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第六章:大魔王復活?

~Side5~ あの人たちは今

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 バシャバシャバシャ……!

 ゴロゴロゴロ……

 レオバールは走る。

 雨の中をひたすらに。

 何故か? それはフェイことフェイアートから逃れるために――


 「俺が……こんなことで……! はあ……はあ……」

 ノワール城からレオスを追って来た道を戻りながらぼやく。フェイアートは言っていた『初めから監視』していたと。であればレオスを攻撃したことも、エリィを傷つけたことも知られている。そして一番まずいのは国王へ虚偽の報告をしたことだ。
 そもそも、国王の願いで商人を大魔王討伐には居なかったとし、レオスがそれを飲んでくれた。だが、アレンは装備を押し付け金を巻き上げ、レオバールはどさくさ紛れに始末するつもりだった。
 このことがフェイアートから国王に告げられれば自分たち二人は大魔王討伐の恩賞が帳消し、それどころかレオバールは極刑になる可能性が高い。
 それを恐れたレオバールは一目散に逃げたという訳だ。

 レオスを襲った時のように戦えばいい、と思うが、マスターシーフは聖職に匹敵する強さを持ち、特に搦手が得意なので正面からやりあうことを得意とするレオバールでは相性が良くない。

 そしてもちろん――


 「そろそろ限界だろう? 大人しく捕まってくれると助かるんだけど」

 「……!?」

 いつの間に……声に出さすレオバールはズザザザザ、と急ブレーキをかけ止まる。戦うしかないとレオバールが考えているとフェイアートが喋り始める。

 「好きな女を取られて亡き者にするつもりとは……情けない限りだな? 剣聖が聞いて呆れるぞ」

 「うるさい。貴様に何が分かる! 俺は剣聖だ! エリィに……賢聖に釣り合う男は俺しかいないんだ!」

 「その考えがそもそも思い違いなんだけどなあ。相手が想ってくれてこそ、だろ? 愛されない女を手に入れてどうしようと? ……暴力で言うことを聞かせそうだよな、あんた。それがエリィちゃんも分かってたんだろうなあ」

 「黙れ! ”裂空刃”!」

 レオバールが剣を振るうと、剣圧がかまいたちのようになりフェイアートを襲う!

 「短気でもある、と」

 「レオスと戦った後に声をかけてきたのはお前だな……!」

 「お、ご名答。あんたにはレオス達を追ってもらう必要があったからな。光の剣や小汚い鎧はちゃんと持っているか?」

 「貴様が置いていったマジックバッグに入れてある。……どうだ? アレンの装備を渡すから見逃してくれないか? 俺は故郷とは別の国にでも行って大人しくする。だから……」

 「却下だなあ。あんたを捕まえれば装備も持って帰れるし、褒美も出る。それに、あんたみたいなのは一度折檻を食らって思い知った方がいいしな。レオスに負けてなお不遜な態度。もう少し謙虚ってのを知った方がいい」

 そういってフェイアートは隠し持っていたショートソードを抜くと腰を落としながらそんなことを言う。レオバールは正面からなら、とフェイアートへ一気に駆けだす。

 「知ったことか! 俺は剣聖だ、選ばれた男なんだ!」

 「たまたま大魔王討伐で勇者に目をかけてもらっただけでそこまで思い上がれるとはな! 大魔王を倒したのもまぐれだろうな!」

 チィン! ブオン!

 レオバールの攻撃がフェイアートへ繰り出され、それをショートソードで受け流し、避け、一進一退の攻防が繰り広げられる。しかし雨の中、重い鎧を着ているレオバールは体力の限界が近かった。

 「ぬうおおお!」

 「いくら強くても心が曇っていたらどうしようもないな! 大魔王を倒したのはあんたにとって良くなかったよだ」

 レオスをいじめていたあたりそういう気質はあったのだろう。大魔王を倒したことでそれが助長されてしまったことを見抜いたフェイアートがさらに言葉を続ける。

 「俺も雨の中戦いたくないからな、そろそろ終わりにさせてもらおうか」

 「ぬかせ! 疲れてはいるがそれはお前もだろう!」

 「フフ、俺には彼女がいる……そう言ったのを覚えているかな?」

 「それがどうした、こんな時に自慢か!」

 「そうじゃない。彼女は……ほら、そこにいるんだ」

 「な!? ……に!?」

 ニヤリと笑ったフェイアートが言った直後、レオバールの背後に女が現れ、背中に蹴りを入れるとそのまま後ろから組み伏せ、ダガーで首を掻っ切ろうとダガーを首筋に当てる。

 「ど、どこから現れた……!? くそ……!」

 「殺したらダメだからな? これが俺の彼女ペリッティだ。ジョブはアサシン。俺がレオス達といる間はペリッティがあんたを監視していたって訳だ。さ、拘束して連れて帰るぞ。馬車は?」

 「あっちにあるわ。ったく、エリィエリィ言ってたヤツがすぐ別の女の子に取り入ろうとするなんて、最低な奴だわ」

 黒髪の女が呆れたように言い放ちながらレオバールの両手を鎖のついた拘束具で動けないようにする。

 「これで任務は完了、か。帰ったらゆっくりしたいもんだ――」

 「く……」

 フェイアートがレオバールからカバンを奪った直後、それは起きた。

 「《エクスプロード》」

 「!? 避けろペリッティ!」

 「もう避けてるわ!」

 ドゴン! という音と共にフェイアートとペリッティが居たところに爆発が起こり、雨がじゅうじゅうと地面を冷やす音が響く。フェイアート達が顔を上げると、レオバールを担いだ全身ローブの人影が喋り始めた。レオバールはエクスプロードの直撃を受けて気絶しているようだった。

 「この男のゲスい心……とても良い。我らの先兵として働いてもらうとしよう」

 「……何者だ?」

 「語る必要なし。帰ったら国王に伝えるんだな、もはや勇者などでは止めることなどできん、と」

 「どういう意味……?」

 「いずれ分かる――」

 「あ、待て! もう少し詳しく聞かせろ!」

 フェイアートの叫びはスルーされ、ローブの人影は空へと舞い上がる。

 「我が名はウェパル! いずれまた見舞えることもあろう!」

 そして高速で雨の空を飛んでいくのだった。

 「流石に空を飛ばれたら無理か……! それにしても語る必要なしとか言いながら……」

 「名乗ったわね……」

 アホなのだろうかと思いつつ、冥王にセーレ、そして剣聖を連れて行ったウェパル。また何かが起ころうとしていると苦い顔をして二人はエイゲート国、ノワール城へ帰還を急ぐのだった――
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