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FILE.3 ヒロガルセンカ
FILE.3 エピローグ
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『――とないうことでした』
『……No.1の反応が消えた、か』
『まさか地上人にやられたとは思えないのですが……』
白髪交じりの髪をオールバックにした初老の男が、報告にきた男の言葉に反応しポツリと呟く。男は報告に来た男に続けて尋ねる。
『No.4はまだ生きていると聞いているが?』
『は……ガイラル様の国、ゲラート帝国に滞在しているようですが、まだ殲滅の任務を行ってはいないようです』
報告者の男がやや焦り気味にそう答えると、初老の男が舌打ちをして答える。
『そうか。ガイラルめ地上はもう汚染されておるまい……No.4を早く使えばいいものを……連絡は?』
『ありません。連絡が途絶えて五年。こちらからの連絡には答えがありません。ガイラル様はどうしてしまったのでしょうか? それで今後はいかが致しましょう、ツェザール様』
『……』
裏切ったか? そう思うツェザールと呼ばれた初老の男。だが、ガイラルにメリットは無いはずだと考える。しかし万が一はある。それに残りの”終末の子”が動いていないことを含めてツェザールは報告者の男へ伝える。
『ガイラルに使者を向かわせろ。それと残りの『遺跡』を起動させるため部隊を出せ』
『かしこまりました。しかし大地の形はだいぶ変化しております。『遺跡』の位置はすぐに見つからないかと――』
5000年以上前のものですしと報告者が眼鏡を上げて言うと、
『何のために研究機関が居るのだ! すぐに探させろ!』
ツェザールは激昂し、椅子から立ち上がり手に持っていたグラスを床に叩きつけた。グラスは報告者の男の足元で粉々になり、報告者の男の足元で粉々になる。
『も、申し訳ございません! すぐに手配いたします!』
男は一礼すると、すぐに部屋から出ていきツェザールだけになり、静かになる。また舌打ちをしながら椅子に座りなおすと、指を鳴らす。すると、メイドのような恰好をした女性が現れ割れたグラスを片付けていく。
その瞳は抑揚が無く、No.4と呼ばれている時のイリスのようだった。片付けている様子を見ながら、ツェザールは目を細め、もう一人の女性が持ってきたグラスを口に持っていき思考を巡らせる。
『(地上帰還……そのために5000年もの間冷凍睡眠をしていたのだ。目覚めた今、同胞のためにも失敗する訳にはいかん。それにしても我らを空へ追いやった野蛮な下等種の子孫め……今度こそ根絶やしにしてくれる……! 一気に殲滅させたいがそれではあの時の二の舞。そのため50年も前にガイラルを送り込んだというのに何をしている?)』
ぐいっとグラスの中を飲み干すと、女性の肩を掴みどこかへと歩き出す。
『地上は我らのものだ……必ず帰るぞ……!』
◆ ◇ ◆
<国境付近:ソムの町>
「ふう……いてて……いい天気だなおい……」
『大丈夫ですかお父さん?』
「きゅうん」
杖をついて家屋から外に出るカイル達。
ガイラルは一連の話をした後、エリザやヴィザージュら隊長とオートス達兵を連れてシュトレーン国へと向かい、ケガをしているカイルはここ国境付近の町、ソムで療養を言い渡されていた。
「あ!? ダメですよ無理しちゃ!?」
「ああ、フルーレちゃんか。いやあ、寝てると気が滅入るから体は動かしておきたいんだよ。昼飯一緒に行こうぜ」
「もう……」
頬を膨らませるフルーレに、苦笑しながらカイルはシュナイダーを抱っこしているイリスと共に歩き出す。フルーレが隣に立つと、午前中ガイラルがカイルの部屋に居たことを尋ねてきた。
「そういえば皇帝陛下はカイルさんとお話してたみたいですけど、何の話をしていたんですか?」
「ん……。ああ、ちょっとな」
