79 / 134
第八章:魔族との会談
190.互いの違いってやつだな
しおりを挟む
【それにしても不思議ですねえ】
「どうした急に?」
――世界樹とのコンタクトを取りに行った三人とリーチェを見送った後、串焼きを焼いている俺にレスバが声をかけてきた。三人が居ないタイミングを見計らっての発言な気がするので耳を傾ける。
【いえ、どうしてわたしは前の世界の記憶があるのかってところですよ。レムニティ様もグラジール様もリクさんとは戦ったことがあるんですよね?】
「ああ、お前に言うのもなんだが俺がこの手で殺しきったぞ」
【それ自体凄いことですけどね。それはそれとして、どうして記憶が無いのかが不思議なんですよ。リクさんには記憶がある。あの三人に無いのは当然としても、】
「それはその通りだ」
レスバという存在はもう一つの俺みたいな存在だ。言うなれば魔族版の俺ってところだな。
俺の知る魔族には記憶が無いと思っていたが、レスバが『俺が知っている』のは正直言って驚愕と同時に困惑したものである。
ただレスバの言うようにどうしてなのか? それが分からない。
俺が幹部連中を殺したという記憶があっても逆恨みされそうで厄介ではあるのだが、前の世界を知る者同士として情報は欲しい。
「そういやこっちの世界に来た時はどうだったんだ? 召喚された時はまとめて全員だったのか?」
【いえ、わたし達が気づいた時にはミラグルシア国のお城の庭でしたよ。そこから戦える者が散って一気に国を滅ぼしたんです】
「なるほどな」
【魔王様は自分たちを召喚した罪を見せるため、王族は残しておけと言っていました。国が亡びるのを見せた後に消し炭にしたようですけど】
そこは見ていないらしい。が、実際それくらいは仕方が無い措置だろう。自分たちを戦力として使われるのは魔王セイヴァーとしてプライドが許さない。
「ん……? まてよ――」
と、ここで俺は一つ妙だなと頭を捻る。
【どうしました? パンツ見ます?】
「汚いもの見せようとするな。召喚は人数制限とか無いのかと思ってな」
ガーンといった顔で固まっているレスバにでこぴんをしながら考えていたことを口にする俺。
俺は一人で召喚された。ここでは四人。
イリスの話だと召喚の儀式自体、魔力消費やらがきついらしいから、魔族全員が来ているとなると犠牲はあってもおかしくない。
「あ」
そこで俺は召喚に関する書物を取り出して目を通す。
もしかしたら――
◆ ◇ ◆
――そんなレスバとの話を思い出しながら俺は記憶があるというビカライアに尋ねてみる。
「ビカライアは前の世界の記憶があるということだな?」
【そうだが馴れ馴れしいな貴様】
「お前とは会ったことがあるはずなんだがな? ビカライア」
【なんだと? お前のようなおっさん、見たことないぞ】
目を細めてこちらを見てくるビカライア。まあ、あの頃は装備に身を固めていたし若かったから顔つきは変わっているのでそう思ってもおかしくない。
なので一番分かりやすい話をしてみることにした。
「そりゃないだろ。前の世界で勇者をやっていたリクだと言えばちょっとは思い出すか?」
【そういえばレスバがリクだと言っていたな……。勇者だと? ……勇者リクだと!?】
探るようにぶつぶつと呟いていたビカライア。奴は思い出したようで俺の顔を見て驚愕の表情を浮かべて悲鳴のような声を上げて言う。
【貴様……!? 貴様がなぜここに!? ブライク様を倒したお前が……!?】
【倒した? 俺を、あの男がか。……どういうことだ、俺はこうして生きているぞ】
怒りと困惑の気配が周囲に充満する。部下に倒されたと言われるのはプライド的に許せないだろうからわかる。
だが、ビカライアの態度が冗談ではない狼狽えようなので話を聞く態勢になった。
……流れが変わった。
すかさず俺は二人の魔族に提案を持ちかけることにする。
「ブライク、悪いが少し休戦といかないか? レッサーデビル達を下げてくれると助かる」
【なに?】
「ビカライアと話をしたいんだよ。お前を倒した経緯も話してやる。それで記憶が戻るかどうかも確かめたい」
【それで……こちらにメリットがあるか? 貴様が勇者なら隙を突いてくるくらいはするだろう?】
「そこは信用してもらうしかないな。ほら、こいつが生きているし」
【洗脳されていませんからね?】
【貴様なにをしている!?】
余計なことを言うなとレスバに拳骨をくらわしてやる。するとビカライアがまた悲鳴のような声を上げていた。
