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第四章

第143話 戦力の補充

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「鉱石掘りは順調だ! 魔兵機《ゾルダート》の整備はどうだ?」
「こっちもグライアードの人間をしばいて協力させているよー。でも、意外と知らないみたい」
「ふん、操縦と簡単なメンテナンス以外は僕達にも分からないからな」
「まあまあ、トルコーイ様。子供の言うことですし……」
「お、お、宣戦布告ですか? やりますか?」

 ギャレットさんとバスレーナが鉱山から拠点へ戻ってきて搬入を始めた。
 町の人達の協力もあり、採掘は順調のようだ。
 ただ、そんな中、バスレーナが口を尖らせるのも分かる。トルコーイの言う通り部隊長クラスでも細かいところまでは魔兵機《ゾルダート》がどういったものか聞かされておらず、結局サクヤに分析をお願いする形になっていたからだ。

<駆動系などは概ね終わったのでいいんですが、どうやって魔石の加工をしているかですね>
「うーむ」

 そう、駆動系に使っている魔石が上手く作動しないのだ。
 ビッダー機はジョイントすれば別の腕を使えたので、なにかが起動していないといけないらしい。
 ひとまずビッダー機についていたジョンビエル機の腕を外し、失った腕を仮に作ってみたんだけど、どうしても魔力が魔石に流れない状況である。

「これは作った人間にしか分からないんだろうな……」
「博士はブラックボックスと言っていた。そしてそれを教えるのは技術者だけだとも」
<理解はできますね。今のあなた方のように別の国に捕らわれた場合、本当に知らなければ情報が漏れることはありませんし>
「……確かにね。それで僕達には伝えなかったのか」
<自白させることなんていくらでもできますからね>

 サクヤがあっさりと恐ろしいことを口にし、トルコーイと副隊長のゼルシオが笑みを浮かべたまま冷や汗を流す。
 実際、やろうと思えばできるし、この二人はこちらを『得体のしれない存在』だと認識しているからもしかしたらと疑心暗鬼を生ずる。まあ、警戒は解かないだろう。

「どちらにせよサクヤの分析結果が終わるまで手詰まりか。各町の様子は?」
「特に動きはなさそうですぜ。この国は広いし、部隊長も一つの町にそれほど注力はできないでしょう」
「ヘッジか。そういやどれくらいの規模の部隊がエトワール王国に居るか聞いていないな」
「部隊長クラスしか知らないんだよなあ。ジョンビエルやディッターならって感じはするけど」

 そう言って近くに居るトルコーイに目を向けると、彼は鼻を鳴らして口を開く。

「ふん、そこまで話してやる義理は無いね。さ、町へ戻してもらおうか」
「ま、仕方ねえ。俺のレーダーでこの辺に危険があるかどうかはわかるし、なんとかするさ」
「では移送します」
「……甘いねえ。エトワール王国の騎士は随分と軽い。だから国を簡単に盗られるのさ」
「トルコーイ様」
「ゼルシオ、またしばらく一人で頼むよ」
「ハッ」

 含みのあることを言い残してトルコーイは町へと戻っていった。
 ゼルシオを人質としているため大人しくしているけど、手放したら牙を剥いてもおかしくない。
 とはいえ、ディッターやジョンビエルと比べれば話は分かるためたまにこうして合わせてやるのだ。

「さて、とりあえずこちらは手詰まりだけどどうしますかね。鉱石も掘ったら報酬を支払っているため、金も資源も尽きる可能性が高いですぜ」
「うーむ」

 俺は戦闘要員なのでどちらかといえばアウラ様やガエイン爺さんの領分である。地理は把握できても政治的な部分は口を出しにくい。わからないからだ。

「……ガエイン爺さんは?」
「ルルアの町に行っているぜ。ドワーフくらいの達人ならわかるのかねえ」

 ヘッジはそういって煙草に火をつけながら魔兵機《ゾルダート》の腕を、つま先で軽く蹴る。そういえばあの二人も気になるところだ。

<迷彩が使えれば偵察と襲撃が出来るのですがね>
「光学迷彩か……」
「それは?」
「相手から見えなくなる装備ってやつだな。ここに来た時にいくつか機能が壊れちまったんだけど、その一つだ」
「そりゃ……すげえな」
 
 戦闘をする人間なら隠密の重要さはすぐにわかるようだ。ヘッジが肩を竦めてそういいながら持ち場へと帰っていく。
 そこで入れ替わりにアウラ様がやってきた。

「リク様、どうですか?」
「まだ戦力として完全に使うのは厳しいかなあ」
「そうですか……」
「ひとまずイラスの機体とビッダー機は使えるし、ディッター機はコクピット以外は使える。トルコーイ達のも修理すればいけるはずだ、もう少し我慢しよう」
「そう、ですね」

 いくつかの窮地を乗り越えたからか、早く両親を助けたいという気持ちが逸っている気がするな。
 戦力は俺がいるのでこのまま進めたいのだろうが……うーむ、王都へ行ってみるか?

<せめて武器があればいいと思うんですけどね>
「心を読むな。破壊するだけなら楽なんだけど……あ」
「どうしました?」
「あ、あー……ちょっとガエイン爺さんに用ができたからルルアの町へ行ってみたいなーって」
「ガエインにですか? では私も連れて行ってください。ご挨拶はしておかないと」
「大丈夫かね……?」

 と、誤魔化したが、本当は一つだけ好転させられる可能性が頭に閃いたからだ。
 それはグライアード王国をめちゃくちゃにする、というとてもシンプルなもの。
 やっぱ武器か、武器が欲しいな。
 そんなことを考えながらアウラ様とルルアの町へ行くことにした。
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