上 下
120 / 196
第六章:大魔王復活?

その114 贈り物

しおりを挟む

 <闇曜の日>

 国境からさらに一日。旅は順調に進み、中継地点であるクライルの町へ到着。
 
 ちなみに門番さんとのやりとりは普通だった。特にゴタゴタがありそうな感じでも無い。街並みは前の町より小さく普通なのでここは一泊したら素通りでいいかもと思っていた。

 「宿に向かうよー」

 「はい! 明日はすぐ出発しますか?」

 「そうだね。国境を越えたら後は黄泉の丘へ向かうだけだし」

 エリィの言葉を返していると、バス子が屋根からひょこっと顔を覗かせてつまらなさそうにぼやく。

 「まあ、小さい町ですしね。国境から出て左に行けば大きい町でしたっけ?」

 「うん。でも黄泉の丘はこっちからじゃないと遠回りになるから仕方ないよ。王都は大きいだろうし、大魔王の復活が完了したら王都でゆっくりすればいいじゃない」

 そこへベルゼラ。

 「お父様を復活させた後ってどうするの? またレオスさんが倒しちゃう感じ? 二回目はちょっと見たくないかな……」

 「大魔王次第だと思う。エスカラーチが何を語るか。それと、復活してまた世界征服を企むなら僕はまた倒すよ」

 「うん……レオスさんには勝てないしね。お父様を説得してみるわ」

 「今のところ勝てるのはレオスしか居ないし、そのあたりは任せるわよ」

 ルビアが寝ているメディナに可愛い服を着せかえて遊びながら適当に答えたところで宿に到着。見た目も内装も普通の宿で特筆すべき点は何一つない。いや、大部屋が無いので一人一部屋……一泊銀貨三枚というお高い点は見逃せないか。とりあえずメディナはルビアに任せ、各々部屋へ入る。

 「狭い……」

 部屋もベッドもそれなりである。

 さて、一人になったのでソレイユが夢で何をカバンに入れたか確認することにしよう。どうせロクなものじゃないと思うけど、一応ね。
 無限収納カバンを覗くと食材のスペースや道具スペースなどがあるんだけど、そこに見慣れないものが確かにあった。

 「これは……?」

 一つは緑色の宝石がはめ込まれていた指輪。それが二つ。それと何かポーションのような薬の瓶が一本に手紙が入っていた。今回は随分まともだなと思いつつ、ソレイユからであろう手紙を開く。



 『レオスさんへ

  今回の体が変化した件はわたしが調査をしますのでご安心ください。お姉ちゃんもその世界について何かわかることが無いか同時進行で確認中です。

 本題ですけど、今回お渡しした指輪はエリィさんとベルゼラさんに渡してください。結婚指輪のプレゼントです! ルビアさんはもう持っていますし、お二人にもあげないとですよね!
 
 それとポーションは魔力減衰の薬『デッドエンド』というもので、別の世界のエク……なんとかという女神が作ったヤバイやつです。
 万が一エクスィレオスモードになって制御ができなくなった場合、自力で飲むか、飲ませてもらってください。 効果は一口でほぼ魔力がゼロになるとんでもない効果なので、間違っても大事な局面で飲まないでくださいね! 大事な局面で飲まないでくださいね! 大事なことなので二回書きました! 指輪、大事なものなのでちゃんと渡してくださいよ?』


 「『大事』が、なんとか崩壊しているなあ……。奇麗な指輪だし、いつものお礼とか言って渡せばいいかな? ソレイユが渡せってことだから何か魔法がかかってそうだし。でもこの指輪、見たことがあるような気がするんだけど気のせいかな? で、ポーション……。いや、真面目にヤバイ代物だよねこれ!? バス子あたりに胸が大きくなる薬とか言って実験してみようかな。一口で魔力ゼロとか危なすぎでしょ」

 調査待ちの事実は変わらないのと、とんでもない道具という訳でも無いためありがたく頂戴する。エクスィレオスだったころは魔力が無くても十分な戦闘力があるので、気休め程度だけど。

 そんなことを考えながらカバンに貰ったものをしまいこみ、ベッドに寝転がる。

 「……後、三日で『黄泉の丘』か、何がわかるんだろうね。バス子に協力した方が早いけど、一応ベルゼラの父親だしなあ……」

 特にイベントもなく、バス子とメディナが夕食時にソーセージの大きさで揉めたくらいで就寝。流石に狭いから大丈夫だと思っていたけど、メディナがダイナミック添い寝(浮いたまま腕にしがみついていた)で僕を驚かせてくれた。


 <明曜の日>
 
 
 「お気をつけてー」

 宿の従業員に見送られて再び馬車に乗り込む僕達。

 馬車がすれ違いできる大通りを真っすぐ進めば王都方面の出口なので、そこをポクポクと馬を歩かせていた。

 「一応、ここがメインストリートなんですねえ」

 「店が立ち並んでいるのはここだけみたいだしね。住居がある区画からは遠いし、結構不便な町っぽいよね」

 「ま、ここは素通りする予定だったし、いいじゃない」

 ルビアが僕と一緒に御者台に座ってあくびをする。バス子とメディナは屋根の上で、エリィとベルゼラも荷台から顔を覗かせていた。

 「あ、ギルドですよ。この町にもあるんですね」

 「本当だ。足を踏み入れることが無い施設だよね何気に」

 それは冒険者としてどうなのか? という異論は受け付けない。なぜなら僕は商人がメインだから。エリィとルビアもお金はあるし、他の人の仕事を取る必要もないだろうとギルドには行かないんだよね。
 
 今後もお世話になることもないと思っていた矢先、ギルドから人が飛び出してきた!

 「とう!」

 「うわあ!?」

 「ひひん!?」

 「ぶるる!?」

 慌てて手綱を引いたものの、あえなくその人は馬の体当たりを受けて地面を転がってしまった。急停止した反動でバス子とメディナが落ちてくる。

 「何ですか!?」

 「落下」

 「ごめん、急に人が飛び出してきたんだ。だいじょうぶですか?」

 馬にひかれてうずくまっている男の人に声をかける。さっき「とう」とか聞こえたような気がするけど……

 「うう……腕を怪我した……」

 見てみると、確かに腕を擦りむいていた。

 「まあ、大変! 《キュアヒーリング》」

 エリィの魔法であっという間に治療され、男性は目をぱちぱちさせる。

 「これで大丈夫ですよ! 急いでいたみたいですけど、気を付けた方がいいですよ?」

 「ありがとうエリィ、行こうか」

 「気を付けてくださいよ! ぺっ!」

 「次は殺す」

 バス子とメディナが物騒なことを言いながら屋根に戻ったので、早々に立ち去ろうとしたのだけど――

 「待ってくれ! 今、俺を治してくれた人……もしかして賢聖じゃないか? 一度、大魔王が倒される前に一度だけみたことがある」

 「ひひーん!?」

 「ぶるる!?」

 「うわあ!?」

 進もうとした僕達の前にまた男が立ちふさがった!

 「刺激的!?」

 「発射」

 「ちょっと、危ないって言ったばかりよ!」

 「す、すまない……あ、あんたは拳聖……!? Sランク冒険者にここで会えるなんて……」

 エリィとルビアを知っているみたいだけど、一体なんなんだろう? 僕達は男の話を聞くことに…… 
しおりを挟む
感想 448

あなたにおすすめの小説

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

やり直し令嬢の備忘録

西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。 これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい…… 王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。 また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...