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第三十話 結局一緒にやることになるというもの

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 「いやあ、ウルカ様は凄いね。五歳でモノづくりの才能がこんなにあるとは」
 「ははは……」

 レストランにて。
 ジェットコースターもどきを絶賛するクライトさんに愛想笑いで答える僕。
 というのも知識自体は僕のオリジナルではないからね……。

 ちょっと調子に乗り過ぎたかと考えていると、ゼオラが僕に言う。
 
 【気にするな。技術の進化はどこで変わるか分からないもんだ。もしかするとこの世界はお前ウルカが来ることで少し変化する未来だったのかもしれないしな。やれるだけやってもいいんじゃねえかな】

 表情で察したのかなと思うほど的確についてきたな。
 確かにゲーミングチェアやジェットコースターもどきが元々あれば気にはならないはずだし、他に転生者がいて作っていたら珍しくもないはずか。
 逆に『知っている人間』が出てきたらそういう人だという指針にもなるのか。

 「……他にも色々と思いついたことがあるけど」
 「ほ、本当かウルカ?」
 「ウルカちゃんならできそうよねー」
 「ウルカ、本当にすごい」

 身を乗り出してくる父さんを手で制してから僕は一応、と念押しのためいっておくことにする。

 「僕の作ったものを売りに出すのはいいけど、職人さん達がちゃんとしたものを作れないと出さないで欲しいかな? それと作ってくれる人に負担をかけないであげてね」
 「む、そうだなウルカの言う通りだ。下手なものを作ってウルカのせいになっても困るな」
 「いや、僕は――」
 「そうですよパパ。ちゃんとしたものを作るまで職人を監禁とかしないと」
 「奴隷以下!? 母さん、出来なかったらそれは諦めるしかないってことでいいんじゃないかな」

 ヴァンパイアっぽい価値観を出されてて思わず突っ込んでしまった。時間をかけても無理なら恐らくそれを作れるのが『今ではない』んだと思う。
 それに不良品で使った人が被害を受けるのも避けたいというのもあるんだよね。

 「まあ監禁は冗談として、お金を貰う以上下手なものを作ることは無いよ。もし、私達に見せてくれるならちゃんと考えて作るさ」
 「うん。僕が量産すればと思うけど、やっぱりみんなにお金が入って欲しいもんね」
 「ふむふむ、あの魔法を見て冒険者にと思ったけどロドリオ様の側近としておいたほうが良さそうですね。まあステラの未来は安泰だからヨシ……」
 「は?」

 クライトさんが微笑みながらサラダを口にしてそんなことを言う。すると母さんが勢いよく立ち上がり珍しく不機嫌そうな声を上げた。

 「あなたの娘と結婚したらリンダが親戚になるじゃない。それは嫌よ」
 「がーん」
 「あ、ステラが椅子から落ちた!?」
 「ええー!? もうステラはその気だと思うんだけど……」
 「ごめんね……」
 「ががーん……!」

 僕は会ったことがないけど母さんは心底リンダさんがダメらしい。死ぬと決めた時に二人が戦っていたからなにか確執があったのは間違いない。
 しかしステラの様子だとまだあんまり会ってないのに僕が好きだということだろうか? 
 
 「ま、まあ五歳だしまだ早いよ。ママもほら座って」
 「そうね……」
 
 レストランということもあり周りの目がこちらに向いたのが分かったので慌てて座る。

 「ががががーん……」
 「ああ、可哀想なステラちゃん……」

 茶番はさておき父さんの言う通りまだ五歳だから僕以外の子を好きになる可能性が高いから話半分くらいでいいかな。

 そんな緊張感のある昼食が終わり、クライトさんとステラはギルドへ戻ることになった。

 「それじゃまたね。僕の家の近くにある池に秘密基地を作っているんだけど、安全に行き来できるようになったら案内するよ。フォルドとアニーはもう知っているけど」
 「がーん」
 「気に入ったのかい、それ?」
 「ううん。それじゃ、また」
 「あはは、またね」
 「ではまた。今度は最初から呼んでくださいねロドリス様」

 クライトさんがステラを抱っこして踵を返して歩き出し、僕達も工房へ行こうと背を向ける。

 すると――

 『必ず結ばれるよ』

 「え?」

 風に乗ってそんな言葉が聞こえてきた。
 後ろから聞こえたかと思い振り返ると、

 「ステラ?」
 
 こちらを見ていたステラが手を振っていた。でも声はちょっと違ったような?

 【おい、両親が行っちまうぞ】
 「あ、うん」
 
 気になるなと思いながら僕は工房に戻る。
 
 「戻ったぞザトゥさん」
 「おう。ここがなあ……」

 とりあえず母さんはそろそろ飽きてくるころだろうとウオルターさんと馬車で帰り、僕と父さんだけが戻ってきたんだけど、そこには鍛冶屋のイデアールさんの姿はすでになく、パンとスープをつまみながらゲーミングチェアの前で唸っているザトゥさんだけが居た。

 「どうしたの?」
 「ああ、ウルカ様。この高さを調節するのはどうやっているんですかい? ちょっとわからなくて」
 「ああ、これはこのレバーで――」

 と、説明を始める。
 油圧式のものは流石に無理だったのでロックレバーの上げ下げで段階を決めてロックする形にしてある。
 その他、分からないところを聞いてきたザトゥさんが設計書を書き始め、僕との打ち合わせに精を出すことに。

 「うんうん」

 笑顔の父さんは蚊帳の外だった。
 まあ、売りに出すのが仕事だから別にいいんだけどね。
 そして夕方になり――

 「いやあ、久しぶりに頭を使いましたぜ。だけどだいたい分かったし、少しずつ作ってみらあ」
 「頼むよ。王都に売り出すのもアリだと思っているから儲かるぞきっと」
 「そりゃ楽しみだ。普通の依頼もあるから少しずつだけど期待していてください」
 
 金があれば新しい家具も作れると笑いながら作業に戻り、父さんと僕は屋敷へ帰ることに。
 
 「楽しかったね。昼間は友達と遊んでいたし」
 「そうかそうか。ギルバードやロイドも学校では友人が多いから、ウルカも学校へ行くようになったら楽しみが増えるな」
 「うん!」

 学校かあ。
 田舎の平民の子はあまり通うことがないらしいんだけどこの町にある学校は父さん主導で建てたもの……というか兄ちゃんズのために国から援助をもらって作ったみたいなので平民でも通っているとか。学費が王都より安いみたいだ。

 「忙しくなるな。この手押し車もなにか使えそうだが……」
 「あ、それなんだけど――」

 と、暗くなっていく道を父さんと一緒に歩いていく。忙しいのは確かにこれからだと思いつつ――

 「あ!? イデアールさんに金属をもらえば良かった!」

 ――秘密基地の網戸問題をすっかり忘れていたことを思い出した。

 ま、まあ、いつでも行けるし父さんに頼んでもいいか……
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