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第23話 竜、人間を家へ招待する
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「ふう、びっくりしたわい。婆さんや、人間にしてはいかんぞ」
「ええ、本当にごめんなさいね」
「あうー」
「ぴよー」
派手に吹っ飛んだディランが戻ってきてトワイトを嗜めていた。ぺろりと舌を出して彼女が謝る。
リヒトはディランの頬に手を伸ばして撫でようとしていた。
その光景を微笑ましく全員が見ていたが、モルゲンロートはそこで提案を口にする。
「その姿のままであれば、王都に住んでみる気はないだろうか? 子育てにも丁度いいと思うが」
「いや、いいわい」
「即答!?」
モルゲンロートが王都に移住しないかというと、ディランが食い気味に遠慮した。
あまりの早さにバーリオが驚いていた。
「申し出は嬉しいのですが夫は怖がりでして……人間が多いところは苦手なんです」
「うむ」
「肯定も早いな……怖いのはどうして?」
バーリオが質問を投げかけると、ディランは腕組みをして目を瞑る。
「……隠すつもりは特にないが、ドラゴンと分かれば突撃してくる者も多い。妻とリヒトが狙われるのは避けたいのじゃ。集団で襲って来られるのは怖い。それにさっきも言ったがちょっと暴れたら人間は死ぬからのう」
「あー、そういうことか。それなら無理は言えないな」
「陛下がお触れを出せば?」
騎士の一人が挙手をしてモルゲンロートが手を出さないようにすればいいのではと口にした。
「それだと彼等がドラゴンだというのをわざわざ教えることになるだろう?」
「……確かにそうですな」
しかし『この一家は訳アリである』ことを皆に教えてしまうことになるだろうとモルゲンロートが回答をした。挙手をした騎士は納得して言葉を引っ込めた、
「では、あの山で暮らすということで。なにかあれば、ザミール経由でも構わないから私、国王モルゲンロートへ伝えてくれ」
「ありがとう、助かるわい」
「う、うむ」
ディランとモルゲンロートはがっしりと握手をした。ガントレット越しでもごついと分かる手に少し冷や汗をかく。そこでトワイトがリヒトの手を軽く振りながら言う。
「折角ですし私達のお家へご招待しましょうよ。場所が分かっている方が良いと思うんです」
「おお、それはいい案ですな奥方! よろしかったらお願いしたい」
「ドラゴンの住み家……興味がありますね」
お宅案内の提案に、モルゲンロートと騎士達は乗り気だった。そこでザミールが笑顔でトワイトへ言う。
「私もいいでしょうか? 絨毯を作ったご一家に行ってみたいのです」
「構いませんよ! ね、あなた?」
「うむ。リヒトも良いな?」
「あー♪」
「こけー♪」
そうと決まれば、と一行は村を出るため移動を始めた。すると村人も恐る恐る聞いてきた。
「俺達もいいかい……?」
「ちょっと気になるのよね」
「もちろんですよ♪ あ、送り迎えはしますからね。ジェニファー、トコト、レイタ、ソオン、カバンに入りなさいな」
「こけー」
「「「ぴよ!」」」
「統率が取れているなあ……」
というわけで騎士達とザミール、そして村の数人が家へ行くと言い一家についてくることになった。
◆ ◇ ◆
「ふう……こりゃいい訓練になるぞ……」
「我々も山に来ますが、浅いところまでだからなあ……」
「歩きやすくした方がいいかも……」
山に入ると人間達の言葉が段々と少なくなった。山の中腹にあるため、ドラゴンの夫婦にとっては軽いものだが、人間には中々きつい山道だ。
それでも装備をしっかり着込んだモルゲンロートを含む騎士達は少し息が上がっている程度でまだ余裕がありそうだ。
