上 下
10 / 43
World 1

1-4 コントローラー

しおりを挟む
25回。






何の数字かって? 宿屋へ辿り着くまでに綾香とフィリアがナンパされた回数だ。


あの後、路地から脱出した俺達は、面倒事になる前に宿屋を目指していた。
直線距離にして300mくらいだったが、どこから湧いてくるのかと思うくらい声をかけられ、お断り(物理)をするのが大変だったというわけである。8割くらい綾香が追い払っていた。

フィリアに「勇者様がしちゃいけない顔してますよ」と言われたが気にしないことにする。


「やっと一息つけるわね! ちゃんと鍵かけた?」
綾香がベッドへ腰掛け、食堂からもらってきた水を飲み干す。

「ああ、これで ”一応” 安全なはずだ」

「魔法がありますからね、この世界。油断しないでいきましょう」
速攻で誘拐されかけた人の言う事ではないけどな!!

「とりあえずコントローラーを確認してみよう。綾香も受け取ったろ?」
カバンから良く知っているコントローラーを取り出す。色はシンプルなブラック。
左手に十字キー、右手に1~4のボタンと、上部にLRボタンの1と2が搭載されている。
真ん中程にスタートとセレクトボタンがあり、その上に小さい液晶画面も搭載されていたりするごく普通のコントローラーだ。

「私はピンクね。さっき買ったやつ?」

「だな、それしかなかったからそれにしたんだよ。青とか白は新品しかなかったからな・・」
中古でも高い昨今のコントローラー。改造されたと知った時の俺の気持ちは想像に難しくないと思う。

まあ今更言っても始まらない。綾香が使うならピンクでちょうど良かったと思おう、それじゃさっそくスタートボタンを押してみるか。

「スタート、と」
ピコンと、機械音が鳴った瞬間に画面の液晶が点滅する。
綾香も押したようで、画面が明るくなっているのが分かる。

「電池とかどうなってるんだろうな・・・本体から充電するタイプだったはずだけど」

「あ、多分ハーレルさんが改造して、魔力で動くようになっているハズですよ!」
便利だなあ魔法。そういや魔法書も預かってたっけ。
しばらく待っていると、液晶画面に赤い髪の女神が映し出されてきた。

『あ! きたきた! 良かったー起動したのね? 禿が役に立たないから、私が慌てて通信が取れるようにこっちの環境を整えたわ! テレビ電話みたいなものだと思ってちょうだい』

「わ! ル、ルア様!? メントル様はどこへ行ったんですか?」
なるほど、この赤い髪の神・・名付けて、赤い神はルアというのか。
そしてフィリアがこの世界の管理しているはずのメントル様の姿が見えないことに違和感を覚えていた。

『ちょっと地球侵攻を食い止めるのに交代で行っちゃったわ。だから、チュートリアルはわたしがやるわね』

「チュートリアルって言うな・・・まあいいか。 それで、このコントローラーは一体何ができるんだ?」

『よくぞ聞いてくれました! それはね───────────────」


女神ルアの話によるとこうだ。




【自ステータス確認】

スキルやレベルを見ることが出来るらしい。




【サーチ機能】

半径50m以内の味方と敵が判別できる。

ダンジョンの入り口が分かる。




【マップ機能】

歩いたところがマッピングされる。

ダンジョンは個別で登録される。オートマッピング。




まあここまでならよくあるRPGの機能だが、ここからおかしくなってきた。


【アイテム回収機能】

アイテム回収機能をONにすると、液晶にターゲットが現れ、対象に合わせてR2ボタンでカバンに回収できる。生き物は不可。


【魔法ショートカット機能】

4つまで登録可能。R1と十字キーの方向で放つことが可能。


【ターゲット機能】

敵を液晶上でタッチしロックできる。(魔法ショートカットと組み合わせてMPが尽きるまで連射可能)

味方を液晶上でタッチしロックできる。(回復魔法などを一括でかけることが可能)


【カーソル機能】

液晶に映ったカーソルを動かし、対象をクリックすると色々起こる。



【???】

レベル50以上で解放


【???】

レベル70以上で解放


※アップデートにより追加機能搭載します。



「カーソル機能の説明雑すぎない!? んでアップデートすんのコレ!?」


「まあ、使ってからのお楽しみと思うしかないわね・・」
綾香が脱力して何とか受け入れていた。


「ステータス確認と魔法のショートカットは便利ですねー。場合によっては雑魚をゴミのように蹴散らせますね!」


『そうそう、インターフェースが使いにくかったら言ってね、アップデートで修正できるかもしれないから。後、メニューの中にある”神と話す”をクリックしてくれたら私たちと会話することができるわ。質問があったら呼んでね。本当はこの機能無かったんだけど、ずっとあなた達を見ている訳にもいかないから、何かあった時に困らないように急ピッチで作ったわ!』


