131 / 196
第六章:大魔王復活?
その124 冥王とガイスト
しおりを挟む「大人しく……捕まってくださいよ!」
「アイムを必要以上に傷つけないでねバス子! 単純な力押しでいい、動きを封じさえすれば!」
空中からバス子の槍で牽制しつつ、僕が地上で動きを止めれメディナが取りつきやすいかと思っていた。
だけど、なかなかどうして、見ていないはずの方向から来る槍は体の動きだけで回避し、剣は後ろに下がりながら僕を捌くのに使っている。
【クク、我の攻撃手段が剣だけだと思ってもらっては困る! 《メンタルブレイク》】
ガイストが聞いたことも無い魔法を唱えると、パキン、と、僕の視界が一瞬弾けた。
「目の前がチカチカする……!」
「はらほろ~……」
僕はその程度ので済んだけど、空を飛んでいたバス子には効果は絶大だったようで、ふらふらと別の場所へ飛ぼうとする。
「危ない!」
「ひゃん!? 尻尾はだめぇ!? ……ハッ! ありがとうございますレオスさん。こいつ、結構やりますね」
【どうして槍が当たらないか気になるか? クク、なに、種明かしをすると簡単だ。アイムの視界と我の視界は別々に使っている。アイムの視覚外からの槍は我が。剣はアイムの視点を使えば難しくはない】
とは言うけど、二つの視界を同時に見て混乱しないはずはない。視えていても、体を動かすのはまた別の話だからだ。
そういうことに特化している、と言えばそうなんだろうけどこちらとしてはかなりやりづらい。そっちがそうならこっちだって……!
「<クリエイトアース>!」
僕は足を踏み鳴らして魔法を使う。だが、今の段階では何も発動しなかった。
【ふん、何も起きないではないか! 諦めたか? 《ライトニングアロー》】
余裕の表情だけど、それでも何かを察したガイストは一歩後ろに下がりながら、やはり聞いたことが無い魔法を使って攻撃を仕掛けてきた。
だけど、僕はニヤリと笑いバス子へ合図をする。
「縫い付けて!」
「ほえ?」
直後、
【何!?】
一歩下がったガイストの足元にぽっかりと穴が開き、吸い込まれるように落ちて行った。そこへ、先ほど放った僕の言葉の意味を理解したバス子が、落とし穴へ突撃する。
「伊達に三つ又の槍じゃないんですよ、こいつは!」
【ぬぐ!?】
駆けつけると、見事、首へ槍の隙間を入れて地面に縫い付けていた。
「バス子、下がって! メディナ!」
「ウム」
いつの間にか冥王スタイルになっていたメディナがバス子と入れ違いで落とし穴へ入っていく。仮面が結構ひび割れていたけど大丈夫かな……
「グアアア!?」
「メディナさん!? まずい……!」
バス子が珍しく焦りの声を上げてメディナを引き上げようとするが、
【クク、相当力を落としているようだな……我をこの娘から引き剥がすどころか、このままでは我がその体を乗っ取る方が先になりそうだな! ははは!】
「くそ、失敗か……今助けるよ!」
思いのほかメディナの能力は下がっていたようで、アイムからメディナへ体を乗り換えるつもりのようだ。そうはさせまいと救出に向かうも――
バヂィン!
「うわ!? バリア……?」
【落とし穴で我を封じたつもりだろうが、むしろ好都合。このまま冥王の体を頂くとしよう! 今度こそ我が本物の冥王となるのだ……!】
「グ、ウウ……!」
【しぶとい……!】
「今度こそってどういうことだ! <インフェルノブラスト>」
どぉん! と、僕の魔法がバリアを直撃し、大気が震える。
【お、おお!? な、なんて魔力をしている……!? お、教えてやろう、大魔王様が冥王を冠する魔王を作る時、我とメディナを作ったのだ。そして選ばれたのは、メディナだった……! こいつに負けたのだ、我は!】
「……オマエハシッパイサク……」
【大魔王様がそう言っていたな! だが、お前と我で一体何が違うというのだ? ……いや、それはもはや意味はないか。メディナ、お前の体は我が活用してやる!】
「グウウウ……」
「メディナ!? <クリムゾンアッシュ>!」
「ちょ!? レオスさん!? うわ!? すご!?」
ドゴォオォン!
