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第六章:大魔王復活?

~Side6~ 忘れてないよ?

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 <ノワール城>

 「――最終的にレオバールは何者かに連れ去られました。追いかけるのは困難だと推測し、まずは報告のため帰還しました」

 そう言って頭を下げたのはマスターシーフのフェイアート。レオス達が温泉のある村へ到着したころとほぼ同じ時期に依頼主である宰相の元へと戻っており、今しがた報告を終えたところだった。

 「レ、レオバールがやられたってのか……? う、嘘だろ……ハッ!?」

 焦るアレンの姿をチラリと見た後、玉座で静かに報告を聞いていた聞いていた国王が渋い顔で口を開く。

 「剣聖ほどの男がやすやす捕まるとは。それにお主たちも相当な手練れと見た。それがそう言うのだから余程のことか。それよりも問題が出て来たな? 勇者殿」

 「う……!?」

 そう、フェイアートが装備を持って帰ってきた。そしてアレンやレオバールの仲間でも無い彼は、詳細を国王に報告したのだ。

 ――ということレオスに対する狂言だということが判明した瞬間である。


 「ふう、まさか大魔王を倒した英雄が金欲しさに、こともあろうに旅をした仲間を脅迫するとはな……」

 「あ、あの、お、俺は止めたんです! で、でもレオバールに押し切られて……」

 すると、国王は激高して立ち上がり、アレンに告げる。

 「貴様は勇者であろう! ただでさえ商人を連れ回したというのも恥ずかしいというのに、さらに報償を横取りだと? ふざけるのも大概にせんかぁ!! 光の剣に選ばれた時、『世界の為に大魔王を倒すのだ』と、私の前で語っていたお前はどこへ行った? ちやほやされたせいか? 自分の力に酔ったか? 貴様だけではなく、他の聖職のおかげでもあることを忘れたか!」

 「う、うう……」

 アレンは一気に捲し立てられると、項垂れて口を噤む。一息ついた国王は玉座に座り直すと、フェイアートとペリッティへ礼金を渡すように指示する。

 「すまなかったな。レオスは元気そうだったか?」

 「ありがたく頂戴いたします。ええ、面白い少年でしたよ。商人らしいけど、戦闘力は聖職かそれ以上でした。剣聖に詰め寄られましたが圧勝でしたよ」
 
 「本当か? 確かにおかしな雰囲気を出しておったからな。それほどか?」

 「ええ。それに『自分は悪神だった』という言葉が気になります」

 「悪神だと……? どういうことか」

 「私も遠くから聞いていただけなので本人に聞いてはいませんのでこれ以上は。冥王と互角にやり合うあたり、本当にやばいやつですよあいつは。……それで、これからどうしますか? 大魔王クラスの怪しい奴らを調査した方が良いのでは? あ、レオバールは自業自得だから救出しなくてもいいと思いますけど」

 フェイアートが軽い調子でそういうと、神妙な顔をし、顎に手を当ててから考え込んでいた。沈黙に耐えられなくなったアレンは装備を持ってそそくさと立ち去ろうと喋り出す。

 「そ、それじゃあ俺はこれで……ひ、姫との結婚も無しでいいので……」

 そこで国王の目がカッと見開き、またもアレンを一喝する。

 「当たり前だ馬鹿者! 誰が結婚などさせるか! 聖職クラスで強いなら真面目なレオスの方が良いわ! ふう……アレン、貴様はレオバールを探しに行け。その過程で連れ去った者達の正体を掴むのだ。そうすれば今回の件は不問にしてやろう。戻ってきたら不自由ない生活は保障しよう。領地を与えてもいいが、恐らくまともに運営できんだろうし、この方が双方にとって良かろう」

