140 / 245
第百三十九話 本領発揮であるというもの
しおりを挟むいよいよ辺境へ到着した僕達。初日は挨拶をしつつ、荷台で就寝した。
騎士さん達もたまに様子を見に来てくれては他愛ない話をして交流を深めていった。
意外なことに男性七割、女性三割くらいで思ったより女性が多かった。
辺境ともなると危険だし遊ぶ場所とかもないので嫌がる人が多いのかなと感じていたんだけど、
「え? ここを発展させてどっかのお店を引っ張ってくれば良くない?」
「ね。ウチら好みの店を作ってもらうのに来たし?」
と、ギャルっぽい騎士と魔法使いの女性二人が揃ってそんなことを言っていた。
ちなみに二人とも少々布面積が少ない服を着ていたりする。
それはともかく、なるほど。先住者である僕達が土地を好きにできるのを超ポジティブに捉えた結果らしい。
そして一夜明けた朝食時。僕はその話をみんなにする。
「騎士さん達もある程度開拓が進んだら帰る人もいる、ということが分かったよ」
「そうですねえ。ただ、何年かかかるだろうと予測しているから先の話しですよぅ」
「地ならし、切り開いてからの建物建築、農場に畜産場。この辺りをまず構築してからになりそうだ。お店とかはまだまだだな」
「うん。地面の整地と建物は僕の仕事でいいよ。代わりに畑とかをお願いしたいかな」
ここで役割を決めていく。
今日から早速お仕事に入る訳だけど、僕が騎士さん達にあれこれ言うのは最後にして、まずはラースさんとベルナさんが窓口になってもらうことにした。
一応、勅命を受けた者同士で、さらにラースさんは貴族なので立場的にも上。もちろん実力もあるので指示出しをしてもらうのがいいだろうという判断だ。
「私はどうしましょう?」
「バスレさんは僕が簡易家屋を作るから食事や洗濯をお願いしていいかな?」
「もちろんです。ウルカ様は?」
「僕は川が近くにあるみたいだと聞いたからまずは水路の確保かな? あの広場にあった池みたいにしようかと」
ここから歩いて15分くらいのところにあるらしい川。だいたい1キロくらいかな?
深さは大人のくるぶしより少し上で流れは穏やかだそうだ。暑い日なんかは泳げそうな感じ。
そこから僕達の過ごす場所へ引けたらと考えているのだ。
「なら俺とベルナはどの区画に家を建てたいか調査するよ。畑の区域をつくるか家の横につくるか……」
「それじゃあ朝ごはんを食べたらそれぞれ行動を開始しよう」
【拙者の国では半々でござったなあ】
【麦を作るならかなり広くしないとだぞ】
オオグレさんとゼオラも意見を出してくれていた。そんな調子で朝食が終わると、僕はまず簡易な家を作ることにした。
ラースさんとベルナさんを見送っていると、のそりとボルカノが姿を現した。
【食事は終わったか? 木を集めておいたぞ】
「お、さすがボルカノ。仕事が早いね、ありがとう」
【大したことではない。これで家を作るのか?】
「そうだね。土と石で作ってもいいんだけど、折角だしちゃんと家にしたいんだ」
【秘密基地みたいなのじゃダメなのか?】
秘密基地タイプだと暑い日が厳しい。きちんと窓を作ったりしたいことを説明する。
「それじゃさっとやっちゃおうか」
【手伝うでござるよ】
まずボルカノが取って来てくれた木を角材へとクリエイトする。次に土台である基礎を作成していき角材を縁取っていく。
「フォルテ、悪いんだけどここの土を石に変えられる?」
「クル? クルル」
ビッ! っと目から怪光線が放たれ基礎の外側が石になる。有機物以外でもいけたか。いや、土も生きているってことかな?
こんな調子で土台を作っていき、角材を骨組みや大黒柱にしていく。僕が加工した木をボルカノがはめ込んでいくといった具合だ。
【ほほう、楽しいなこれは】
「パズルみたいでしょ? あ、ジェニファー、まだダメだよ」
「こけー」
なんとなく形になって来たところで動物達がなんだなんだと入っていく。それをやんわり止めると残念そうに外に出てくれた。
だいたいの広さは4LDKをイメージしている。こっちの家屋はレンガ積みで作っているけど窓が小さいのと田舎の家のように庭から部屋へ入れるようにもしたいと日本の家屋を参考にしている。
石膏ボードはないので薄く伸ばした土をフォルテに石に変えてもらい内部の壁へ。外側は石をタイルにクリエイトして貼り付ける形にした。
【へえ、いいじゃねえか】
「おしゃれですね」
床は畳……ということは無く、普通の板張りにした。靴を脱ぐか悩んだけど、前にオオグレさんの小屋を作った時に兄ちゃんズが、
「火事や襲撃があった場合、靴が近くに無いのは割と厳しいぞ」
「そうだな。ガラスで足を切ったりするんだぜ?」
そんなことを言っていたので土足仕様にした。
そういえば向こうの世界でもベッドの下にスリッパを置いておくといざという時に役立つなんてあったなあ。
そしてみんなの協力の下、お昼を少し過ぎたあたりで――
「完成だ……!」
「わおわおーん♪」
「こっけー!」
「にゃーん!」
「クルルル♪」
――とりあえず簡易だけど家が完成した。喜ぶ動物達に混じってハリヤーが『厩舎がいいですね』といった感じで鳴きながら鼻をすり寄せてきた。
「これは素晴らしいですねウルカ様。お屋敷とも一般の家とも違い、形が珍しいですよ」
「でしょ? こういう家に住みたかったんだよね」
ということで完成した家。庭と中を一回りしておこうかな?
10
お気に入りに追加
999
あなたにおすすめの小説
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね
いくみ
ファンタジー
パトリシアは卒業パーティーで婚約者の王子から婚約破棄を言い渡される。
しかし、これは、本人が待ちに待った結果である。さぁこれからどうやって私の13年を返して貰いましょうか。
覚悟して下さいませ王子様!
転生者嘗めないで下さいね。
追記
すみません短編予定でしたが、長くなりそうなので長編に変更させて頂きます。
モフモフも、追加させて頂きます。
よろしくお願いいたします。
カクヨム様でも連載を始めました。
幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる