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第八章:魔族との会談

180.少しの間だがお互い成長しているな

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「うぉふ!」
「あら、急に元気になったわねファング」
『一応、ここが故郷だからじゃない?』

 町を出た俺達は一路、野営地へ向かっていた。
 レムニティを倒したのはかなり前のように感じるなと思いながら森の中を進んでいく。レッサーデビル対策で野営を続けているせいか魔物と遭遇することも無く目的地へ歩いて行く。
 徒歩移動なのでファングが久しぶりにはしゃいでいて、水樹ちゃんが手を叩きながらファングと一緒にくるくると回っていた。

「あはは、久しぶりに馬車から出たもんね。こっちにおいで!」
「わんわん!」
「もう狼ってより犬だよね……」
「まあ、犬科だしな。とりあえず散歩するにはいい天気だ」

 水樹ちゃんを見て苦笑する風太にそんな返しをしていると、夏那が寄ってきて口を開く。

「ミーア達に会ってどうするの?」
「ああ、もし行けるならエルフの森までついてきてもらおうと思ってな」
「なんでよ。騎士達が居れば良くない?」

 確かに頭数は足りるが、信用できそうな冒険者も居ると助かる。死にそうな目にあったのを助けた俺達ならノってくれるかという算段だ。

「ま、ついてくるかどうかはあいつら次第だし聞くだけ聞いてみようってことだ。ミーアとは仲がいいだろお前」
「まあそうだけど。関わらない方がいいんじゃない?」
「……」
「リクさん?」

 正直、まだ迷っている部分はある。
 騎士達よりも融通が利くという部分では冒険者が居たら助かるからな。
 それに万が一を考えると信頼できる人間は居た方がいい。ロカリス王国とエラトリア国という後ろ盾があるからあそこに戻って人員を手に入れるのもアリだけど今からは少し遠い。さっさと船が出来れば話は早いんだがなあ。
 そんな話をしながら歩いていると顔だけは見たことがある冒険者の野営地が見えてきた。

「よう、ヒュウス達はどの辺に駐留しているんだ?」
「お、あんたは……! 帰って来たのか! 頼もしいのが戻って来たな。あいつらはこっちの方に居るはずだ」
「サンキュー」
「なんか一人増えてる……?」
【やあやあ、私のリクさんがお世話になっております~。ぐえ!?】


 調子に乗ったレスバが夏那に首を絞められていた。水樹ちゃんがそれを宥めて、風太が苦笑する。まあ、なんというか一か月あまりだが慣れたもんだ。
 今は姿を偽装しているが魔族と馴れ合うとは思っていなかったからな。

 こういう魔族なら多分、敵対する必要は無かった。俺が前の世界に召喚される前に各地を襲い始めたというがどうしてそんなことをしたのかを聞いてみたいもんだ。

「あ、居ましたよリクさん」
「みたいだな。おーい、ヒュウス!」
「ん? リクさんか……! 久しぶりですね」
「フウタにミズキも居るな」
「あんたはミズキだけでしょ! おかえりカナー! って、なんか増えてる!?」
「やっほー、ミーア! 久しぶりー」
「はっはっは、元気そうでなによりだ」

 俺と握手をするヒュウスに、風太と水樹ちゃんに絡んでいくタスク。そしてそのタスクの耳を引っ張りながら夏那に声をかけるミーア。
 その様子をどっしりとした斧使いのグルガンが苦笑しながら挨拶をしてきた。みんな元気そうだな。

「どうしたんですか? わざわざ会いに来てくれたとか」
「その通りだ。まあ、この辺は仲がいいし、折角だしな。それと話がしたい」
「話?」

 風太と絡んでいたタスクが聞き返してきたので小さく頷く。するとヒュウスが手で示唆し、座れるところへ案内してくれた。
 丸太を椅子にして各々座ったところで俺はヒュウス達へ話をすることにした。

「……実は戻って来たのは理由があってな。二日後、俺達はまた出発する」
「また!? 忙しいな……。みんなもか?」
「はい。今度は騎士さん達を連れて」
「どこへ、行くのですか?」
「エルフの森だ。そこで世界樹の聖木を受領する手はずになっている」
「「「「エルフの森!?」」」

 その場に居たミーア達だけが驚愕の声を上げる。まあ五十年、ある意味不可侵だった場所だから驚くのも無理はない。そのまま、行程や目的といった内容まで全部説明を行った。

「す、すご……! カナ、あんた達強いと思っていたけど何者なのよ……」
「それでどうしてその話を俺達に?」
「ああ、ここからが本題だ。その遠征に着いてこないか? クラオーレ陛下に報酬の件を交渉してもいい」
「は……!?」
「驚きっぱなしだなリーダー。いや、まあ驚くべきことだが……」

 流石にその辺の冒険者に話す内容ではないとグルガンが笑いながら冷や汗をかく。特に陛下と交渉ができるという部分に驚いている様子だ。

「オレ達のメリットは多いけど、そっちのメリットはなんだよ? 自分で言うのもなんだが、戦力としちゃそれほど期待できないだろ?」
「そんなことはないと思うけど……」
「いや、フウタ。オレには分かるぜ? お前、旅に出ていた間かなり鍛えてただろ。肩を組んだ時分かったぜ。となると旅のお供はその三人……四人か、四人でいいんじゃねえか?」

 意外と客観的に見るようになったなタスクのやつ。水樹ちゃんをナンパしていた時とはちょっと違うなと苦笑する。その疑問は当然かと俺は手を前に出して応える。

「一番の理由は騎士以外に自由に動ける人員が欲しいことだ。なんだかんだで騎士達の統率は騎士がやる。だから俺の手駒として動いてもらいたい」
「ふむ」
「そしてお前達は知らない仲じゃない。ミーアとウチの女の子達の仲もいいし、信用できそうなのがいい」
「……少し話し合っても?」
「もちろんだ」

 俺の言葉を聞いて四人が難しい顔でこの場を離れると少し離れた場所で話し合いを始める。その様子を見て水樹ちゃんが口を開く。

「危険度は高いですし、慎重になりますよね」
「まあな。来るならラッキー程度で考えているよ」
「そうなの?」
【肉壁は便利だからできれば居た方がいいですよね】

 そういうのじゃないとレスバに返しつつ、理由を口にする。

「信用できるかどうかが重要だからな。実際、戦闘になった時に手駒が多い方がいいし、俺の実力を知っているあいつらは言うことを聞いてくれるだろ?」
「まあね。ミーアあたりとは連携できそうだし?」

 夏那がそうなったら面白いかもと笑う。他にも戻って来てから、今後のこと……色々頼める相手は欲しい。ロカリス、エラトリア、ボルタニア、グランシア神聖国、そしてヴァッフェ帝国。
 各地に顔見知りを作っておくのも悪くない。セイヴァーの下へ行って帰れるのか? 水樹ちゃんの今後。まだ先の見えない部分に保険をかけておく必要はまだあるのだ。

「あ。終わったみたいですよ」

 さて、彼等の答えは?
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