カイルは鼻の頭を掻きながら言葉を濁す。ガイラルから聞いた話は到底信じられるものではない。カイルは空を仰ぎながら胸中で呟く。
「(天上人……古代の人間がこの空で生きているだなんてな……だが……)」
不意にカイルはイリスに目を向ける。
『? どうしましたお父さん』
「いや……」
イリスとニックはガイラルが言うには”終末の子”という兵器。この不可解なふたりを目の当たりにし、それが封じられていた『遺跡』に『遺物』があることを考えると嘘だとも思えない。だが、カイルは一つ気になっていることがあった。
「(なんで皇帝は俺にこの話をした? 俺が対抗できる兵器を作れるからか? それよりも何故もっと早く国に通達をしていない……。混乱するだけだと言っていたが、もし強襲されたらひとたまりもない。それとも攻撃されない自信がある?)」
「――さん」
「(国を統一することは分かる。だが、肝心の『敵』を伝えずどうするつもり――)」
「カイルさん!」
「うわお!? な、なんだいフルーレちゃん」
どうやらずっと声をかけられていたらしいことに気づき、慌てて返事をする。フルーレは相変わらず頬を膨らませながら口を開く。
「どうしたんですか? ずっと難しい顔をしていますけど、陛下に何か言われたんですか? そ、そのケガで退役、とか? そ、その、わたしで良かったらお世話します……!」
退役と聞いてカイルがキョトンとした表情をし、すぐに笑いがこみあげてくる。
「はっは! 退役できりゃ楽なことはないんだけどな! 皇帝の奴、無茶ぶりを振ってきただけさ」
『おじいちゃんは何て?』
「そのうちな」
カイルは首を傾げるイリスの頭に手を乗せ、もう一度空を見上げると――
「……? なんだ? 流れ星……?」
「こんな昼間に見えるなんて珍しいですね」
『綺麗ですね、シュー』
「わおうん!」
――空から二つの流れ星が落ちてくるのが見えた。不可解なのは、同じ方向ではなく、ひとつは遠くへ、もうひとつはまた別の場所へ、目的地があるかのように真っすぐ地上を目指していた――
FILE3.広がる戦火 FIN
NEXT Episode……FILE4.『セイセンヘノイリグチ』
『――とないうことでした』
『……No.1の反応が消えた、か』
『まさか地上人にやられたとは思えないのですが……』
白髪交じりの髪をオールバックにした初老の男が、報告にきた男の言葉に反応しポツリと呟く。男は報告に来た男に続けて尋ねる。
『No.4はまだ生きていると聞いているが?』
『は……ガイラル様の国、ゲラート帝国に滞在しているようですが、まだ殲滅の任務を行ってはいないようです』
報告者の男がやや焦り気味にそう答えると、初老の男が舌打ちをして答える。
『そうか。ガイラルめ地上はもう汚染されておるまい……No.4を早く使えばいいものを……連絡は?』
『ありません。連絡が途絶えて五年。こちらからの連絡には答えがありません。ガイラル様はどうしてしまったのでしょうか? それで今後はいかが致しましょう、ツェザール様』
『……』
裏切ったか? そう思うツェザールと呼ばれた初老の男。だが、ガイラルにメリットは無いはずだと考える。しかし万が一はある。それに残りの”終末の子”が動いていないことを含めてツェザールは報告者の男へ伝える。
『ガイラルに使者を向かわせろ。それと残りの『遺跡』を起動させるため部隊を出せ』
『かしこまりました。しかし大地の形はだいぶ変化しております。『遺跡』の位置はすぐに見つからないかと――』
5000年以上前のものですしと報告者が眼鏡を上げて言うと、
『何のために研究機関が居るのだ! すぐに探させろ!』
ツェザールは激昂し、椅子から立ち上がり手に持っていたグラスを床に叩きつけた。グラスは報告者の男の足元で粉々になり、報告者の男の足元で粉々になる。
『も、申し訳ございません! すぐに手配いたします!』
男は一礼すると、すぐに部屋から出ていきツェザールだけになり、静かになる。また舌打ちをしながら椅子に座りなおすと、指を鳴らす。すると、メイドのような恰好をした女性が現れ割れたグラスを片付けていく。