 とげのある言い方にカチンときたが、それより問題があると気づきアレンは冷や汗を出しながら国王へ尋ねる。

 「どこに連れ去られたかもわからないヤツを探すなんて何年かかるかわからないじゃないですか!? それに、大魔王クラスだったら俺一人では解決するのは難しいですよ!」

 「だったら仲間を見つけて旅をすれば良かろう。国をあげて調査することになるだろうから、各国には協力するよう通達する。だから安心するがいい」

 「そんなあ……折角命がけで大魔王を倒したのに……ひ、姫様助けて……」
 
 と、結婚相手へ泣きつくが、
 
 「勇敢に大魔王を倒した人だから結婚しようと思いました。だけど、仲間を裏切るような人と結婚する気はありませんわ! 反省なさい!」

 あっさり一蹴されてしまった。

 「出発は任せるが、三日経ってもうじうじしているようだったら追い出すから、それまでにじゅううううううぶんに用意をしておけよ?」

 「わ、わかりました……」

 観念したアレンが謁見の間から去り、ため息を吐いてから国王が話し出す。

 「さて、フェイアート。それとペリッティだったか」

 「は」

 「はい」

 「済まないが追加の依頼だ。アレンに同行、もしくは陰から監視をお願いしたい。このまま逃げても困らないが、光の剣を持った勇者が我が国から選出されているのでな。くだらないプライドだと笑ってくれて構わんが、メンツというものがある」

 そこまで言うと、フェイアートが制止し口を挟んだ。

 「わかってますよ。俺……私にできることなら協力します。……弾んでくださいね?」

 「もう、フェイはすぐそうやって……とりあえず依頼は受けます。アテが無いので、一度スヴェン公国へ行きます。できれば聖職二人に協力を仰げるよう接触をはかります」

 「手段は任せる。『勇者でも止められない』とはどういうことなのかを突き止めてくれ。レオバールはどうでもいい」

 「承知しました」

 フェイアートとペリッティが頭を下げると、国王は話を続ける。

 「後の問題は……レオスか」

 「まあ、強いですから協力は仰ぎたいですな」

 「そうではない。あやつが『悪神』と言ったことが気になってな」

 そこでフェイアートが喋る。

 「この世界に神は居ない、ってやつですか? それに光の剣を授けた女神もいつしか消えたらしいですね」

 「そうだ。レオスが持って行った魔剣……名をセブン・デイズというが、かつてその神を倒した邪悪な者が持っていたとされるものなのだ」

 「はあ!? どうしてそんなものがここに……っていうか、あげちゃったんですか!?」

 ペリッティの驚きを手で制する国王。

 「あれはただの剣だったからだ。少なくとも私にはそうだった。他の者が抜いても、その辺の鋼の剣とさほど変わらん代物だったからだ。宝石は値打ちがありそうだったから、レオスが欲しがったものだと思ったのだが……」

 「……魅かれた……いや、惹かれたってことでしょうか? あの子、邪悪とは反対の真面目そうな感じでしたけど」

 姫が不思議そうな顔で首を傾げて呟くと、国王は目を細めて言う。

 「どんな人間にも暗い影はあるものだ。わざわざ『悪』と自分で言い放つくらいには何かあるのだろう。しかし、まだ16か17歳だったはず……そんな暗い過去があるとは思えんがな……」

 そこへ宰相が近づいて声をかける。

 「ファン様、そろそろお時間が……」

 「ああ、ようやく名前が出た……じゃなくて、済まないが、謁見はここまでだ。出発前には一度声をかけてくれ」

 「わ、わかりました。では……」

 そういって二人も謁見の間を後にする。

 国王は執務へと戻り、書類にサインをしながら考え事をするのだった。

 「(……大魔王を操っていた黒幕? それにしてはそれ以前の活動が……いや、第三勢力ということも有りうるか? 冥王が生きていて、スヴェン公国が乗っ取られかけた。それならもっと以前に――)」

 できることは少ない上に情報も少ない。だからこそ、今備えるべきだと、やっと名前が出たファン国王は行動を開始する。
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