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第四十九話 駆け足だけどやってみるというようなもの
しおりを挟む「というわけでお祭りをやる」
「いきなりなにを言いだすんですかね!?」
有識者……と呼ぶには割と見知った顔ばかりが集まっているここは町の集会所。
あの納涼祭プランを見せた翌日、僕は父さんと一緒に色々な人へ説明するためやってきたわけだ。
で、みんなが集まったその時、父さんがどこかの指令みたいなポーズで唐突に口を開いたので場が混乱を極めている最中だったりする。
とりあえず口で説明するよりも見てもらう方が早いかと、家族で書き写してきた
「えっと、手分けして何枚か写しを持ってきたのでまずはこれを見てもらえますか?」
「おお、ウルカ様か。いつもフォルドと遊んでくれてありがとうございます。よし、どれどれ……」
「ウチのアニーも毎日楽しそうだぜ。こいつを見ればいいんだな?」
「ステラちゃんは――」
「早く読んでくださいよクライトさん」
「最後まで言わせてよ……」
顔見知りである人達が僕の出した紙に目を通す。フォルド達と友達で良かったと感じる一幕だ。
「ふむ」
「なんだ? 祭りってのは収穫祭とかのことか?」
「ギルドマスターが真面目に読んでるな。なんだ、一体?」
他の人達もギルドマスターであるクライトさんが真剣に考えているのを見て興味を持ったようで残っていた紙も一旦、集まってくれた人に渡る。
回し読みをしながら集まってくれた人達からどよめきが立ち始めたころ、クライトさんが手を上げて質問を投げかけてきた。
「ロドリオ様、いいですか?」
「なにかなクライト」
「……圧倒的に日数がきつくないですかね?」
「うむ」
やはりそこがネックか。
家族の間でもそれ以外は問題なしと言ってくれたから内容は悪くないはず……。
「だがウチの息子が考えたプランだ。是非やりたい! そしてこれは一回こっきりではなく。季節の終わりごとにやるのだ!」
「親ばかじゃないか!? ……でもまあ、他の町から人を集めるのはいいかもしれねえなあ。売上が立たなくても子供は楽しそうだ」
父さんの返しにフォルドの親父さんが大声を上げた。だけど内容は悪くないと顎に手を当てて他の人へ言う。
「だが警備は万全にしないと。ずっと平和だったのに、この前のイベントで不審者が捕まったのは記憶に新しいだろう。この計画だと夜がメインみたいだからな」
「確かに。だが、露店をメインにし、踊り子のステージなんかは目新しいぞ?」
「鍛冶屋のフライパンとか家具の新作を展示するのは悪くないと思うね。工房ってなかなか行きにくい」
「弟子の作品とかいいかもしれないな」
「あたしは人前でのダンス練習を兼ねて出てもいいわよ」
「僕もこの冷やしフルーツは興味がありますね。あ、菜園を営んでいます」
ふむ、感触は良好のようで一安心。
後は日程と、今までにないお店をやってみたい人を集めるだけなんだけど――
「やっぱ日程が厳しいかな」
「ですよね……」
「ああ、落ち込まないでくれウルカ様。ま、手分けしてやればやれなくはないでしょう。俺はやりますよ! もちろんフォルドにも手伝わせます」
「親父さん……!」
うわっはっは! と笑うフォルドの親父さんを皮切りに、
「ま、冒険者も暇な人間が多いから有志を募ってみるよ。ステラも喜ぶと思う」
「ありがとうクライトさん! もちろんウチからもお金を出すからね」
「アニーも世話になってんだ。俺はやるぜ?」
クライトさんとアニーのお父さんも賛同してくれた。すると、難しい顔をしていた人達もそれぞれ口を開く。
「ロドリオ様には世話になってるし、ギルドマスターがやるならやらない手はないか」
「来年のために用意しておくって感覚でいいんじゃねえか?」
「だな」
父さんの人徳でどうやら賛成をしてくれるらしい。難色を示す人も居るけど、まあそれは参加しない方向でもいいと思う。
商店街の人と広場を使うことがメインなので、そこに賛同を得られれば問題が無いのだ。
「皆さん……! ありがとう!」
「いいってことよ。時間が惜しい、内容を詰めていこうじゃないか」
「うむ、そうしよう。では――」
というわけで納涼祭は賛成多数で可決となり実行へ移すことになる。
具体的な話は父さんがしてくれ、看板や広場に建てるステージといった見た目部分は僕が話をする。
新しい料理なども提案してできそうなものをピックアップする形となった。
「ステージはこの前のイベントで使ったやつが集会所の倉庫にあるからあれを拡張するか」
「看板はウチで作る。色はペンキ屋に任せたぜ」
「ほいほい、お任せあれ。……というか仕事料いただけるんですねえ」
「無理言っているからね。僕も国王様からいただいたゲーミングチェアの代金があるし、それを使うよ」
「マジですか!? いやはや五歳でこれとはロドリオ様が羨ましい……」
作業にあたる人達には日当として金貨一枚を別に進呈することにしている。
誠意をもって対価を出さないとお互い楽しくないもんね。
「うっしゃ! ウルカ様のために一肌脱ぐぞ!」
「「「おおおー!!」」」
「いや、僕のためじゃなくていいんだけど……」
なんか変な方向に行きそうだけどやる気になってくれてよかった。
そのまま催し物についての話や、材料さえあればクリエイトで必要なものを作成できる話を続ける。
綿菓子とか金魚すくいが出来るといいんだけど金魚はこの世界に多分居ないし、綿菓子はあの機械の構造を僕が知らないので再現ができない。
だから焼きトウモロコシやアメリカンドッグ(もちろん名前は変えたけど)、かき氷といった食べ物や、僕が気で作ったダルマ落としみたいなおもちゃも惜しみなく出す。
「ね、ね。ウルカ様。踊り子にはなにか無いの?」
「え? うーん……なにか服とかあるといいかなあ。こういうので良ければ」
「絵が上手い!? あ、これ可愛いかも」
彼女達にはアイドルっぽい衣装を提案。病院で暇なときは絵ばかり描いていたからこれくらいはできる。で、衣装くらいなら布があればなんとかできそうだし、折角なので推しておこう。
慌ただしいけど、活気があるね。少しだけ参加したことのある文化祭を思い出しながら僕はワクワクしていた。
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