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女でいたい ※
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「あ、もうこんな時間。蔵上君。終電は大丈夫?」
時刻は23時過ぎ。
2人きりの打ち上げは思ったよりも楽しくて、時間を忘れるほどたくさん話した。
だけど、彼も帰らなくてはいけないし、名残惜しいがお開きにしなくては。
声をかけたが、何故か彼は座ったまま動こうとしなかった。
(酔っちゃった?タクシーを呼んであげた方がいいかな)
そう思って口を開いた時、彼は意を決したように顔を上げた。
「っ、…あの!俺、実は…」
その時、ブーブーとリビングのテーブルの下からスマホのバイブ音が聞こえた。
その音に近い位置にいた蔵上が、反射的にテーブルの下を覗き込んだのを見た瞬間、理恵子の血の気が引く。
(うそ!忘れてた!)
テーブルの下には、スマホと一緒に大人の玩具がある。
あんなもの、蔵上に見られたら…。
「待って!だめっ!」
だけど一足遅く、気づいた時には彼は手を伸ばして理恵子のスマホを手に取っていた。
「…これ、木山さんのスマホ?なんでテーブルの下に…っ、…え?これ…」
続いて彼が手に取ったのは、ビニールバッグからはみ出したバイブ。
理恵子は慌てて取り返そうとするが、蔵上はなぜか放してくれない。
「か、返して!」
しかも、蔵上の指がスマホの画面に触れ、イヤホンの外れた本体から、声が流れ出た。
『…ほら。自分で挿れて下さい。…そう。腰を落として。…はっ…ああ、ナカ、すごいですね。からみついてくる…』
「ひぇっ!?」
「…え?…俺の、声?」
そう。お気に入りの『ある声優』とは、蔵上の事だった。
蔵上は、サークル内の「Sキャラ担当」で、責める役が多い。
夫が生きていた時は気づかなかったが、どうやら自分は男性主導の性行為が好きらしい。
普段優しくて礼儀正しい人が、えっちの時はドSになるシチュエーションに胸がときめくのだ。
一人でひっそりと楽しむだけでよかったのに、まさか本人に聞かれてしまうなんて最悪だ。
酔いと楽しい気分が一気に冷めた瞬間だった。
どう弁解したらいいかわからず、黙って俯く。
沈黙を破ったのは蔵上だった。
「…もしかして、俺の声でオナニーしてたんですか?」
「っ!?」
直接的な言い方に、余計言葉に詰まる。
(どうしよう。なんて言い訳したら…)
「その反応は正解ってことですね」
(もう終わりだ。気持ち悪いって罵られて、皆にばらされて、私はもうサークルにはいられない)
「ごめっ、ごめんなさ…私…ひあっ!?」
いきなりソファに押し倒され、上に蔵上が乗ってくる。
「くらっ…おこって、る?」
恐る恐る顔を上げると、彼は何故か満面の笑みだった。
「怒るなんてまさか。人生最高の気分ですよ。他の男の声だったらスマホをぶっ壊してましたけど、俺の声なら大歓迎です」
「え?」
なにか物騒な言葉が聞こえた気がするが、聞き間違いだろうか。
「でも」と彼は続けた。
「オナニーってところが気にいらないですね。せっかくここに本物がいるのに」
「それってどういう…んぅっ!?」
突然のキスに驚いて目を見開く。
柔らかい彼の舌が唇を割って入って、口内を優しくなぞっていく感覚が、気持ちよくてそっと目を瞑った。
(あれ?私、何されて…。キス?…何年振りだろう…)
夫が生きていた時もレスだったため、触れ合いには飢えていた。
その温かさと感触は、うっとりするほど心地いい。
ちゅぷりと音を立てて離れていく唇が名残惜しくて、思わず声が出る。
「…あ…」
少し目を細めて笑った彼は、かすれた声で言った。
「…続き、してもいいですか?」
拒むべきだったんだと思う。
でも、その時思い出してしまった。
『おばさん、ほんとに女?』
学童の少年の無神経な言葉に、胸がチクンと痛む。
確かに夫が亡くなってからは特に、生きることに精一杯で、女であることに無頓着だったかもしれない。でも。
(違う。私だってまだ女だ)
痛みを否定するように、ぎゅっと唇を噛んだ。
目の前の男の瞳には欲情の色が見える。
こんな自分を求めてくれている。それがどうしようもなく嬉しかった。
「して、くれるの?」
恐る恐る聞くと、彼は優しく微笑んだ。
「喜んで」
彼の腕が首の後ろに回されたと思った次の瞬間、抱き上げられ、いわゆるお姫様抱っこの状態になる。その細い体のどこにそんな力があったのだろう。
華奢に見えてやっぱり男の子なんだな、と思った時、彼が耳元で囁いた。
「ベッドに、行きましょうか?」
その言葉に、彼の胸元に顔をうずめたまま、小さく頷いた。
