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第28話 原因の追跡を
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カイさんの部屋に見える粉らしきもの。
俺はその正体を確認するため部屋に行くと、サーナが待ってくれていた。
「なにかありましたか?」
「ああ。窓の外――」
『レン、これ』
俺が窓の外を確認しようとしたが、その前にフリンクから裾を引かれて止められた。
そしてその視線の先には観葉植物が、あった。そこまでなら特に気にしないのだが――
「こいつは……カビ、か?」
『それとキノコが生えているよ、かなり小さいけど』
「なるほど、咳き込む原因はカビを吸っていたから……しかし……」
「でもそれならわたし達にもなにかあってもおかしくないのでは?」
俺の考えていたことをサーナが代弁してくれた。
そうなのだ。もしこれが原因だとすれば俺達にも影響があるはずである。
しかし、俺達はともかくサーナも出入りは多かっただろうになっていない。
「ふむ……」
そこでもう一度よく観察してみることにした。カビとキノコ……両方とも関係があるけど、どうだ?
「……ん? この粉、空中に舞っているけど規則性がないか?」
『本当だ。窓に続いていて、そこから……なるほど、よく目を凝らしてみてよ』
「どれ――」
そこで俺は気づいた。
この粉、実は胞子とかの類ではなく魔力の粒子のようだ。キノコが発しているようで、どこかに流れているような感じがある。
「全然見えないんですけど……」
「イルカ・アイでギリギリだからな。人間には見えないと思う」
「あ、神様の加護を持っているっぽい言動」
サーナがどうでもいいことで嬉しそうに言った。それはともかく、これを追っていけばもしかしたら――
「フリンク、こいつを追うぞ」
『オッケー!』
「レンさん? 私の部屋になにかありましたか?」
「ああ、原因を見つけたかもしれない。俺はそれを追います」
「本当ですか……!?」
部屋を覗き込むカイさんの言葉に振り返り告げた。そのまま観葉植物を持ってフリンクとこの場を離れる。
「こいつが原因だった」
「観葉植物が……う、ごほ……」
「ご、ごめん!」
今のは迂闊だったと一気に廊下を加速する。そのまま外に出ると、セバスさんに声をかけられた。
「おや、どうなさいましたかレン様」
「ちょっと出てきます! カイさんの治療が出来るかもしれません! あ、こいつを処分しておいてください! カビとキノコが恐らく原因です」
「なんですと!?」
「行ってきます!」
「夕食はシタビラーメのムニエルで!」
『おさかな……♪』
門を抜ける俺の後をカイさんとサーナがついてきていた。フリンクは魚と聞いて目を輝かせていた。
「ちょ、俺だけでいいですから!?」
「いいえ、フリンク様をぬいぐるみに見せかけるために私は必要です!」
「お嬢様のお世話はわたしの仕事です!」
謎の主張をする二人に呆れつつ、俺は魔力の後を追う。
「カイ様、大きいぬいぐるみ持ってるーいいなあ!」
「あそぼー!」
「ふふ、また今度ね」
子供たちに人気があるんだなと思いつつ足を進めていく。よく目を凝らして進むとやがて外壁にたどり着く。そう、それは町の外に続いていたのだ。
「外……? 一体どうして……」
『どうしてもじゃないよ。行くしかない』
「そうですね、ここは人目もつかないのでフリンクさんに乗っていけばいいでしょう。お嬢様はここで引き返してください」
「あ! ずるいですよ! レンさん、守ってくれますよね……? 一緒に行っても……ごほっ……ごほっ!?」
「カイさん!?」
そこで急にカイさんが苦しみ出した。鉢植えはギャリソ……セバスさんに渡したのでそこまで苦しむのはおかしい。
「う、ごほっ……」
「サーナ、カイさんを頼む。俺はこのまま現場へ向かうぞ」
「わ、わかりました! お気をつけて!」
さすがに主人のピンチというのを受けてサーナもいつもの冗談は出ず、屋敷に戻るためカイさんを背負った。小柄ながらいい体力だ。
『行くか、レン』
「ああ」
二人だけになったところでフリンクの目つきが変わった。正直、二人が居ない方がいい……そんな気がする。
人目がないことを確認して俺はフリンクにまたがり外へと出た。
「魔力の痕跡が濃くなってきたな」
『注意しろ、嫌な予感がする。……太平洋でホホジロの群れに追われた時の感覚に似ている』
「嘘つくな!? お前、水族館で産まれた個体だろ!?」
なぜかっこつけたのかわからんが、魔力を辿ると益々濃くなってきた。あと、小さい頃のフリンクはきゅーきゅー鳴いてめちゃくちゃ可愛かった。
『近いぞ』
「……な、なんだありゃ!?」
フリンクの移動スピードは中々速い。それでも10ファールほど進んだところに、それはあった。
「でかい木……じゃないな。擬態しているがこいつは魔物……!!」
『そのようだな。イルカビームで……む!』
俺達が看破をした瞬間、擬態している木がぐにゃりと曲がり、触手のような蔓が俺達を襲ってきた!
「攻撃する気配を感じ取ったか! フリンク、的を絞らせないよう分かれてから仕掛けるぞ!」
『了解だ』
俺は腰の剣を抜いて側面に回り込む。
すると――
「うじゅじゅ……」
――完全に擬態を解いた植物の魔物は無数の蔦を出現させ、花弁を開いた。花柱がある場所にはウツボカズラのような口がぽっかりと開き、そこからダラダラと樹液を垂らす。
「行くぞ……!!」
俺はイルカビームを全力で放った!
