88 / 129
第八章:魔族との会談
199.魔族と倫理観を擦り合わせだ
しおりを挟む
外に出た俺達はブライク達を呼ぶために森の中を歩いていく。
念のため冒険者や騎士と鉢合わせをしないように魔封はかけておく必要はあるか。
そんなことを考えているとレスバが笛を取り出して口を開く。
【さて、そろそろいいでしょうか?】
「お、そうだな。頼むぜ」
「冗談じゃなかったんだ……」
風太が呆れたように言う。夏那と水樹ちゃんも苦笑しているのでやはり冗談だと思っていたようだ。ちなみに俺もそう思っていた。
【な、なんですかその目は……! とりあえず呼びますからね!】
「オッケー」
念のためか夏那は槍を肩に担いだまま木を背にして応えた。見れば残り二人もしっかり武器をすぐ使えるようにしているな。特に言うことはないなと考えつつレスバの笛吹きを見る。
特に音が聞こえるわけではないのでここからどうなるか分からないが――
【ようやく呼んでくれたか】
「うわあ!?」
【遅い……! あれから一体どれだけ経過したと思っている!!】
「うるさっ!? 大丈夫なの?」
「魔封をかけているから大丈夫だ。よう、悪いな。遅くなった」
【出たな勇者……!】
【うるさいぞビカライア】
ブライクに後頭部を殴られて一気に静かになる。レスバの知り合いというのは間違いないだろうな。
「えっと、あなた達が……?」
【む。お前達も勇者か?】
「まあ、そうだな。みんな、こっちがブライクで地面に突っ伏しているのが副幹部のビカライアだ」
「副幹部!? これが……」
【うんうん。そうですよねえ。カナの気持ちはよくわかります】
「レスバは味方しないんだ。あたしは夏那よ。ひとまず休戦ってことを聞いているわ」
まずは夏那が名乗り、続けて風太と水樹ちゃんも自己紹介を行う。
【魔光将ブライクだ。よろしく……とは言わん。今後どうなるかわからんからな】
「それくらいでいいわよ。あたし達だってアキラスのことがあるから魔族を信用しろって言われても難しいしね」
【わたしは……!?】
「ということで武器は持たせてもらいますよ」
【構わん。お前達全員を相手にするには少々骨が折れそうだしな。ビカライア、いつまで寝ているのだ】
【くっ……申し訳ありません。私はビカライアという。魔王様と会うのは些か不安だが……。腑に落ちないことは多々あるからな。仕方なくだ、それを忘れるな!」
ようやく復活したビカライアも名乗りひとまず名前と姿は認識できたか。相変わらず謎の自信を持っているな。
すると夏那が目を細めてニヤリと笑う。
「威勢がいいじゃない。分かってるって。条件は同じよ」
【ねえ、わたし……】
「ちょっと向こうに行っていてもらえますか?」
【ミズキちゃん酷い!?】
『はいはい、信用してる信用している。で、なにを話すの?』
【うううう……】
やんわりと笑顔で排除されそうになり、リーチェに雑に扱われたレスバ。まあ、こいつはさておき俺は収納魔法から適当に料理を取り出して、テーブルと椅子を作って用意した。
「腹減ったろ? それともなんか食ってたか」
【その辺を飛んでいる鳥や草を食っていたから大丈夫だぞ】
「それは大丈夫なのかなあ。レスバが普通に料理を食べるからあなた達もと、リクさんが用意したんですよ。如何ですか?」
【ブライク様……どうしますか?】
【心意気に応えないわけにはゆくまい。美味そうだ、いただこう】
『男らしいわねえ』
収納魔法に入れておけばその時のままで保存されるので串焼きやコーンスープは暖かいままである。ホットドッグに似たパンなどもあるので腹にはたまるだろう。
【ほう……これはとうもろこしか。濃厚だ】
【こっちはビッグボアの塩焼き……。ソーセージの挟まれたパンもいいですぞブライク様】
【一つ渡せ】
特になんの警戒もせずにがつがつと食事を始めた二人。俺はまあ気にするところでもないが、この光景を見て風太が口を開く。
「あの……罠だとかは思わなかったんですか?」
【む? そのつもりがあればもっと早い段階で勇者が俺達を始末していただろう? レスバが現時点も生かされている時点で信用はできる】
「レスバって一応人質なんだけど、そこんところはどうなのよ?」