***
ちゅ…ちゅ…という音とともに、絶え間なく顔に降り注がれるキスを受けながら、ベッドに寝かされる。
ふと、彼の視線が左手の薬指に注がれて動きが止まったので、自分が結婚指輪をつけたままだということに気が付いた。
鋭く指輪を見つめるその横顔は、感情が読めない。
彼の手が指輪に触れたかと思ったら、そっと抜き取られ、ベッドサイドに置かれる。
「…今夜だけ、ですから」
それはつまり、これは一夜限りの関係ということだろう。
理恵子の性経験は亡くなった夫だけ。
レスになってから性欲は一人で処理するのが当たり前だった理恵子にとって、これは初めての経験だ。
正直に言えば、お酒の勢いがなければこんな状況はありえないだろう。でも。
「いい、よ」
誰かに触れてもらえる。そのことが嬉しかった。
このチャンスを逃せば、もう誰も自分には触れてくれないと思った。
「…服、脱がせますね…そう、手をあげて…」
あっという間に服も下着も脱がされて、産まれたままの姿になる。
久しぶりに裸体を人前に晒すことが恥ずかしくなり、とっさにタオルケットで身体を隠した。
「さっきのボイス…」
「え?」
「オナニーで使ってた俺のボイスって、どれもSキャラのやつですよね。フォルダ、見えたんで。…もしかして、攻められるのが好きですか?」
「ふぇっ!?いや、あの…それは…あっ、ちょっ!返して!」
タオルケットを奪われて、慌てて取り返そうとすると、彼は意地悪く目を細めて笑った。
「嫌です」
「へ?…あっ…んっ」
突然の彼の豹変に戸惑っていると、両胸を揉まれて親指で乳首を擦られる。
ビリッとした快感が乳首から広がって、口から甘い声が出る。
「…乳首、敏感なんですね。…美味しそう。いただきます」
「…え…なにを…ああっ!」
まるでケーキを食べるかのような挨拶の後、彼は大きく口を開けると、右の乳首に吸い付いた。おまけに左の乳首は彼の指でカリカリと擦られて、突き抜けるような快感に、瞳に涙がにじむ。
「ああっ!…だめっ…それだめぇっ…」
「…ん…。可愛い」
下腹部からどんどん蜜があふれてくるのがわかる。
乳首からの快感に気を取られていると、彼の指が蜜口のぬかるみに触れ、探るように動かされた。
「あっ!」
「すご。音、聞こえます?いやらしい音がする」
わざと聞こえるようにくちゅくちゅと音を出す彼に、羞恥心が高まる。
(この人、普段と全然違うんですけど!?)
いつもの低姿勢な若者は何処に行ったのか、ドS王子へと変貌した彼は、楽しそうに笑った。
時刻は23時過ぎ。
2人きりの打ち上げは思ったよりも楽しくて、時間を忘れるほどたくさん話した。
だけど、彼も帰らなくてはいけないし、名残惜しいがお開きにしなくては。
声をかけたが、何故か彼は座ったまま動こうとしなかった。
(酔っちゃった?タクシーを呼んであげた方がいいかな)
そう思って口を開いた時、彼は意を決したように顔を上げた。
「っ、…あの!俺、実は…」
その時、ブーブーとリビングのテーブルの下からスマホのバイブ音が聞こえた。
その音に近い位置にいた蔵上が、反射的にテーブルの下を覗き込んだのを見た瞬間、理恵子の血の気が引く。
(うそ!忘れてた!)
テーブルの下には、スマホと一緒に大人の玩具がある。
あんなもの、蔵上に見られたら…。
「待って!だめっ!」
だけど一足遅く、気づいた時には彼は手を伸ばして理恵子のスマホを手に取っていた。
「…これ、木山さんのスマホ?なんでテーブルの下に…っ、…え?これ…」
続いて彼が手に取ったのは、ビニールバッグからはみ出したバイブ。
理恵子は慌てて取り返そうとするが、蔵上はなぜか放してくれない。
「か、返して!」
しかも、蔵上の指がスマホの画面に触れ、イヤホンの外れた本体から、声が流れ出た。
『…ほら。自分で挿れて下さい。…そう。腰を落として。…はっ…ああ、ナカ、すごいですね。からみついてくる…』
「ひぇっ!?」
「…え?…俺の、声?」
そう。お気に入りの『ある声優』とは、蔵上の事だった。
蔵上は、サークル内の「Sキャラ担当」で、責める役が多い。
夫が生きていた時は気づかなかったが、どうやら自分は男性主導の性行為が好きらしい。
普段優しくて礼儀正しい人が、えっちの時はドSになるシチュエーションに胸がときめくのだ。
一人でひっそりと楽しむだけでよかったのに、まさか本人に聞かれてしまうなんて最悪だ。
酔いと楽しい気分が一気に冷めた瞬間だった。
どう弁解したらいいかわからず、黙って俯く。
沈黙を破ったのは蔵上だった。
「…もしかして、俺の声でオナニーしてたんですか?」
「っ!?」
直接的な言い方に、余計言葉に詰まる。
(どうしよう。なんて言い訳したら…)
「その反応は正解ってことですね」
(もう終わりだ。気持ち悪いって罵られて、皆にばらされて、私はもうサークルにはいられない)
