218 / 245
第二百十七話 英雄と呼ばれる存在かもしれないというもの
しおりを挟む
【オ……】
「反応があった……!」
僕がタッチしたリビングアーマーが雷に打たれたように大きく震えた。
そこで一瞬なにか嗚咽のようなものが聞こえて手ごたえを感じる。
【む……!】
「っと!」
そこでリビングアーマーが急に振り返って僕に剣を振るう。
それを一足で距離を詰めたオオグレさんが受け止めてくれた。
【オオ……】
「いけそうだけど一回じゃダメか……!」
「ウルカ君、全部の防具と剣にタッチした方がいいかも」
「……! そうか!」
「あ、ウルカちゃん!
そのまま僕は母さんの手からするりと抜けて剣を持っていない左の小手にタッチする。
【エオ……!】
「『エ』が増えた!」
「そういう問題!? とりゃあ!」
そのまま左足をタッチする。
今度は『アエオ』となんか口にしていた。これはいけるかと、オオグレさんが抑えてくれている内に右小手、足もタッチしておいた。
そして――
【アオエイウ……!? ハッ、私は一体……!】
「しゃべったー!」
全部の部位を触った瞬間、ぼやけていた部分がくっきりとなりイケメンのお兄さんの顔が出てきた。
そこで目の前に居るオオグレさんを見て口を開いた。
【うおお、スケルトン!? いつの間にこれほどの接近を……!?】
【お主が暴れ始めたから止めたでござる。もう大丈夫でござるか?】
【スケルトンが喋った……! いや、それよりもここはどこだ……?】
剣を降ろしてから周囲を見渡しながらそう口にする。
危険は無くなったかとオオグレさんが刀を納めると、母さんが彼に話しかけた。
「ここはワイゲイル王国のウルカちゃん領よ。あなた、ゴーストみたいだけど名前とか言える?」
【む? 名前……私はスレイブ、だったと思う。ゴースト……うわあ、す、透けている!?】
「面白いゴーストさんなの」
「もう大丈夫そうだし近くに行ってみましょう」
【……】
危険が無くなったと直感したステラがフォルド達を連れて近くまで来た。するとゼオラがステラを見て厳しい顔をしていた。
「どうしたのゼオラ?」
【え? あ、ああ、なんでもないぞ】
【……!? お、お前はゼオラ……ゼオラじゃないか!】
「え!? お兄さんゼオラを知っているの!?」
そこでスレイブさんが僕とゼオラを見てとんでもないことを口にした。
驚いた僕が尋ねると、彼はゼオラの前に慌ててやってきた。
【あ? 誰だお前? ゴーストに知り合いは居ないぞ】
【君もだよね!? ああ、すみませんそこの女性。今はいつなんですか?】
「確かゼオラが生きていたのが五百年前だって言ってたから、五百年後の世界よ」
「雑だなウルカの母ちゃん!?」
フォルドがツッコミ入れていた。僕もそう思う。だけどスレイブさんは母さんの言葉を聞いてため息を吐いていた。
【五百年……そりゃゴーストにもなるか。ゼオラ、覚えていないのか?】
【んー、悪い。あたしは五年ほど前にここに居るウルカと出会ったんだけど、その前の記憶は曖昧でな。この前図書館であたしに関する書物を読んだけど詳細はよくわからなかったな。大魔法使い様ってだけで!】
がははと笑うゼオラにスレイブさんが一瞬、寂しそうな顔をした。けど、すぐにフッと笑って言う。
【そうか、覚えていないか。なら仕方ないな! さて、改めて自己紹介をするよ。私はスレイブ。かつてゼオラと共にパーティを組んでいた者だ】
「僕はウルカ。ゼオラに憑りつかれているヴァンパイアハーフだよ」
【え!?】
「アニーだよー!」
「フォルドだ! スレイブってどっかで聞いたような……」
まずは子供たちが自己紹介をする。ゼオラに憑りつかれていると言ったらいい顔をしてくれた。
「私はウルカの母でヴァンパイアロードのクラウディア。あなた達が活動をしなくなった後に産まれたって感じかしら?」
【よろしくお願いします。五百歳以上……凄いな】
「バスレと申します」
【あ、はい】
【オオグレと申す。同じアンデッド、よろしく頼むでござるよ】
【ええ。いい朦朧と手合わせをしましたが、いい腕でした】
