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第57話 気になることはたくさんあるが
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「鳥だ!?」
「ドラゴンだ!?」
「空飛ぶ豚だ!?」
さて、とんぼ返りで町へ戻って来た俺達を待っていたのはどよめく町人の反応だった。
まだ知れ渡っていないのと、行きは高速で空に舞い上がったので視認している人が少ない身体。
『この俺を摑まえて豚とは失礼な』
「まあ、向こうだと海豚って書くしな」
『宛字みたいなものだろう? さかまたやミナミバンドウイルカに比べたら俺の方が可愛い』
「そりゃ人によるだろ」
さかまたはでかいのでかっこいいが先に来るし、ミナミバンドウイルカは鼻先が短いのであっちが好きと言う人もいる。例えば頭はでかいがシロイルカも愛敬があるため好みは人それぞれなのだ。
「元・飼育員としてはみんな可愛い奴等だったんだけどな。フリンクとは一番仲が良かったけど」
『ふふん、俺ほどレンと仲が良かった奴はいないだろうな』
「シャチのライムとミナミバンドウイルカのフォクシーは仲が良かったぞ」
『裏切り者……!』
「そりゃ飼育員なんだから色々な動物と触れ合うに決まってるだろ」
一番仲が良かったと思っているなら嫉妬するなよと背中を撫でてやった。満足気に噴気孔から水を出した後、広場へと降り立った。
「強盗やコントラさんは居なかったし、町に戻っていると思うけど……」
『お、クレアと子供たちだぞ』
「本当だ。おーい!」
飲み物を片手にこちらへ歩いてくるのが見えたので、手を振ってこっちへ呼ぶ。
「あ、レン兄ちゃん! 帰っていたんだ!」
「おう、きちんと送って来たぜ。コントラさん達は?」
「わかんない。なんか騒ぎになっていたけど、別に私達に関係ないしね」
駆け寄って来たモントの頭に手を置いていると、クレアが答えてくれた。
興味はないだろうからこんなものだろう。
『ただいまー』
「おかえりフリンク」
「やっぱりフリンクが居ると安心するなあ……大きいし」
『うふふ』
ルーとリーオはフリンクの方へ行っており、労いの言葉をかけていた。テンションの上がったフリンクはヒレで二人をぐっと抱き寄せてぐりぐりと体をこすり付けていた。
「結局、なんだったの?」
「それがな……っと、先に父さんのところへ行こう。昼飯だ」
「あ、そうね」
と、歩きながらクレアに事情を説明する。
物騒ねという言葉と共に、やはり珍しいと続く。このあたりではあまりそういうことが無いようだった。
「レンは村から出たことがないから知らないと思うけど、冒険者さん達が付近の調査を結構やってくれるの。この地を治めている侯爵様が依頼をしているとか聞いたことがあるけど……」
「侯爵? ……カイさんに言い寄ったアホ息子のとこのか?」
「知っているの? そういえばバートリィ家の人を救ったのよね。カイ様は娘さんだっけ」
俺は頷きながら別のことを考えていた。
カイさんの病気が発症したのはアホ息子の求婚から、という話はずっと引っかかっている。
ただ、鉢植えは町で買ったものだし、植物の魔物を制御してカビを散布する方法などあるだろうか?