「ごめっ、ごめんなさ…私…ひあっ!?」
いきなりソファに押し倒され、上に蔵上が乗ってくる。
「くらっ…おこって、る?」
恐る恐る顔を上げると、彼は何故か満面の笑みだった。
「怒るなんてまさか。人生最高の気分ですよ。他の男の声だったらスマホをぶっ壊してましたけど、俺の声なら大歓迎です」
「え?」
なにか物騒な言葉が聞こえた気がするが、聞き間違いだろうか。
「でも」と彼は続けた。
「オナニーってところが気にいらないですね。せっかくここに本物がいるのに」
「それってどういう…んぅっ!?」
突然のキスに驚いて目を見開く。
柔らかい彼の舌が唇を割って入って、口内を優しくなぞっていく感覚が、気持ちよくてそっと目を瞑った。
(あれ?私、何されて…。キス?…何年振りだろう…)
夫が生きていた時もレスだったため、触れ合いには飢えていた。
その温かさと感触は、うっとりするほど心地いい。
ちゅぷりと音を立てて離れていく唇が名残惜しくて、思わず声が出る。
「…あ…」
少し目を細めて笑った彼は、かすれた声で言った。
「…続き、してもいいですか?」
拒むべきだったんだと思う。
でも、その時思い出してしまった。
『おばさん、ほんとに女?』
学童の少年の無神経な言葉に、胸がチクンと痛む。
確かに夫が亡くなってからは特に、生きることに精一杯で、女であることに無頓着だったかもしれない。でも。
(違う。私だってまだ女だ)
痛みを否定するように、ぎゅっと唇を噛んだ。
目の前の男の瞳には欲情の色が見える。
こんな自分を求めてくれている。それがどうしようもなく嬉しかった。
「して、くれるの?」
恐る恐る聞くと、彼は優しく微笑んだ。
「喜んで」
彼の腕が首の後ろに回されたと思った次の瞬間、抱き上げられ、いわゆるお姫様抱っこの状態になる。その細い体のどこにそんな力があったのだろう。
華奢に見えてやっぱり男の子なんだな、と思った時、彼が耳元で囁いた。
「ベッドに、行きましょうか?」
その言葉に、彼の胸元に顔をうずめたまま、小さく頷いた。
***
ちゅ…ちゅ…という音とともに、絶え間なく顔に降り注がれるキスを受けながら、ベッドに寝かされる。
ふと、彼の視線が左手の薬指に注がれて動きが止まったので、自分が結婚指輪をつけたままだということに気が付いた。
鋭く指輪を見つめるその横顔は、感情が読めない。
彼の手が指輪に触れたかと思ったら、そっと抜き取られ、ベッドサイドに置かれる。
「…今夜だけ、ですから」
それはつまり、これは一夜限りの関係ということだろう。
理恵子の性経験は亡くなった夫だけ。
レスになってから性欲は一人で処理するのが当たり前だった理恵子にとって、これは初めての経験だ。
正直に言えば、お酒の勢いがなければこんな状況はありえないだろう。でも。
「いい、よ」
誰かに触れてもらえる。そのことが嬉しかった。
このチャンスを逃せば、もう誰も自分には触れてくれないと思った。
「…服、脱がせますね…そう、手をあげて…」
あっという間に服も下着も脱がされて、産まれたままの姿になる。
久しぶりに裸体を人前に晒すことが恥ずかしくなり、とっさにタオルケットで身体を隠した。
「さっきのボイス…」
「え?」
「オナニーで使ってた俺のボイスって、どれもSキャラのやつですよね。フォルダ、見えたんで。…もしかして、攻められるのが好きですか?」
「ふぇっ!?いや、あの…それは…あっ、ちょっ!返して!」
タオルケットを奪われて、慌てて取り返そうとすると、彼は意地悪く目を細めて笑った。
「嫌です」
「へ?…あっ…んっ」
突然の彼の豹変に戸惑っていると、両胸を揉まれて親指で乳首を擦られる。
ビリッとした快感が乳首から広がって、口から甘い声が出る。
「…乳首、敏感なんですね。…美味しそう。いただきます」
「…え…なにを…ああっ!」
まるでケーキを食べるかのような挨拶の後、彼は大きく口を開けると、右の乳首に吸い付いた。おまけに左の乳首は彼の指でカリカリと擦られて、突き抜けるような快感に、瞳に涙がにじむ。
「ああっ!…だめっ…それだめぇっ…」
「…ん…。可愛い」
下腹部からどんどん蜜があふれてくるのがわかる。
乳首からの快感に気を取られていると、彼の指が蜜口のぬかるみに触れ、探るように動かされた。
「あっ!」
「すご。音、聞こえます?いやらしい音がする」
わざと聞こえるようにくちゅくちゅと音を出す彼に、羞恥心が高まる。
(この人、普段と全然違うんですけど!?)
いつもの低姿勢な若者は何処に行ったのか、ドS王子へと変貌した彼は、楽しそうに笑った。
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