「む? 歩きやすくか。これでも割と歩きやすいと思ったがのう」
「おお」
ディランが自分の前にある道を強く踏んでならしながら歩きだした。でこぼこした道が平らになっていく。
「すご……!?」
「人間の姿でもこの力だもんなあ……そりゃちょっと撫でたら真っ二つになるよな……」
「でもニワトリやひよこ達が潰されたりしていないから強弱はちゃんとつくんだろう」
そんな話をしながら歩きやすくなった道を上っていき、やがて家屋へ到着した。
「眺めがいいなー!」
「これはいいロケーション。流石ですな」
「地上が見えている方が安心できるし、トワイトが喜ぶからのう」
「(のろけた)」
「王都も見えるな」
よくひらけた場所なので地上が良く見える。王都も見える方角で、モルゲンロートが口元に笑みを浮かべて頷いていた。
「さあさ、リビングへどうぞ」
「あーう」
トワイトが玄関を開けて案内する。しかし騎士達は十数名居るため、全員は無理だった。
「陛下、バーリオ殿を優先に。後は村の者が入るといいでしょう」
「そうですな。順番にいきましょう」
「外で待っております」
「そうか、すまないな」
「では、茶でも出そうかのう」
モルゲンロートとバーリオ、村人が入っていき騎士達は外で待機することになった。ディランは玄関を開け放したまま奥へ行く
すると、カバンから出たジェニファーとひよこ達が外に残された騎士達の足元へやってきた。
「こけー」
「ぴよ」
「ん? どうしたんだ?」
「こけっこ」
「こっちに来いって?」
「ぴよー♪」
騎士達が顔を見合わせてペット達についていき、何故か自慢げに自分達の小屋を案内していた。
「へえ、いい小屋だな」
「こけ♪」
「……いや、ちょっと待ってくれ。この網、物凄い魔力を帯びている……ちょっとやちょっとじゃ千切れない代物だ……」
「この柱、木じゃないぞ……なんの鉱石だこれ?」
「ミスリールの剣でも斬れない、多分……」
騎士達はペット達の小屋で戦慄することになるのだった。
そしてリビングへ行ったモルゲンロート達は――
「ええ、本当にごめんなさいね」
「あうー」
「ぴよー」
派手に吹っ飛んだディランが戻ってきてトワイトを嗜めていた。ぺろりと舌を出して彼女が謝る。
リヒトはディランの頬に手を伸ばして撫でようとしていた。
その光景を微笑ましく全員が見ていたが、モルゲンロートはそこで提案を口にする。
「その姿のままであれば、王都に住んでみる気はないだろうか? 子育てにも丁度いいと思うが」
「いや、いいわい」
「即答!?」
モルゲンロートが王都に移住しないかというと、ディランが食い気味に遠慮した。
あまりの早さにバーリオが驚いていた。
「申し出は嬉しいのですが夫は怖がりでして……人間が多いところは苦手なんです」
「うむ」
「肯定も早いな……怖いのはどうして?」
バーリオが質問を投げかけると、ディランは腕組みをして目を瞑る。
「……隠すつもりは特にないが、ドラゴンと分かれば突撃してくる者も多い。妻とリヒトが狙われるのは避けたいのじゃ。集団で襲って来られるのは怖い。それにさっきも言ったがちょっと暴れたら人間は死ぬからのう」
「あー、そういうことか。それなら無理は言えないな」
「陛下がお触れを出せば?」
騎士の一人が挙手をしてモルゲンロートが手を出さないようにすればいいのではと口にした。
「それだと彼等がドラゴンだというのをわざわざ教えることになるだろう?」
「……確かにそうですな」
しかし『この一家は訳アリである』ことを皆に教えてしまうことになるだろうとモルゲンロートが回答をした。挙手をした騎士は納得して言葉を引っ込めた、
「では、あの山で暮らすということで。なにかあれば、ザミール経由でも構わないから私、国王モルゲンロートへ伝えてくれ」
「ありがとう、助かるわい」
「う、うむ」
