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第2話 異世界へ誘うもの
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「……ハッ!?」
俺は確かいけすに落ちたはず……?
目が覚めた俺は病院のベッドの上……ではなく、なんとも言えないぬくもりを持つ床の上だった。
「ここは、どこだ?」
上半身を起こして周囲を確認する。ぬくもりを感じていた床はあまり馴染みのない赤い絨毯だった。
そしてそれなりに広い空間はゲームなどでよくある『王様が居る場所』に似ているなと思った。
「俺はいけすに落ちたはずじゃ……ハッ!? フリンクは大丈夫なのか!?」
慌てて立ち上がってそう叫ぶと――
『……残念だが、あいつは死んだよ。お前と一緒にな』
「……!? 誰だ!?」
どこからともなく声が聞こえてきた。その方向に視線を合わせると、赤い絨毯の先に階段があった。その上にある玉座と思われるところに誰かが座っているのがわかった。
俺は歩いて階段を上り、声の主と相対する。
『……よう、この度は災難だったな……』
「喋るイルカ……!?」
玉座に到着したが、そこには王冠をかぶり、王様が着るような赤いマントを羽織ったイルカが気だるい感じ……『CV:津田 健〇郎』のような声で労って……で、いいのか? まあ、労ってくれた。
「……シロイルカ、か」
『まあ、見た目はな。まずは自己紹介といこう。俺はイルカの神だ。略してイルカミという』
なぜ略したのか?
俺はとりあえず無言で頷くと、理解したと捉えてくれたようで話を続ける。
『俺の名前はイヴァルリヴァイという。お前は――』
「イルカミが名前じゃないのかよ!」
『違うぞ? イルカの神の略称がイルカミであって、俺には名前がある』
「そうかよ……続けてくれ」
『ああ。さて、お前は地球で水族館の飼育員をしていた斑鳩 漣で間違いないな? お前は台風の日、いけすに落ちて……命を落とした』
「……」
やはりあれは夢ではなかったようで、俺はいけすに落ちておぼれ死んでしまったらしい。
「フリンクもか?」
『ああ。お前を助けようとしていたが、金網がぶち当たってな。打ち所が悪かったようでしばらくお前を運んでいたがやがて力尽きた』
「そうか……」
悪いことをしたな、と俺は胸中で呟く。
あのままイルカ達を見殺しにすれば助かったかもしれないし、水族館で死亡事故がおこり、イルカも死んだとなれば館に迷惑がかかってしまう。
「あー……やっちまったな……」
『まあ起きてしまったことは仕方が無い』
「まあな。……で、ここはどこなんだ?」
『うむ。ここは生と死のはざまの世界『イストワール』という。お前を招き入れたのは他でもない、礼をしたかったからだ』
「礼だって?」
俺の言葉にイヴァルリヴァイは首を縦に振る。
「俺はフリンクを殺してしまったのと変わらんぜ? そんなのに礼をするのか?」
『……お前のイルカへの接し方は彼らに安心を与えていた。最期の時もイルカを死なせないために起こした行動だろう』
「まあ……」
曖昧な返事しかできないが、その件についてはその通りだと言っていいだろう。
「それで、俺は死んだってことは理解した。だけどここに呼ばれた。そこまではいい。問題はこの後の話だ。礼の話だけで終わらないんだろう?」
『その通りだ。まずはイルカ達を助けれてありがとう。感謝する。……そして今後だが、お前は別の世界に記憶を持ったまま転生させようと思っている』
「記憶を……? 異世界転生ってやつか」
『チキュウではそういう書物があるらしいな。それと同じと思ってくれていい。どうだ?』
「ふむ……」
この提案は俺にとって正直どちらでもいいと考えていた。苦しまずに死ねたし、両親は事故で亡くなっていたから親戚くらいしか悲しむ人も居ない。
このままあの世にでも送ってもらえればそれはそれでアリなのだ。