まあ、これ以上関わることはないと思うので頭の片隅に置くくらいでいいか。
「そういえばジュース飲む?」
「いいのか?」
「半分残ってないけどね」
俺はクレアから木のコップで出来たジュースを受け取り、喉を潤す。
「むー。レン兄ちゃん、ルーのも飲んで!」
「ええ? いや、お前の入ってないだろ」
「いやあ!」
『また買ってもらおうよ』
駄々をこねるルーを、フリンクがヒレで抱っこしてそんなことを言う。
ちなみにオリジナルのコップごと買ったようだが、次回はコップを持って行けばジュース代だけで買えるらしい。ビールイベントみたいだな。
「はい、毎度!」
「あなたのところの野菜、美味しいのよね」
「ウチの息子が丹精込めて育ててますから!」
「やめてくれ父さん」
「お、噂をすれば」
露店で父さんを発見すると、どこかの奥さんが野菜を買ってくれていた。恥ずかしいことを口にしている父さんに声をかけると、奥さんが口を開く。
「あら、あなたが息子さん? それにクレアちゃんじゃない」
「こんにちは!」
「息子さんと一緒にいるってことはもしかしてクレアちゃんがよく言っていた幼馴染の? イケメンでいいわねえ。それじゃまた来るわ」
「よろしく!」
奥さんはそう言って軽い足取りで立ち去っていく。
「……おい、クレア。お前町の人にどんな説明をしているんだ?」
「おじさん、お昼は私のおすすめのお店に行くからね!」
「それは楽しみだ。こっちもそろそろ終わりになるから、それが終わったら行こうか」
「誤魔化したな……」
クレアは冷や汗をかきながら俺と視線を合わせず、父さんやフリンクとわいわいする。概ね昔からこういう奴なので別に構わないが気にはなるよな。
「というかレタス一個しか残ってないじゃないか」
「だな。多分すぐ売れると思うけど」
「すみません、このレタスをください」
「ほらきた」
すげえ。
ウチの野菜が美味いのは間違いないが、こうも簡単に売れるのか。
「あれ? トラニさん」
「おや、クレアさんじゃないですか。こんにちは」
「知り合いか?」
「うん、今から行こうと思っていたレストランのマスターよ」
短い茶髪で糸目の男はトラニと言うそうだ。優しそうな雰囲気を醸し出しているな。すると俺に顔を向けて口を開く。
「初めて見る方ですね」
「俺はレンと言います。こっちのおっさんの息子です」
「おっさんって言うな!?」
「ああ、そうでしたか。君がクレアさんのか――」
「わああああ! ちょ、ちょうどトラニさんのところへ行こうとしてたの! 一緒に行っていいですか!」
「え? それは構いませんよ。ランチの時間なので、皆さんが本日最初のお客様です」
……怪しい。
声をかけてきた連中は俺に興味が無さそうだったが、なにか言っているのか?
今は無き結界はフリンクのことだけ記憶から消えるようになっていたから、俺のことは町に来ても覚えていたはずだしな……
ひとまず二人になった時に聞こうかと俺達はレストランへ足を運んだ。
「ドラゴンだ!?」
「空飛ぶ豚だ!?」
さて、とんぼ返りで町へ戻って来た俺達を待っていたのはどよめく町人の反応だった。
まだ知れ渡っていないのと、行きは高速で空に舞い上がったので視認している人が少ない身体。
『この俺を摑まえて豚とは失礼な』
「まあ、向こうだと海豚って書くしな」
『宛字みたいなものだろう? さかまたやミナミバンドウイルカに比べたら俺の方が可愛い』
「そりゃ人によるだろ」
さかまたはでかいのでかっこいいが先に来るし、ミナミバンドウイルカは鼻先が短いのであっちが好きと言う人もいる。例えば頭はでかいがシロイルカも愛敬があるため好みは人それぞれなのだ。
「元・飼育員としてはみんな可愛い奴等だったんだけどな。フリンクとは一番仲が良かったけど」
『ふふん、俺ほどレンと仲が良かった奴はいないだろうな』
「シャチのライムとミナミバンドウイルカのフォクシーは仲が良かったぞ」
『裏切り者……!』
「そりゃ飼育員なんだから色々な動物と触れ合うに決まってるだろ」
一番仲が良かったと思っているなら嫉妬するなよと背中を撫でてやった。満足気に噴気孔から水を出した後、広場へと降り立った。
「強盗やコントラさんは居なかったし、町に戻っていると思うけど……」
『お、クレアと子供たちだぞ』
「本当だ。おーい!」
飲み物を片手にこちらへ歩いてくるのが見えたので、手を振ってこっちへ呼ぶ。
「あ、レン兄ちゃん! 帰っていたんだ!」
「おう、きちんと送って来たぜ。コントラさん達は?」
「わかんない。なんか騒ぎになっていたけど、別に私達に関係ないしね」
駆け寄って来たモントの頭に手を置いていると、クレアが答えてくれた。
興味はないだろうからこんなものだろう。
『ただいまー』
「おかえりフリンク」
「やっぱりフリンクが居ると安心するなあ……大きいし」
『うふふ』
ルーとリーオはフリンクの方へ行っており、労いの言葉をかけていた。テンションの上がったフリンクはヒレで二人をぐっと抱き寄せてぐりぐりと体をこすり付けていた。
「結局、なんだったの?」
「それがな……っと、先に父さんのところへ行こう。昼飯だ」
「あ、そうね」
と、歩きながらクレアに事情を説明する。
物騒ねという言葉と共に、やはり珍しいと続く。このあたりではあまりそういうことが無いようだった。
「レンは村から出たことがないから知らないと思うけど、冒険者さん達が付近の調査を結構やってくれるの。この地を治めている侯爵様が依頼をしているとか聞いたことがあるけど……」
「侯爵? ……カイさんに言い寄ったアホ息子のとこのか?」
「知っているの? そういえばバートリィ家の人を救ったのよね。カイ様は娘さんだっけ」
俺は頷きながら別のことを考えていた。
カイさんの病気が発症したのはアホ息子の求婚から、という話はずっと引っかかっている。
ただ、鉢植えは町で買ったものだし、植物の魔物を制御してカビを散布する方法などあるだろうか?
