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第百五十六話 ウェルカムONSENというもの
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「ええー……」
「これは一体……」
「いらっしゃいー」
さて、今は池が出来てから翌日の夜である。
今日も家を二軒建てた僕はボルカノと一緒に水路に蓋をする作業をしていた。
さらに周辺に柵を作る手はずまで整えた後、騎士さん達が集まって柵を立てる作業を変わってくれた。
柵を作ることはできるけど、立てたりする力仕事は僕一人じゃ無理だからね。
そんなことがあって途中から手が空いた。
時間もまだ余裕があったので、夕飯前にと僕の家の横にちょっとした小屋を建ててみた。
で、困惑した騎士さんがそれを見て先ほどの声を上げたというわけ。
「えっと、煙突から煙が出ているけどこれはなんだい?」
「よくぞ聞いてくれましたラースさん! これは銭湯です!」
「銭湯? ということはお風呂……。え? マジで?」
珍しくラースさんが目を丸くして驚いていた。この顔を見るだけでも価値はあったと思う。彼の言う通りこの小屋は銭湯で、池からさらに水路を派生させて作ってみたのだ。
浄化の魔石は頑張っていくつか買ったのでファイアリザードの魔石とセット使うことによりいい感じに銭湯の感性というわけ。
「みんな頑張ってくれているけど、お風呂って入れないでしょ? 川で身体を洗っていたみたいだしどうかなって」
「ああ、とてもありがたい。お風呂は疲れを癒してくれるからなあ」
「男湯と女湯で別れているのでキャシーさんやバスレさんも入れるよ」
「ありがとうございますウルカ様」
番頭として一緒に座っているバスレさんが微笑みながらお礼を言う。そしてカウンターから動物達も顔をだしてお出迎え。可愛い。
「それじゃ俺は入るとして……何人くらいいけそうなんだい?」
「広めに作ったから二十人くらいは入れるかな? 僕が持って来たシャンプーとソープも置いているから使っていいよ」
「それはみんな喜ぶよ。みんな泥だらけだからな。池が近くになって洗濯も出来るようになったし便利になっていくのはありがたい」
ラースさんはそう言って一旦キャンプ地へ戻って行く。
ちょっと嬉しそうだったのでお風呂が好きなのかもしれない。そこは僕と気が合うね。
「わふん」
「お前達は後で庭に作ったお風呂で洗うといいよ」
「クルルル!」
シルヴァも最初は嫌がっていたのにギル兄ちゃんに洗われまくって今ではすっかりきれい好きになっている。
そう言えばフォルテは初めてのお風呂だし気に入ってもらえるだろうか?
「こんばんはぁ」
「また面白そうなのを作ったわね」
「あ、こんばんは! お風呂です。入りますか?」
「もちもち♪ バスレさんは入らないのぉ?」
「私は後で……」
「もう晩御飯の準備は終わっているし先に入ってきたら?」
「しかし……」
「ウルカ様がそう言っているからいいじゃない」
女性騎士さん二人に連れられてバスレさんは女湯へ消えた。たまにはゆっくりして欲しいものだ。
そのタイミングで男性騎士さんを連れたラースさんが戻って来た。
「それじゃ入らせてもらうよ。タオルだけでいいんだよな」
「そうですそうです。別に料金を取る気はないし、僕も最初だけここに座っているだけで後は自由に入り放題にするよ!」
「マジですかい!? よっしゃ! 一番風呂は貰いましたよラース様!!」
「ははは、俺は入れればいいからな?」
苦笑するラースさんの横をすり抜けて脱衣所へ入っていく騎士達。
一番風呂か……しかし悲しいかな――
「いやっほう! いっちばぁぁぁぁぁん!!」
【こんばんはでござる】
「なんかいるぅぅぅぅぅぅ!?」
――そう、男性の一番風呂はオオグレさんなのだ。
(【お、風呂でござるか! 拙者もいいでござるかね!?】)
と、乗り気だったので入ってもらった。一応、骨も汚れるから洗うのはアリだと思うしね。
「おま!? 骨のくせに風呂に入ったらスープになっちまうだろ!?」