……しかし、記憶を持ったままであれば一から人生をやり直すには面白いかもしれない、という期待もある。幼少期がきついかもしれないが……
『どうする? 俺としては感謝の意をこめて転生してもらいたいが』
「ひとつ聞かせてくれ。これにデメリットは無いんだな? 行ったら戦いに明け暮れるみたいなことは?」
『ない。……が、選択によっては魔物と戦うような世界だ』
ヒレで巻き付けるように持っている杖でトントンと床を鳴らしながらそう言う。
なるほど、異世界はいわゆるファンタジー世界といったところか。冒険者とかだな。
「動物が好きだからテイマーとかいいかもな」
『ああ、いいかもしれないな』
気だるげな声だが、少し嬉しそうだ。それにしても――
「なんでイルカが……こういう時は女神様とかじゃないのか?」
『人間には人間の、イルカにはイルカの神がいるということだ。本来ならイルカにしか恩恵はないのだが、特別だ』
「ふうん? そういやフリンクは? あいつも死んだんだろう? ここには居ないのか」
『お前の次に呼ぶことになっている。では、転生ということでいいな?』
「そうだな。折角だし、行ってみるよ。フリンクはどうなるんだ?」
『転生することになると思う』
そうらしい。
あいつも人間とかになれたらいいかもしれないな。最期は俺を助けようと必死だったし。
「俺はどうすればいい?」
『今から転生のプログラムに入ってもらう。一度、その身体を再分割して再構築……という感じだ』
「オッケー」
『始めるぞ……<かの者、次元を越え、時を超え、知られざる世界へ誘わん――>』
目を瞑ってなにか呪文のようなものを口にするイヴァルリヴァイ。
「……」
『……む、なんだ?』
「あ、すまない」
シロイルカはバンドウイルカと違って額がぽこっとなっている。なんか見ていたらつい撫でてしまっていた。
担当はバンドウイルカだったけど、シロイルカもたまに触っていた。
『では、送るぞ』
「ありがとう、イヴァルリヴァイ」
『気にするな。恩人にできる限りのことをしただけだ。向こうに行けば後はまた自力で生きていくことになる。能力は現地人より高いと思うが、無理はするなよ』
「高いのか……」
『剣と魔法の適正はなるべき引き上げて送るつもりだ』
そういう特典があるらしい。
そう思っていると、俺の身体が光に包まれ始めた。
『では息災でな……』
「じゃあな」
『ああ、そうだひとつ聞いていいか?』
「ん? なんだ?」
『お前、うたのお兄さんに声が似ていると言われないか?』
「物凄くどうでもいい質も――」
その瞬間、俺は意識が遠くなるのを感じた――
俺は確かいけすに落ちたはず……?
目が覚めた俺は病院のベッドの上……ではなく、なんとも言えないぬくもりを持つ床の上だった。
「ここは、どこだ?」
上半身を起こして周囲を確認する。ぬくもりを感じていた床はあまり馴染みのない赤い絨毯だった。
そしてそれなりに広い空間はゲームなどでよくある『王様が居る場所』に似ているなと思った。
「俺はいけすに落ちたはずじゃ……ハッ!? フリンクは大丈夫なのか!?」
慌てて立ち上がってそう叫ぶと――
『……残念だが、あいつは死んだよ。お前と一緒にな』
「……!? 誰だ!?」
どこからともなく声が聞こえてきた。その方向に視線を合わせると、赤い絨毯の先に階段があった。その上にある玉座と思われるところに誰かが座っているのがわかった。
俺は歩いて階段を上り、声の主と相対する。
『……よう、この度は災難だったな……』
「喋るイルカ……!?」
玉座に到着したが、そこには王冠をかぶり、王様が着るような赤いマントを羽織ったイルカが気だるい感じ……『CV:津田 健〇郎』のような声で労って……で、いいのか? まあ、労ってくれた。
「……シロイルカ、か」
『まあ、見た目はな。まずは自己紹介といこう。俺はイルカの神だ。略してイルカミという』
なぜ略したのか?
