45 / 91
尾行した先に
しおりを挟む
「……」
俺はシェイクジョーさんと大勢の騎士の後を尾けていた。
数多くの疑問が頭の中に残っていたが、やはり本人、またはその周りを観察するのが早いと考えたからだ。
「もうそろそろ王宮だな」
俺は民家の屋根から屋根へ飛び移りながら、バレないように慎重に追っていく。
無論、気配は完全に消しているので、レイカさんを見ていた時のような油断さえしなければ俺がバレることはないだろう。
「……」
ここまで動きはない……となれば、こちらから行動を起こすしかなさそうか?
シェイクジョーさんが一人になってくれれば楽なのだが、騎士団長が単独で行動することなど中々なさそうだな。
「私は少し用事があるから席を外す。ダーリッシュ、お前は私の代わりに外部訓練が無事に終了した旨を国王様に報告してくれ。その後の内部訓練の指揮も頼む。わかったか?」
俺が地上に降りようとしたその時だった。
シェイクジョーさんは王宮の入り口から残り数十メートルのところですぐ後ろに控えていた一人の騎士に一つ声をかけると、途端に列から外れた。
「……やっと一人になったか」
シェイクジョーさんは大勢の騎士が全員王宮に入っていったことを見届けると、王宮の裏手に向かって一人で歩いて行った。
時折、背中の大剣を気にする仕草を見せており、これから訪れる何かに構えているようにも見えた。
「どこに行くんだ……?」
俺は人気がないことを確認してから地上に降りて、シェイクジョーさんの後ろを尾けていた。
腰を若干低くして足元に生い茂った草木の上を慎重に歩いていく。
シェイクジョーさんは俺の存在に全く気がついていないのか、強く地面を踏みしめてどこかへ向かっていく。
「あれは……」
数分ほど歩いただろうか。
やがてシェイクジョーさんが立ち止まったのは、王宮の真裏にある一つの大きな木の前だったが、そこには既に先客がいた。
「フリードリーフか?」
そこにいたのは木陰にいてもわかるぐらいに輝く金色の鎧を装備した男——フリードリーフだった。
どうやらシェイクジョーさんはフリードリーフと待ち合わせをしていたらしい。
両者の姿を確認した俺は、すぐにそばにあった茂みに身を潜め、隙間から目を凝らして様子を伺うことにした。
「フリードリーフさん。私をここに呼び出して何の用ですか? これから我々の部隊が内部訓練を行うというのはご存知のはずですよね」
シェイクジョーさんは木に体を預けながら腕を組むフリードリーフに向かって言った。
その言葉は最もだが、まさかこの二人がいきなり対面するなんて思わなかったな。
「わかっている。だが、そんな些細なことはいいだろう?」
フリードリーフはそんな言葉など気にも留めずにあしらうと閉じていた目を軽く開き、夕焼けに照らされるシェイクジョーさんの姿を鋭い眼光で睨みつけていた。
「そうですか。では何用で? 今朝方にいきなり呼び出されるものですから驚きましたよ」
「惚けなくてもいい。もうわかっているのだろう? 素直に言ったらどうだ?」
フリードリーフさんは木陰から出ると、シェイクジョーさんの元へゆっくりと歩みを進めた。
確信めいたその言い方は、まるで悪人を問い詰めているかのように感じる。
「……」
シェイクジョーさんの表情はこちらからは見えないが、佇まいに変化はないことから大きな動揺はしていないことがわかる。
「沈黙か……まあいい。既に我々の部隊は例の湖を見張っているからな。貴様は少しでも怪しい動きを見せたら終わりだと思え」
フリードリーフは呆れと怒りが混ざったような言葉を言い残すと、シェイクジョーさんの返事を待たずにその場から立ち去った。
口調こそ静かだったがそこには確かな意志と力を感じたので、かなり情熱的で熱い男なのかもしれない。
冷静でクールな雰囲気があるシェイクジョーさんとは真逆だな。
「……」
フリードリーフが立ち去ってから、シェイクジョーさんは一人でその場に無言で立ち尽くしていた。
その背中は何かを考えているようにも見えたが、真意はわからない。
「……いくか」
これはサシで接触するチャンスだ。
俺は軽く息を吐いてから茂みからゆっくりと姿を現すのと同時に、徐々に気配を漏らしていった。
「っ! 何者だ!」
シェイクジョーさんは流石は騎士団長というようなスピードで大剣を抜くと、グッと目を細めて俺のことを睨んだ。
「初めまして。少しお話しでもしませんか?」
対して、俺は敵意を一切無くしてから声をかけた。
フレンドリーに穏便に平和的に、それでいて素直に話を持ちかけた。
俺はシェイクジョーさんと大勢の騎士の後を尾けていた。
数多くの疑問が頭の中に残っていたが、やはり本人、またはその周りを観察するのが早いと考えたからだ。
「もうそろそろ王宮だな」
俺は民家の屋根から屋根へ飛び移りながら、バレないように慎重に追っていく。
無論、気配は完全に消しているので、レイカさんを見ていた時のような油断さえしなければ俺がバレることはないだろう。
「……」
ここまで動きはない……となれば、こちらから行動を起こすしかなさそうか?