まあ、これ以上関わることはないと思うので頭の片隅に置くくらいでいいか。
「そういえばジュース飲む?」
「いいのか?」
「半分残ってないけどね」
俺はクレアから木のコップで出来たジュースを受け取り、喉を潤す。
「むー。レン兄ちゃん、ルーのも飲んで!」
「ええ? いや、お前の入ってないだろ」
「いやあ!」
『また買ってもらおうよ』
駄々をこねるルーを、フリンクがヒレで抱っこしてそんなことを言う。
ちなみにオリジナルのコップごと買ったようだが、次回はコップを持って行けばジュース代だけで買えるらしい。ビールイベントみたいだな。
「はい、毎度!」
「あなたのところの野菜、美味しいのよね」
「ウチの息子が丹精込めて育ててますから!」
「やめてくれ父さん」
「お、噂をすれば」
露店で父さんを発見すると、どこかの奥さんが野菜を買ってくれていた。恥ずかしいことを口にしている父さんに声をかけると、奥さんが口を開く。
「あら、あなたが息子さん? それにクレアちゃんじゃない」
「こんにちは!」
「息子さんと一緒にいるってことはもしかしてクレアちゃんがよく言っていた幼馴染の? イケメンでいいわねえ。それじゃまた来るわ」
「よろしく!」
奥さんはそう言って軽い足取りで立ち去っていく。
「……おい、クレア。お前町の人にどんな説明をしているんだ?」
「おじさん、お昼は私のおすすめのお店に行くからね!」
「それは楽しみだ。こっちもそろそろ終わりになるから、それが終わったら行こうか」
「誤魔化したな……」
クレアは冷や汗をかきながら俺と視線を合わせず、父さんやフリンクとわいわいする。概ね昔からこういう奴なので別に構わないが気にはなるよな。
「というかレタス一個しか残ってないじゃないか」
「だな。多分すぐ売れると思うけど」
「すみません、このレタスをください」
「ほらきた」
すげえ。
ウチの野菜が美味いのは間違いないが、こうも簡単に売れるのか。
「あれ? トラニさん」
「おや、クレアさんじゃないですか。こんにちは」
「知り合いか?」
「うん、今から行こうと思っていたレストランのマスターよ」
短い茶髪で糸目の男はトラニと言うそうだ。優しそうな雰囲気を醸し出しているな。すると俺に顔を向けて口を開く。
「初めて見る方ですね」
「俺はレンと言います。こっちのおっさんの息子です」
「おっさんって言うな!?」
「ああ、そうでしたか。君がクレアさんのか――」
「わああああ! ちょ、ちょうどトラニさんのところへ行こうとしてたの! 一緒に行っていいですか!」
「え? それは構いませんよ。ランチの時間なので、皆さんが本日最初のお客様です」
……怪しい。
声をかけてきた連中は俺に興味が無さそうだったが、なにか言っているのか?
今は無き結界はフリンクのことだけ記憶から消えるようになっていたから、俺のことは町に来ても覚えていたはずだしな……
ひとまず二人になった時に聞こうかと俺達はレストランへ足を運んだ。
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