俺はとりあえず無言で頷くと、理解したと捉えてくれたようで話を続ける。
『俺の名前はイヴァルリヴァイという。お前は――』
「イルカミが名前じゃないのかよ!」
『違うぞ? イルカの神の略称がイルカミであって、俺には名前がある』
「そうかよ……続けてくれ」
『ああ。さて、お前は地球で水族館の飼育員をしていた斑鳩 漣で間違いないな? お前は台風の日、いけすに落ちて……命を落とした』
「……」
やはりあれは夢ではなかったようで、俺はいけすに落ちておぼれ死んでしまったらしい。
「フリンクもか?」
『ああ。お前を助けようとしていたが、金網がぶち当たってな。打ち所が悪かったようでしばらくお前を運んでいたがやがて力尽きた』
「そうか……」
悪いことをしたな、と俺は胸中で呟く。
あのままイルカ達を見殺しにすれば助かったかもしれないし、水族館で死亡事故がおこり、イルカも死んだとなれば館に迷惑がかかってしまう。
「あー……やっちまったな……」
『まあ起きてしまったことは仕方が無い』
「まあな。……で、ここはどこなんだ?」
『うむ。ここは生と死のはざまの世界『イストワール』という。お前を招き入れたのは他でもない、礼をしたかったからだ』
「礼だって?」
俺の言葉にイヴァルリヴァイは首を縦に振る。
「俺はフリンクを殺してしまったのと変わらんぜ? そんなのに礼をするのか?」
『……お前のイルカへの接し方は彼らに安心を与えていた。最期の時もイルカを死なせないために起こした行動だろう』
「まあ……」
曖昧な返事しかできないが、その件についてはその通りだと言っていいだろう。
「それで、俺は死んだってことは理解した。だけどここに呼ばれた。そこまではいい。問題はこの後の話だ。礼の話だけで終わらないんだろう?」
『その通りだ。まずはイルカ達を助けれてありがとう。感謝する。……そして今後だが、お前は別の世界に記憶を持ったまま転生させようと思っている』
「記憶を……? 異世界転生ってやつか」
『チキュウではそういう書物があるらしいな。それと同じと思ってくれていい。どうだ?』
「ふむ……」
この提案は俺にとって正直どちらでもいいと考えていた。苦しまずに死ねたし、両親は事故で亡くなっていたから親戚くらいしか悲しむ人も居ない。
このままあの世にでも送ってもらえればそれはそれでアリなのだ。
……しかし、記憶を持ったままであれば一から人生をやり直すには面白いかもしれない、という期待もある。幼少期がきついかもしれないが……
『どうする? 俺としては感謝の意をこめて転生してもらいたいが』
「ひとつ聞かせてくれ。これにデメリットは無いんだな? 行ったら戦いに明け暮れるみたいなことは?」
『ない。……が、選択によっては魔物と戦うような世界だ』
ヒレで巻き付けるように持っている杖でトントンと床を鳴らしながらそう言う。
なるほど、異世界はいわゆるファンタジー世界といったところか。冒険者とかだな。
「動物が好きだからテイマーとかいいかもな」
『ああ、いいかもしれないな』
気だるげな声だが、少し嬉しそうだ。それにしても――
「なんでイルカが……こういう時は女神様とかじゃないのか?」
『人間には人間の、イルカにはイルカの神がいるということだ。本来ならイルカにしか恩恵はないのだが、特別だ』
「ふうん? そういやフリンクは? あいつも死んだんだろう? ここには居ないのか」
『お前の次に呼ぶことになっている。では、転生ということでいいな?』
「そうだな。折角だし、行ってみるよ。フリンクはどうなるんだ?」
『転生することになると思う』
そうらしい。
あいつも人間とかになれたらいいかもしれないな。最期は俺を助けようと必死だったし。
「俺はどうすればいい?」
『今から転生のプログラムに入ってもらう。一度、その身体を再分割して再構築……という感じだ』
「オッケー」
『始めるぞ……<かの者、次元を越え、時を超え、知られざる世界へ誘わん――>』
目を瞑ってなにか呪文のようなものを口にするイヴァルリヴァイ。
「……」
『……む、なんだ?』
「あ、すまない」
シロイルカはバンドウイルカと違って額がぽこっとなっている。なんか見ていたらつい撫でてしまっていた。
担当はバンドウイルカだったけど、シロイルカもたまに触っていた。
『では、送るぞ』
「ありがとう、イヴァルリヴァイ」
『気にするな。恩人にできる限りのことをしただけだ。向こうに行けば後はまた自力で生きていくことになる。能力は現地人より高いと思うが、無理はするなよ』
「高いのか……」
『剣と魔法の適正はなるべき引き上げて送るつもりだ』
そういう特典があるらしい。
そう思っていると、俺の身体が光に包まれ始めた。
『では息災でな……』
「じゃあな」
『ああ、そうだひとつ聞いていいか?』
「ん? なんだ?」
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