そういうことか? まあどっちでもいいが……さて、どうする? あくまで戦うと言うなら痛めつけてから情報をもらうだけだが。
そう考えていると少し間をおいてからブライクがビカライアを手をかざす。
「来るか?」
【慌てるな】
俺も身構えてみたがすぐに意図を理解したので警戒を解く。どういうことか? レッサーデビル達が戦闘を止めてそらで停止したからだ。
「話が分かるヤツで助かるぜ。レムニティの時もこうだと良かったんだがな」
【ふん。それでどうするのだ? このままでは人間が攻撃してくる】
「そうだな。少し待ってくれ」
【あん、強引!?】
俺はブライク達をその場に残してレスバを引っ張って騎士達のところへ戻る。一番近くの騎士を見つけて声をかける。
「そこのあんた、ちょっといいか?」
「あ! リク殿! いきなりレッサーデビル達が後退しました! 幹部を倒してくれたのですか!?」
「いや、ちょっと違う。が、俺が幹部より強いってことで、少し休戦になった。すまないが風太達を待っていてくれるか? 多分、もう攻撃はないはずだ」
「ええ!? 休戦って……。い、いえ、わかりました!」
「あ、それとミーヤとタスクをこっちに回してくれ」
「冒険者を、ですか?」
「ちっと野暮用でな」
俺がそう言うと、腑に落ちないといった顔で首を傾げるがこの隊の総指揮は基本的に俺なので従わざるを得ない。
まあ、レムニティが攻め続けていたヴァッフェ帝国なら休戦が信じがたいのはそうだろうけどな。
さて、俺にも仕事ができて良かったな? 擦り合わせをしてみるとしよう――
「どうした急に?」
――世界樹とのコンタクトを取りに行った三人とリーチェを見送った後、串焼きを焼いている俺にレスバが声をかけてきた。三人が居ないタイミングを見計らっての発言な気がするので耳を傾ける。
【いえ、どうしてわたしは前の世界の記憶があるのかってところですよ。レムニティ様もグラジール様もリクさんとは戦ったことがあるんですよね?】
「ああ、お前に言うのもなんだが俺がこの手で殺しきったぞ」
【それ自体凄いことですけどね。それはそれとして、どうして記憶が無いのかが不思議なんですよ。リクさんには記憶がある。あの三人に無いのは当然としても、】
「それはその通りだ」
レスバという存在はもう一つの俺みたいな存在だ。言うなれば魔族版の俺ってところだな。
俺の知る魔族には記憶が無いと思っていたが、レスバが『俺が知っている』のは正直言って驚愕と同時に困惑したものである。
ただレスバの言うようにどうしてなのか? それが分からない。
俺が幹部連中を殺したという記憶があっても逆恨みされそうで厄介ではあるのだが、前の世界を知る者同士として情報は欲しい。
「そういやこっちの世界に来た時はどうだったんだ? 召喚された時はまとめて全員だったのか?」
【いえ、わたし達が気づいた時にはミラグルシア国のお城の庭でしたよ。そこから戦える者が散って一気に国を滅ぼしたんです】
「なるほどな」
【魔王様は自分たちを召喚した罪を見せるため、王族は残しておけと言っていました。国が亡びるのを見せた後に消し炭にしたようですけど】
そこは見ていないらしい。が、実際それくらいは仕方が無い措置だろう。自分たちを戦力として使われるのは魔王セイヴァーとしてプライドが許さない。
「ん……? まてよ――」
と、ここで俺は一つ妙だなと頭を捻る。
【どうしました? パンツ見ます?】
「汚いもの見せようとするな。召喚は人数制限とか無いのかと思ってな」
ガーンといった顔で固まっているレスバにでこぴんをしながら考えていたことを口にする俺。
俺は一人で召喚された。ここでは四人。
イリスの話だと召喚の儀式自体、魔力消費やらがきついらしいから、魔族全員が来ているとなると犠牲はあってもおかしくない。
「あ」
そこで俺は召喚に関する書物を取り出して目を通す。
もしかしたら――
◆ ◇ ◆
――そんなレスバとの話を思い出しながら俺は記憶があるというビカライアに尋ねてみる。
「ビカライアは前の世界の記憶があるということだな?」
【そうだが馴れ馴れしいな貴様】
「お前とは会ったことがあるはずなんだがな? ビカライア」
【なんだと? お前のようなおっさん、見たことないぞ】
目を細めてこちらを見てくるビカライア。まあ、あの頃は装備に身を固めていたし若かったから顔つきは変わっているのでそう思ってもおかしくない。
なので一番分かりやすい話をしてみることにした。