その瞳は抑揚が無く、No.4と呼ばれている時のイリスのようだった。片付けている様子を見ながら、ツェザールは目を細め、もう一人の女性が持ってきたグラスを口に持っていき思考を巡らせる。
『(地上帰還……そのために5000年もの間冷凍睡眠をしていたのだ。目覚めた今、同胞のためにも失敗する訳にはいかん。それにしても我らを空へ追いやった野蛮な下等種の子孫め……今度こそ根絶やしにしてくれる……! 一気に殲滅させたいがそれではあの時の二の舞。そのため50年も前にガイラルを送り込んだというのに何をしている?)』
ぐいっとグラスの中を飲み干すと、女性の肩を掴みどこかへと歩き出す。
『地上は我らのものだ……必ず帰るぞ……!』
◆ ◇ ◆
<国境付近:ソムの町>
「ふう……いてて……いい天気だなおい……」
『大丈夫ですかお父さん?』
「きゅうん」
杖をついて家屋から外に出るカイル達。
ガイラルは一連の話をした後、エリザやヴィザージュら隊長とオートス達兵を連れてシュトレーン国へと向かい、ケガをしているカイルはここ国境付近の町、ソムで療養を言い渡されていた。
「あ!? ダメですよ無理しちゃ!?」
「ああ、フルーレちゃんか。いやあ、寝てると気が滅入るから体は動かしておきたいんだよ。昼飯一緒に行こうぜ」
「もう……」
頬を膨らませるフルーレに、苦笑しながらカイルはシュナイダーを抱っこしているイリスと共に歩き出す。フルーレが隣に立つと、午前中ガイラルがカイルの部屋に居たことを尋ねてきた。
「そういえば皇帝陛下はカイルさんとお話してたみたいですけど、何の話をしていたんですか?」
「ん……。ああ、ちょっとな」
カイルは鼻の頭を掻きながら言葉を濁す。ガイラルから聞いた話は到底信じられるものではない。カイルは空を仰ぎながら胸中で呟く。
「(天上人……古代の人間がこの空で生きているだなんてな……だが……)」
不意にカイルはイリスに目を向ける。
『? どうしましたお父さん』
「いや……」
イリスとニックはガイラルが言うには”終末の子”という兵器。この不可解なふたりを目の当たりにし、それが封じられていた『遺跡』に『遺物』があることを考えると嘘だとも思えない。だが、カイルは一つ気になっていることがあった。
「(なんで皇帝は俺にこの話をした? 俺が対抗できる兵器を作れるからか? それよりも何故もっと早く国に通達をしていない……。混乱するだけだと言っていたが、もし強襲されたらひとたまりもない。それとも攻撃されない自信がある?)」
「――さん」
「(国を統一することは分かる。だが、肝心の『敵』を伝えずどうするつもり――)」
「カイルさん!」
「うわお!? な、なんだいフルーレちゃん」
どうやらずっと声をかけられていたらしいことに気づき、慌てて返事をする。フルーレは相変わらず頬を膨らませながら口を開く。
「どうしたんですか? ずっと難しい顔をしていますけど、陛下に何か言われたんですか? そ、そのケガで退役、とか? そ、その、わたしで良かったらお世話します……!」
退役と聞いてカイルがキョトンとした表情をし、すぐに笑いがこみあげてくる。
「はっは! 退役できりゃ楽なことはないんだけどな! 皇帝の奴、無茶ぶりを振ってきただけさ」
『おじいちゃんは何て?』
「そのうちな」
カイルは首を傾げるイリスの頭に手を乗せ、もう一度空を見上げると――
「……? なんだ? 流れ星……?」
「こんな昼間に見えるなんて珍しいですね」
『綺麗ですね、シュー』
「わおうん!」
――空から二つの流れ星が落ちてくるのが見えた。不可解なのは、同じ方向ではなく、ひとつは遠くへ、もうひとつはまた別の場所へ、目的地があるかのように真っすぐ地上を目指していた――
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