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Sweet, Sweets!*
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「ああ、そうだ、この間、の……ミントようか――んんっ!」
胸の先端摘まれたのに合わせて、「ん」が必要以上に強調された。
声を上げたって、気づかれただろうか。
草壁君の手は、その小さな先端を触るタイミングを狙っているかのように、胸のふくらみをそっと行きつ戻りつしている。
ああ、でも、そこも、ダメ。
私は、いつ弄られてもいいようにそこへ、意識を集中させる。
わずかに、草壁君が笑ったような気がしたのは、気のせいではないと思う。
「山慢のミントの羊羹は、甘さと爽やかさが抜群ですよね」
もう片方の手が、おへその横を通り、下へ向かったので、私は、そちらにも警戒しなくてはならなくなった。
「う……ん。あれ、……夏も、いいけど……」
つ、次は、どこ?
どこに刺激を受けても、大丈夫なように、ミント羊羹について語りながら私は、体中の感覚を尖らせる。
「冬に食べ、ん、のも――」
さっきまで腿の外側あたりを撫でていた手が、何となく内側へ回ってきたから、今度は、そっちだろうか。
「いい――っ!」
下を触られると予測したところへ、逆を突かれて、警戒の緩んだ乳首を舌でぬるんと舐められたものだから、強調どころではない声が出て、自分でもびっくりした。
「……い、今のは、感じたのとは、違う、んだからっ」
「ふふっ。分かってます。智世子さんは、こんな程度で感じて声を上げたりしないんですよね。……さあ、他に、ありますか?」
狙ってやってるんだろうか。
でも、そんなこと気にしている間に、草壁君の手は次の攻撃に備えてあちこちを撫であげている。
草壁君の指と舌の動きを予測しながら、それに対しての警戒も怠らず、好きなものを上げるというのは、なかなか簡単なことではない。
――っていうか、セックスって、こんなものだったっけ?
「キス、しますよ?」
余計なことを考えているうちに草壁君が、牽制をかけてきた。
私は急いで、好きな物について考えを巡らせ始める。
「えっと……チョコ、ミントパン」
「ええ、好きだと思いました」
唇で耳朶をくすぐる様に、草壁君が耳元で囁いた。
ああ、耳――草壁君が話すたびに頭の中にまで痺れが伝わって――くすぐったいのに、ずっとこんな風に、くすぐられていてもいいかも。
「甘い、だけじゃなくて――」
私がまだ話しているというのに、さっきの心の声を聞いていたかのように、草壁君の唇は、私の耳朶を食んだり舐めたり吸ったりし始めていた。
「爽やかさ、とか……中に入っている――」
頭に伝わる震動は、次第に大きくなってきて、頭の中だけでは収まりきらなくなりつつある。
「イチゴ、ジャムの、酸味とか……」
背筋に伝わった痺れのような震動のせいか、胸や腿あたりで動いている手の動きも、それほど警戒するほどのものではないような気がしてくる。
と、その時、内腿を撫でていた手が、すっと奥の方へ入って、割れ目に触れた。体が固くなり、自然に声にも力がこもる。
「好き――っ!」
やだ……絶対、狙ってやってる。
なんか、ここだけ切り取ったら、私が草壁君に告白したみたいじゃない。
もう、声を上げたのが恥ずかしいのか、告白みたいになったから恥ずかしいのか、草壁君とこうしているのが恥ずかしいのか、わからなくなってきた。
「智世子さん」
草壁君は満足そうに、私の名を呼んだ。
彼がその部分を撫であげた瞬間、指の滑りがよくなったのが、自分でもわかる。
「や……はず、かし……んっ――」
「もっと、俺で、感じて――」
まるで堰を切ったように、草壁君の動きが勢いを増した。
彼の唇が胸の頂を啄み、蜜の絡まった指が茂みのさらに奥を探る。
声が漏れないように、と思うのだけれど、どちらかに備えると、結果的に反対側が疎かになって、声を上げざるを得ない状況で――