「そりゃないだろ。前の世界で勇者をやっていたリクだと言えばちょっとは思い出すか?」
【そういえばレスバがリクだと言っていたな……。勇者だと? ……勇者リクだと!?】
探るようにぶつぶつと呟いていたビカライア。奴は思い出したようで俺の顔を見て驚愕の表情を浮かべて悲鳴のような声を上げて言う。
【貴様……!? 貴様がなぜここに!? ブライク様を倒したお前が……!?】
【倒した? 俺を、あの男がか。……どういうことだ、俺はこうして生きているぞ】
怒りと困惑の気配が周囲に充満する。部下に倒されたと言われるのはプライド的に許せないだろうからわかる。
だが、ビカライアの態度が冗談ではない狼狽えようなので話を聞く態勢になった。
……流れが変わった。
すかさず俺は二人の魔族に提案を持ちかけることにする。
「ブライク、悪いが少し休戦といかないか? レッサーデビル達を下げてくれると助かる」
【なに?】
「ビカライアと話をしたいんだよ。お前を倒した経緯も話してやる。それで記憶が戻るかどうかも確かめたい」
【それで……こちらにメリットがあるか? 貴様が勇者なら隙を突いてくるくらいはするだろう?】
「そこは信用してもらうしかないな。ほら、こいつが生きているし」
【洗脳されていませんからね?】
【貴様なにをしている!?】
余計なことを言うなとレスバに拳骨をくらわしてやる。するとビカライアがまた悲鳴のような声を上げていた。
そういうことか? まあどっちでもいいが……さて、どうする? あくまで戦うと言うなら痛めつけてから情報をもらうだけだが。
そう考えていると少し間をおいてからブライクがビカライアを手をかざす。
「来るか?」
【慌てるな】
俺も身構えてみたがすぐに意図を理解したので警戒を解く。どういうことか? レッサーデビル達が戦闘を止めてそらで停止したからだ。
「話が分かるヤツで助かるぜ。レムニティの時もこうだと良かったんだがな」
【ふん。それでどうするのだ? このままでは人間が攻撃してくる】
「そうだな。少し待ってくれ」
【あん、強引!?】
俺はブライク達をその場に残してレスバを引っ張って騎士達のところへ戻る。一番近くの騎士を見つけて声をかける。
「そこのあんた、ちょっといいか?」
「あ! リク殿! いきなりレッサーデビル達が後退しました! 幹部を倒してくれたのですか!?」
「いや、ちょっと違う。が、俺が幹部より強いってことで、少し休戦になった。すまないが風太達を待っていてくれるか? 多分、もう攻撃はないはずだ」
「ええ!? 休戦って……。い、いえ、わかりました!」
「あ、それとミーヤとタスクをこっちに回してくれ」
「冒険者を、ですか?」
「ちっと野暮用でな」
俺がそう言うと、腑に落ちないといった顔で首を傾げるがこの隊の総指揮は基本的に俺なので従わざるを得ない。
まあ、レムニティが攻め続けていたヴァッフェ帝国なら休戦が信じがたいのはそうだろうけどな。
さて、俺にも仕事ができて良かったな? 擦り合わせをしてみるとしよう――
169
お気に入りに追加
8,578
あなたにおすすめの小説
異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん
夏本ゆのす(香柚)
ファンタジー
高校生たちの異世界召喚にまきこまれましたが、関係ないので森に引きこもります。
のんびり余生をすごすつもりでしたが、何故か魔法が使えるようなので少しだけ頑張って生きてみようと思います。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
箱庭から始まる俺の地獄(ヘル) ~今日から地獄生物の飼育員ってマジっすか!?~
白那 又太
ファンタジー
とあるアパートの一室に住む安楽 喜一郎は仕事に忙殺されるあまり、癒しを求めてペットを購入した。ところがそのペットの様子がどうもおかしい。
日々成長していくペットに少し違和感を感じながらも(比較的)平和な毎日を過ごしていた喜一郎。
ところがある日その平和は地獄からの使者、魔王デボラ様によって粉々に打ち砕かれるのであった。
目指すは地獄の楽園ってなんじゃそりゃ!
大したスキルも無い! チートも無い! あるのは理不尽と不条理だけ!
箱庭から始まる俺の地獄(ヘル)どうぞお楽しみください。
【本作は小説家になろう様、カクヨム様でも同時更新中です】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。