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第六章:大魔王復活?

その115 怪しげな依頼?

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 <明曜の日>

 「ささ、こちらへ」

 「あ、はい」

 「早くしてよね」

 ″エリィとルビア”を丁重にギルドへ迎え入れていく、先ほどの男性。僕達は後からついていく形となる。なんでもギルドマスターの話を聞いて欲しいと言うのだ。

 「なーんか嫌な感じがしますねえ」

 「ええ。でも二人は有名人ですし、特に名も知られていない私達に興味が無いのは仕方がないわよ」

 「えっへっへ。大魔王を倒したのが実はレオスさんで、娘のお嬢様がここにいると知ったらあいつ度肝を抜かれますよ!」

 「そして私は冥王。お前はただの貧乳」

 「やかましいですよ!? おっと、どうやら準備ができたみたいですね」

 バス子がルビアの後を付いて行こうとした瞬間、先ほどの男がバス子を止めた。

 「すみません。お付きの方々はちょっと……」

 「お付きの方々!? わたし達は――」

 バス子が男性に食って掛かろうとしたので、僕はバス子を止めて言う。

 「僕達が必要ないなら別に聞きたいわけでも無いですし、構いません。ただ、僕達も用事があるので急いでくれると助かります」

 「何? それは聖職様が決めることだろうが。お前ごときが口出す権利は無かろう。冒険者か? カードを見せろ」

 急に横柄になった男性にギルドカードを渡すと、眉をぴくっと動かしてから僕に突っ返してきた。

 「……ふん、Cランクか。まあまあだな」

 「こいつ殺していいか?」

 「ダメだよ!? メディナは僕のことになると過激になりすぎだからさ。いつもは大人しいのに……」

 「まあどっちにしても聖職以外はダメだダメだ」

 と、男性がエリィ達を部屋へ案内しようとしたが、二人の顔は物凄いことになっていた。どれくらいかは想像にお任せします。

 「……その人達が一緒でなければ私はお話を聞きません」

 「へ? い、いや、こんな雑魚みたいなの……」

 「雑魚ねえ。さっきあんたが飛び出してきてから今まで、あたし達がみんなをコキ使ったり、さげすむ発言をしたかしら?」

 「い、いえ、でもこんな……こいつはCランクですし……」

 そこでルビアがすぅっと息を吸って大声で叫ぶ。

 「いいから、ギルドマスターに聞きなさい! あたし達はみんなと一緒じゃなければ帰るわよ!」

 「わ、わかりました……!?」

 周りにいた人たちもその剣幕にぎょっとしてこちらを見て固まる。男性は慌ててギルドマスターの部屋へと駆け込んだ。

 「おー」

 ぱちぱちとメディナが拍手をし、僕達はエリィ達のところへ集まった。

 「かっこよかったよ、ルビア」

 「もう、ああいうランクとかで見下してくるやつはほんと嫌いなのよね」

 「姐さんにびびってましたね。いい気味です」

 「それにしても私達に何の用なんでしょうね。あ、戻ってきました」

 エリィがそう言うと、男性が冷や汗をかきながら戻ってきていた。しどろもどろになりながら口を開く。

 「あ、あの、こちらへお願いします……皆さんで」

 「はい!」

 エリィが元気よく返事をし、僕達はぞろぞろと中へ入っていく。というか何気に大所帯だよね。女の子ばかり……
 部屋の一番奥にはデスクがあり、部屋の中央に来客用のテーブルとソファが備え付けられていた。促されて女の子達がソファへ座り、僕は後ろに立つ。

 「座ればいいのに」

 「人数分は無いからね僕はここでいいよ」

 そこでギルドマスターであろう向かいに座る男性がニヤリと笑って口を開く。灰色の髪に切れ長なの目をしている、イメージとしては狐っぽい感じのイケメンだ。その彼がニヤリと笑い、ゆっくりと口を動かす。できる……? そういう雰囲気だ。

 「ウチの冒険者が申し訳ないっ!」

 突然パンと手を合わせて頭を下げてきた! 

