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第八章:動乱の故郷
その146 いざ、採掘場へ!
しおりを挟む<光曜の日>
「なるほど、そんなことがあったんですね……」
「僕まだ何も言ってないよ!?」
と、メディナに頭を齧られながら適当なことを言うバス子。とりあえず冥王の面影などどこにもないメディナを引き離すと、バス子は悪魔達の現状を語ってくれた。
穏健派の悪魔達は各国の町を虱潰しに当たり、”旅の男”を探すのだという。ラーヴァはバス子が来たので、僕達が暗にその役目を負うことになりそうだ。利害の一致でもあるのでこれは問題ない。
そしてもう一つ、僕達にとっては問題ないけど、バス子達にとっては深刻なことがあった。それはバス子達悪魔のトップであるバアルという人の遺体が無くなったらしい。
元々、エスカラーチの復活方法をアテにしていたが、一時的にしか蘇れないことを知って諦めた。それでも故郷の土で埋めたいと思い、誓いの意味をこめて姿を見に行ったところ、無くなってたそうだ。
「アガレスさんが出し抜かれるとは思えませんが、現に消えたのは間違いないです」
「……悪魔の中に裏切り者がいるとか?」
エリィが難しい顔でバス子に問うが、バス子は首を振って否定する。
「過激派もいますが、基本的にバアル様やわたし達仲間を裏切るということはありません。もし裏切れば……」
「裏切れば……?」
ごくりとのどを鳴らすベルゼラ。僕もどうなるのか気になるところだと、バス子の言葉を待つ。
「ああ……! こんな恐ろしいことを口にできません! というわけで、わたし達が裏切ることはないでしょう」
期待していた答えが返ってこず、思わずガクっとなる。
「制裁か死か、みたいな感じでしょどうせ。あたし達に突っかかってこなければどっちでもいいし。それは悪魔達に期待していいわね?」
「ええ」
自信たっぷりに頷いたので、本当に裏切りは無いと確信しているようだ。
「とりあえず悪魔が僕達に突っかかってきたら説得を頼むよ? で、僕達は――」
バス子に各国も旅の男を探していること、それとアースドラゴンの卵を孵化させた後、ラーヴァ国へ向かうという目的を伝える。
「このデカブツはドラゴンの卵だったんですねえ。相変わらず退屈しませんね、採掘場まで早く行きましょう!」
元気なヤツが帰ってきたと僕は苦笑し、休憩後、再び馬車を走らせる。クロウとアニスが警戒し、迎撃していたけど、ドラゴンの卵に魔物が不自然に集まりすぎな気もするなと思いつつ目的地へと進む。
<闇曜の日>
適度に休息を取りながら本来町へ進むべき道を外れていくと、少しずつ山の方へと登って行く道へ入った。この辺りは道も狭いので魔物に出会いたくないところ。
「あ、下に町が見えますね!」
「本当だ。レオス、この山は越えられるのかい?」
「うん。町が二つあるって言ったと思うけど、二つ目の町へ石を運ぶこともあるから、そっちへ続く道もあるんだ。遠回りだけど、元の道に戻らなくていいから軽いロスって感じかな」
「なるほど。そうだ、卵が孵化するまで時間があるみたいだし、また手合わせを頼むよ」
「ええ……一回だけって言ったじゃないか……」
「自分と同じくらいの年で、格上なんて絶好の相手だよ? 頼むよ」
「う、うーん、気が向いたらね」
御者台に座る僕の隣で語るクロウを見て、エリィが笑う。
「いいじゃないレオス。力は抑えすぎると錆びつくわよ? なんなら魔法の相手は私がやるけど? 最近はレオスが守ってくれるから、なまっている気がするのよ」
「私でもいいぞ」
メディナまでそんなことを言いだし、ベルゼラも手を上げて立候補する。うーん、折角だし対戦形式で訓練するのもいいかもしれない……
そんなことを考えているうちに僕達は採掘場へと到着していた。流石に廃坑になっているだけあって静かなものである。
すり鉢状になった採掘場跡まで降り、僕達は野営の準備を始める。そこへ不安げなアニスが口を開く。
「えっと、こんな見晴らしのいい場所で野営って大丈夫かな……?」
「それもそうね。レオス、どうしてここなの? 坑道内でもいいんじゃない?」
ルビアも不思議そうに尋ねてきたので、僕は馬に水をやりながら答える。
「そのあたりは考えてあるよ。人が居ない場所なら、クリエイトアースで大きな壁を作れば入ってこれないでしょ?」
こんなふうに、と、十メートルくらいの壁をドンと作るろ、ベルゼラが拍手をしてくれた。
「なるほど、さすがはレオスさん! でも、いざ出ようとした時に囲まれてたりしないかしら?」
「その時はレビテーションで飛んで一掃すればいいかな?」
「あ、それいいわね! 私も飛ぶ練習する!」
エリィもノリノリだったので、この作戦で行くことに決まり、とりあえず僕がクリエイトアースで作ろうとすると僕の左手が疼いた。
「なんだろう……腕がムズムズする……」
「レオス、どうした?」
メディナが近づいてきた瞬間、僕の足元、正確には影からズズズ……と、人影が現れ――
もにゅん
メディナの胸をタッチした。
【ほほう、この弾力、この乳はいいも――】
ぐしゃ!
「殺す」
「なんかよく分かりませんけど手伝いますよ!」
【ぎゃああああ!? ほんの茶目っ気じゃないですかぁぁぁ!?】
そう叫ぶ白衣のようなものを着た黄土色の髪の毛をした男を見て、僕は頭を抱える。エリィも知っているからか、困った顔をしていた。そこへルビアが汚物を見る目で男を見ながら声をかけてきた。
「こいつなんなの? レオスの影から出てきたように見えたけど……」
「う、うん……」
口ごもっているとベルゼラが手をポンと打ってから口を開いた。
「もしかしてトゥーン村の時に助けてくれた大男と同じ……?」
「……そう。デバステーターと同じで僕の分身……フェロシティだよ」
僕がそう言うと、メディナとバス子にズタボロにされたフェロシティが静かに喋り出した。
【わ、私の名は左腕のフェロシティ……以後、おみしりおき、を……】
そこでフェロシティは力尽きた。何しに出てきたんだよ!?
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