乳首を吸われつつ、茂みの奥の小さな蕾を震わされた時には、腰が跳ね、声の制御が利かなくなった。
「かわいいよ、智世子さん」
背筋を伝いあがった痺れに、頭の中がジンジンしてくる。
その頭を、草壁君が優しく撫でてくれるのが、気持ち良かった。
彼は、ゆっくりと焦らすように花弁を開き、中指で硬く結んだ膣口を解し始める。
「や、草壁、君――」
「大丈夫。力を抜いてて下さい」
親指と人差し指で花芯を弄ばれて、「んふんっ!」と甘い声が漏れた。
その瞬間、中指が私の中へ入ってきて――
「ん……っ」
「智世子さんの中、熱いです」
中で小さく振動しながら、草壁君の指が膣壁を探ると、胸の奥に気持ちのいい痺れが湧きおこる。
乳首を舌でこねられて、腰から背筋の辺りがむずむず浮き上がったような気持ちになった。
「ひぁん!」
草壁君の指が、ある一点を突いた時、胸ではなく頭が大きく痺れた。
もう、何も、考えられなくなる――いや、考えようとしても、白い痺れに包まれて、上手く考えがまとまらない。
出来ることといえば、草壁君の手や口から与えられる刺激に、身体を委ねることだけで。
「これから、もっと、気持ち良くなりますよ」
耳元で艶めかしくそう囁くと草壁君は、私の両膝を抱えあげ、固く大きく反った部分で割れ目の上を往復する。知らないうちに溢れてきていた淫らな液体が、草壁君のそこに絡みつくにつれて、心と体の抵抗が小さくなっていくような気がした。
花弁の奥の小さな突起をすこし掠められただけでも、私の口から意味のない声が漏れる。
それを見てふふっと笑った草壁君は「いきますよ」声をかけてから、ゆっくりと私の中に入って来た。
言いようのない圧迫感。先ほどまでは、一瞬で通り過ぎていた痺れが、じわんじわんと連続的な疼きに変わった。それは、水紋が広がるように、熱を帯びて体全体に広がっていく。
「ふ、あぁぁぁぁ――んっ」
奥まで辿り着くと、彼はゆっくりと私の上に、体重を預けた。
繋がっている部分だけではなく、体全体に、彼を感じる。
彼は、すぐに腰を動かすことはしなかった。まるで、その繋がった部分が私をじっくりと味わうかのように。私の中で草壁君が小さくヒクつくだけで、私の中に官能が染み渡る。
しばらくそうして私を味わった後、彼は小さく腰を回しながら、私を縛っていたタオルと目隠しを解いた。
「そろそろ、俺のこと、好きって認めなよ?」
なんで、こういうときだけ、命令口調になるんだろう。
これまでの丹念な愛撫にくらくらし始めていた頭が、それまでの丁寧な口調と命令口調とのギャップに、混乱し始める。
それでも、まだ、理性を完全に明け渡しているわけではない私は、否定も、肯定も出来ない。
「……まだ……分からない」
私の声が草壁君に届いた瞬間、彼の目が捨てられて濡れた子犬のような切なさで揺れた。
「そう、ですか。もし、智世子さんが――」
草壁君が離れて行きそうな気がして、私は「だけど!」とその先を奪う。
「草壁君には……厭きられたく、ないと思う」
ここに至っても、大っぴらに手を開いて彼に飛び込んでいけない私は、かわいくないと思う。
けれども、そんな私の頭を、草壁君は愛おしそうに撫でた。
「厭きたりなんてしませんよ。むしろ、その、素直じゃなくてかわいいところが愛しくてたまりません」
「それって、矛盾してない?」
「いいえ。俺は、智世子さんが智世子さんであれば、いいんです」
「めちゃくちゃな理屈ね」
そんな風に熱くいわれて、意固地になった私が、慌てて引きそうになったとき、わずかに足りないあと少しの距離を縮めるかのように、草壁君が突然唇を奪った。
「理屈なんて関係なく、俺は、智世子さんが、好きなんですよ」
再び余裕を纏った彼には、もう年下の雰囲気なんて全然なかった。反対にそのまっすぐさを素直にぶつけられた私のほうが取り乱している。
それも、全部分かっているという笑顔を私に与えてから、草壁君はゆっくりと腰を動かし始めた。
