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第百五十七話 挨拶は丁重にしたいというもの

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「うをををを……! また最後かよ……!? 家も最後だし、俺はなんでこんなにじゃんけんが弱いんだっ!」
「日頃の行いってやつじゃないか? お先にー」
【いい湯でござるぞ】
「まだ入っているだと……!?」

 とまあ、概ね銭湯は好調だった。
 泥だらけの騎士さん達がイモ洗い状態と化しても浄化の魔石でしばらくすると綺麗になるから最後の方でも文句はでない。
 魔力が切れると効果が無くなるのでそこだけ気をつければ温泉は問題ないかな?
 一通り騎士さん達がお風呂に入り、今日のところは店じまいとして僕達は脱衣所に集まっていた。

【観察した結果、洗い場の掃除は特に必要でござるな。屋外仕事が多いのですぐ洗い場が汚れるでござる。手早く掃除をしておいたでござるが、定期的に掃除をせねばいかんと思うでござる】
「なら騎士達にローテーションで掃除をしてもらうとしよう。それで問題ないかい?」
「騎士さん達がいいなら僕は大丈夫だよ。でもいいのかな?」
「まあ、五人ずつ毎日やってもらうようにする。自分達が使う場所だから問題ない。城の訓練場を掃除するより楽だよ」
【女湯は――】
「バスレさん達でいいんじゃない? 男の人を入れない方がいいと思う」
【ですよねでござる】
「わたし達がしますよぅ」

 そっぽを向いてすぐに肯定するオオグレさん。お風呂掃除をしたかったのかな?
 まあ、女性騎士も多いしベルナさんの言う通り女性がやればそこは問題ないと思う。
 ガイズさん達みたいに移住者が増えれば雇うことも考慮したい。
 銭湯は無料で開放し、税金で賄う感じするかもね。
 そうそう税金に関しての通達は一か月経ったころに提示する予定だ。定例会は設けるようにしないといけない。

 話を戻して……。
 銭湯は問題なさそうなので続投し、今日のところは騎士さん達が持ち回りで清掃することに決定した。ラースさんが組んで明日からスタートするとのこと。

「他になにかあるかな? できれば七日に一回は集まって話し合いをしたいね」
「まだそれほど日数が経っていないし、騎士ばかりで構成されているからなあ」
「住民が増えるまではあまり考えるのも難しいかと。とりあえず近隣の村に挨拶とかもしないといけませんね」
「地図の範囲で領地になるところは声をかけないといけませんねぇ。後はそこを今まで見てくれていた領主様とも会談が必要よぅ」
「そうだね。インフラが整えば『ここは村です』と言えるし今から周辺も見ますにできるんだけど……」

 そこはまだまだ先の話だ。まだ前の領主という人に見てもらわなければ立ち行かないのが現状だ。楽しいけどそれだけではダメなのである。

 家屋は頑張れば作れるけど、お店やギルド、外壁などやることはたくさんあるしね。

「そういえば元の領主様ってどんな人なんだろう」
「この辺はキールソン侯爵様だね」
「ん?」

 どこかで聞いたような名前だ……? どこだっけ?

「あ!」
「どうしましたウルカ様?」
「キールソン侯爵様って一番最初にゲーミングチェアを売り出した時真っ先に買った人だよ!」
「そうなのですか?」
「そういえばバスレさんは居なかったね!? あの時のメンバーは……僕以外居ないや」

 父さんや兄ちゃんズ、それと母さん達とだけ一緒で、あの場にはステラもアニーもジェイドも居なかったんだよね。

「わんわん!?」
「こけー!」
「にゃー」
「そういえば一緒に居たっけ」

 シルヴァ達はおめかししてあの場に居たような気がする。けど、まあ説明できないしそこはどっちでもいいか。

「あの座り心地のいい椅子か。結構前に売り出したんだよな」
「そうそう。五年前だよ。どうしても売りたいって父さんが言うから。お高めに設定したけど売れたんだよね。でもそうかあ、あの人はいい人そうだったから話はしやすそう」
「穏やかな人なのは間違いないですねぇ。好奇心が強いので、面白いことにはすぐ首を突っ込んでいきますけど」

 確かにベルナさんの言う通りそういう気はありそうだなと思う。
 それはともかく、あの人ならなるべく早いうちに会って話をしておきたい。おみやげに何か持っていくと良さそうな気がする。
 
「どうする? 行くなら護衛につくけど」
「うーん、とりあえず全員分の家を建てるのが先かな。魔物はボルカノがなんとか抑止力になっているみたいだからいいけど、もう少し村としての形を保ちたいね」
【別にいいんじゃねえか? 視察があるわけでもないんだし】
「うーむ。ラースさん、ここからキールソン侯爵様のところはどれくらいかかるの?」
「馬車で片道三日くらいかな。前に言った村の方へ向かう感じだ」
「三日……往復で六日かかるんだな」

 となると生活基盤を先に作ってからの方がいいかな?

「うん。やっぱりここはまず家を全員分作ってからにしよう。その方が安心して暮らせるし、僕も気兼ねなく行ける」
「ウルカ君がそれでいいなら特に問題は無いよ。転移魔法で連れて行けるけど」
「早く言ってよ!?」

 僕の言葉にくっくと笑うラースさんに驚愕する。意外と意地悪である。
 話し合いはもう少しだけ続き、一旦キールソン侯爵に手紙を送ることにした。
 転移魔法で渡してもいいんだけど、お土産の一つは持っていきたいんだよね。
 なにがいいかな?
 とりあえず掃除や水まきをスムーズにするため、明日はホースを作るとしようと思う。
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