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夢のその先へ
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頭をなでられている感触に目を開くと、柔らかく微笑む悠兄ちゃんと目が合った。
「綾」
切なさを含んだ声で悠兄ちゃんが私の名を呼ぶ。
ただ、名前を呼ばれただけなのに、先ほどまでの余韻のせいか胸の奥がきゅっと反応した。
それを見て悠兄ちゃんが満足げに微笑む。そうされて、さんざん声を上げて喘いだことを思い出し、恥ずかしくなる。
「ごめんなさい。なんか、こんなの、初めてで――」
「綾が満足してくれたなら、嬉しいよ」
相変わらず悠兄ちゃんはどこまでも優しく、だから余計に、そんな優しさに慣れていない私は、どう反応していいのか分からない。
気持ち良かったのだから、お礼を言うべきだろうか。
いや、そもそもこの状況でお礼なんておかしいのではないか。
どう答えるべきか考えていると、先に悠兄ちゃんが言いにくそうに「それで――」と口を開いた。
「……もうちょっと先まで、大丈夫そう?」
おずおずと、口にしたその一言で、思い出した。私はしてもらうばかりで、悠兄ちゃんはまだ、満足していない。
「ごめん……」
「そっ、か」
残念そうに、それでも口元に笑みを残したまま悠兄ちゃんは視線を私から外した。
「そうじゃなくて! 私だけ満足して、ごめん……って、意味で……あの……その先……も、大丈夫、だから――」
最後まで言う前に、唇を封じられた。
先ほどの余韻がまだ燻っていたせいか、わずかに触れられただけでもそこから心地のよい痺れが広がる。
「悠兄ちゃん……」
「兄貴は、卒業させてくれるんだろ?」
胸の膨らみをやわやわと揉みながら、悠兄ちゃんが、その頂を舌で弾いた。
「んっ」
背筋が弓なりになり、頭の中に心地の良い痺れが広がる。
片方の手が腿の間を割り、その奥がまだ乾ききっていないことを確かめた。
「あっ……」
「"悠哉"。――言って?」
舌で乳首を転がしながら、指で陰核と膣口を責められ、そこから生まれた甘い刺激が全身へと伝わっていく。
「ん……悠……ちゃん」
霞みかけた意識の隅で、名前を呼ぼうとしてみたけれど、どうしても恥ずかしくて、呼び捨てにはできなかった。
「ん……まあ、とりあえずは、それでいいか」
独り言のように呟くと、悠兄ちゃんは、私の両脚を優しくくいと開き、そこに身体を滑り込ませた。
熱く張りつめた先端が私の入口に軽く触れる。
たったそれだけのことなのに、奥のほうからとろりと液体が溢れ出てくるのが自分でもわかる。
体が、求めていた。
けれども、悠兄ちゃんは、焦ることなく、そこにあてがったまま、胸やお腹に愛撫を与え続けている。
恥ずかしくて逸らしていた視線を、悠兄ちゃんに向けた。
目が合うと、彼は、とても満足そうに笑った。
「そのまま、俺を、見てて」
それから、悠兄ちゃんは、私の両腿を腕にかけ、腰を少し持ち上げさせるようにすると、あてがっていた先端をゆっくりとその奥へと沈ませ始めた。
角度がついている分、悠兄ちゃんのソレが、私の中へ入ってくるのが目に入る。だからなのか余計に、膣壁の感覚も敏感になっているような気がした。その形を確かめるように、悠兄ちゃんが打ち込んだ熱い杭を締めつけていく。
悠兄ちゃんの全部が入った。
繋がっている部分から奥へと――押しこまれるような感じがする。
「……く、ふん」
そのまま、胸の下あたりにまで迫ってくる押し上げられるような感覚。
侵入してくる時には僅かに顰められていた眉が緩み、悠兄ちゃんが安心したように笑った。
「綾……」
愛おしそうに、何度も髪を撫でる。
名前を呼ばれるのが、こんなにもくすぐったくて気持ちのいいものだとは、初めて知った。
だから私も気持ちの全部を込めて、それでも小さく「悠兄ちゃん」と呼んでみる。膣内でピクリと反応したのが、新たな快感をもたらす。
「動いて、いい?」
最初はゆっくりと、なじませるように、奥に挿れたまま悠兄ちゃんが腰を動かした。
突かれる場所が微妙に変わり、ある一点で、私の腰が激しく反応する。それを、悠兄ちゃんは見逃さなかった。
その角度と位置をキープしたまま、ゆっくりと抽送を始める。
「ふあ……っ」
口を塞ぎかけた手の甲を、悠兄ちゃんが優しく取り、頭の横で押さえつけた。体重が前にかかったことによって、さらに奥を突かれることになる。
「あ、ふん……やだ……なんか、なんか――」
「いいよもっと、、おかしくなって。――俺で乱れる綾を、もっと、みせて」
遮蔽物がないから、余計に、声が抑えられない。
何を口にするべきなのか、を考えることが出来なくなっていて、頭に浮かんだことが、そのまま口から洩れる。
それは、言葉だったり、意味をなさない喘ぎだったり。
ときどき、悠兄ちゃんがとても愛しくなって、今自分が誰に抱かれているのか、確認する。
すると、そういうとき悠兄ちゃんは必ず、笑顔で見つめ返してくれて、私に安心をくれるのだ。
「や……ん、ゆう……」
けれど、その笑顔から、次第に、余裕がなくなり始めた。
目があっても、一瞬だけにこりとするだけで、すぐに真剣な表情に戻る。
「綾、……もう一回、イって――」
余裕のない笑顔で、悠兄ちゃんはそう言うと、茂みの奥で張りつめた陰核を親指でこねた。
「はんっ! そ……こ、……め――っ」
「我慢、しなくて、いい、から――」
打ちつける速度がだんだん速くなる。
それに合わせて悠兄ちゃんの呼吸も荒くなっていく。
ぽたりと、私の胸に落ちた水滴は、汗だろうか。
けれど、それを追及する余裕は私にはもう無かった。
甘ったるいような花の香りの漂う中で、膣内を強く擦られ、先ほどから聞こえていた淫らな水音が、乾いた肌のぶつかる音と荒い呼吸にかき消される。
私は、弄ばれる陰核から生まれる痺れに翻弄されながら、ただ一筋の糸に縋るように悠兄ちゃんの焦れた瞳を見つめ続けた。
今、私を抱いているのは、悠兄ちゃんで――
「や、あん、……めっ……んっ、――はっ、……ゆ、ちゃ――ああんっ」
目と、耳と、鼻と――、それから、全身に与えられる痺れにも浮遊感にも似た感覚。私はそれら全てを、これまでの記憶の上に刻みつけた。
「日本に帰ったら、一緒に、暮らさないか?」
髪をゆっくりとなでながら、悠兄ちゃんが少し掠れた声で言った。
「家に、帰ってくるの?」
反射的に声を弾ませた私に、僅かに首を傾げて悠兄ちゃんは苦く笑う。
「……俺は、あの家には帰れないよ」
それは、つまり、私が家を出るということで――
そうできたら、どんなにいいだろう。
だって、お義父さんが、そんなこと、許してくれるわけがない。
そう口に出すと、悠兄ちゃんの顔は、切なさでいっぱいになった。
「だから、お前をあそこにおいておきたくないんだけどな。……でも、綾が出て行けないって言うんだったら親父にちゃんと話すよ」
「反対されるよ、きっと」
私は五年前のことを思い出した。
悠兄ちゃんが、一人暮らしを始めると一方的に宣言すると、お義父さんは狂ったように怒り始めたのだ。
今なら、それが寂しさの裏返しだったのだと、分からないでもない。けれどその時の私にはそんなことわかるわけもなく。
冷静に話そうとする悠兄ちゃんを、お義父さんは頭ごなしに怒鳴りつけていた。ついには温厚な悠兄ちゃんに大きな声を出させるほどに。
「そのときは――、綾を連れて、逃げていい?」
瞳の奥を探るように、悠兄ちゃんはまっすぐに私を見つめた。
連れて逃げるって……。『駆け落ち』という単語が頭の中を通り過ぎて行ったけれど、それは、本当に文字だけで、現実感を伴っていない。
ああ、でも――。
家を出て行くというときには、勘当を言い渡されても自分の主張を曲げなかった悠兄ちゃんは、時々こうやって意志の強いところをみせる。
だから、こうと決めたら、そうするだろう。
でも、あの男の行動の奥に根付いている昏い感情を知ってしまった今となっては、あの人を置いて家を出るなんて――
「――なんて、簡単にできるようだったら、ここまで拗れてないよな」
私の複雑な表情を読み取った悠兄ちゃんは、明るく笑った。
「実江子さんを説得して、もう一度、お手伝いさんを雇ってもらうってのは、どうだろう。今度は住み込みで。そうすれば、綾が一人で家にいる時間も減るだろうし、さすがに親父も、他人の目があるところで綾に手を出すわけにもいかないだろうしさ。――それで、様子を見ながらゆっくり説得していこうか」
お義父さんがどう思うか分からないけれど、でも私とお義父さんと悠兄ちゃんの妥協点はここしかないような気もする。
「説得、できるのかな……」
とはいえ、悠兄ちゃんの具体的な提案のおかげで、これまでの真っ暗な海原に放り出されて途方に暮れていたところに光が投げかけられた気がする。――灯台の光に導かれ陸地に近付けるような、そんな気が。
あ、
それで、気がついた。
どんなに思っていても、声に出さなければ――行動に移さなければ、状況に変化は訪れないのだということに。
不安そうに見つめた私の頭を、悠兄ちゃんはくしゃっとして、そのままその胸の中に引き寄せた。
「大丈夫だよ。意外と俺、短気だから、埒が明かないって判断したらすぐに、お前を奪い去りに行く」
私のことを一番に考えて言ってくれているのだと受け取るのは、思い上がりだろうか。
けれど、悠兄ちゃんが『大丈夫』と言えば、そう思えてくるから、不思議だ。
私は、頬に彼の少し汗ばんだ肌を感じながら、甘さを含んだ異国の香りの中で静かに目を閉じた。
「綾」
切なさを含んだ声で悠兄ちゃんが私の名を呼ぶ。
ただ、名前を呼ばれただけなのに、先ほどまでの余韻のせいか胸の奥がきゅっと反応した。
それを見て悠兄ちゃんが満足げに微笑む。そうされて、さんざん声を上げて喘いだことを思い出し、恥ずかしくなる。
「ごめんなさい。なんか、こんなの、初めてで――」
「綾が満足してくれたなら、嬉しいよ」
相変わらず悠兄ちゃんはどこまでも優しく、だから余計に、そんな優しさに慣れていない私は、どう反応していいのか分からない。
気持ち良かったのだから、お礼を言うべきだろうか。
いや、そもそもこの状況でお礼なんておかしいのではないか。
どう答えるべきか考えていると、先に悠兄ちゃんが言いにくそうに「それで――」と口を開いた。
「……もうちょっと先まで、大丈夫そう?」
おずおずと、口にしたその一言で、思い出した。私はしてもらうばかりで、悠兄ちゃんはまだ、満足していない。
「ごめん……」
「そっ、か」
残念そうに、それでも口元に笑みを残したまま悠兄ちゃんは視線を私から外した。
「そうじゃなくて! 私だけ満足して、ごめん……って、意味で……あの……その先……も、大丈夫、だから――」
最後まで言う前に、唇を封じられた。
先ほどの余韻がまだ燻っていたせいか、わずかに触れられただけでもそこから心地のよい痺れが広がる。
「悠兄ちゃん……」
「兄貴は、卒業させてくれるんだろ?」
胸の膨らみをやわやわと揉みながら、悠兄ちゃんが、その頂を舌で弾いた。
「んっ」
背筋が弓なりになり、頭の中に心地の良い痺れが広がる。
片方の手が腿の間を割り、その奥がまだ乾ききっていないことを確かめた。
「あっ……」
「"悠哉"。――言って?」
舌で乳首を転がしながら、指で陰核と膣口を責められ、そこから生まれた甘い刺激が全身へと伝わっていく。
「ん……悠……ちゃん」
霞みかけた意識の隅で、名前を呼ぼうとしてみたけれど、どうしても恥ずかしくて、呼び捨てにはできなかった。
「ん……まあ、とりあえずは、それでいいか」
独り言のように呟くと、悠兄ちゃんは、私の両脚を優しくくいと開き、そこに身体を滑り込ませた。
熱く張りつめた先端が私の入口に軽く触れる。
たったそれだけのことなのに、奥のほうからとろりと液体が溢れ出てくるのが自分でもわかる。
体が、求めていた。
けれども、悠兄ちゃんは、焦ることなく、そこにあてがったまま、胸やお腹に愛撫を与え続けている。
恥ずかしくて逸らしていた視線を、悠兄ちゃんに向けた。
目が合うと、彼は、とても満足そうに笑った。
「そのまま、俺を、見てて」
それから、悠兄ちゃんは、私の両腿を腕にかけ、腰を少し持ち上げさせるようにすると、あてがっていた先端をゆっくりとその奥へと沈ませ始めた。
角度がついている分、悠兄ちゃんのソレが、私の中へ入ってくるのが目に入る。だからなのか余計に、膣壁の感覚も敏感になっているような気がした。その形を確かめるように、悠兄ちゃんが打ち込んだ熱い杭を締めつけていく。
悠兄ちゃんの全部が入った。
繋がっている部分から奥へと――押しこまれるような感じがする。
「……く、ふん」
そのまま、胸の下あたりにまで迫ってくる押し上げられるような感覚。
侵入してくる時には僅かに顰められていた眉が緩み、悠兄ちゃんが安心したように笑った。
「綾……」
愛おしそうに、何度も髪を撫でる。
名前を呼ばれるのが、こんなにもくすぐったくて気持ちのいいものだとは、初めて知った。
だから私も気持ちの全部を込めて、それでも小さく「悠兄ちゃん」と呼んでみる。膣内でピクリと反応したのが、新たな快感をもたらす。
「動いて、いい?」
最初はゆっくりと、なじませるように、奥に挿れたまま悠兄ちゃんが腰を動かした。
突かれる場所が微妙に変わり、ある一点で、私の腰が激しく反応する。それを、悠兄ちゃんは見逃さなかった。
その角度と位置をキープしたまま、ゆっくりと抽送を始める。
「ふあ……っ」
口を塞ぎかけた手の甲を、悠兄ちゃんが優しく取り、頭の横で押さえつけた。体重が前にかかったことによって、さらに奥を突かれることになる。
「あ、ふん……やだ……なんか、なんか――」
「いいよもっと、、おかしくなって。――俺で乱れる綾を、もっと、みせて」
遮蔽物がないから、余計に、声が抑えられない。
何を口にするべきなのか、を考えることが出来なくなっていて、頭に浮かんだことが、そのまま口から洩れる。
それは、言葉だったり、意味をなさない喘ぎだったり。
ときどき、悠兄ちゃんがとても愛しくなって、今自分が誰に抱かれているのか、確認する。
すると、そういうとき悠兄ちゃんは必ず、笑顔で見つめ返してくれて、私に安心をくれるのだ。
「や……ん、ゆう……」
けれど、その笑顔から、次第に、余裕がなくなり始めた。
目があっても、一瞬だけにこりとするだけで、すぐに真剣な表情に戻る。
「綾、……もう一回、イって――」
余裕のない笑顔で、悠兄ちゃんはそう言うと、茂みの奥で張りつめた陰核を親指でこねた。
「はんっ! そ……こ、……め――っ」
「我慢、しなくて、いい、から――」
打ちつける速度がだんだん速くなる。
それに合わせて悠兄ちゃんの呼吸も荒くなっていく。
ぽたりと、私の胸に落ちた水滴は、汗だろうか。
けれど、それを追及する余裕は私にはもう無かった。
甘ったるいような花の香りの漂う中で、膣内を強く擦られ、先ほどから聞こえていた淫らな水音が、乾いた肌のぶつかる音と荒い呼吸にかき消される。
私は、弄ばれる陰核から生まれる痺れに翻弄されながら、ただ一筋の糸に縋るように悠兄ちゃんの焦れた瞳を見つめ続けた。
今、私を抱いているのは、悠兄ちゃんで――
「や、あん、……めっ……んっ、――はっ、……ゆ、ちゃ――ああんっ」
目と、耳と、鼻と――、それから、全身に与えられる痺れにも浮遊感にも似た感覚。私はそれら全てを、これまでの記憶の上に刻みつけた。
「日本に帰ったら、一緒に、暮らさないか?」
髪をゆっくりとなでながら、悠兄ちゃんが少し掠れた声で言った。
「家に、帰ってくるの?」
反射的に声を弾ませた私に、僅かに首を傾げて悠兄ちゃんは苦く笑う。
「……俺は、あの家には帰れないよ」
それは、つまり、私が家を出るということで――
そうできたら、どんなにいいだろう。
だって、お義父さんが、そんなこと、許してくれるわけがない。
そう口に出すと、悠兄ちゃんの顔は、切なさでいっぱいになった。
「だから、お前をあそこにおいておきたくないんだけどな。……でも、綾が出て行けないって言うんだったら親父にちゃんと話すよ」
「反対されるよ、きっと」
私は五年前のことを思い出した。
悠兄ちゃんが、一人暮らしを始めると一方的に宣言すると、お義父さんは狂ったように怒り始めたのだ。
今なら、それが寂しさの裏返しだったのだと、分からないでもない。けれどその時の私にはそんなことわかるわけもなく。
冷静に話そうとする悠兄ちゃんを、お義父さんは頭ごなしに怒鳴りつけていた。ついには温厚な悠兄ちゃんに大きな声を出させるほどに。
「そのときは――、綾を連れて、逃げていい?」
瞳の奥を探るように、悠兄ちゃんはまっすぐに私を見つめた。
連れて逃げるって……。『駆け落ち』という単語が頭の中を通り過ぎて行ったけれど、それは、本当に文字だけで、現実感を伴っていない。
ああ、でも――。
家を出て行くというときには、勘当を言い渡されても自分の主張を曲げなかった悠兄ちゃんは、時々こうやって意志の強いところをみせる。
だから、こうと決めたら、そうするだろう。
でも、あの男の行動の奥に根付いている昏い感情を知ってしまった今となっては、あの人を置いて家を出るなんて――
「――なんて、簡単にできるようだったら、ここまで拗れてないよな」
私の複雑な表情を読み取った悠兄ちゃんは、明るく笑った。
「実江子さんを説得して、もう一度、お手伝いさんを雇ってもらうってのは、どうだろう。今度は住み込みで。そうすれば、綾が一人で家にいる時間も減るだろうし、さすがに親父も、他人の目があるところで綾に手を出すわけにもいかないだろうしさ。――それで、様子を見ながらゆっくり説得していこうか」
お義父さんがどう思うか分からないけれど、でも私とお義父さんと悠兄ちゃんの妥協点はここしかないような気もする。
「説得、できるのかな……」
とはいえ、悠兄ちゃんの具体的な提案のおかげで、これまでの真っ暗な海原に放り出されて途方に暮れていたところに光が投げかけられた気がする。――灯台の光に導かれ陸地に近付けるような、そんな気が。
あ、
それで、気がついた。
どんなに思っていても、声に出さなければ――行動に移さなければ、状況に変化は訪れないのだということに。
不安そうに見つめた私の頭を、悠兄ちゃんはくしゃっとして、そのままその胸の中に引き寄せた。
「大丈夫だよ。意外と俺、短気だから、埒が明かないって判断したらすぐに、お前を奪い去りに行く」
私のことを一番に考えて言ってくれているのだと受け取るのは、思い上がりだろうか。
けれど、悠兄ちゃんが『大丈夫』と言えば、そう思えてくるから、不思議だ。
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