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第六章:大魔王復活?
その92 暗躍
しおりを挟む「ギィィィ……!」
「待って。僕を助けにって?」
今にも飛びかかりそうなボス猿をなだめながら僕を助けに来たという三人の冒険者達へ質問を投げかける。するとリーダー格っぽい赤い短髪の男性が口を開く。
「あ、ああ。宿の息子にお前さんが温泉を解放しに行くって聞いてな。温泉の周りにはほら、そいつが居たから危険だと思ってな……」
「キイィ……!」
「あ、てことはボス猿の足は貴方たちが?」
僕が再度訪ねると、隣に居た長髪の弓使いらしき男が肩を竦めて言う。
「そういうこったな。まさかあっさり屈服させるなんてなあ……で、俺達はそのまま後をつけて来たって訳。途中見失って今到着したらこの有様ってこと」
<ふむ、話は聞いておらんようじゃな。とりあえずお主、名は?>
「え? レオスだよ」
チェイシャが振り向いた僕の顔へ自分の顔を近づけてそう聞いて来たのでサクッと答えると、チェイシャはタッと端へ立つと喋り出す。
<何か聞きたいことがあるようじゃが、そやつらが居ると話しづらかろう。また後ほど来るがいい>
「ひい!?」
「そうだね。威嚇しないであげてよ、どっちにしてもみんなを連れてくる必要があるからその時でいいかな。えっと、わざわざ僕を助けに来てくれてありがとうございます! この通り無事で、温泉も解放したので村へ戻りましょうか」
三人目の冒険者が威嚇されて怯えているので早々に退散しようと思い提案すると、冒険者達は同時にコクコクと頷いた。
そんなわけでチェイシャの住処? から離れ、元来た道を戻る僕達。僕の左隣には冒険者、右隣にはボス猿というよくわからない陣形で歩いていて、しばらく進んだところで短髪冒険者が、
「なあ、その猿……大丈夫なのか?」
「え? あ、そっか。敵対していたんだもんね。僕の勝手で悪いんだけど、村の人達が襲ってこない場合は君達から攻撃しないでくれると助かるよ」
「キ!」
「分かったって言ってるみたい。お兄さんたちも申し訳ないんだけど、このラリアーモンキーたちに無駄な攻撃をしないようにしてもらえませんか?」
「魔物にいうことを聞かせられるのかお前……? わ、分かったよ」
「別に強制力があるわけじゃないから、理不尽に攻撃したら反撃をされても文句言わないでくださいね」
そう言うと、冷や汗をかきながらやっぱり同時に頷いていた。
◆ ◇ ◆
<……さて、レオスか。50年ぶりにあった人間がかように面白い性質を持ったものじゃとはな。で、そこのお前は何用じゃ?>
チェイシャが口から炎を吐き出し、レオス達が出て行った出口が小爆発を起こした瞬間、部屋の中央にローブを着た人物が着地する。
<怪しげないでたちじゃな。わらわを炎の精霊と知って立つか?>
「――」
<なに?>
「――」
ボソボソとチェイシャに何かを告げると、チェイシャの顔が歪む。
<大魔王にそんな秘密があったじゃと? では、それを知るお前は何者じゃ?>
すると、フードの人物はニヤリと口を歪ませてチェイシャに言う。
「――それを知る必要はありませんよ? まあ、あなたはすみませんが利用されてください」
<……聞いても答えそうにないのう。敵意は無し、か。まあいいじゃろう。ここで争ったらお互い無事ではすむまい>
「賢明ですよ、精霊様。ではわたしはこれで。恐らく先ほどの男の子が聞きたいことは大魔王復活についてでしょう。なので、答えてあげてください」
<マジで……!? コホン……一体どういう――む>
チェイシャが反射的に訪ねようと口を開いたが、謎のフードはすでに影も形も無かった。
<(やはり力ある者は平穏に暮らさせてはもらぬようだぞ、レオスよ)>
◆ ◇ ◆
「キキー!」
「ぷう! 外に出られたけど、雨は止んでないんだ」
「だなあ。まあ、流石にそろそろ止むだろうさ。あ、そうだレオス、お前精霊様に頼んでみてくれよ」
「炎の精霊だから無理だと思いますけどね。あ、村の方角から湯気が立ち上ってる。順調に流れているみたいだね。ありがとう、おかげで精霊と会うことができて収穫があったよ。気を付けてね」
「ウッキー!」
「「「キキー!」」」
僕が手を振ると、ボス猿と仲間たちがはしゃぎながら声を上げ、しばらくすると林の奥へと消えていく。それを見送った僕達は速やかに下山をすると――
「おお、戻ってきた!」
「温泉はあんた達がやってくれたのか!」
村に着いた早々、雨宿りしながら待ち構えていた村人に一斉に質問攻めに合うことになった。それを、冒険者三人が何とか落ち着かせてそそくさとその場を立ち去ろうとしていた僕の襟首を捕まえてから得意気に話し出す。
「このレオスがラリアーモンキーのボス猿をあっさり倒して、大岩を破壊したんだ! それにせいれ……」
「待ったあ!!」
「もが!?」
「(精霊の話はちょっと止めた方がいいよ。これで山に入っちゃうって人が出たら困るでしょ?)」
「(ああ、それもそうか)」
ふう、それ以外にも理由はあるけど一番納得がいく理由はこれだろう。
「レオスさん、でしたかな? 村を代表してお礼を申し上げます。雨で行商も来れず、温泉も泊って冷え切った村が少し蘇りました」
「いえ、お気になさらず。僕も温泉が気になっていましたから」
「なんと謙虚な……! 今日は私の家で夕食にご招待させていただけませんか?」
「いいんですか? 仲間も居ますのでご一緒させていただければ」
「もちろんですとも!」
「あ、レオス君! やりましたね!」
と、噂をすればなんとやら。どこかへ行って宿へ帰る途中のエリィ達に出くわした。
「ありがと。おかげでさっぱりしたわ!」
長い髪をアップにしてうなじが色っぽいルビアに、
「温泉って初めてだったけど気持ちいいです」
(通常見えない)角の辺りで髪をお団子にしているベルゼラと、
「レオス君もお風呂行ってきたらいいですよ! 部屋に帰ったらマッサージしますね」
ツインテにしているエリィと、お風呂上りで妙に可愛い服を着ている三人が眩しい。あれ? 三人?
「バス子は?」
「あの子お腹痛いって部屋でトイレとお友達になっているはずよ。温泉で温めたら良さそうだけどね」
「ふうん。珍しいね。あ、こちら村長さんで、今日は夕食をご馳走してくれるって」
「ごくり……」
「(マッサージ……というかこの子達みんな彼の連れ……!?)」
「(ボス猿と一人で戦えるんだ、そりゃ惚れるだろうなあ……)」
エリィ達を見て顔を赤くしたり、僕を恨みがましく見ていたりと村人と冒険者の視線が痛かった。まあ、みんな可愛いしねえ……
「なら僕も温泉に入ってからでいいですか?」
とりあえず話を変えようと村長さんに訪ねると、村長さんは目をぱちくりさせてから答えてくれた。
「ハッ!? ええ、ええ、もちろんですとも! こちらも準備がありますからちょうどよろしいかと。では、宿に呼びに行きますのでごゆっくりどうぞ」
そういって散会していく村人たち。残された僕達も一旦宿へ戻ろうと、歩きながら話す。
「バス子、お腹痛いならご飯は無理かな? 後で適当に持って行ってあげようか」
「そうですね!」
「骨付き肉一本でもあれば十分です」
エリィとベルゼラがそう言い、苦笑する僕であった。
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