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第二百三話 ゼオラの驚きというもの
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「ふあ……」
「おはようございますウルカ様」
「あ、エマリーさんおはよー」
翌日。
いつも通りの時間に起きた僕は食堂でエマリーさんに声をかけられた。
昨日はアニーも含めてみんなを家に送り届けた後、どっと疲れて眠りについたのだ。
意外だったのはアニーが泊っていくと言わなかったことだろう。
「一緒に居すぎると寂しくなっちゃうから、ステラと兄ちゃんと帰るの!」
彼女曰くそういうことのようである。まだ子供っぽいなと思っていたけど、ちゃんと成長していることが見受けられた。
後は夜の話でフォルドは野球に興味を示していて、ステラはひとまず領地へ行きたいと言っていたかな。
三人が来た時にがっかりさせないよういっそう領地を発展させようと思う。
「すぐ出発するのかい?」
「うん。僕がここに居るのはよくないしね。兄ちゃん達にも会いたかったけど、また会えるし」
【とりあえず母ちゃんに連れて来てもらえばいいじゃねえか】
「あの子達もお仕事があるからそうはいかないわよ」
【まあ、それもそうかあ】
浮かぶゼオラに母さんが告げる。父さんもそうだけど、仕事をしている人を遊びに連れて行くのはやはり難しい。学校に通っている二人でもそうだしね。
「……向こうは楽しいかい?」
「うん! バスレさんも居るし、みんないい人ばかりだから苦労はしていないかな」
「なら当日は挨拶をしないといけないわね……!」
「あんまり張り切らなくていいからね!?」
母さんが鼻息を荒くしてフォークを握りつぶしていたので、僕はびっくりして諫めた。
「まあ、普通にしてもらえるといいかな。どちらかと言えばフォルド達に見てもらいたい感じだし」
「ううん、残念……」
「ははは、母さんはウルカに恥をかかせたくないのさ」
父さんが笑いながらそう言う。そういう気持ちはわかるけどね。
そこでふと思い出したことを父さんに尋ねてみることにした。
「そういえば今度キールソン侯爵様のところに挨拶に行こうと思うんだ」
「おお、そういえばキールソン侯爵は近くの領主だったな」
「らしいね。やっぱりあの人って珍しい道具が好きなのかな?」
僕が最後に残ったトマトを口に入れながら聞くと、小さく頷きながら微笑んでいた。
「だな。ゲーミングチェアは今でも家宝として置いているらしい。他になにか作ればすぐに知らせてくれとも言っていたな」
「なるほど」
やっぱりそういう人なんだな。なら僕の考えたものなら喜んでもらえそうだと確信した。
「ごちそうさまでした! それじゃ僕は戻るね。騎士さんのお家を作らないといけないんだ」
「うん。わかったよ。ウルカ」
「ん?」
「無理はするんじゃないぞ?」
父さんが席から立って僕の前に立って穏やかに笑いながら頭を撫でてくれた。
「うん、ありがとう父さん! それじゃいってきまーす!」
「またねウルカちゃん♪」
「うん!」
母さんは小さく手を振りながら見送ってくれた。すぐに会いに来るからそれほど構って来ないのだろう。
……国王様には母さんが行かないように言っていたけど、罰をすると言っても止められない。手段がないのであの言葉は形骸化している。
「一応、近くの町っていうのが逃げの口実になるかな? それじゃ戻るとしますか」
【あんまり使うなよ?】
「そういえばゼオラって転移魔法にはうるさいよね」
【……なんか嫌な感じがするんだよ】
「そっか。あ、そうだ。ゼオラに一つ聞いてみたいんだけど魔法を道具に付与することができるじゃない?」
【ん? そうだな】
庭に出てジェットコースターに荷物を乗せながら聞くと、逆さになって僕の顔の前に現れた。
「なら、転移魔法をなにかに付与してAからBへ行けるようにとかできないかな?」
【……!?】
僕がそういうとゼオラが目を丸くして驚いていた。なにかおかしなことを言ったかなと思っていると彼女が口を開く。
【理論上、できなくはない……と、あたしは思うかな】
「お、そう? でもめちゃくちゃ驚いてなかった?」
【……その歳でそこに行きつくのはすげえなって思ったんだよ。転移魔法自体、使える人間は限られているだろ?】
「うん」
【だから『自分が使えればいい』し、困らない。一緒に移動したかったらそいつが使えばいいしな】
なんとなくわかるようなわからないような……?
【これは思考がそうなりにくいからだろ思う。転移魔法は珍しい。だからその人にしか使えないという考えで止まってしまうんだ】
「そうかなあ。ラースさんなら考えそうだけど……」
【実際にそういう状況、例えばお前がフォルド達を自由に領地へ招き入れたいというようなことがなければそうはならない。……ラースの場合は戦争に使われないために『言わない』のかもしれないけどな】
「あー」
ゼオラが片目を瞑り、人差し指を立ててから説明してくれた。話としては面白いかな? 現代だと承認欲求で下手をしそうな人が多いから秘匿していると考えたら実はもっと使える人がいたりして、など。
【ま、屋敷に設置して行き来できるのはいいと思うけどな。試してみるか! あたしもなんかやった方が記憶が戻るかもしれねえし】
「はは、あの本を見てちょっと気になった?」
僕がそういうと『まあな』と照れくさそうに鼻の頭を掻いていた。
さて、それじゃ一旦領地へ帰りますか!
