うまのほね

 文久三年の夏、浦賀港付近を縄張りとするチンピラ博徒・野槌の亥吉は、ある廃寺で巨大な馬の姿を目にする。
 マレンゴと言う、その野生馬をつれた武士・多田省吾に話を聞くと、南蛮渡来で極めて高価である、との事。
 売れば一儲けできると企んだ亥吉は、得意の博打でマレンゴを勝取る。
 貴重な宝を奪われた筈なのに、何故か秘かな笑みを浮かべる多田。
 
 間も無く、秘められた陰謀と狡猾な多田の企てが明らかになり、亥吉はマレンゴを殺して逃走しようかと考え始める。
 でも彼の幼少時、亡父が可愛がっていた愛馬の記憶が蘇り、無抵抗な野生馬を殺す気になれない。
 ある小屋に追い詰められ、逃避行は終焉を迎えるが、そこで一人と一頭の心は何時しか触合い、奇妙な友情が育まれていく。
 それは亥吉にとって、孤独な生涯に嘗て無い安らぎの一時であった。


エブリスタ、小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しております。
24h.ポイント 0pt
0
小説 192,189 位 / 192,189件 歴史・時代 2,386 位 / 2,386件

あなたにおすすめの小説

短編歴史小説集

永瀬 史乃
歴史・時代
 徒然なるままに日暮らしスマホに向かひて書いた歴史物をまとめました。  一作品2000〜4000字程度。日本史・東洋史混ざっています。  以前、投稿済みの作品もまとめて短編集とすることにしました。  準中華風、遊郭、大奥ものが多くなるかと思います。  表紙は「かんたん表紙メーカー」様HP にて作成しました。

晩夏の蝉

紫乃森統子
歴史・時代
当たり前の日々が崩れた、その日があった──。 まだほんの14歳の少年たちの日常を変えたのは、戊辰の戦火であった。 後に二本松少年隊と呼ばれた二本松藩の幼年兵、堀良輔と成田才次郎、木村丈太郎の三人の終着点。 ※本作品は昭和16年発行の「二本松少年隊秘話」を主な参考にした史実ベースの創作作品です。  

絡繰奇剣の雪之介

橋本洋一
歴史・時代
絡繰技師(からくりぎし)の雪之介(ゆきのすけ)は賞金首である。尾張国の織田信長に命を狙われていた。安住の地を求めて彼は今日も国を渡りつつ放浪する――

【1分間物語】戦国武将

hyouketu
歴史・時代
この物語は、各武将の名言に基づき、彼らの人生哲学と家臣たちとの絆を描いています。

風の色は

月岡 朝海
歴史・時代
呉服屋の若旦那、利一(りいち)は、幼馴染みである造り酒屋の宗吉(そうきち)と、時折島原へと向かう。 けれど、二人が向かうのは遊女をを揚げる為の揚屋ではなく…。 腐れ縁のふたりの日常を描いた短編BLです。

白物語

月並
歴史・時代
“白鬼(しろおに)”と呼ばれているその少女は、とある色街で身を売り暮らしていた。そんな彼女の前に、鬼が現れる。鬼は“白鬼”の魂をもらう代わりに、“白鬼”が満足するまで僕(しもべ)になると約束する。シャラと名を変えた少女は、鬼と一緒に「満足のいく人生」を目指す。 ※pixivに載せていたものを、リメイクして投稿しております。 ※2023.5.22 第二章に出てくる「ウツギ」を「カスミ」に修正しました。それにあわせて、第二章の三のサブタイトルも修正しております。

揺籃に散る花影の想望

北畠 逢希
歴史・時代
「____ねぇ、アンタは知ってた?俺の世界には、まだ生きる光があったこと」 時は戦国。天下人の側室に仕えている少女・凜は、ある日、謎の美青年・岬に出逢う。 自由奔放で掴み所のない岬に、凜は振り回されっぱなしだけれど・・・

射干玉秘伝

NA
歴史・時代
時は鎌倉、越後国。 鎌倉幕府の侵攻を受けて、敗色濃厚な戦場を、白馬に乗った姫武者が駆け抜ける。 神がかりの強弓速射を誇る彼女の名は、板額御前。 これは、巴御前と並び日本史に名を残す女性武者が、舞台を降りてからの物語。

処理中です...