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第52話 セキトとギルドマスター

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「どうしたんですか?」
「旦那様の指示でお前達のことを話しに来たのだ。町に現れれば丁重にするようにな」
「ローク様が……」
「カイ様もな。こういう絵も用意してな」

 どうやらフリンクが出てきた時に町の人が驚かないようにと配慮を考えてくれていたらしい。セキト様はそう言ってやたらとでかいキャンバスを見せてくれた。

「あ、フリンク!」
『僕だ! カイが描いたの?』
「いや、奥様だ」
「マジか」
「ああ」

 若干コミカルな感じもあるが、間違いなくフリンクの絵だった。色合いもちゃんとバンドウイルカである。アリシャ様に絵の才能があったとは。

「まあ、ちょうどギルドマスターへと話したところだ。もう来ていたとは思わなかったが」
「幼馴染が――」
「お、おい、あんたは何者だ? ギルドマスターにこいつらのことを話しただって?」
「私も知りたいわ」

 俺とセキト様が話していると、ロアンとクレアが間に入って来た。するとセキト様が絵を引っ込めてから口を開く。

「私はセキトという。バートリィ家の執事と言えばわかるか」
「な!?」
「ああ、レンが助けた貴族の」

 クレアには話していたので手をポンと打って納得する。だが、報せを受けて俺達を連れて来た三人は困惑の表情が浮かんでいた。

「な、なんだいそりゃ?」
「おやおやこれは……」

 アディアとボーリックが呟く中、セキト様の後ろから知らない人がやってきて続けた。

「まあ、そういうことだ。こちらから出向こうと思っていたが、連れて来てくれて助かったぞ」
「ギ、ギルドマスター……」

 ロアンが驚いた顔で現れた男を見て呟く。なるほど、この人がギルドマスターか。
 
「ウチの者が迷惑をかけたか? 君がレンだな、俺はコントラ。この町のギルドの長をしている」
「レンです、よろしくお願いします。で、こっちが精霊のフリンクです」
『よろしくー!』
「むう……絵では信じがたかったが、本当に存在するのを見るとびっくりするなあ。よろしくお願いします精霊様。それで、ロアンが連れて来たのか?」
「あ、は、はい……」

 コントラさんに言われてギクリとするロアン。俺を見せしめにでもするつもりで連れて来たのだから気まずいのはわかる。
 まあ、町の人に言われて確認をしようとしただけだし、俺は気にしていない。

「えっと、町の人が驚いて通報したみたいなんですよ。それで彼等が質問のためギルドに来て欲しいと言われてここにきました」
「ですねえ。まあフリンクは目立つし、ロアンさん達は仕事をしただけって感じです」
「ふむ」
「おお、レンさん大人ぁ」

 アディアが感心したように呟く。ボーリックもうんうんと明らかに不審な頷き方をしていた。

「ということなのか?」
「そ、そうです。通報を受けたのは間違いありません……」

 ロアンは悔しそうに俺を見て呻くようにそう口にするが、クレアの前で恥をかいたとか思ってそうだな。
 仕事をした、という点が先に来ているのでクレアは恐らくダサいなどと思っていないはずだ。

『それじゃあ僕達はまた町に戻っていいのかな?』
「そうだな。今日はなにをしにきたんだ?」
「私が案内するつもりで連れて来たんですよ! いやあ、先に行っておけばよかったなとちょっと申し訳ないです」
「クレアちゃんがか? 友達なのかい」
「幼馴染で――」
「君がクレアか」
「え? 私を知っているんですか?」

 そこでセキト様がクレアの名を聞き目を細めた。なんでだ? そう考えていると、話が続けられた。

「カイ様とサーナがレンのことを」
「うおおおお!?」
「きゃあ!?」
「うわ!? な、なんだレン!?」

 嫌な予感がしたので俺は慌ててセキト様に飛び掛かった。そのまま誤魔化すため、クレアを回れ右させてから扉に向かって歩き出す。

「とりあえず誤解は解けたみたいだから町の散策に戻りますね! ほら、行くぞフリンク」
『ほーい!』
「なんだったんだ?」
「さあ……」

 フリンクの上で子供たちが首を傾げていた。だけど、これはいい移動だったなと俺は外に向かいながら思う。

「なら俺も一緒に行こう。散策中に不審がられても俺が居れば弁明もできるし、町の人も安心できる」
「あ、いいですね! セキト様はもう帰って大丈夫ですよ」
「酷いな貴様……!?」

 クレアにサーナとカイ様の話が入るとまた面倒なことになるからな。
 それでも町にフリンクのことが知れ渡れば頻繁に出入りしても良さそうだ。そこは素直に礼を言いたい。

「ロアン達はどうする?」
「う、えっと……」
「ボクはいくよー、フリンクと遊びたいし! 今日の依頼はもうないんだよね」
「そうだな……よし、俺も行くぞ! クレアさんを守らないと……!」
「ええ? レンが居るから大丈夫なんだけど」
「ぐは……!?」
「まあまあ、いいじゃないか。冒険者が一緒なら町の人達も安心だろ」

 割と辛辣に返すがクレアは別に嫌味とか皮肉ではなく『本当にそう思っている』ため悪気など一切ない。
 仕事をしようとしていたロアンとしては残念な結果だ。なので、一緒に行くことを提案した。

「……ふん、監視を自分から望むとはおかしな奴だ」
「ったく、口が減らない奴だなあ。まあ、いいけど」

 ひとまず町を歩き回るのは問題なくなりそうなので良かった。
 次はどこへ行くのかねえ?
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