ディランとモルゲンロートはがっしりと握手をした。ガントレット越しでもごついと分かる手に少し冷や汗をかく。そこでトワイトがリヒトの手を軽く振りながら言う。
「折角ですし私達のお家へご招待しましょうよ。場所が分かっている方が良いと思うんです」
「おお、それはいい案ですな奥方! よろしかったらお願いしたい」
「ドラゴンの住み家……興味がありますね」
お宅案内の提案に、モルゲンロートと騎士達は乗り気だった。そこでザミールが笑顔でトワイトへ言う。
「私もいいでしょうか? 絨毯を作ったご一家に行ってみたいのです」
「構いませんよ! ね、あなた?」
「うむ。リヒトも良いな?」
「あー♪」
「こけー♪」
そうと決まれば、と一行は村を出るため移動を始めた。すると村人も恐る恐る聞いてきた。
「俺達もいいかい……?」
「ちょっと気になるのよね」
「もちろんですよ♪ あ、送り迎えはしますからね。ジェニファー、トコト、レイタ、ソオン、カバンに入りなさいな」
「こけー」
「「「ぴよ!」」」
「統率が取れているなあ……」
というわけで騎士達とザミール、そして村の数人が家へ行くと言い一家についてくることになった。
◆ ◇ ◆
「ふう……こりゃいい訓練になるぞ……」
「我々も山に来ますが、浅いところまでだからなあ……」
「歩きやすくした方がいいかも……」
山に入ると人間達の言葉が段々と少なくなった。山の中腹にあるため、ドラゴンの夫婦にとっては軽いものだが、人間には中々きつい山道だ。
それでも装備をしっかり着込んだモルゲンロートを含む騎士達は少し息が上がっている程度でまだ余裕がありそうだ。
「む? 歩きやすくか。これでも割と歩きやすいと思ったがのう」
「おお」
ディランが自分の前にある道を強く踏んでならしながら歩きだした。でこぼこした道が平らになっていく。
「すご……!?」
「人間の姿でもこの力だもんなあ……そりゃちょっと撫でたら真っ二つになるよな……」
「でもニワトリやひよこ達が潰されたりしていないから強弱はちゃんとつくんだろう」
そんな話をしながら歩きやすくなった道を上っていき、やがて家屋へ到着した。
「眺めがいいなー!」
「これはいいロケーション。流石ですな」
「地上が見えている方が安心できるし、トワイトが喜ぶからのう」
「(のろけた)」
「王都も見えるな」
よくひらけた場所なので地上が良く見える。王都も見える方角で、モルゲンロートが口元に笑みを浮かべて頷いていた。
「さあさ、リビングへどうぞ」
「あーう」
トワイトが玄関を開けて案内する。しかし騎士達は十数名居るため、全員は無理だった。
「陛下、バーリオ殿を優先に。後は村の者が入るといいでしょう」
「そうですな。順番にいきましょう」
「外で待っております」
「そうか、すまないな」
「では、茶でも出そうかのう」
モルゲンロートとバーリオ、村人が入っていき騎士達は外で待機することになった。ディランは玄関を開け放したまま奥へ行く
すると、カバンから出たジェニファーとひよこ達が外に残された騎士達の足元へやってきた。
「こけー」
「ぴよ」
「ん? どうしたんだ?」
「こけっこ」
「こっちに来いって?」
「ぴよー♪」
騎士達が顔を見合わせてペット達についていき、何故か自慢げに自分達の小屋を案内していた。
「へえ、いい小屋だな」
「こけ♪」
「……いや、ちょっと待ってくれ。この網、物凄い魔力を帯びている……ちょっとやちょっとじゃ千切れない代物だ……」
「この柱、木じゃないぞ……なんの鉱石だこれ?」
「ミスリールの剣でも斬れない、多分……」
騎士達はペット達の小屋で戦慄することになるのだった。
そしてリビングへ行ったモルゲンロート達は――
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