結界の守り人

銀麦

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浅野の過去

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三人は山道を村に向かって歩いた、たまに美鈴が浅野におんぶをねだりおんぶされたり歩いたりをしながらだった。
父と子様子を凛は微笑ましくそして少しうらやしく見ていた、自分には親の記憶さえなかった。
ふと浅野がなぜ流浪の身となったか気になり聞いてみた。浅野は今までどおり穏やかな表情で話しはじめた。
「私は昔、ある大名御付きの医者だった
あるとき大名の息子が熱を出して寝込んだ。はじめは風邪かと思ったが一向に熱は下がらなかった。私も最善を尽くして治療したが、そのまま治ることなく亡くなった。息子を亡くした大名は激怒し私は追い出された、まぁ切腹を言い渡せられなかっただけ幸運だった。それから私は町医者になろうとしたが、大名から暇を言い渡された医者の所など治療にくるはずもなく、町から町へ転々とした。
妻はそんな生活からくる疲労がたまっていたのだろう、流行り病にかかり治ることはなかった。」
それまでの穏やかな表情が一瞬くずれた、妻を亡くした悲しみと自分に対する怒りの入り混じった表情だった。
「そんなとき美鈴が咳込むようになり美鈴に湯治をさせたいのと、伊豆の国なら
仕事があるかもしれないと思って伊豆に来た。」
そう言うと苦笑いをして
「伊豆に来たからといって仕事が保証は全くなかった、だたそんな気がして伊豆に来た。熱海で湯治をしながら、どこか開業出来る場所がないか探した、そんなとき村の住人達が行商に来ていて村に来ないか誘われた。住む場所と食べ物を提供するから村に来ないかと。近くに温泉もあると聞いて美鈴の咳にもいいかもしれないと思って村に来ることにしたんだ。」
話し終わると微笑みながら美鈴の頭を撫でた。
「私もう咳でないよ」
美鈴が言った。
「すみません大変な思いをされてきたのに軽率に伺ってしまい」
そう言う凛に対して浅野はいやいやもう過去の事だからと笑った。
「村に行く途中温泉がある、入っていきませんか?もちろん私は一緒には入りませんから」
浅野の提案は嬉しかった、なにしろ体を川で洗う事は出来たがしばらく風呂に入っていない。是非嬉しいですと答えつつ別に混浴でも構わないと凛は思っていた。

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