【無理に拘束しているわけでもないではないか。人間は気に入らんが、アホとはいえレスバを連れて行くメリットは無いはずなのだ。もし私がそちらの立場なら敵対する者を連れ歩く不利な状況は作らん。戦争している相手に人質など意味がないのは勇者なら知っているはずだ……がはぁ!?】
【誰がアホだとバカライア……!!】
【例えだ例えええええええええええええええええええ!?】
口の悪いビカライアに襲い掛かるレスバ。まあ自業自得なので放っておこう。で、ブライクがその後を続けてくれたが、総合的に見て『俺達』はまだ信用できると判断したらしい。
レスバがレスバらしく自由にしているのが判断材料というのもおかしな話だが、嫌いな相手には話すらしない気質らしい。
「レスバってそうなんですね」
『まあアホなのは間違いないけど』
【リーチェ様!?】
「いいからビカライアを放してあげなさいよ。ご飯食べてから話をするんでしょ?」
「食いながらでもいいだろ。とりあえず明日には船で沖へ出られそうだ。その時、改めて船で合流してもらえるか?」
【分かった。メルルーサには先に話をしておいても良かったが、いいのか?】
「いい。俺の『知っている』奴か分からないからな。俺達が行くってなって言って攻撃されても困る」
【なるほど。承知した。しかし人間の食い物は美味いな】
【でしょう? わたしも驚きました。だから前の時になんで人間を攻撃したのかわからなくて。変な人間もいますけど、概ねわたし達と同じですね】
白目を剥いたビカライアを椅子に座らせながらレスバなりの意見を述べていた。変な人間が居るのは確かだしな。
【魔物も懐くくらいですからね。ねえファングちゃん。……ファングちゃん?】
「……ふん、お客さんみたいだな? ちょっと行ってくる」
ファングがなにかに気付き、俺達が来た方向に目を向けていた。集中すると確かに気配がいくつかある。
何者だ? とりあえずこっちから出向いてみるか。
念のため冒険者や騎士と鉢合わせをしないように魔封はかけておく必要はあるか。
そんなことを考えているとレスバが笛を取り出して口を開く。
【さて、そろそろいいでしょうか?】
「お、そうだな。頼むぜ」
「冗談じゃなかったんだ……」
風太が呆れたように言う。夏那と水樹ちゃんも苦笑しているのでやはり冗談だと思っていたようだ。ちなみに俺もそう思っていた。
【な、なんですかその目は……! とりあえず呼びますからね!】
「オッケー」
念のためか夏那は槍を肩に担いだまま木を背にして応えた。見れば残り二人もしっかり武器をすぐ使えるようにしているな。特に言うことはないなと考えつつレスバの笛吹きを見る。
特に音が聞こえるわけではないのでここからどうなるか分からないが――
【ようやく呼んでくれたか】
「うわあ!?」
【遅い……! あれから一体どれだけ経過したと思っている!!】
「うるさっ!? 大丈夫なの?」
「魔封をかけているから大丈夫だ。よう、悪いな。遅くなった」
【出たな勇者……!】
【うるさいぞビカライア】
ブライクに後頭部を殴られて一気に静かになる。レスバの知り合いというのは間違いないだろうな。
「えっと、あなた達が……?」
【む。お前達も勇者か?】
「まあ、そうだな。みんな、こっちがブライクで地面に突っ伏しているのが副幹部のビカライアだ」
「副幹部!? これが……」
【うんうん。そうですよねえ。カナの気持ちはよくわかります】
「レスバは味方しないんだ。あたしは夏那よ。ひとまず休戦ってことを聞いているわ」
まずは夏那が名乗り、続けて風太と水樹ちゃんも自己紹介を行う。
【魔光将ブライクだ。よろしく……とは言わん。今後どうなるかわからんからな】
「それくらいでいいわよ。あたし達だってアキラスのことがあるから魔族を信用しろって言われても難しいしね」
【わたしは……!?】
「ということで武器は持たせてもらいますよ」
【構わん。お前達全員を相手にするには少々骨が折れそうだしな。ビカライア、いつまで寝ているのだ】
【くっ……申し訳ありません。私はビカライアという。魔王様と会うのは些か不安だが……。腑に落ちないことは多々あるからな。仕方なくだ、それを忘れるな!」