シェイクジョーさんが一人になってくれれば楽なのだが、騎士団長が単独で行動することなど中々なさそうだな。
「私は少し用事があるから席を外す。ダーリッシュ、お前は私の代わりに外部訓練が無事に終了した旨を国王様に報告してくれ。その後の内部訓練の指揮も頼む。わかったか?」
俺が地上に降りようとしたその時だった。
シェイクジョーさんは王宮の入り口から残り数十メートルのところですぐ後ろに控えていた一人の騎士に一つ声をかけると、途端に列から外れた。
「……やっと一人になったか」
シェイクジョーさんは大勢の騎士が全員王宮に入っていったことを見届けると、王宮の裏手に向かって一人で歩いて行った。
時折、背中の大剣を気にする仕草を見せており、これから訪れる何かに構えているようにも見えた。
「どこに行くんだ……?」
俺は人気がないことを確認してから地上に降りて、シェイクジョーさんの後ろを尾けていた。
腰を若干低くして足元に生い茂った草木の上を慎重に歩いていく。
シェイクジョーさんは俺の存在に全く気がついていないのか、強く地面を踏みしめてどこかへ向かっていく。
「あれは……」
数分ほど歩いただろうか。
やがてシェイクジョーさんが立ち止まったのは、王宮の真裏にある一つの大きな木の前だったが、そこには既に先客がいた。
「フリードリーフか?」
そこにいたのは木陰にいてもわかるぐらいに輝く金色の鎧を装備した男——フリードリーフだった。
どうやらシェイクジョーさんはフリードリーフと待ち合わせをしていたらしい。
両者の姿を確認した俺は、すぐにそばにあった茂みに身を潜め、隙間から目を凝らして様子を伺うことにした。
「フリードリーフさん。私をここに呼び出して何の用ですか? これから我々の部隊が内部訓練を行うというのはご存知のはずですよね」
シェイクジョーさんは木に体を預けながら腕を組むフリードリーフに向かって言った。
その言葉は最もだが、まさかこの二人がいきなり対面するなんて思わなかったな。
「わかっている。だが、そんな些細なことはいいだろう?」
フリードリーフはそんな言葉など気にも留めずにあしらうと閉じていた目を軽く開き、夕焼けに照らされるシェイクジョーさんの姿を鋭い眼光で睨みつけていた。
「そうですか。では何用で? 今朝方にいきなり呼び出されるものですから驚きましたよ」
「惚けなくてもいい。もうわかっているのだろう? 素直に言ったらどうだ?」
フリードリーフさんは木陰から出ると、シェイクジョーさんの元へゆっくりと歩みを進めた。
確信めいたその言い方は、まるで悪人を問い詰めているかのように感じる。
「……」
シェイクジョーさんの表情はこちらからは見えないが、佇まいに変化はないことから大きな動揺はしていないことがわかる。
「沈黙か……まあいい。既に我々の部隊は例の湖を見張っているからな。貴様は少しでも怪しい動きを見せたら終わりだと思え」
フリードリーフは呆れと怒りが混ざったような言葉を言い残すと、シェイクジョーさんの返事を待たずにその場から立ち去った。
口調こそ静かだったがそこには確かな意志と力を感じたので、かなり情熱的で熱い男なのかもしれない。
冷静でクールな雰囲気があるシェイクジョーさんとは真逆だな。
「……」
フリードリーフが立ち去ってから、シェイクジョーさんは一人でその場に無言で立ち尽くしていた。
その背中は何かを考えているようにも見えたが、真意はわからない。
「……いくか」
これはサシで接触するチャンスだ。
俺は軽く息を吐いてから茂みからゆっくりと姿を現すのと同時に、徐々に気配を漏らしていった。
「っ! 何者だ!」
シェイクジョーさんは流石は騎士団長というようなスピードで大剣を抜くと、グッと目を細めて俺のことを睨んだ。
「初めまして。少しお話しでもしませんか?」
対して、俺は敵意を一切無くしてから声をかけた。
フレンドリーに穏便に平和的に、それでいて素直に話を持ちかけた。
13
お気に入りに追加
244
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました
ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。
そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった……
失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。
その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。
※小説家になろうにも投稿しています。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!
うどん五段
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。
皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。
この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。
召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。
確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!?
「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」
気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。
★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします!
★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる