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第六章:大魔王復活?

その114 贈り物

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 <闇曜の日>

 国境からさらに一日。旅は順調に進み、中継地点であるクライルの町へ到着。
 
 ちなみに門番さんとのやりとりは普通だった。特にゴタゴタがありそうな感じでも無い。街並みは前の町より小さく普通なのでここは一泊したら素通りでいいかもと思っていた。

 「宿に向かうよー」

 「はい! 明日はすぐ出発しますか?」

 「そうだね。国境を越えたら後は黄泉の丘へ向かうだけだし」

 エリィの言葉を返していると、バス子が屋根からひょこっと顔を覗かせてつまらなさそうにぼやく。

 「まあ、小さい町ですしね。国境から出て左に行けば大きい町でしたっけ?」

 「うん。でも黄泉の丘はこっちからじゃないと遠回りになるから仕方ないよ。王都は大きいだろうし、大魔王の復活が完了したら王都でゆっくりすればいいじゃない」

 そこへベルゼラ。

 「お父様を復活させた後ってどうするの? またレオスさんが倒しちゃう感じ? 二回目はちょっと見たくないかな……」

 「大魔王次第だと思う。エスカラーチが何を語るか。それと、復活してまた世界征服を企むなら僕はまた倒すよ」

 「うん……レオスさんには勝てないしね。お父様を説得してみるわ」

 「今のところ勝てるのはレオスしか居ないし、そのあたりは任せるわよ」

 ルビアが寝ているメディナに可愛い服を着せかえて遊びながら適当に答えたところで宿に到着。見た目も内装も普通の宿で特筆すべき点は何一つない。いや、大部屋が無いので一人一部屋……一泊銀貨三枚というお高い点は見逃せないか。とりあえずメディナはルビアに任せ、各々部屋へ入る。

 「狭い……」

 部屋もベッドもそれなりである。

 さて、一人になったのでソレイユが夢で何をカバンに入れたか確認することにしよう。どうせロクなものじゃないと思うけど、一応ね。
 無限収納カバンを覗くと食材のスペースや道具スペースなどがあるんだけど、そこに見慣れないものが確かにあった。

 「これは……?」

 一つは緑色の宝石がはめ込まれていた指輪。それが二つ。それと何かポーションのような薬の瓶が一本に手紙が入っていた。今回は随分まともだなと思いつつ、ソレイユからであろう手紙を開く。



 『レオスさんへ

  今回の体が変化した件はわたしが調査をしますのでご安心ください。お姉ちゃんもその世界について何かわかることが無いか同時進行で確認中です。

 本題ですけど、今回お渡しした指輪はエリィさんとベルゼラさんに渡してください。結婚指輪のプレゼントです! ルビアさんはもう持っていますし、お二人にもあげないとですよね!
 
 それとポーションは魔力減衰の薬『デッドエンド』というもので、別の世界のエク……なんとかという女神が作ったヤバイやつです。
 万が一エクスィレオスモードになって制御ができなくなった場合、自力で飲むか、飲ませてもらってください。 効果は一口でほぼ魔力がゼロになるとんでもない効果なので、間違っても大事な局面で飲まないでくださいね! 大事な局面で飲まないでくださいね! 大事なことなので二回書きました! 指輪、大事なものなのでちゃんと渡してくださいよ?』


 「『大事』が、なんとか崩壊しているなあ……。奇麗な指輪だし、いつものお礼とか言って渡せばいいかな? ソレイユが渡せってことだから何か魔法がかかってそうだし。でもこの指輪、見たことがあるような気がするんだけど気のせいかな? で、ポーション……。いや、真面目にヤバイ代物だよねこれ!? バス子あたりに胸が大きくなる薬とか言って実験してみようかな。一口で魔力ゼロとか危なすぎでしょ」

 調査待ちの事実は変わらないのと、とんでもない道具という訳でも無いためありがたく頂戴する。エクスィレオスだったころは魔力が無くても十分な戦闘力があるので、気休め程度だけど。

 そんなことを考えながらカバンに貰ったものをしまいこみ、ベッドに寝転がる。

 「……後、三日で『黄泉の丘』か、何がわかるんだろうね。バス子に協力した方が早いけど、一応ベルゼラの父親だしなあ……」

 特にイベントもなく、バス子とメディナが夕食時にソーセージの大きさで揉めたくらいで就寝。流石に狭いから大丈夫だと思っていたけど、メディナがダイナミック添い寝(浮いたまま腕にしがみついていた)で僕を驚かせてくれた。


 <明曜の日>
 
 
 「お気をつけてー」

 宿の従業員に見送られて再び馬車に乗り込む僕達。

 馬車がすれ違いできる大通りを真っすぐ進めば王都方面の出口なので、そこをポクポクと馬を歩かせていた。

 「一応、ここがメインストリートなんですねえ」

 「店が立ち並んでいるのはここだけみたいだしね。住居がある区画からは遠いし、結構不便な町っぽいよね」

 「ま、ここは素通りする予定だったし、いいじゃない」

 ルビアが僕と一緒に御者台に座ってあくびをする。バス子とメディナは屋根の上で、エリィとベルゼラも荷台から顔を覗かせていた。

 「あ、ギルドですよ。この町にもあるんですね」

 「本当だ。足を踏み入れることが無い施設だよね何気に」

 それは冒険者としてどうなのか? という異論は受け付けない。なぜなら僕は商人がメインだから。エリィとルビアもお金はあるし、他の人の仕事を取る必要もないだろうとギルドには行かないんだよね。
 
 今後もお世話になることもないと思っていた矢先、ギルドから人が飛び出してきた!

 「とう!」

 「うわあ!?」

 「ひひん!?」

 「ぶるる!?」

 慌てて手綱を引いたものの、あえなくその人は馬の体当たりを受けて地面を転がってしまった。急停止した反動でバス子とメディナが落ちてくる。

 「何ですか!?」

 「落下」

 「ごめん、急に人が飛び出してきたんだ。だいじょうぶですか?」

 馬にひかれてうずくまっている男の人に声をかける。さっき「とう」とか聞こえたような気がするけど……

 「うう……腕を怪我した……」

 見てみると、確かに腕を擦りむいていた。

 「まあ、大変! 《キュアヒーリング》」

 エリィの魔法であっという間に治療され、男性は目をぱちぱちさせる。

 「これで大丈夫ですよ! 急いでいたみたいですけど、気を付けた方がいいですよ?」

 「ありがとうエリィ、行こうか」

 「気を付けてくださいよ! ぺっ!」

 「次は殺す」

 バス子とメディナが物騒なことを言いながら屋根に戻ったので、早々に立ち去ろうとしたのだけど――

 「待ってくれ! 今、俺を治してくれた人……もしかして賢聖じゃないか? 一度、大魔王が倒される前に一度だけみたことがある」

 「ひひーん!?」

 「ぶるる!?」

 「うわあ!?」

 進もうとした僕達の前にまた男が立ちふさがった!

 「刺激的!?」

 「発射」

 「ちょっと、危ないって言ったばかりよ!」

 「す、すまない……あ、あんたは拳聖……!? Sランク冒険者にここで会えるなんて……」

 エリィとルビアを知っているみたいだけど、一体なんなんだろう? 僕達は男の話を聞くことに…… 
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