その間中彼は、髪だったり、胸だったり、腰だったり――私の存在を確かめるように、ずっとどこかに触れていた。やっと手に入れたものを、愛玩するような、満足とも慈しみともとれるような瞳で。
その手に私の緊張は解きほぐされ、心も体も、無防備になる。
ほぐれた体全体に、草壁君と繋がっているところから生まれた衝動が伝わっていく。
「智世子さん、の、言った通りでした」
勢いを緩めた草壁君が、私の瞳を覗き込んだ。愛おしそうに目を細めて、親指で頬を撫でる。
「智世子さんが、俺で感じて、くれるの、――すごく、嬉しい、から……智世子さんの言った通り、これは、大事なこと、かもしれません」
そんなことを至近距離で、しかも、真面目な顔で言われて、私は何と返せばいいかわからなかった。けど、言葉なんて返す必要なかったみたい。
唇を塞がれて、濃厚に舌を絡められて、頭の奥が疼く。
私は返事の代わりに、彼の首の後ろに腕をまわした。
その瞬間、ゆっくりと膣内を掻きまわしていた彼の熱く固いそれが、ぴくりと動く。それを感じ取った私の胸の奥がキュッと反応すると、草壁君が嬉しそうに、これまで見せたことのないほど、甘く切ない表情で、小さく呻いた。
ああ、そうか。感じるって、こういうことなんだ。
心と体の鎧を全部はずして、無防備によって生まれる鋭敏さで、相手を感じ取るってことなんだ。
彼自身も今は文字通り丸裸で、不意の攻撃につい呻き声を上げるほどなのだと思うと、なんだか愛しくなってくる。
「智世子さん、俺、今、すごく、幸せです」
耳のそばで囁かれたその言葉に、胃のあたりがキュっとなり、胸の奥で生まれた苦しさが喉の奥までせり上がってきた。
草壁君が髪に顔を埋め、首筋に優しくキスをしながら指先で胸の突起を摘む。
「ああんっ」
腰が跳ねて、草壁君が「くっ」と呻いた。
その後は、もう、上手く草壁君に誘導されて、絶頂まで連れて行かれたって感じ。これまで味わったことのない陶酔が訪れ――そこまで二人で上り詰めた時には、私は、息も絶え絶えで、喉が嗄れていた。
終わった後も、彼は私のことを気遣って、名残惜しそうに私の肌を撫でている。
草壁君の腕の中で味わう甘い陶酔の余韻は、イチゴ大福を初めて食べた時の衝撃と感動に、ちょっと似ていた。
胸の先端摘まれたのに合わせて、「ん」が必要以上に強調された。
声を上げたって、気づかれただろうか。
草壁君の手は、その小さな先端を触るタイミングを狙っているかのように、胸のふくらみをそっと行きつ戻りつしている。
ああ、でも、そこも、ダメ。
私は、いつ弄られてもいいようにそこへ、意識を集中させる。
わずかに、草壁君が笑ったような気がしたのは、気のせいではないと思う。
「山慢のミントの羊羹は、甘さと爽やかさが抜群ですよね」
もう片方の手が、おへその横を通り、下へ向かったので、私は、そちらにも警戒しなくてはならなくなった。
「う……ん。あれ、……夏も、いいけど……」
つ、次は、どこ?
どこに刺激を受けても、大丈夫なように、ミント羊羹について語りながら私は、体中の感覚を尖らせる。
「冬に食べ、ん、のも――」
さっきまで腿の外側あたりを撫でていた手が、何となく内側へ回ってきたから、今度は、そっちだろうか。
「いい――っ!」
下を触られると予測したところへ、逆を突かれて、警戒の緩んだ乳首を舌でぬるんと舐められたものだから、強調どころではない声が出て、自分でもびっくりした。
「……い、今のは、感じたのとは、違う、んだからっ」
「ふふっ。分かってます。智世子さんは、こんな程度で感じて声を上げたりしないんですよね。……さあ、他に、ありますか?」
狙ってやってるんだろうか。
でも、そんなこと気にしている間に、草壁君の手は次の攻撃に備えてあちこちを撫であげている。
草壁君の指と舌の動きを予測しながら、それに対しての警戒も怠らず、好きなものを上げるというのは、なかなか簡単なことではない。
――っていうか、セックスって、こんなものだったっけ?
