成層圏のチェン・ホー

５ ７０年前の武器

　「ふむ、今年は、南極の軍事利用を禁じた『南極条約』の期限切れとなった西暦二〇四二年から勃発した第一次〝南極戦争〟の開始から七十余年。一五年続いた第二次南極戦争の終結からは二〇年…。子供らに、どこまで教えておるか」
　「歴史教育、平和教育、そして環境問題教育の観点から、表現は和らげながら、すべて伝えています」
　うなずくチェン船長。孫に向き直り、
　「坊よ。あれは、第一次戦争初期の、円盤型の自律(スタンド・アローン)型雪上走行殺人ロボットの残骸。スクーターのようなものは、無人攻撃スノーモービルじゃ」
　「僕、七〇年前の武器を、いま、初めて見たよ」
　ホー坊が双眼鏡を外し、祖父を見上げる。
　「その第一次南極戦争を三〇年目で終結させた巨大な爆弾の爆心地を、これから見に行くのじゃ」
　「そこで、父さんが働いてるんだね、爺ジ！」
　「さよう」