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第六章:大魔王復活?

その116 疑心暗鬼?

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 <明曜の日>

 ギルドを後にした僕達は程なくして町を後にし、再び旅へと戻っていた。ポクポクと早足で馬を走らせていると、ルビアが御者台にきて僕に言う。

 「ごめんね、急いでいるのに妙な依頼を受ける羽目になって。向こうに着いたらあたしが責任をもってギルドへ届けるからレオス達は先に黄泉の丘へ行ってて」

 「え、別に気にしなくていいのに? いつもならみんなで行く感じじゃない」

 「ですねえ。姐さん、変なところで気を使ったり優しかったりしますよね。一人で行くつもりですか?」

 「一人は危ない」

 そこにバス子も屋根からにゅっと顔を出して喋り、さらにその横からメディナも顔を出す。この二人高いところが好きなのかな? なんかいつも屋根に居る気がする。そんな僕の胸中はつゆ知らず、

 「変なところとはなによ! というか冥王に心配されるのも不思議な感じね……というか、明らかに『臭い』のよね」

 「下着は洗っている」

 「その臭いじゃないって。どう考えても怪しいってこと。だいたい、馬車に偶然ぶつかったヤツがギルドマスターの知り合いで、聖職に頼むような依頼を”今”携えているなんてことある?」

 ルビアが肩を竦めると、エリィも荷台から顔を出して口を開く。こっちも予想通り、といった感じで話始める。

 「私達……というより、私とルビアに対して何らかの意図があるのは間違いないでしょうね。それがなにかマズイことや悪魔がらみならと思って受けましたけど」

 「私はそこまで気にならなかったけど、エリィとルビアさんが言うなら何かありそうね」

 「む、あれは? ……レオス、止まれ。あの時の二人組だ」

 「二人組……? ヴァリアン、エレガンス。ちょっと待って」

 なんのことだろうと思い、馬を止めて後方を見ると、

 「ふう……やっと追いついた……」
 
 「やっぱりお馬さんの方が速いね……わたしも頑張ったんだけどねえ」

 「クロウにアニスじゃないか。どうしたの、そんなに急いで? はい、水だよ」

 なんと、ルビアに戦いを挑んだクロウ達が息を切らせながら荷台に背を預けたので、慌てて水を飲ませてあげた。

 「ありがとう」

 「お二人はお急ぎだったんですか? 列は後ろだったから、結構差がありましたよね」

 「ううん。わたし達は急ぎじゃないんだけど、それこそ列を作る原因だった国境でルビアさん達の話を聞いちゃってね――」

 と、アニスがその時の話をしてくれる。僕達、というか聖職二人を味方につけたいというような趣旨を話していたのだと言う。

 「ビンゴだったかあ。当たって嬉しいものじゃないのが厄介ねえ……」

 「レオス君達は使用人じゃありませんよ! 抗議しましょう!」

 「はは……」

 話の中で、僕とベルゼラとバス子とメディナは二人のお世話係ではないかと推測されていたらしい。まあ、別に怒ることでもないので、話を続ける。

 「わざわざ教えてくれてありがとう。二人はこれからどうするの? 良かったらこのまま乗せて行くけど」

 「いいのかい? 流石に半日ほど走りっぱなしだったから休ませてくれると助かるよ」

 「ふふ、アニスちゃんはもう寝てるけどね」

 「ああ……追いかけるのに補助魔法をずっと使い続けていたから僕より消費が激しかったのかもしれない。申し訳ないけど……」

 「全然いいよ。クロウもゆっくり休みなよ、まだハイラルの王都までは……ありゃ」

 「ぐー……」

 よほど疲れていたのか、クロウは喋りながら寝てしまっていた。僕は二人に毛布を掛け、ルビア達にそっと体を横たえてもらった。幸いというか、バス子とメディナは屋根の上に行くので寝るスペースが十分確保できていた。

 そして――

 その日はもちろん野営となり、パチパチと焚火を囲んだ状態でこれからのことについて話し合う。

 「お腹いっぱい」

 「太りますよ……? で、あの話を聞いてどうするか、ですよね? そもそも彼らが本当のことを言っているとも限りません。ギルドの思惑に乗せないための狂言の可能性も考えないと」

 バス子が片目を瞑って核心を話し出す。まったくもってその通りで、クロウが何かを企んでいてもおかしくない。しかし妨害する気なら、ルビアが聖職だと知っているクロウはギルドで依頼を受ける前に接触しくるべきではないだろうか? 
 かといって、そこまで織り込み済みならこのまま放逐するのは危険な気がする。するとルビアが手を上げて提案を口にする。

 「昼間の続きだけど、あたしは王都へ行って書状をギルドへ届けるわ。その間、レオス達は大魔王の復活をお願い。で、あたしはクロウとアニスを連れて行くわね」

 「本気?」

 「ええ。これでも拳聖だからね。だいたいの相手なら制圧できるし、危なくなったら逃げてくるわよ」

 「私も行きましょうか?」

 エリィが心配そうに声をかけるが、ルビアは首を振って答える。

 「大魔王の方は本当に何が起こるかわからないからそっちを頼むわ。炎の精霊と契約したんだから、余裕だって!」

 ぐっと力こぶを作るルビアにみんな笑い、まあ、そこは信用できるかなどと言い合っていたところでメディナがルビアの前に行き、スカートの中からなにやらメモ帳のようなものを取り出して一枚破った。

 「うさぎさんですか? 可愛いメモ帳ですね」

 「うん。可愛い。拳聖、これを持て」

 「お守り?」

 メディナは首を振り、続けて割ととんでもないことを言う。

 「違う。赤いうさぎさんのメモを破ると、私が拳聖のところへ転移する。青いうさぎさんは私のところへ転移する使い捨ての転移魔法道具」

 「へえ……」

 ルビアが可愛いメモ帳をしげしげと見つめると、メモにはそれぞれ『1』と『2』の数字が書かれていた。メディナの方は逆の数字だ。

 「危なくなったら逃げる。手が必要なら呼ぶ」

 「いいの? レオスの傍がいいんじゃないのあんたって」

 「いい。お前に何かあってもレオスは『アレ』になるかもしれない。それは避けたい」

 ……意外と、というと、言い方が悪いかもしれないけどちゃんと考えているメディナだった。ルビアはごくりと喉を鳴らして頷いた。

 「……だったら嬉し……いやいや、何言ってるのよあたし!? ありがたくいただくわね」

 最悪の状況が来ないことが一番いいけど、こういう時はイレギュラーが起きるものだからね。

 「それじゃ、そろそろ寝ようか。まだ王都までかかるからね」

 「そうしましょうか。……さて、今日は負けないわ……!」

 「今日は私の番」

 「ふふふ、賢聖の力を甘く見ないでくださいね♪」

 不穏でしょうもない戦いを尻目に僕は就寝する。次の日からはクロウも元気になり、ルビアについていくことを了承してくれた。アニスはなんだか楽しそうだったかな。

 

 「それじゃ、僕達は黄泉の丘へ行ってくるよ。三人とも気を付けてね」

 「ありがと。それじゃ、あたし達はこっちに」

 
 クロウ達と合流してから三日。僕達は王都の直前で二手に分かれる。さて、大魔王の復活といこう!
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