ようやく復活したビカライアも名乗りひとまず名前と姿は認識できたか。相変わらず謎の自信を持っているな。
すると夏那が目を細めてニヤリと笑う。
「威勢がいいじゃない。分かってるって。条件は同じよ」
【ねえ、わたし……】
「ちょっと向こうに行っていてもらえますか?」
【ミズキちゃん酷い!?】
『はいはい、信用してる信用している。で、なにを話すの?』
【うううう……】
やんわりと笑顔で排除されそうになり、リーチェに雑に扱われたレスバ。まあ、こいつはさておき俺は収納魔法から適当に料理を取り出して、テーブルと椅子を作って用意した。
「腹減ったろ? それともなんか食ってたか」
【その辺を飛んでいる鳥や草を食っていたから大丈夫だぞ】
「それは大丈夫なのかなあ。レスバが普通に料理を食べるからあなた達もと、リクさんが用意したんですよ。如何ですか?」
【ブライク様……どうしますか?】
【心意気に応えないわけにはゆくまい。美味そうだ、いただこう】
『男らしいわねえ』
収納魔法に入れておけばその時のままで保存されるので串焼きやコーンスープは暖かいままである。ホットドッグに似たパンなどもあるので腹にはたまるだろう。
【ほう……これはとうもろこしか。濃厚だ】
【こっちはビッグボアの塩焼き……。ソーセージの挟まれたパンもいいですぞブライク様】
【一つ渡せ】
特になんの警戒もせずにがつがつと食事を始めた二人。俺はまあ気にするところでもないが、この光景を見て風太が口を開く。
「あの……罠だとかは思わなかったんですか?」
【む? そのつもりがあればもっと早い段階で勇者が俺達を始末していただろう? レスバが現時点も生かされている時点で信用はできる】
「レスバって一応人質なんだけど、そこんところはどうなのよ?」
【無理に拘束しているわけでもないではないか。人間は気に入らんが、アホとはいえレスバを連れて行くメリットは無いはずなのだ。もし私がそちらの立場なら敵対する者を連れ歩く不利な状況は作らん。戦争している相手に人質など意味がないのは勇者なら知っているはずだ……がはぁ!?】
【誰がアホだとバカライア……!!】
【例えだ例えええええええええええええええええええ!?】
口の悪いビカライアに襲い掛かるレスバ。まあ自業自得なので放っておこう。で、ブライクがその後を続けてくれたが、総合的に見て『俺達』はまだ信用できると判断したらしい。
レスバがレスバらしく自由にしているのが判断材料というのもおかしな話だが、嫌いな相手には話すらしない気質らしい。
「レスバってそうなんですね」
『まあアホなのは間違いないけど』
【リーチェ様!?】
「いいからビカライアを放してあげなさいよ。ご飯食べてから話をするんでしょ?」
「食いながらでもいいだろ。とりあえず明日には船で沖へ出られそうだ。その時、改めて船で合流してもらえるか?」
【分かった。メルルーサには先に話をしておいても良かったが、いいのか?】
「いい。俺の『知っている』奴か分からないからな。俺達が行くってなって言って攻撃されても困る」
【なるほど。承知した。しかし人間の食い物は美味いな】
【でしょう? わたしも驚きました。だから前の時になんで人間を攻撃したのかわからなくて。変な人間もいますけど、概ねわたし達と同じですね】
白目を剥いたビカライアを椅子に座らせながらレスバなりの意見を述べていた。変な人間が居るのは確かだしな。
【魔物も懐くくらいですからね。ねえファングちゃん。……ファングちゃん?】
「……ふん、お客さんみたいだな? ちょっと行ってくる」
ファングがなにかに気付き、俺達が来た方向に目を向けていた。集中すると確かに気配がいくつかある。
何者だ? とりあえずこっちから出向いてみるか。
159
お気に入りに追加
8,342
あなたにおすすめの小説
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
よろしくお願いいたします。
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。