成層圏のチェン・ホー

Toshiaki・U

文字の大きさ
上 下
11 / 26

11 武器を食べる(?)生き物

しおりを挟む
 「自分の専門外なんで君に訊くが、あれで爆発しないのか? ヤマナカ博士」
 「ああ。事前のリサイクル処理、バイオ・レメディエーションが済んでいる。第二次南極戦争を終結させた、国連の非殺傷(ノン・リーサル)型生物(バイオ)兵器を覚えてるかい?」
 「カニィェーシナ、もちろん! わが同胞が好んで食べるキノコ。それと、同胞は食さないが、昆虫。確か、アリだ」
 「ご名答。シュードモナス型細菌TM15株の遺伝子を組み込んだキノコの胞子を戦場や武器庫に散布し、あらゆる銃弾や砲弾の無煙火薬、TNT高性能火薬を分解することに成功した。第二次南極戦争では、旧式の黒色火薬を使う銃弾や砲弾が増えたけどね」
 「そうだった!」
 「黒色火薬は、炭と硝石と硫黄を混ぜたもの。国連軍が、整腸のため炭を好んで食べる鹿の遺伝子を組み込んだハキリアリの大群を戦場に散布した。ハキリアリは、ダイヤモンド並みにあごが強い特別な種に遺伝子組み換えされていた」
 「バニャートナ、なるほど」
 「このハキリアリが、銃弾や砲弾に穴を開け、黒色火薬を食べつくした」
 「ハラショー! ハキリアリにとって、氷の大地で、黒色火薬が唯一の食料になったんだな」
 「いや、唯一じゃない。ハキリアリは、遺伝子操作によって築くようになったアリ塚で無煙火薬分解キノコを栽培した。それを彼らはTNT型の砲弾や弾丸に移植してキノコ畑にした。そして、何より…戦場に斃(たお)れた大勢の人間たちの遺体を…」
 「ダー、ダー。国連は人道的なのか、残忍なのか」
 「ハキリアリによる黒色火薬の摂食は、今も続いている。だから、ガン・ヒルの足元に人の背丈ぐらいのアリ塚がいくつも見えるだろう」
 「ダー。ところで、アリ塚の中のトイレから硫黄を回収してるって話は、本当か?」
 「いい質問だ。小学校の公開授業で、わが息子が手を挙げ、二酸化硫黄パウダーへのリサイクルを提案し、これを聞き及んだ俺の義父(オヤジ)が、本当に交易船団の活動に組み入れたんだ!」
 「オーッ! あなたの自慢の息子、ハラショー! テイ・ワ一族、ハラショー!」
 次第に、特殊雪上車の前方の氷床に、広大で深いクレーターが見えてきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

処理中です...