俺はその正体を確認するため部屋に行くと、サーナが待ってくれていた。
「なにかありましたか?」
「ああ。窓の外――」
『レン、これ』
俺が窓の外を確認しようとしたが、その前にフリンクから裾を引かれて止められた。
そしてその視線の先には観葉植物が、あった。そこまでなら特に気にしないのだが――
「こいつは……カビ、か?」
『それとキノコが生えているよ、かなり小さいけど』
「なるほど、咳き込む原因はカビを吸っていたから……しかし……」
「でもそれならわたし達にもなにかあってもおかしくないのでは?」
俺の考えていたことをサーナが代弁してくれた。
そうなのだ。もしこれが原因だとすれば俺達にも影響があるはずである。
しかし、俺達はともかくサーナも出入りは多かっただろうになっていない。
「ふむ……」
そこでもう一度よく観察してみることにした。カビとキノコ……両方とも関係があるけど、どうだ?
「……ん? この粉、空中に舞っているけど規則性がないか?」
『本当だ。窓に続いていて、そこから……なるほど、よく目を凝らしてみてよ』
「どれ――」
そこで俺は気づいた。
この粉、実は胞子とかの類ではなく魔力の粒子のようだ。キノコが発しているようで、どこかに流れているような感じがある。
「全然見えないんですけど……」
「イルカ・アイでギリギリだからな。人間には見えないと思う」
「あ、神様の加護を持っているっぽい言動」
サーナがどうでもいいことで嬉しそうに言った。それはともかく、これを追っていけばもしかしたら――
「フリンク、こいつを追うぞ」
『オッケー!』
「レンさん? 私の部屋になにかありましたか?」
「ああ、原因を見つけたかもしれない。俺はそれを追います」
「本当ですか……!?」
部屋を覗き込むカイさんの言葉に振り返り告げた。そのまま観葉植物を持ってフリンクとこの場を離れる。
「こいつが原因だった」
「観葉植物が……う、ごほ……」
「ご、ごめん!」
今のは迂闊だったと一気に廊下を加速する。そのまま外に出ると、セバスさんに声をかけられた。
「おや、どうなさいましたかレン様」
「ちょっと出てきます! カイさんの治療が出来るかもしれません! あ、こいつを処分しておいてください! カビとキノコが恐らく原因です」
「なんですと!?」
「行ってきます!」
「夕食はシタビラーメのムニエルで!」
『おさかな……♪』
門を抜ける俺の後をカイさんとサーナがついてきていた。フリンクは魚と聞いて目を輝かせていた。
「ちょ、俺だけでいいですから!?」
「いいえ、フリンク様をぬいぐるみに見せかけるために私は必要です!」
「お嬢様のお世話はわたしの仕事です!」
謎の主張をする二人に呆れつつ、俺は魔力の後を追う。
「カイ様、大きいぬいぐるみ持ってるーいいなあ!」
「あそぼー!」
「ふふ、また今度ね」
子供たちに人気があるんだなと思いつつ足を進めていく。よく目を凝らして進むとやがて外壁にたどり着く。そう、それは町の外に続いていたのだ。
「外……? 一体どうして……」
『どうしてもじゃないよ。行くしかない』
「そうですね、ここは人目もつかないのでフリンクさんに乗っていけばいいでしょう。お嬢様はここで引き返してください」
「あ! ずるいですよ! レンさん、守ってくれますよね……? 一緒に行っても……ごほっ……ごほっ!?」
「カイさん!?」
そこで急にカイさんが苦しみ出した。鉢植えはギャリソ……セバスさんに渡したのでそこまで苦しむのはおかしい。
「う、ごほっ……」
「サーナ、カイさんを頼む。俺はこのまま現場へ向かうぞ」
「わ、わかりました! お気をつけて!」
さすがに主人のピンチというのを受けてサーナもいつもの冗談は出ず、屋敷に戻るためカイさんを背負った。小柄ながらいい体力だ。
『行くか、レン』
「ああ」
二人だけになったところでフリンクの目つきが変わった。正直、二人が居ない方がいい……そんな気がする。
人目がないことを確認して俺はフリンクにまたがり外へと出た。
「魔力の痕跡が濃くなってきたな」
『注意しろ、嫌な予感がする。……太平洋でホホジロの群れに追われた時の感覚に似ている』
「嘘つくな!? お前、水族館で産まれた個体だろ!?」
なぜかっこつけたのかわからんが、魔力を辿ると益々濃くなってきた。あと、小さい頃のフリンクはきゅーきゅー鳴いてめちゃくちゃ可愛かった。
『近いぞ』
「……な、なんだありゃ!?」
フリンクの移動スピードは中々速い。それでも10ファールほど進んだところに、それはあった。
「でかい木……じゃないな。擬態しているがこいつは魔物……!!」
『そのようだな。イルカビームで……む!』
俺達が看破をした瞬間、擬態している木がぐにゃりと曲がり、触手のような蔓が俺達を襲ってきた!
「攻撃する気配を感じ取ったか! フリンク、的を絞らせないよう分かれてから仕掛けるぞ!」
『了解だ』
俺は腰の剣を抜いて側面に回り込む。
すると――
「うじゅじゅ……」
――完全に擬態を解いた植物の魔物は無数の蔦を出現させ、花弁を開いた。花柱がある場所にはウツボカズラのような口がぽっかりと開き、そこからダラダラと樹液を垂らす。
「行くぞ……!!」
俺はイルカビームを全力で放った!
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