52 / 196
第四章:オークション
その48 いつものアレ(テンプレ)お願いね!
しおりを挟む「お二人は付いてこなかったですね」
「まあ、ずっとべったりってのも変だしね。エリィ達も買い物に行くんじゃない? アレン達と旅をしていたころは結構二人で出かけていたからね」
ベルゼラとバス子を連れて僕は町中を散策していた。出がけにエリィとルビアも行くか聞いてみたけど、今日はパスでいいということで魔族二人とのお出かけになった。
「結構大きい町でしたねえ。わたし達は城から出ることは殆どなかったですし、町と言えば大魔王城近くにあったところだけですね」
「ああ、サイゴの町かあ。大魔王城に近いから住民は魔族ばかりなんだよね……」
と、バス子が言う。
いい機会なので、ここで魔族について少しおさらいをしておこうと思う。魔族って敵じゃないの? というのは間違いだからだ。
まあ、大魔王という悪の親玉みたいなのが居たけど、基本的に魔族を100とした場合、7割くらいは別に敵対しておらず、何なら人間と仲良く暮らしているケースもある。元々そういう世界だったんだから不思議じゃないんだけどね。
だけど、50年ほど前にどこからともなく現れた大魔王を名乗るエスカラーチが、今は無き国“カルヴィノ”を亡ぼしてそこを大魔王の領地とした。そこから全世界に宣戦布告し、魔物の数が増大。そして平和に暮らしていた魔族も、迎合する者が現れて戦争が始まった。光の剣を持っていたアレン達が勝てなかったのでその強さは相当なので、一人で国を亡ぼすくらい訳はないのだ。
え? アレンが弱いから? ……あれでも一応人間最強なんだよね……多分勝てるのは僕とエスカラーチというくらいの強さはあるんだ……アホだけど……
話がそれたけど、だからこそ、隣を歩いている大魔王の娘と名乗るベルゼラの真意が何なのか気になるんだ。僕がこの間3秒くらいで考えていると、ベルゼラがクスっと笑って口を開く。
「ふふ、ですね。それで私達の金銭問題をどうするかについてですけど……」
「エッチなことはダメですよ? レオスさんならサービスしますけどね、えっへっへ」
「しないよ!? 仲間にそんなことするとか外道じゃないか。とりあえず料理屋かな? そこで売り子をして欲しいんだ。少し前にポップコーンっていう食べ物を作って売ったんだけど、一人で全部はしんどくてね」
「なるほど。可愛いわたし達を餌に入れ食いを狙うんですね。流石はレオスさん! いよ、このスケコマシ!」
「で、ベルゼラには受け渡しをお願いしたいんだよね」
「わ、分かりました! 頑張ります……!」
「あれえ!? 無視ですか!? 無視が一番つらいんですよー、あ、ちょ、待って、待ってくださいよー!」
バス子の扱い方がだんだん分かってきたなと思いつつ食材を探す。そこでとある肉屋さんが目に入った。
「すみません、そのバラになった肉、売ってもらえませんか?」
「ん? 欲しいのか? 部位もバラバラだし奇麗な形をしていないけど、買ってくれるなら安くしておくよ」
「ありがとうございます! えっと……どれくらいありますか?」
肉屋の親父さんが量りを持ってきてどさどさと肉を置いていく。赤身と脂肪の部分のバランスはまあまあ悪くない。
「全部で5キロだな。いつもなら100グラム銅貨1枚だが、クズ肉ばかりだし、鉄貨5枚でどうだ?」
鉄貨一枚はチキュウのニホンでいうところの10円に相当する。グラム50円なら悪くないかな……? 5キロで銀貨2枚に銅貨5枚なら……
「全部お願いしていいですか?」
「分かった5キロだな。なら銀貨2枚と銅貨5枚で」
「それじゃこれを……」
僕が支払うと、肉を木箱に入れ、ロープで蓋があかないようにして渡してくれる。とても親切な人だ。
「何に使うかわからないけど、早めに食うんだぞ? まあお前さんはひょろっとしてるから肉を食ったら大きくなるだろ! はっはっは!」
「はは、どうも……」
肉屋を後にし、僕達はいったん路地裏へと移動する。そこで不思議な顔をしたベルゼラが声をかけてきた。
「? どうしたんですか? そのお肉を焼いて売るのでは?」
「まあね。でもその前にやることがあってね、誰もいませんねっと……<クリエイトアース>」
パァァ……
僕が魔法を使うと、土と石が形成されて箱形の何かが出来上がり、バス子が目を輝かせてみていた。
「おおおー何ですか何ですかこれはああ!」
という感じで、出来上がったもの、それは――
「これでこのお肉を挽くんだ」
「挽く?」
「そう、見た目がもうバラバラでしょ? いっそのこと全部一緒にしちゃおうってわけ。こうするんだ」
出来上がったもの、それはひき肉をつくる装置だった。クリエイトアースで鉄は組み込めないので石を鋭利にするなどで工夫した。
上の穴から肉を入れ、ハンドルを回すと肉が捻じれてひき肉にされるという簡単なやつだ。だけど最初はこれでいい。
「お、おおおー! レオスさん、やりたい! それわたしがやりたいー!」
「う、うん、すごい食いつきだね」
「あ、バス子でもできるのね。それで、これをどうするんですか?」
「まあ、見てなって。バス子、それくらいにして次へ行くよ」
「えっへっへ、楽しい~わたしの手で肉がうん●のように……」
「返せ!?」
うっとりとするバス子からひき肉機を回収して歩き出す。
そして雑貨屋で量りと適当な木のお皿、それに木のフォークに鉄の網、まな板を買い、露店や屋台の並ぶ通りへとやってくる。銀貨5枚は中々の出費……稼がないと……!
こほん。それはともかくこの露店通りは宿へ行く途中見かけていたのですぐ到着することができたのだ。
「それじゃ、もういっちょ<クリエイトアース>」
サクッと竈を作り、その中へ火の魔石を放り込み、準備完了だ! カバンから長机と肉を取り出し、バス子へ言う。
「バス子、この肉を50gだけ取ってこういうふうに作ってくれないか?」
パンパンと肉を形成する僕。
何かって? もちろんこれはご存じ、ハンバーグである!
「あいあいさー。挽いて……丸めて……」
「私はどうすれば?」
「お客さんが来たら相手をしてもらえる? 値段は……銅貨1枚でいいよ」
「分かりました!」
じゅぅ~
「ふんふん~♪」
バス子が形成した肉を網で焼くと良い匂いが辺りに漂い出した。すると道行く人が足を止め始める。
「お……」
「美味しそうな匂い!」
「それ、肉かい? 一つおくれ!」
「あ、はい! レオスさん、お皿とフォークでいいんですか?」
「うん。すみません、食べたら食器は返してもらえますか? こちらでどうぞ」
僕はクリエイトアースでテーブルと椅子を作り、最初のお客さんを座らせる。
「おお、なんだ今のは」
「手品です」
悪びれた様子もなく、僕はにっこりとそういいおじさんにハンバーグを出す。
「手品か……? ま、まあいいや、いただきます! ん!?」
どうだ……? 大人から子供まで大好きなハンバーグ……ソースは無いけどコショウは利かせてあるけど……
「んまい! それにとても柔らかい!」
「良かった、ごゆっくりどうぞ。って感じでお願いしていいい?」
「は、はい。色々凄すぎてなんて言っていいのか……あ、いらっしゃいませ」
その後もどんどんハンバーグは売れていく。
「えっへっへ、笑いが止まりませんね!」
「言い方が悪いけど、そうだね。これならお肉は全部はけるかな?」
そう思っていたところ――
「兄ちゃんたち、誰に断って店を出してるんだ?」
Tシャツにハーフパンツというラフな格好をした赤いつんつん頭にそんなことを言われた。
1
お気に入りに追加
1,594
あなたにおすすめの小説
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)
SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。
しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。
相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。
そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。
無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる