう……」
俺が守る、という言葉は伝えられるが不慮の事故で亡くなる冒険者は数多い。
だが、セリカに死なれるようなことがあるなら俺は屋敷に置いて行く。
「あ、置いて行くのは無しだからね? そのために武具を作りにきたんだし」
「……」
セリカの言うことも分かる。
ちなみにアイラさんは俺の一つ下で、親父さんと仕事をしていたんだよな。
その親父さんも2年前に亡くなって一人で鍛冶師をやっている。
だからこそ求婚者が後を絶たないのだ。
さてどうする……?
そこで俺の取った選択は――
中へ入るとセリカが感嘆の声を上げる。
「ふわぁ、中は豪華ですね……!」
「フフ、あたしが作ったのよ。こういうのは自分で作った方が理想の部屋ができるからね」
「拘りがあるって聞いてますから納得しますね」
「ありがと。ま、座ってよ」
セリカが褒めて気を良くしたアイラが見事なソファに座るよう促してきた。セリカと並んで座り、フォルスがポケットに逃げ込んだところでアイラが口火を切った。
「……そ、それで二人は、その……恋人、なのか……?」
顔を赤くして咳ばらいをしつつ俺達をチラチラと見てくる。いつもはもう少し豪快なのだが、どうしたことか。そう思っているとセリカが笑顔で答えた。
「はい! 私から告白して先日から付き合ってます!」
「ごふぁ!?」
「アイラさん……!?」
「ぴゅー……!?」
セリカが答えると、アイラさんはダメージを受けながら崩れ落ちた。フォルスもポケットから目だけ出してびっくりしていた。
「どうしたんだ? なにかショックなことでも」
「うーん、私はわかっちゃったけど」
『自分の口からは言えない』と、セリカは困った顔で笑っていた。少し間を置いてからゆらりと身を起こすと、涙目で訴えてきた。
「あたしも……」
「む?」
「あたしもラッヘのことが好きだったのに……!!」
「なに!?」
なんかとんでもないことを言い出したな!? 俺が驚いていると、アイラさんはそのまま続けた。
「あたしもいっぱいアプローチしたんだよ!? 泊まっていってくれとか一緒にお酒を飲んでもたれかかったりとかさ! でも全然そういう感じにならなくて!」
「そんなことしてたんですか!? あ、危ないところだったわ……素直に告白して良かった……」
「がーん!? 色仕掛けとかなく告白……」
「口でがーんって言う人を初めて見たわね……」
……よく分からないがアイラさんは俺を好きだったらしい。そしてあれはアプローチだったのか……いや、酔うと距離が近いなとは思っていたけど、はっきりと言われたことはないからなあ。
「ラッヘさん、真面目だからハッキリ言った方がいいと思ったのよね」
「くぅ……なんてことだ……! そうだよ! 真面目だからいいんだよ! 分かってるわねセリカ!」
「うんうん」
……なんかここ、居づらいな……
「しかし諦めきれんな……時にセリカよ」
「なんです?」
「その内、ラッヘを一晩でいいから貸してくれ」
「ぶっ!? なに言ってんだ!?」
「このまま一人というのも嫌だし、かといって町にいるようなチャラいのはお断りだ。でも子は欲しい。せめて子種だけでもくれないか?」
「真顔で言うことか……!」
久しぶりに会って軽い挨拶から武具を作ってもらうだけのはずだったのに、どうしてこんな夜の生活の話になっているんだ……?
もちろんセリカは即答するだろう。そう思っていると――
「ふむ」
「あれ!? おい、セリカなんで悩んでいるんだ!?」
「ちょっと二人で話してきていいですか?」
「あ、ああ……」
セリカの真面目な顔を見て困惑するアイラさん。もしかしてダメもとで聞いたのかもしれないな? そのままセリカに引きずられて一旦小屋の外へ出る。
「どうした? 俺は彼女となにもないぞ」
「それは分かっているって! でも、アイラさんの気持ちもわかるの。それと打算もちょっとあって」
「打算……?」
そこでセリカがいくつかメリットを上げ始める。
まず、固定で家を守ってくれる人間が出来ること。これは王都にある屋敷の件と関わりがあって、彼女をあの屋敷に住まわせるというものだ。
陛下や王妃様に頼んで工房も作る。そうすることで武具の調整もやりやすくなる。
次に子供が出来た時だ。
赤ちゃんを抱いて冒険者ってわけにはいかない。そうなると俺一人で戦いに出ればいいのだが、一緒に戦った方がいいことがあるし、その間子供の面倒を見てもらえるじゃない? と。
……女の子はしたたかであった。怖い。
「ぴゅーい」
「おっと、つい強く抱きしめてしまったな。すまないフォルス」
「ぴゅ」
大丈夫らしい。丈夫な子で良かった。
それはともかく、セリカの話をまとめると武具の修繕もできて、子供の面倒を見てくれそうな女性は自分にとってもありがたいとのこと。
「なんでまた。恋人は一人じゃないのか?」
「うーん……話を聞いていて、逆だったら私も同じことを言いそうだなあって思っちゃったんだよね……」
「あー」
「先に出会ったのはあの人が先でしょ? だからチャンスがこっちに回って来ただけでダメだったかもしれないし」
「あの商人は――」
「あれはダメよ。ラッヘさんのことが好きなんじゃなくてお金が好きだもん」
納得がいく答えが返って来て俺は黙り込む。
で、後は俺次第か。
というかおかしいな……俺は一人でドラゴンを狩って死ぬものだと思っていた。
しかし、フォルスを拾った時からなんか違うなって感じになっているのは間違いない。
それに最近セリカと恋人になったのにすぐに、あ、愛人を持つなど許されるのだろうか……
「……万が一、私が死んじゃってもアイラさんは大丈夫だと思うし……」
「……! おい、馬鹿なことを言うな」
「でもほら、私達って冒険者だし、いつそうなるかわからないじゃない? だからアイラさんならいいかなって。とはいってもまだ少ししか話していないからなんとも言えないけど」
「むう……」
俺が守る、という言葉は伝えられるが不慮の事故で亡くなる冒険者は数多い。
だが、セリカに死なれるようなことがあるなら俺は屋敷に置いて行く。
「あ、置いて行くのは無しだからね? そのために武具を作りにきたんだし」
「……」
セリカの言うことも分かる。
ちなみにアイラさんは俺の一つ下で、親父さんと仕事をしていたんだよな。
その親父さんも2年前に亡くなって一人で鍛冶師をやっている。
だからこそ求婚者が後を絶たないのだ。
さてどうする……?
そこで俺の取った選択は――
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