【ははは、これは異なことをおっしゃる。早く入るでござる。いい湯でござるぞ】
「くそ、ウルカ様ならともかく先を越されたのがオオグレさんかよ……!」
「タオルを頭に乗せてくつろぎすぎだろ!」
まあ、スケルトンが先に入っていたらこうなるとは思っていたけど気持ち悪がる人が居ないのでいいとしよう。仲がいいしね。
「なんだ、お風呂も作ったんですか?」
「あ、トーリアさん。そうそう、向こうと同じ感じだけどどう?」
「最近ちょっと毛の汚れがちゃんと落ちていないからいいな。俺も入らせてもらう」
「いってらっしゃーい」
「わおわおーん」
「こっけー」
トーリアさんは実家の池で小屋の風呂を体験済みなため、ここがなんの施設かすぐ判明していたらしくタオルをもっていた。
ま、疲れを癒すなら銭湯だよね。各家にもお風呂はつけているけど、魔石や魔法が使えないとお湯にできないので水風呂が基本なんだよね。
「うおおおお、トーリアさんがお湯をかぶったら縮んだ!?」
「ほとんど毛なのか……!?」
「獣人はこういうものだぞ?」
「うわ、身体をぶるぶるするな飛び散る!?」
楽しそうでなによりだ。
銭湯でこれだけ喜んでくれるなら娯楽施設もあるといいかもしれないなあ。もちろんお金を賭けるのはナシでね。
「……ま、その前に拠点を作って行かないと」
そんなことを考えながら入れ替わりに入ってくる騎士さんと応対しながら夜が更けていく。
夕食後、僕は動物達を池のような湯船につけてめちゃくちゃ洗ってやった。
「クルルルル♪」
懸念していたフォルテも満足気だったので安心した。さらにモフモフになった背中を、やはりきれいになったタイガが乗っかって寛いでいた。
「しかし、洗うのに洗面器だと手が疲れちゃうな。……ホースとか作れないかな」
「これは一体……」
「いらっしゃいー」
さて、今は池が出来てから翌日の夜である。
今日も家を二軒建てた僕はボルカノと一緒に水路に蓋をする作業をしていた。
さらに周辺に柵を作る手はずまで整えた後、騎士さん達が集まって柵を立てる作業を変わってくれた。
柵を作ることはできるけど、立てたりする力仕事は僕一人じゃ無理だからね。
そんなことがあって途中から手が空いた。
時間もまだ余裕があったので、夕飯前にと僕の家の横にちょっとした小屋を建ててみた。
で、困惑した騎士さんがそれを見て先ほどの声を上げたというわけ。
「えっと、煙突から煙が出ているけどこれはなんだい?」
「よくぞ聞いてくれましたラースさん! これは銭湯です!」
「銭湯? ということはお風呂……。え? マジで?」
珍しくラースさんが目を丸くして驚いていた。この顔を見るだけでも価値はあったと思う。彼の言う通りこの小屋は銭湯で、池からさらに水路を派生させて作ってみたのだ。
浄化の魔石は頑張っていくつか買ったのでファイアリザードの魔石とセット使うことによりいい感じに銭湯の感性というわけ。
「みんな頑張ってくれているけど、お風呂って入れないでしょ? 川で身体を洗っていたみたいだしどうかなって」
「ああ、とてもありがたい。お風呂は疲れを癒してくれるからなあ」
「男湯と女湯で別れているのでキャシーさんやバスレさんも入れるよ」
「ありがとうございますウルカ様」
番頭として一緒に座っているバスレさんが微笑みながらお礼を言う。そしてカウンターから動物達も顔をだしてお出迎え。可愛い。
「それじゃ俺は入るとして……何人くらいいけそうなんだい?」
「広めに作ったから二十人くらいは入れるかな? 僕が持って来たシャンプーとソープも置いているから使っていいよ」
「それはみんな喜ぶよ。みんな泥だらけだからな。池が近くになって洗濯も出来るようになったし便利になっていくのはありがたい」
ラースさんはそう言って一旦キャンプ地へ戻って行く。
ちょっと嬉しそうだったのでお風呂が好きなのかもしれない。そこは僕と気が合うね。
「わふん」
「お前達は後で庭に作ったお風呂で洗うといいよ」
「クルルル!」
シルヴァも最初は嫌がっていたのにギル兄ちゃんに洗われまくって今ではすっかりきれい好きになっている。
そう言えばフォルテは初めてのお風呂だし気に入ってもらえるだろうか?