「おはようございますウルカ様」
「あ、エマリーさんおはよー」
翌日。
いつも通りの時間に起きた僕は食堂でエマリーさんに声をかけられた。
昨日はアニーも含めてみんなを家に送り届けた後、どっと疲れて眠りについたのだ。
意外だったのはアニーが泊っていくと言わなかったことだろう。
「一緒に居すぎると寂しくなっちゃうから、ステラと兄ちゃんと帰るの!」
彼女曰くそういうことのようである。まだ子供っぽいなと思っていたけど、ちゃんと成長していることが見受けられた。
後は夜の話でフォルドは野球に興味を示していて、ステラはひとまず領地へ行きたいと言っていたかな。
三人が来た時にがっかりさせないよういっそう領地を発展させようと思う。
「すぐ出発するのかい?」
「うん。僕がここに居るのはよくないしね。兄ちゃん達にも会いたかったけど、また会えるし」
【とりあえず母ちゃんに連れて来てもらえばいいじゃねえか】
「あの子達もお仕事があるからそうはいかないわよ」
【まあ、それもそうかあ】
浮かぶゼオラに母さんが告げる。父さんもそうだけど、仕事をしている人を遊びに連れて行くのはやはり難しい。学校に通っている二人でもそうだしね。
「……向こうは楽しいかい?」
「うん! バスレさんも居るし、みんないい人ばかりだから苦労はしていないかな」
「なら当日は挨拶をしないといけないわね……!」
「あんまり張り切らなくていいからね!?」
母さんが鼻息を荒くしてフォークを握りつぶしていたので、僕はびっくりして諫めた。
「まあ、普通にしてもらえるといいかな。どちらかと言えばフォルド達に見てもらいたい感じだし」
「ううん、残念……」
「ははは、母さんはウルカに恥をかかせたくないのさ」
父さんが笑いながらそう言う。そういう気持ちはわかるけどね。
そこでふと思い出したことを父さんに尋ねてみることにした。
「そういえば今度キールソン侯爵様のところに挨拶に行こうと思うんだ」
「おお、そういえばキールソン侯爵は近くの領主だったな」
「らしいね。やっぱりあの人って珍しい道具が好きなのかな?」
僕が最後に残ったトマトを口に入れながら聞くと、小さく頷きながら微笑んでいた。
「だな。ゲーミングチェアは今でも家宝として置いているらしい。他になにか作ればすぐに知らせてくれとも言っていたな」
「なるほど」
やっぱりそういう人なんだな。なら僕の考えたものなら喜んでもらえそうだと確信した。
「ごちそうさまでした! それじゃ僕は戻るね。騎士さんのお家を作らないといけないんだ」
「うん。わかったよ。ウルカ」
「ん?」
「無理はするんじゃないぞ?」
父さんが席から立って僕の前に立って穏やかに笑いながら頭を撫でてくれた。
「うん、ありがとう父さん! それじゃいってきまーす!」
「またねウルカちゃん♪」
「うん!」
母さんは小さく手を振りながら見送ってくれた。すぐに会いに来るからそれほど構って来ないのだろう。
……国王様には母さんが行かないように言っていたけど、罰をすると言っても止められない。手段がないのであの言葉は形骸化している。
「一応、近くの町っていうのが逃げの口実になるかな? それじゃ戻るとしますか」
【あんまり使うなよ?】
「そういえばゼオラって転移魔法にはうるさいよね」
【……なんか嫌な感じがするんだよ】
「そっか。あ、そうだ。ゼオラに一つ聞いてみたいんだけど魔法を道具に付与することができるじゃない?」
【ん? そうだな】
庭に出てジェットコースターに荷物を乗せながら聞くと、逆さになって僕の顔の前に現れた。
「なら、転移魔法をなにかに付与してAからBへ行けるようにとかできないかな?」
【……!?】
僕がそういうとゼオラが目を丸くして驚いていた。なにかおかしなことを言ったかなと思っていると彼女が口を開く。
【理論上、できなくはない……と、あたしは思うかな】
「お、そう? でもめちゃくちゃ驚いてなかった?」
【……その歳でそこに行きつくのはすげえなって思ったんだよ。転移魔法自体、使える人間は限られているだろ?】
「うん」
【だから『自分が使えればいい』し、困らない。一緒に移動したかったらそいつが使えばいいしな】
なんとなくわかるようなわからないような……?
【これは思考がそうなりにくいからだろ思う。転移魔法は珍しい。だからその人にしか使えないという考えで止まってしまうんだ】
「そうかなあ。ラースさんなら考えそうだけど……」
【実際にそういう状況、例えばお前がフォルド達を自由に領地へ招き入れたいというようなことがなければそうはならない。……ラースの場合は戦争に使われないために『言わない』のかもしれないけどな】
「あー」
ゼオラが片目を瞑り、人差し指を立ててから説明してくれた。話としては面白いかな? 現代だと承認欲求で下手をしそうな人が多いから秘匿していると考えたら実はもっと使える人がいたりして、など。
【ま、屋敷に設置して行き来できるのはいいと思うけどな。試してみるか! あたしもなんかやった方が記憶が戻るかもしれねえし】
「はは、あの本を見てちょっと気になった?」
僕がそういうと『まあな』と照れくさそうに鼻の頭を掻いていた。
さて、それじゃ一旦領地へ帰りますか!
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