 「俺はギルドマスターのフェネク。まずは失礼を詫びさせてくれ、エリィさんにルビアさんの仲間達、すまなかった」

 「いえ、こういうこともあるのはわかっていますし問題ありませんよ」

 「そう言ってくれると助かる。聖職を見て舞い上がったのだろう」

 「それで、話というのは? 私達も急いでいるので……」

 エリィが素早く切り込むと、フェネクさんは咳ばらいを一つして語り出した。

 「……実は、国王宛に書状を届けて欲しいのだ」

 「書状? 他の冒険者じゃダメなの?」

 「ああ、できれば高ランクの信用が出来る者がいいと思って逡巡していたんだ。ちょうど出払っていてね、そこへ通りがかったのがお二人だったというわけ。どうだろう、報酬はもちろん渡す。なるべく早く渡したいから頼まれてくれないだろうか」

 この通り、とやはり手を合わせて頼み込んでくるフェネクさん。エリィが一瞬考え、僕を見上げて言う。

 「レオス君、どうしましょう。届けるだけなら受けてもいいかと思うんですけど。私達の馬車は速いですし、お急ぎならちょうどいいかも」

 「うーん、そうだね。期限はどれくらいなんですか?」

 「え、ええ? あ、そうだな、ここから王都まで乗合馬車で三日かかる。五日以内に届けてくれると助かるな」

 「それならいいかしら? いい、受けても」

 「大丈夫だと思うよ。報酬は? それと重要度はどれくらいのものでしょうか? 封蝋はありますか」

 僕が矢継ぎ早に尋ねるとフェネクさんがまた僕とルビアの顔を交互に見比べて声をあげる。

 「ええー……? 金貨三十枚でどうかな? 封蝋はあるから、極秘内容だと思って貰って構わない。王都に到着したら向こうのギルドを一度訪ねてもらい、城への許可をもらってくれ」

 王都には入らないとダメか……まあ、エリィとルビアを城に行かせて僕が黄泉の丘というパターンでも問題ないかな?

 「わかりました、その依頼、受けます」

 「ちょ、ちょっと待ってくれ!? どうして君が決めているんだい? 聖職はこの二人だろう? エリィさんたちもどうしてこの子に尋ねるんだい」

 「え? だってこのパーティのリーダーはレオスだからよ? あたし達は付いて行っているだけだから」

 「はあ?」

 「レオス君のご実家に挨拶をするためにラーヴァ国へ向かっているんですよ」

 フェネクさんが僕とエリィ達を見比べた後、

 「マジか……冴えない顔をしているのになあ……」

 「レオスはかっこいいし強い。わからせるか?」

 「だからいいって!? ま、まあ、そういうわけなんで依頼は受けます。他に注意事項などはありますか?」

 「あ、ああ、後はこの契約書を――」

 と、細かい説明を受けてから僕達は今度こそ町を出発できた。書状は鉄の筒に入り、封蝋どころか封印の魔法もかかっているみたいだった。まあ、渡せばいいだけだし、これで金貨三十枚ならアリかな?



 ◆ ◇ ◆


 「ふう、何とかなったか。後は向こうにいるネックスと合流をしてくれればことが運ぶか」

 「ですね。それにしてもあのガキ、めちゃくちゃ羨ましい……」

 「ははは。あの年でハーレムだからなあ。俺も驚いたよ。拳聖はちょっと口説こうかなと思ったけど、ありゃダメだ。全員レオスにいかれていやがる。さ、俺達も準備するぞ」

 「わかりました」

 レオス達を見送った後、フェネク達は再びギルドの中へ入る。

 が、

 「(チッ。一足遅かったか。しかし、何か人間達が企んでいる様子……変装して便乗させてらもらおうか)」

 悪魔の一人、ダンタリオンが徐々にレオス達に追いついてくるのだった。
 
 



 
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