それぞれ頭を下げて自己紹介を終えた後、スレイブさんが周囲をもう一度見渡してから口を開いた。
【それにしても意識が無かったが五百年か……驚いたな】
「スレイブさんはどうしてここに居たのか覚えている?」
【それは……いや、それがその部分は曖昧でね。ともあれありがとう。あのままだと他の人間に危害を加えていたかもしれない。ウルカ君が私をタッチしていたような気がするけど】
一瞬、ゼオラを見てなにかを考えたな……? ゼオラに知られたくないことでもあるのだろうか? そう思ったけどここは話を合わせておくことにした。
「うん。僕は遺体などに触れるとアンデッドにしてしまう力があるみたいなんだ。オオグレさんもそうだよ」
【で、ござる】
【それは凄い能力だな……ヴァンパイアは同じ眷属にできるが、あくまでも生きている人間だけ。リッチーといえばそうだが、ヴァンパイアハーフなんだよね?】
神妙な顔で僕に尋ねてきた。
「そうだよ」
「とりあえずここでお話しても仕方がないわね。お散歩は終了して一旦戻りましょうか」
「うんー。ハリヤー、いい?」
僕が話をしようとしたところで母さんがそう切り出した。アニーがハリヤーに尋ねると『それがいいでしょう』といった感じで鼻を鳴らし、シルヴァとフォルテも賛同していた。
【その馬……いや、なんでもない。私も一緒に行っていいだろうか? なにせこの身体だ、行くところも無いので】
「ゼオラの仲間ならもちろんだよ!」
ということでスレイブさんも領地へ来ることになった。その彼は僕の頭の上で浮かぶゼオラをチラチラと見ている。
なにか気になることでもあるのかな? そんなことを考えながら領地へと歩き出した。
「反応があった……!」
僕がタッチしたリビングアーマーが雷に打たれたように大きく震えた。
そこで一瞬なにか嗚咽のようなものが聞こえて手ごたえを感じる。
【む……!】
「っと!」
そこでリビングアーマーが急に振り返って僕に剣を振るう。
それを一足で距離を詰めたオオグレさんが受け止めてくれた。
【オオ……】
「いけそうだけど一回じゃダメか……!」
「ウルカ君、全部の防具と剣にタッチした方がいいかも」
「……! そうか!」
「あ、ウルカちゃん!
そのまま僕は母さんの手からするりと抜けて剣を持っていない左の小手にタッチする。
【エオ……!】
「『エ』が増えた!」
「そういう問題!? とりゃあ!」
そのまま左足をタッチする。
今度は『アエオ』となんか口にしていた。これはいけるかと、オオグレさんが抑えてくれている内に右小手、足もタッチしておいた。
そして――
【アオエイウ……!? ハッ、私は一体……!】
「しゃべったー!」
全部の部位を触った瞬間、ぼやけていた部分がくっきりとなりイケメンのお兄さんの顔が出てきた。
そこで目の前に居るオオグレさんを見て口を開いた。
【うおお、スケルトン!? いつの間にこれほどの接近を……!?】
【お主が暴れ始めたから止めたでござる。もう大丈夫でござるか?】
【スケルトンが喋った……! いや、それよりもここはどこだ……?】
剣を降ろしてから周囲を見渡しながらそう口にする。
危険は無くなったかとオオグレさんが刀を納めると、母さんが彼に話しかけた。
「ここはワイゲイル王国のウルカちゃん領よ。あなた、ゴーストみたいだけど名前とか言える?」
【む? 名前……私はスレイブ、だったと思う。ゴースト……うわあ、す、透けている!?】
「面白いゴーストさんなの」
「もう大丈夫そうだし近くに行ってみましょう」
【……】
危険が無くなったと直感したステラがフォルド達を連れて近くまで来た。するとゼオラがステラを見て厳しい顔をしていた。
「どうしたのゼオラ?」
【え? あ、ああ、なんでもないぞ】
【……!? お、お前はゼオラ……ゼオラじゃないか!】
「え!? お兄さんゼオラを知っているの!?」
そこでスレイブさんが僕とゼオラを見てとんでもないことを口にした。
驚いた僕が尋ねると、彼はゼオラの前に慌ててやってきた。
【あ? 誰だお前? ゴーストに知り合いは居ないぞ】
