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最終章:罪と罰の果て

その166 集う人々

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 「頼んだよアシミ。あの子あんな身体でどうするつもりなんだか……」

 「わかっているよ。しかし、やれやれ……ウチの息子は旅に出て逞しくなりすぎちゃったねえ」

 レオスの母グロリアが不安げな顔を向けながら言い、困った顔でアシミレートが答える。そこにバス子が割り込んできた。

 「まさかメディナさんの遺体も連れて行くとは思いませんでした。すみません、目を離したせいで……」

 「君が気にすることは無いよ、レオスが決めたことだ。それよりレオスを探しに出てくれるのはありがたいけど、いいのかい?」

 「はい。あのケガならそれほど遠くに行ってはいないと思うので、見つけたらそちらに合流します。で、このうさぎメモをちぎってくれればわたしの仲間達のところへ行けます。こちらのモラクスとバルバトスが引き継いでくれるので、アガレスさんへ協力を仰いでください」

 バス子が一歩横へ移ると、バルバトスが礼をしながら口を開く。

 「向こうへ到着後、仲間を呼び戻してから決戦に向かいます。それまでお待ちいただきますが、ご了承ください」

 「ありがとう。時間が惜しい、行こうか」

 するとラーヴァ国王がアシミレートに声をかけた。

 「……いいのか、一人で? 騎士団の人間を出しても構わんのだぞ?」

 「いえ、これは僕の個人的な理由で出向くだけですから。下手に関わると国を潰しにかかるかもしれないので、傍観しておいてもらえると」

 「むう……死ぬなよ?」

 「勝てばいいだけですよ。では――」

 そう言ってアシミレートがメモ帳を破ると、バルバトス・モラクス・ルキルはその場から姿を消した。続いてバス子も歩き出す。

 「ではお母様、わたしも行きますね」
 
 「アタシも行ければいいんだけど……悪いけどレオスを頼むよ」

 「はい!」

 バス子は城から出ると、一気に上昇しアスル公国へ向かう道に向かって飛び始めた。

 「馬車を使っていたとしてもそう速くは動けないでしょうし、街道沿いを空から探せばすぐに見つかりますかね」



 ◆ ◇ ◆



 「悪ぃが後は頼む。俺の名前を出せばギルドと国に国境の警備隊が出してもらえる」

 「かしこまりました。それにしても一体何が……」

 「タチの悪い魔物だったぜ。もうぶっ潰してやったけどな」

 「それは良かった。では早急に対応します」

 「よろしくな!」

 遺体を埋葬した僕達は、ペンデス国の国境付近の町”マンタ”に到着していた。ガクさんはすぐにギルドへ赴き、状況を説明。今ようやく話が終わったところだった。
 一応遺品になりそうなものは回収し、遺族に渡すよう頼んでいた。国境にはラーヴァ側とペンデス側両方の門番がいたけど、引き返すわけにもいかないためマンタの町のギルドマスターへ託す形にした。

 「ウチの領地は俺が遺族に見舞いを渡すつもりだ。ボウのやつに手紙も出したから急いでやってくれるだろうさ」

 「話が早くて助かります。僕だけだったらどうしていいかわからなかったです」

 「とりあえず食材を買ったらここを出るぞ。あんなことをする奴が敵にいるんじゃ、町民を巻き込むことになるだろうしな」

 「ええ。アスル公国までもう少しかかりますから多めに買っておきましょう」

 「ピュー!」

 食材と聞いて喜ぶテッラを撫でながら商店街へと向かう。馬達にもゆっくりして欲しいけど、野営だと魔物が襲ってくるので交代での見張りが必須なのだ。クリエイトアースが使えたり、エリィ達がいたのはやはり楽だったなと痛感する。
 ぼやいても仕方がないので、肉に魚、野菜に調味料を買い足していっていると、ふいにカゲトさんが立ち止まった。

 「カゲトさん、どうしたんですか?」

 「……いや、今、妹の声が聞こえた気がした」

 「マジか? 近くにいるってか」

 「ちょっと静かにしてくれ……。こっちか……!」

 「あ、ちょっと!?」

 僕が止める間もなく、カゲトさんはどこかへ走って行く。町中で走らせるわけには行かないので、向かった方へゆっくりと進ませていく。

 「見失った……」

 「チッ、妹のことが大事なのはわかるが、勝手に動かれても困るぜ」

 きょろきょろと辺りを見渡すも、カゲトさんの姿は見えなかった。だけど、代わりにどこかで聞いた声を耳にする僕。

 「だーかーら、カクェールさんは忙しいんです! ギルドへ行けばいいじゃないですか」

 「そうですよ! 先を急ぐんですから、その手を離しなさい」

 「嫌よ! やっと理想の人に巡り合えたんだもの。ねえ、私と付き合ってよ」

 「い、いや、俺達は今、重要な仕事をしているんだ。付き合えないよ」

 あれって……カクェールさんにルルカさん、それとティリアさんだっけ? そうか、もうペンデスに戻っていたんだ。僕はガクさんに馬車を任せてカクェールさんに近づいて声をかける。

 「お久しぶりですカクェールさん!」

 「え? ……えっと、誰だっけ……?」

 「え? ……あ!?」

 そうだ、あの時の僕は女の子の姿だったから男の恰好は知らないんだっけ!?

 「あ、その。スヴェン公国で共闘したレオスです。ソレイユの方が分かるかな……。賢聖エリィとか拳聖ルビアと一緒だった……」

 僕の言葉にカクェールさん達が目をぱちくりし、しばらく考える仕草をする。やがてカクェールさんがポンと手を打ち思い出す。

 「スヴェン……あー! 冥王とガチで戦ってた子か! ……女の子、だったよな?」

 「ええ、あの時はちょっとした薬で女の子になってたんですよ。カクェールさん達も戻ってたんですね」

 「ああ。ティリアも無事だったし、褒賞ももらえたからありがたかったよ。レオス、でいいのかなクロウ達から話は聞いているよ」

 そう言われてギクリとする僕。クロウは帰り着いていたようでホッとする。

 「良かった、アニスも無事ですか?」

 「ああ。今はちょっと買い出しに出ているんだけど、元気だよ。レオスのことを心配していたけど、生きていてよかった」

 「そうですね! 僕はもう少ししたらアスル公国へ向かうために出発しますけど、カクェールさん達は?」

 僕が尋ねると、ルルカさんが腰に手を当て、怒りを露わにしながらカクェールさんの腕に絡んでいる女性を見ながら口を尖らせた。

 「よくぞ聞いてくれたよ! 馬車を調達しようと思って町を散策していたんだけど、この子が冒険者に絡まれているところを見つけて助けたんだ。そしたらカクェールさんがかっこいいって付いてきちゃったんだ」

 「いいじゃない。あんたみたいなちんちくりんより、私の方がカクェールさんに相応しいわ!」

 「なにおう!」
 
 「なによ!」

 「あ、あの、わたしもカクェールさんが好きなんですけど……」

 モテモテのカクェールさんが眉間を押さえて唸っていると、突如背後から大声がかかった。

 「見つけたぞフヨウ! さあ、家に帰るんだ!」

 カゲトさんが珍しく感情を露わにして立っていた。その声に、カクェールさんに抱き着いていた女の子が反応する。

 「げ!? お兄ちゃん!? どうしてここに!?」

 あ、面倒な展開になる気がする!?
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