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第百三十九話 本領発揮であるというもの

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 いよいよ辺境へ到着した僕達。初日は挨拶をしつつ、荷台で就寝した。
 騎士さん達もたまに様子を見に来てくれては他愛ない話をして交流を深めていった。
 意外なことに男性七割、女性三割くらいで思ったより女性が多かった。
 辺境ともなると危険だし遊ぶ場所とかもないので嫌がる人が多いのかなと感じていたんだけど、

「え? ここを発展させてどっかのお店を引っ張ってくれば良くない?」
「ね。ウチら好みの店を作ってもらうのに来たし?」

 と、ギャルっぽい騎士と魔法使いの女性二人が揃ってそんなことを言っていた。
 ちなみに二人とも少々布面積が少ない服を着ていたりする。
 それはともかく、なるほど。先住者である僕達が土地を好きにできるのを超ポジティブに捉えた結果らしい。

 そして一夜明けた朝食時。僕はその話をみんなにする。

「騎士さん達もある程度開拓が進んだら帰る人もいる、ということが分かったよ」
「そうですねえ。ただ、何年かかかるだろうと予測しているから先の話しですよぅ」
「地ならし、切り開いてからの建物建築、農場に畜産場。この辺りをまず構築してからになりそうだ。お店とかはまだまだだな」
「うん。地面の整地と建物は僕の仕事でいいよ。代わりに畑とかをお願いしたいかな」

 ここで役割を決めていく。
 今日から早速お仕事に入る訳だけど、僕が騎士さん達にあれこれ言うのは最後にして、まずはラースさんとベルナさんが窓口になってもらうことにした。
 一応、勅命を受けた者同士で、さらにラースさんは貴族なので立場的にも上。もちろん実力もあるので指示出しをしてもらうのがいいだろうという判断だ。

「私はどうしましょう?」
「バスレさんは僕が簡易家屋を作るから食事や洗濯をお願いしていいかな?」
「もちろんです。ウルカ様は?」
「僕は川が近くにあるみたいだと聞いたからまずは水路の確保かな? あの広場にあった池みたいにしようかと」

 ここから歩いて15分くらいのところにあるらしい川。だいたい1キロくらいかな?
 深さは大人のくるぶしより少し上で流れは穏やかだそうだ。暑い日なんかは泳げそうな感じ。
 そこから僕達の過ごす場所へ引けたらと考えているのだ。

「なら俺とベルナはどの区画に家を建てたいか調査するよ。畑の区域をつくるか家の横につくるか……」
「それじゃあ朝ごはんを食べたらそれぞれ行動を開始しよう」
【拙者の国では半々でござったなあ】
【麦を作るならかなり広くしないとだぞ】

 オオグレさんとゼオラも意見を出してくれていた。そんな調子で朝食が終わると、僕はまず簡易な家を作ることにした。
 ラースさんとベルナさんを見送っていると、のそりとボルカノが姿を現した。

【食事は終わったか? 木を集めておいたぞ】
「お、さすがボルカノ。仕事が早いね、ありがとう」
【大したことではない。これで家を作るのか?】
「そうだね。土と石で作ってもいいんだけど、折角だしちゃんと家にしたいんだ」
【秘密基地みたいなのじゃダメなのか?】

 秘密基地タイプだと暑い日が厳しい。きちんと窓を作ったりしたいことを説明する。

「それじゃさっとやっちゃおうか」
【手伝うでござるよ】

 まずボルカノが取って来てくれた木を角材へとクリエイトする。次に土台である基礎を作成していき角材を縁取っていく。

「フォルテ、悪いんだけどここの土を石に変えられる?」
「クル? クルル」

 ビッ! っと目から怪光線が放たれ基礎の外側が石になる。有機物以外でもいけたか。いや、土も生きているってことかな?
 こんな調子で土台を作っていき、角材を骨組みや大黒柱にしていく。僕が加工した木をボルカノがはめ込んでいくといった具合だ。

【ほほう、楽しいなこれは】
「パズルみたいでしょ? あ、ジェニファー、まだダメだよ」
「こけー」

 なんとなく形になって来たところで動物達がなんだなんだと入っていく。それをやんわり止めると残念そうに外に出てくれた。
 だいたいの広さは4LDKをイメージしている。こっちの家屋はレンガ積みで作っているけど窓が小さいのと田舎の家のように庭から部屋へ入れるようにもしたいと日本の家屋を参考にしている。
 石膏ボードはないので薄く伸ばした土をフォルテに石に変えてもらい内部の壁へ。外側は石をタイルにクリエイトして貼り付ける形にした。

【へえ、いいじゃねえか】
「おしゃれですね」

 床は畳……ということは無く、普通の板張りにした。靴を脱ぐか悩んだけど、前にオオグレさんの小屋を作った時に兄ちゃんズが、

「火事や襲撃があった場合、靴が近くに無いのは割と厳しいぞ」
「そうだな。ガラスで足を切ったりするんだぜ?」

 そんなことを言っていたので土足仕様にした。
 そういえば向こうの世界でもベッドの下にスリッパを置いておくといざという時に役立つなんてあったなあ。

 そしてみんなの協力の下、お昼を少し過ぎたあたりで――

「完成だ……!」
「わおわおーん♪」
「こっけー!」
「にゃーん!」
「クルルル♪」

 ――とりあえず簡易だけど家が完成した。喜ぶ動物達に混じってハリヤーが『厩舎がいいですね』といった感じで鳴きながら鼻をすり寄せてきた。
 
「これは素晴らしいですねウルカ様。お屋敷とも一般の家とも違い、形が珍しいですよ」
「でしょ? こういう家に住みたかったんだよね」

 ということで完成した家。庭と中を一回りしておこうかな?
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