意外と心配してくれているのか、相談できるようにしてくれたらしい。というか数時間で作るとはあなたが神か。神だったな。

ソ〇ルブレ〇ダーの神はセーブしかしてくれなかったのにえらい違いだ。


「ありがとうございます、ルア様!」

『いいのよ、無理言って世界を救ってもらうのはこっちなんだし。とりあえず疲れたから一旦休むわね・・また何かあったら呼んで・・私が来るとは限らないけど・・ふああ』

スッと液晶からルア様の姿が消えメニューだけが残った。

「正直こんなに使えるアイテムに化けるとは・・・」

「マッピング機能は良いわね、迷ったら元の道に戻るのが簡単だし、町がどこにあるか分かれば移動とレベル上げも楽になるし」


「アイテム回収機能が気になりますけど、どうやるんでしょうね?」


「嫌な予感しかしないからとりあえず後に回そうぜ? いや、まずはステータスを確認するか? 魔法を覚えるのもいいが・・・」

俺はぶつぶつとこの先の予定を考えていると綾香に提案を出される。


「その前に・・お腹すかない? 私、晩御飯前にこっちに来たからお腹すいちゃった」
綾香がてへっと舌を出しながら頬を赤らめて照れる。
いつもこうならいいのにな、と思いながら俺の考えを述べる。

「その前にやっぱ装備だな。さっきのナンパラッシュを見る限り、何かトラブルに巻き込まれそうだからな。一応身なりは戦士を装っていた方がいいかもしれない」


「確かにそうかも・・うん、じゃあ少し我慢する(私のために考えてくれてるのね♪)」


はたして、俺達は武器防具屋を目指す。

どのルートを通ってもイベント(という名のアクシデント)が起きそうなのは気のせいだろうか?
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

帝国少尉の冒険奇譚

八神 凪
ファンタジー
 生活を豊かにする発明を促すのはいつも戦争だ――    そう口にしたのは誰だったか?  その言葉通り『煉獄の祝祭』と呼ばれた戦争から百年、荒廃した世界は徐々に元の姿を取り戻していた。魔法は科学と融合し、”魔科学”という新たな分野を生み出し、鉄の船舶や飛行船、冷蔵庫やコンロといった生活に便利なものが次々と開発されていく。しかし、歴史は繰り返すのか、武器も同じくして発展していくのである。  そんな『騎士』と呼ばれる兵が廃れつつある世界に存在する”ゲラート帝国”には『軍隊』がある。  いつか再びやってくるであろう戦争に備えている。という、外国に対して直接的な威光を見せる意味合いの他に、もう一つ任務を与えられている。  それは『遺物の回収と遺跡調査』  世界各地にはいつからあるのかわからない遺跡や遺物があり、発見されると軍を向かわせて『遺跡』や『遺物』を『保護』するのだ。  遺跡には理解不能な文字があり、人々の間には大昔に天空に移り住んだ人が作ったという声や、地底人が作ったなどの噂がまことしやかに流れている。  ――そして、また一つ、不可解な遺跡が発見され、ゲラート帝国から軍が派遣されるところから物語は始まる。

あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。 電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。 信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。 そうだ。西へ行こう。 西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。 ここで、ぼくらは名をあげる! ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。 と、思ってた時期がぼくにもありました…

怠惰の魔王

sasina
ファンタジー
 年齢一桁で異世界転移してしまった天月 鈴。  運良く拾ってもらい、10年間育てられる。  ある日、この異世界イデアが違う世界と繋がってしまい、その繋がってしまった世界と言うのが10年前の地球だった。  折角、繋がったので懐かしの地球に行ってみると、世界の強制力か、体も10年前の姿に戻ってしまった。

レンタルショップから始まる、店番勇者のセカンドライフ〜魔導具を作って貸します、持ち逃げは禁止ですので〜

呑兵衛和尚
ファンタジー
 今から1000年前。  異形の魔物による侵攻を救った勇者がいた。  たった一人で世界を救い、そのまま異形の神と共に消滅したと伝えられている……。  時代は進み1000年後。  そんな勇者によって救われた世界では、また新たなる脅威が広がり始めている。  滅亡の危機にさらされた都市、国からの援軍も届かず領主は命を捨ててでも年を守る決意をしたのだが。  そんなとき、彼の目の前に、一軒の店が姿を現した。  魔導レンタルショップ『オールレント』。  この物語は、元勇者がチートスキルと勇者時代の遺産を駆使して、なんでも貸し出す商店経営の物語である。    

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!

クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』  自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。  最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~

はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま) 神々がくじ引きで決めた転生者。 「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」 って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう… まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【第二部完結】 最強のFランク光魔導士、追放される

はくら(仮名)
ファンタジー
※2024年6月5日 番外編第二話の終結後は、しばらくの間休載します。再開時期は未定となります。 ※ノベルピアの運営様よりとても素敵な表紙イラストをいただきました! モデルは作中キャラのエイラです。本当にありがとうございます! ※第二部完結しました。 光魔導士であるシャイナはその強すぎる光魔法のせいで戦闘中の仲間の目も眩ませてしまうほどであり、また普段の素行の悪さも相まって、旅のパーティーから追放されてしまう。 ※短期連載(予定) ※当作品はノベルピアでも公開しています。 ※今後何かしらの不手際があるかと思いますが、気付き次第適宜修正していきたいと思っています。 ※また今後、事前の告知なく各種設定や名称などを変更する可能性があります。なにとぞご了承ください。 ※お知らせ

処理中です...