【君もだよね!? ああ、すみませんそこの女性。今はいつなんですか?】
「確かゼオラが生きていたのが五百年前だって言ってたから、五百年後の世界よ」
「雑だなウルカの母ちゃん!?」
フォルドがツッコミ入れていた。僕もそう思う。だけどスレイブさんは母さんの言葉を聞いてため息を吐いていた。
【五百年……そりゃゴーストにもなるか。ゼオラ、覚えていないのか?】
【んー、悪い。あたしは五年ほど前にここに居るウルカと出会ったんだけど、その前の記憶は曖昧でな。この前図書館であたしに関する書物を読んだけど詳細はよくわからなかったな。大魔法使い様ってだけで!】
がははと笑うゼオラにスレイブさんが一瞬、寂しそうな顔をした。けど、すぐにフッと笑って言う。
【そうか、覚えていないか。なら仕方ないな! さて、改めて自己紹介をするよ。私はスレイブ。かつてゼオラと共にパーティを組んでいた者だ】
「僕はウルカ。ゼオラに憑りつかれているヴァンパイアハーフだよ」
【え!?】
「アニーだよー!」
「フォルドだ! スレイブってどっかで聞いたような……」
まずは子供たちが自己紹介をする。ゼオラに憑りつかれていると言ったらいい顔をしてくれた。
「私はウルカの母でヴァンパイアロードのクラウディア。あなた達が活動をしなくなった後に産まれたって感じかしら?」
【よろしくお願いします。五百歳以上……凄いな】
「バスレと申します」
【あ、はい】
【オオグレと申す。同じアンデッド、よろしく頼むでござるよ】
【ええ。いい朦朧と手合わせをしましたが、いい腕でした】
それぞれ頭を下げて自己紹介を終えた後、スレイブさんが周囲をもう一度見渡してから口を開いた。
【それにしても意識が無かったが五百年か……驚いたな】
「スレイブさんはどうしてここに居たのか覚えている?」
【それは……いや、それがその部分は曖昧でね。ともあれありがとう。あのままだと他の人間に危害を加えていたかもしれない。ウルカ君が私をタッチしていたような気がするけど】
一瞬、ゼオラを見てなにかを考えたな……? ゼオラに知られたくないことでもあるのだろうか? そう思ったけどここは話を合わせておくことにした。
「うん。僕は遺体などに触れるとアンデッドにしてしまう力があるみたいなんだ。オオグレさんもそうだよ」
【で、ござる】
【それは凄い能力だな……ヴァンパイアは同じ眷属にできるが、あくまでも生きている人間だけ。リッチーといえばそうだが、ヴァンパイアハーフなんだよね?】
神妙な顔で僕に尋ねてきた。
「そうだよ」
「とりあえずここでお話しても仕方がないわね。お散歩は終了して一旦戻りましょうか」
「うんー。ハリヤー、いい?」
僕が話をしようとしたところで母さんがそう切り出した。アニーがハリヤーに尋ねると『それがいいでしょう』といった感じで鼻を鳴らし、シルヴァとフォルテも賛同していた。
【その馬……いや、なんでもない。私も一緒に行っていいだろうか? なにせこの身体だ、行くところも無いので】
「ゼオラの仲間ならもちろんだよ!」
ということでスレイブさんも領地へ来ることになった。その彼は僕の頭の上で浮かぶゼオラをチラチラと見ている。
なにか気になることでもあるのかな? そんなことを考えながら領地へと歩き出した。
1
お気に入りに追加
999
あなたにおすすめの小説
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね
いくみ
ファンタジー
パトリシアは卒業パーティーで婚約者の王子から婚約破棄を言い渡される。
しかし、これは、本人が待ちに待った結果である。さぁこれからどうやって私の13年を返して貰いましょうか。
覚悟して下さいませ王子様!
転生者嘗めないで下さいね。
追記
すみません短編予定でしたが、長くなりそうなので長編に変更させて頂きます。
モフモフも、追加させて頂きます。
よろしくお願いいたします。
カクヨム様でも連載を始めました。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる