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事の始まり
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「瞬、凛。あなたたちだけは。あなたたちだけはもしかしたら助かるかもしれない」
まだ物心もつかない幼い息子と娘に彼女は語りかける。そばには父親らしき男も立っていて、焦燥を持った目で窓を見ていた。
「あなた、魔術協会の連中はもう来てしまった?」
彼女は心配そうな面持ちで、彼に尋ねる。
「ああ」
短く答えた父親に呆れたかのように、彼女はまた子供たちに視線を戻す。
「やはり、」
父親が頭を掻きむしる。
「やはり、早々にイギリスに亡命するべきだった」
「駄目よ。もう後の祭り。せめてこの子達だけは助けなきゃいけない」
と、遂にドアが蹴破られ、スーツ姿の男たちが乱入する。彼女は息子たちを衣装タンスの中に隠した。
「立花勉に、立花加奈だな」
スーツ姿の男たちが問う。有無を言わさぬ圧力に夫婦は黙った。
「魔界法第4条違反で連行する。確か子供が2人いたな。どこへやった?」
「どこにもやっていないわ。殺したのよ」
彼女は気丈に振舞おうとするが、その声は震えている。
「加奈、やめろ」
「やめない。殺したのよ、問題ないでしょう?」
父親の静止も聞かず、彼女はまくしたてる。
「ああ、問題ない。だがお前たちが魔術士であることと、結婚していることは問題がある」
黒スーツの男の1人が低い声で言い放った。彼女は黙る。
「問題があるだろう?」
なおも畳み掛けるように言う彼らの声に、返事をすることさえままならなかった。
「抵抗するならお前たちには死んでもらう。違反者は処刑する。これも魔界法だ」
口元でなにかを唱えたスーツの男の手から不気味な赤い光が放たれた。あらゆる力を奪われ倒れていく両親を、凛はタンスの隙間から見ていた。、
まだ物心もつかない幼い息子と娘に彼女は語りかける。そばには父親らしき男も立っていて、焦燥を持った目で窓を見ていた。
「あなた、魔術協会の連中はもう来てしまった?」
彼女は心配そうな面持ちで、彼に尋ねる。
「ああ」
短く答えた父親に呆れたかのように、彼女はまた子供たちに視線を戻す。
「やはり、」
父親が頭を掻きむしる。
「やはり、早々にイギリスに亡命するべきだった」
「駄目よ。もう後の祭り。せめてこの子達だけは助けなきゃいけない」
と、遂にドアが蹴破られ、スーツ姿の男たちが乱入する。彼女は息子たちを衣装タンスの中に隠した。
「立花勉に、立花加奈だな」
スーツ姿の男たちが問う。有無を言わさぬ圧力に夫婦は黙った。
「魔界法第4条違反で連行する。確か子供が2人いたな。どこへやった?」
「どこにもやっていないわ。殺したのよ」
彼女は気丈に振舞おうとするが、その声は震えている。
「加奈、やめろ」
「やめない。殺したのよ、問題ないでしょう?」
父親の静止も聞かず、彼女はまくしたてる。
「ああ、問題ない。だがお前たちが魔術士であることと、結婚していることは問題がある」
黒スーツの男の1人が低い声で言い放った。彼女は黙る。
「問題があるだろう?」
なおも畳み掛けるように言う彼らの声に、返事をすることさえままならなかった。
「抵抗するならお前たちには死んでもらう。違反者は処刑する。これも魔界法だ」
口元でなにかを唱えたスーツの男の手から不気味な赤い光が放たれた。あらゆる力を奪われ倒れていく両親を、凛はタンスの隙間から見ていた。、
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