「よし!」
最大級の魔法がバリアを打ち破る音が聞こえ、僕は落とし穴を覗き込む。
「レオスさん!」
ビュ!
「おわ!?」
バス子に体を引かれた直後、僕の顔があったところにライトニングアローとかいう魔法が通り過ぎた。そして穴からスゥっと冥王メディナが空を飛んで出てきた。
【外したか。まあいい、肩慣らしをさせてもらう】
「お前……!」
「の、乗っ取られたんですか……!?」
【違うな。正しく扱う者になっただけだ。《デスシックル》】
ヒュン!
「チッ! <ファイアアロー>!」
「あわわ! 槍! 槍!」
高速回転する黒い刃を剣で弾き、魔法でガイストに仕掛ける。
【ぬるい】
ボロいローブをサッと翻しただけで、ファイアアローは掻き消えてしまう。そういえば魔法は効かないんだっけ。メディナは掌で消していたけど、こいつは全身で消せるらしい。
「なら、その仮面を壊して――」
【いいのか? それをすればメディナは消えるぞ? 我は別の体に乗り換えればいいだけだがな。まあ、こいつを生かしておく理由も無いか? 《ソウルサック》】
「う……ううう……」
「がああああ……」
「なんだ……?」
ガイストが魔法を使った瞬間、待機していた村人が苦しみだし、みるみるうちに顔色が青紫になっていく。その後、ガイストの魔力が高まっているのを感じた。
【ふはははは! いいぞ! 少し魂を取り込んだだけで力がこれほど漲るとは。村人でこれだ、お前達はさぞかしいい餌になりそうだな……! 《ダークネスシックル》】
速い!
黒い鎌を携えたガイストが僕に迫る。アクセラレータを使う間もなく目の前に現れた!
「くっ!」
【ふむ、この身体になってから気づいたが……お前の身体は相当なものだな? お前の身体を使った方がさらに強くなれるか?】
「させないよ!」
ガィン!
【おっと!】
「えっへっへ! こっちにもいますってんだ!」
バス子も復帰し、背後から攻撃をする。しかしボロ布を揺らすだけで手ごたえは無さそうだった。
【どうした? この仮面が弱点だぞ? そうら!】
「うわ!? ええい、メディナさん、しっかりしてくださいよ! あんたが本物の冥王でしょうが!」
鎌を捌きながら吠える。何とか糸口が無いものか探すためにも、今は攻撃を続けるしかない。
「<レビテーション>! でやあ!」
【いいぞ! その調子だ!】
「!?」
僕が上を取ってセブン・デイズを振り下ろすと、ガイストはぐるんと首だけを僕に向け、仮面を壊させようと自分から突っ込んでくる。軌道を変えて無理やり肩口に当てるが、バランスを崩した僕の脇腹へ鎌の刃が一閃した。
「痛っ……!」
【とどめだ】
「レオスさん! ……自分を人質にするなんて、いやらしいやつですね……!」
バス子のフォローで難を逃れた僕はダークヒールで傷を癒す。
【何とでも言え。《ブラックペイン》】
スヴェン公国でメディナが使った魔法が展開される。あの時は両手からドラゴンの頭が二本だったけど、今回は全部で八本も出していた。
だけどあれくらいならフルシールドで防いで……防いでから、どうする……? あの体の下には手ごたえを感じない。恐らく仮面を破壊するしか打つ手がない。だけどそれをすればメディナは……
【じっく魂を貪ってやる……行け!】
「来ますよレオスさん!」
ガイストの声で、僕とバス子が身構える。
だが――
【な、なんだ……!? なぜ行かない! か、体が……動かんだとぉ!?】
ガイストはギギギ……とまるで関節がさび付いた人形のように動かなくなっていた。
「レオス。今、仮面を破壊する」
「メディナ!」
いつもの調子でメディナが話しかけてきた。
10
お気に入りに追加
1,600
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる