Rich&Lich ~不死の王になれなかった僕は『英霊使役』と『金運』でスローライフを満喫する~

八神 凪

文字の大きさ
上 下
204 / 245

第二百三話 ゼオラの驚きというもの

しおりを挟む
「ふあ……」
「おはようございますウルカ様」
「あ、エマリーさんおはよー」

 翌日。
 いつも通りの時間に起きた僕は食堂でエマリーさんに声をかけられた。
 昨日はアニーも含めてみんなを家に送り届けた後、どっと疲れて眠りについたのだ。
 意外だったのはアニーが泊っていくと言わなかったことだろう。

「一緒に居すぎると寂しくなっちゃうから、ステラと兄ちゃんと帰るの!」

 彼女曰くそういうことのようである。まだ子供っぽいなと思っていたけど、ちゃんと成長していることが見受けられた。
 後は夜の話でフォルドは野球に興味を示していて、ステラはひとまず領地へ行きたいと言っていたかな。
 三人が来た時にがっかりさせないよういっそう領地を発展させようと思う。

「すぐ出発するのかい?」
「うん。僕がここに居るのはよくないしね。兄ちゃん達にも会いたかったけど、また会えるし」
【とりあえず母ちゃんに連れて来てもらえばいいじゃねえか】
「あの子達もお仕事があるからそうはいかないわよ」
【まあ、それもそうかあ】

 浮かぶゼオラに母さんが告げる。父さんもそうだけど、仕事をしている人を遊びに連れて行くのはやはり難しい。学校に通っている二人でもそうだしね。
 
「……向こうは楽しいかい?」
「うん! バスレさんも居るし、みんないい人ばかりだから苦労はしていないかな」
「なら当日は挨拶をしないといけないわね……!」
「あんまり張り切らなくていいからね!?」

 母さんが鼻息を荒くしてフォークを握りつぶしていたので、僕はびっくりして諫めた。

「まあ、普通にしてもらえるといいかな。どちらかと言えばフォルド達に見てもらいたい感じだし」
「ううん、残念……」
「ははは、母さんはウルカに恥をかかせたくないのさ」

 父さんが笑いながらそう言う。そういう気持ちはわかるけどね。
 そこでふと思い出したことを父さんに尋ねてみることにした。

「そういえば今度キールソン侯爵様のところに挨拶に行こうと思うんだ」
「おお、そういえばキールソン侯爵は近くの領主だったな」
「らしいね。やっぱりあの人って珍しい道具が好きなのかな?」

 僕が最後に残ったトマトを口に入れながら聞くと、小さく頷きながら微笑んでいた。

「だな。ゲーミングチェアは今でも家宝として置いているらしい。他になにか作ればすぐに知らせてくれとも言っていたな」
「なるほど」

 やっぱりそういう人なんだな。なら僕の考えたものなら喜んでもらえそうだと確信した。

「ごちそうさまでした! それじゃ僕は戻るね。騎士さんのお家を作らないといけないんだ」
「うん。わかったよ。ウルカ」
「ん?」
「無理はするんじゃないぞ?」

 父さんが席から立って僕の前に立って穏やかに笑いながら頭を撫でてくれた。

「うん、ありがとう父さん! それじゃいってきまーす!」
「またねウルカちゃん♪」
「うん!」

 母さんは小さく手を振りながら見送ってくれた。すぐに会いに来るからそれほど構って来ないのだろう。
 ……国王様には母さんが行かないように言っていたけど、罰をすると言っても止められない。手段がないのであの言葉は形骸化している。

「一応、近くの町っていうのが逃げの口実になるかな? それじゃ戻るとしますか」
【あんまり使うなよ?】
「そういえばゼオラって転移魔法にはうるさいよね」
【……なんか嫌な感じがするんだよ】
「そっか。あ、そうだ。ゼオラに一つ聞いてみたいんだけど魔法を道具に付与することができるじゃない?」
【ん? そうだな】

 庭に出てジェットコースターに荷物を乗せながら聞くと、逆さになって僕の顔の前に現れた。

「なら、転移魔法をなにかに付与してAからBへ行けるようにとかできないかな?」
【……!?】

 僕がそういうとゼオラが目を丸くして驚いていた。なにかおかしなことを言ったかなと思っていると彼女が口を開く。

【理論上、できなくはない……と、あたしは思うかな】
「お、そう? でもめちゃくちゃ驚いてなかった?」
【……その歳でそこに行きつくのはすげえなって思ったんだよ。転移魔法自体、使える人間は限られているだろ?】
「うん」
【だから『自分が使えればいい』し、困らない。一緒に移動したかったらそいつが使えばいいしな】

 なんとなくわかるようなわからないような……?

【これは思考がそうなりにくいからだろ思う。転移魔法は珍しい。だからその人にしか使えないという考えで止まってしまうんだ】
「そうかなあ。ラースさんなら考えそうだけど……」
【実際にそういう状況、例えばお前がフォルド達を自由に領地へ招き入れたいというようなことがなければそうはならない。……ラースの場合は戦争に使われないために『言わない』のかもしれないけどな】
「あー」

 ゼオラが片目を瞑り、人差し指を立ててから説明してくれた。話としては面白いかな? 現代だと承認欲求で下手をしそうな人が多いから秘匿していると考えたら実はもっと使える人がいたりして、など。

【ま、屋敷に設置して行き来できるのはいいと思うけどな。試してみるか! あたしもなんかやった方が記憶が戻るかもしれねえし】
「はは、あの本を見てちょっと気になった?」

 僕がそういうと『まあな』と照れくさそうに鼻の頭を掻いていた。
 さて、それじゃ一旦領地へ帰りますか!
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

転移術士の成り上がり

名無し
ファンタジー
 ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...