「こんばんはぁ」
「また面白そうなのを作ったわね」
「あ、こんばんは! お風呂です。入りますか?」
「もちもち♪ バスレさんは入らないのぉ?」
「私は後で……」
「もう晩御飯の準備は終わっているし先に入ってきたら?」
「しかし……」
「ウルカ様がそう言っているからいいじゃない」
女性騎士さん二人に連れられてバスレさんは女湯へ消えた。たまにはゆっくりして欲しいものだ。
そのタイミングで男性騎士さんを連れたラースさんが戻って来た。
「それじゃ入らせてもらうよ。タオルだけでいいんだよな」
「そうですそうです。別に料金を取る気はないし、僕も最初だけここに座っているだけで後は自由に入り放題にするよ!」
「マジですかい!? よっしゃ! 一番風呂は貰いましたよラース様!!」
「ははは、俺は入れればいいからな?」
苦笑するラースさんの横をすり抜けて脱衣所へ入っていく騎士達。
一番風呂か……しかし悲しいかな――
「いやっほう! いっちばぁぁぁぁぁん!!」
【こんばんはでござる】
「なんかいるぅぅぅぅぅぅ!?」
――そう、男性の一番風呂はオオグレさんなのだ。
(【お、風呂でござるか! 拙者もいいでござるかね!?】)
と、乗り気だったので入ってもらった。一応、骨も汚れるから洗うのはアリだと思うしね。
「おま!? 骨のくせに風呂に入ったらスープになっちまうだろ!?」
【ははは、これは異なことをおっしゃる。早く入るでござる。いい湯でござるぞ】
「くそ、ウルカ様ならともかく先を越されたのがオオグレさんかよ……!」
「タオルを頭に乗せてくつろぎすぎだろ!」
まあ、スケルトンが先に入っていたらこうなるとは思っていたけど気持ち悪がる人が居ないのでいいとしよう。仲がいいしね。
「なんだ、お風呂も作ったんですか?」
「あ、トーリアさん。そうそう、向こうと同じ感じだけどどう?」
「最近ちょっと毛の汚れがちゃんと落ちていないからいいな。俺も入らせてもらう」
「いってらっしゃーい」
「わおわおーん」
「こっけー」
トーリアさんは実家の池で小屋の風呂を体験済みなため、ここがなんの施設かすぐ判明していたらしくタオルをもっていた。
ま、疲れを癒すなら銭湯だよね。各家にもお風呂はつけているけど、魔石や魔法が使えないとお湯にできないので水風呂が基本なんだよね。
「うおおおお、トーリアさんがお湯をかぶったら縮んだ!?」
「ほとんど毛なのか……!?」
「獣人はこういうものだぞ?」
「うわ、身体をぶるぶるするな飛び散る!?」
楽しそうでなによりだ。
銭湯でこれだけ喜んでくれるなら娯楽施設もあるといいかもしれないなあ。もちろんお金を賭けるのはナシでね。
「……ま、その前に拠点を作って行かないと」
そんなことを考えながら入れ替わりに入ってくる騎士さんと応対しながら夜が更けていく。
夕食後、僕は動物達を池のような湯船につけてめちゃくちゃ洗ってやった。
「クルルルル♪」
懸念していたフォルテも満足気だったので安心した。さらにモフモフになった背中を、やはりきれいになったタイガが乗っかって寛いでいた。
「しかし、洗うのに洗面器だと手が疲れちゃうな。……ホースとか作れないかな」
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