「キス、しますよ?」
余計なことを考えているうちに草壁君が、牽制をかけてきた。
私は急いで、好きな物について考えを巡らせ始める。
「えっと……チョコ、ミントパン」
「ええ、好きだと思いました」
唇で耳朶をくすぐる様に、草壁君が耳元で囁いた。
ああ、耳――草壁君が話すたびに頭の中にまで痺れが伝わって――くすぐったいのに、ずっとこんな風に、くすぐられていてもいいかも。
「甘い、だけじゃなくて――」
私がまだ話しているというのに、さっきの心の声を聞いていたかのように、草壁君の唇は、私の耳朶を食んだり舐めたり吸ったりし始めていた。
「爽やかさ、とか……中に入っている――」
頭に伝わる震動は、次第に大きくなってきて、頭の中だけでは収まりきらなくなりつつある。
「イチゴ、ジャムの、酸味とか……」
背筋に伝わった痺れのような震動のせいか、胸や腿あたりで動いている手の動きも、それほど警戒するほどのものではないような気がしてくる。
と、その時、内腿を撫でていた手が、すっと奥の方へ入って、割れ目に触れた。体が固くなり、自然に声にも力がこもる。
「好き――っ!」
やだ……絶対、狙ってやってる。
なんか、ここだけ切り取ったら、私が草壁君に告白したみたいじゃない。
もう、声を上げたのが恥ずかしいのか、告白みたいになったから恥ずかしいのか、草壁君とこうしているのが恥ずかしいのか、わからなくなってきた。
「智世子さん」
草壁君は満足そうに、私の名を呼んだ。
彼がその部分を撫であげた瞬間、指の滑りがよくなったのが、自分でもわかる。
「や……はず、かし……んっ――」
「もっと、俺で、感じて――」
まるで堰を切ったように、草壁君の動きが勢いを増した。
彼の唇が胸の頂を啄み、蜜の絡まった指が茂みのさらに奥を探る。
声が漏れないように、と思うのだけれど、どちらかに備えると、結果的に反対側が疎かになって、声を上げざるを得ない状況で――
乳首を吸われつつ、茂みの奥の小さな蕾を震わされた時には、腰が跳ね、声の制御が利かなくなった。
「かわいいよ、智世子さん」
背筋を伝いあがった痺れに、頭の中がジンジンしてくる。
その頭を、草壁君が優しく撫でてくれるのが、気持ち良かった。
彼は、ゆっくりと焦らすように花弁を開き、中指で硬く結んだ膣口を解し始める。
「や、草壁、君――」
「大丈夫。力を抜いてて下さい」
親指と人差し指で花芯を弄ばれて、「んふんっ!」と甘い声が漏れた。
その瞬間、中指が私の中へ入ってきて――
「ん……っ」
「智世子さんの中、熱いです」
中で小さく振動しながら、草壁君の指が膣壁を探ると、胸の奥に気持ちのいい痺れが湧きおこる。
乳首を舌でこねられて、腰から背筋の辺りがむずむず浮き上がったような気持ちになった。
「ひぁん!」
草壁君の指が、ある一点を突いた時、胸ではなく頭が大きく痺れた。
もう、何も、考えられなくなる――いや、考えようとしても、白い痺れに包まれて、上手く考えがまとまらない。
出来ることといえば、草壁君の手や口から与えられる刺激に、身体を委ねることだけで。
「これから、もっと、気持ち良くなりますよ」
耳元で艶めかしくそう囁くと草壁君は、私の両膝を抱えあげ、固く大きく反った部分で割れ目の上を往復する。知らないうちに溢れてきていた淫らな液体が、草壁君のそこに絡みつくにつれて、心と体の抵抗が小さくなっていくような気がした。
花弁の奥の小さな突起をすこし掠められただけでも、私の口から意味のない声が漏れる。
それを見てふふっと笑った草壁君は「いきますよ」声をかけてから、ゆっくりと私の中に入って来た。
言いようのない圧迫感。先ほどまでは、一瞬で通り過ぎていた痺れが、じわんじわんと連続的な疼きに変わった。それは、水紋が広がるように、熱を帯びて体全体に広がっていく。
「ふ、あぁぁぁぁ――んっ」
奥まで辿り着くと、彼はゆっくりと私の上に、体重を預けた。
繋がっている部分だけではなく、体全体に、彼を感じる。
彼は、すぐに腰を動かすことはしなかった。まるで、その繋がった部分が私をじっくりと味わうかのように。私の中で草壁君が小さくヒクつくだけで、私の中に官能が染み渡る。
しばらくそうして私を味わった後、彼は小さく腰を回しながら、私を縛っていたタオルと目隠しを解いた。
「そろそろ、俺のこと、好きって認めなよ?」
なんで、こういうときだけ、命令口調になるんだろう。
これまでの丹念な愛撫にくらくらし始めていた頭が、それまでの丁寧な口調と命令口調とのギャップに、混乱し始める。
それでも、まだ、理性を完全に明け渡しているわけではない私は、否定も、肯定も出来ない。
「……まだ……分からない」
私の声が草壁君に届いた瞬間、彼の目が捨てられて濡れた子犬のような切なさで揺れた。
「そう、ですか。もし、智世子さんが――」
草壁君が離れて行きそうな気がして、私は「だけど!」とその先を奪う。
「草壁君には……厭きられたく、ないと思う」
ここに至っても、大っぴらに手を開いて彼に飛び込んでいけない私は、かわいくないと思う。
けれども、そんな私の頭を、草壁君は愛おしそうに撫でた。
「厭きたりなんてしませんよ。むしろ、その、素直じゃなくてかわいいところが愛しくてたまりません」
「それって、矛盾してない?」
「いいえ。俺は、智世子さんが智世子さんであれば、いいんです」
「めちゃくちゃな理屈ね」
そんな風に熱くいわれて、意固地になった私が、慌てて引きそうになったとき、わずかに足りないあと少しの距離を縮めるかのように、草壁君が突然唇を奪った。
「理屈なんて関係なく、俺は、智世子さんが、好きなんですよ」
再び余裕を纏った彼には、もう年下の雰囲気なんて全然なかった。反対にそのまっすぐさを素直にぶつけられた私のほうが取り乱している。
それも、全部分かっているという笑顔を私に与えてから、草壁君はゆっくりと腰を動かし始めた。
その間中彼は、髪だったり、胸だったり、腰だったり――私の存在を確かめるように、ずっとどこかに触れていた。やっと手に入れたものを、愛玩するような、満足とも慈しみともとれるような瞳で。
その手に私の緊張は解きほぐされ、心も体も、無防備になる。
ほぐれた体全体に、草壁君と繋がっているところから生まれた衝動が伝わっていく。
「智世子さん、の、言った通りでした」
勢いを緩めた草壁君が、私の瞳を覗き込んだ。愛おしそうに目を細めて、親指で頬を撫でる。
「智世子さんが、俺で感じて、くれるの、――すごく、嬉しい、から……智世子さんの言った通り、これは、大事なこと、かもしれません」
そんなことを至近距離で、しかも、真面目な顔で言われて、私は何と返せばいいかわからなかった。けど、言葉なんて返す必要なかったみたい。
唇を塞がれて、濃厚に舌を絡められて、頭の奥が疼く。
私は返事の代わりに、彼の首の後ろに腕をまわした。
その瞬間、ゆっくりと膣内を掻きまわしていた彼の熱く固いそれが、ぴくりと動く。それを感じ取った私の胸の奥がキュッと反応すると、草壁君が嬉しそうに、これまで見せたことのないほど、甘く切ない表情で、小さく呻いた。
ああ、そうか。感じるって、こういうことなんだ。
心と体の鎧を全部はずして、無防備によって生まれる鋭敏さで、相手を感じ取るってことなんだ。
彼自身も今は文字通り丸裸で、不意の攻撃につい呻き声を上げるほどなのだと思うと、なんだか愛しくなってくる。
「智世子さん、俺、今、すごく、幸せです」
耳のそばで囁かれたその言葉に、胃のあたりがキュっとなり、胸の奥で生まれた苦しさが喉の奥までせり上がってきた。
草壁君が髪に顔を埋め、首筋に優しくキスをしながら指先で胸の突起を摘む。
「ああんっ」
腰が跳ねて、草壁君が「くっ」と呻いた。
その後は、もう、上手く草壁君に誘導されて、絶頂まで連れて行かれたって感じ。これまで味わったことのない陶酔が訪れ――そこまで二人で上り詰めた時には、私は、息も絶え絶えで、喉が嗄れていた。
終わった後も、彼は私のことを気遣って、名残惜しそうに私の肌を撫でている。
草壁君の腕の中で味わう甘い陶酔の余韻は、イチゴ大福を初めて食べた時の衝撃と感動に、ちょっと似ていた。
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