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第二百五十一話 もう負ける要素がないというもの

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「ま、まさか……そんな……!?」
【なんてこった……】
【どうしたんだいウルカ君、ゼオラ?】

 何故か屋根の上で腕組みをし、ドヤ顔でマントをはためかせているのはどうやらリンダさんらしい。
 当然だけど、僕とゼオラは姿を見たことが無いため度肝を抜かれた形になる。
 カインさんが話しかけてきたけど、それはフォルドとアニーが言葉を発したことによりスルーされることとなった。

「ステラの母ちゃんだ」
「こんにちはー!」
「はい、こんにちは、フォルド君にアニーちゃん」
「おや!?」

 普通に二人が挨拶しているのを見て、僕は驚愕する。というのも随分親しげだからだ。

「二人は知っていたの?」
「え? よく串焼きを買いに来るぞ。酒場にも行くし。なあ」
「うんー!」

 アニーがリンダさんに抱き着きながら、そうだよと答えてくれた。
 というか僕が領地に引っ越してからよく訪れるようになったとか。

「今まで全然会えなかったのに……」
「ふふ、まあ、たまたまという部分が大きいけど、今、この時まで会うつもりも無かったのよ」
「え?」
「……」

 どういうことだ?
 わざと会わなかった。そう言っているみたいだけど、理由がわからない。
 そこでもう一度カインさんが口を開く。

【す、すまない。今は大事な話の最中なのです、知り合いのようですし後で――】
「いえ。あなたともゼオラさんとも関係がある話になるわ。コトルクス……あれを倒すためにね」
【……!?】

 リンダさんの言葉で僕達は驚愕の表情になる。
 そのまま続けて、ステラが僕の手をさらにぎゅっと握り、話し出した。

「……コトルクスと戦ったのはゼオラさん達4人と途中で乱入してきた魔人だった。そしていつの間にか消えた魔人とは、転生前のわたしよ」
「は……?」
【なんだと……!?】
「どういうことー?」
「転生……?」

 ステラに注目が集まりどよめきが起こる。そこで彼女の口から経緯が話し出される。

「ウルカ君とゼオラ、そしてカインさんは知っているけどわたしはコトルクスに奇襲をかけて傷を与えた。だけど力及ばす身体をかみ砕かれてしまったの」
【……ああ、そこは覚えている。というか思い出した】
【だけど、気づいたらそこには居なかった。いったいどうなっていたんだい?】
「それは――」

 と、ステラは僕達も知らないことを言う。
 もう少しで胴体が噛み千切られるというレベルの傷を負った際、万が一のためにと持っていた転移の魔法を込めた宝石を砕いたのだそう。
 すると本来行くべき場所ではないところへ行ってしまったとのこと。

「……結局、その土地で死んでしまいあの世へ行ったわ。折角、異世界の力を手に入れていたのに」
「異世界?」
「なんでもない。その後、わたしは冥府の女神様に転生を促されチャンスをもらった」
「そんな……馬鹿な話が……」

 ラースさんが珍しく冷や汗をかいて呻くように呟いていた。
 生まれ変わりで記憶があるなんて思う方が難しいだろう。僕だって最初は驚いた。
 
「ステラが転生者だったとは……あ、というか現地に転生したんだ」
「そう。わたしの望みはコトルクスの消滅だった。だからあの時点で最強の存在の近くに生まれ変わりたいと願った」
「そしたら私の子だったというわけ」
「もしかして最初から……」
「「知ってたし、教えてた」」

 この親子……!
 ということはステラは最初からコトルクスを知っていたということか。

「あの池に居ることは分かっていた。だけど、どうしてもゼオラの封印を解く方法が見つからなかったの」
「それでその方法を各地を探していたのよ」
【ふむ、コトルクスを倒すためにか。凄いな】

 家に居ないというのはそう言う事情があったらしい。ボルカノが感嘆とした声を上げていると、リンダさんが笑う。

「そうね。話を聞く限り最悪の魔物だから、対処はしないといけないかと考えていたわ。分身体は概ね場所を特定したけど、やっぱり封印が解けないと倒せないのよね」
【倒す……と言ってもあれはそう簡単に勝てるものでは……】
【あー、いや。多分終わらせられるかもしれねえな】
【え?】
「そうだね。リンダさんと母さんが居たら多分……」

 余裕だと思う。
 人間四人とボルカノが居て、向こうが有利だった。僕が入ることによってさらに楽になっていた。
 だけどリンダさんという人間兵器と母さんという超級種族が襲い掛かったら、ひとたまりもないと思う。
 考えただけでもコトルクスが可哀想だなって感じてしまう。

【そうだな。もう見つけているなら大丈夫だろう】
「うん。ボルカノも居るしね。あ、でもそれならステラはアニー達を連れて来たんだい?」
「あー、それは私が頼んだの。ちょっとして欲しいことがあってね」
「俺達にか?」
「うん。今、ゼオラさんとウルカ君がくっついた状態よね。それと同じことをみんなにやってあげようかなって」
「どういうことなのー?」

 アニーが可愛く唇に指を当てて首を傾げていた。僕も気になるところなので答えを待っていると――

「えっと、そこの剣士をフォルド君に憑依させて、ディーネさんをアニーちゃんに憑依させようかなって」
「ええ!? そ、そんなことをして大丈夫なの!?」

 ――リンダさんはウインクをしながらとんでもないことを口にした……!?
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