ひたむきに、願ったにすぎない

「父の復讐を止めて欲しいのです」

 絵本作家を目指す傍ら絵描屋で生活の足しにしている僕の所に舞い込んできたのは、父親の復讐を止めて欲しいという、彼女の依頼だった。

 父親が心から愛していた妻と娘を車で轢き殺した未成年の加害者が、厳罰を受けることはなかった、と。

 その加害者をもう一度裁くために、父親が復讐を計画しているという。

 僕への依頼は、亡くなった母親と娘を絵葉書に描いて父親に送り、思いとどまらせて欲しいというものだった。

 絵葉書の参考に、と渡された亡くなった妻と娘の姿を見て、僕は驚く。写真に写っている娘は目の前にいる彼女そのものだった。
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