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序章、異世界で召喚された王国編

2、私の素早さは2.8千です

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 俺は今、地獄を見ている。

 頭はろくに働かず。
 体は至る箇所に激痛ジンジン。
 精神面では恐ろしくやつれており。
 視界はひたすらに霞んでいた。
 そしてペンを持つ手はプルプル震えている。

 つまりは疲労がもはや溜まりに溜まっているわけだ。
 何度意識が落ちかけたかもわかりはしない。
 眠気と使命感の激突。
 ちなみに眠気が明らかに勝っている。

 俺は今、机でいくつも書類に目を通している。
 この行為は何度もこっちの世界から嫌なほどに行なっている。
 ちなみに労働時間は十五時間だ。
 さらに言えばそこに護身術の訓練も入るのでプラス三時間。
 さらにさらにうちのクラスメイトが定期期間にやらかすのでその謝罪に一時間。
 さらにさらにさらに俺が研究対象となる時間が一時間。
 さらにさらにさらにさらに食事、風呂に一時間。
 結果自由時間は三時間となる。
 だいたい睡眠時間に消えるが…

 …本気でブラックだ。
 正直に言って泣きたい。
 せめてもう少しはファンタジー成分が欲しかった。

 俺のお目付役のイシュミールさん(宰相)ですらも俺を放って途中で休んでいたりする。
 俺にも休みプリーズ。

 さて研究対象となる理由だがそれにはいくつか説明が必要となる。

 このクラスは本気でファンタジーでゲームっぽい。
 そのため『ステータス』と呼ばれるものがある。
 だいたい想像はつくだろうがめっちゃくちゃ異世界転生ものでありきたりなアレである。

「“ステータスオープン”」

 俺がそう言うと音を立てて目の前に画面が現れる。
 それはまるでゲームのような表示だ。
 まあ、この世界自体がRPGなので仕方がない。

 黒輝 勇馬くろき ゆうま ♀と見せかけて♂ Lv.1
【種族】
 上位世界人
【パラメーター】
 HP 80/80(生命力)
 SP 40/250(身体体力)
 MP 0/0(魔力)
 AP 300(身体攻撃力)
 MAP 0(魔法攻撃力)
 GP 110(身体防御力)
 MGP 10(魔法防御力)
 FP 2800(速さ)
【称号】
 上位世界人、剣士、闘士、武士、魔女、軍師、料理人、封印された者
【スキル】
 アイテムボックスLv.10、成長倍加Lv.1、剣術Lv.4、闘術Lv.4、天眼Lv.1、魅了Lv.3、念話Lv.5、隠密Lv.1、料理Lv.8、万能味覚Lv.2、封印Lv.?

 これは俺のステータスだ。
 個人のレベルに上限はないと言われており、上がるごとに【パラメーター】や【スキル】のレベルが上がる。

 一方【称号】は自身のレベルを上げる条件を足していくもの。
 例えば戦闘系の【称号】を持っていれば戦闘をすればレベルは上がる。
 だが【料理人】などの非戦闘系の【称号】はそれぞれの条件をクリアすればレベルが上がる。

 もっとも【パラメーター】の補正などはその【称号】で使われたものしか上がらないので、それで無双! などは考えない方がいい。
 農民が仕事やりまくってレベル100になったところで【パラメーター】は雑魚なので騎士などの純戦闘員には勝てはしない。
 …農民、どんまい。

 だが俺からすればそんなことはどうでもいいっ!!
 このステータスに俺は山ほど物申すことがある!!

 まず何!? 異世界に来てまでのこの魔法への適性の無さは!!?
 クラスメイト、せいぜい魔力1はあったよ!!?
 天翔なんざ【勇者】で魔力3桁だよ!!?
 他も基本3桁とかふざけてんな!!?
 よし、その喧嘩勝ってやる!!
 ただしこの世界に来た以上、勝てる気しないが!

 ちなみに平均的なステータスの値が10、兵士などなら100。
 それなら兵士、天翔に並んでんじゃんと思ったそこのあなた!

 兵士は一生かけて、天翔は最初から。
 …この意味がわかるか?
 つまり天翔は4桁普通に行く可能性大なわけだ。
 それを考えれば初期からFP4桁の俺も十分に化物なわけではあるが…魔法、使いたかったなー!!

 だが問題はここからだ!
 一番上、および称号の一部、そしてスキルの一部を見てほしい!

『♀と見せかけて♂』、【魔女】、【魅了】

 何このラインナップ!!?
 ステータスまで俺をいじくり回すつもりか!!?
 ステータスは神が付与したものとか言われてるが、もしそうだったら神を殺す!!

 ちなみにこれらが希少なスキルだったりの一つ。
 他にもレアなスキルなどが多く、俺は研究対象として見られている。
 マジでやめろ。

「勇馬くーん! 無事ー?」

 そんなイラついていた状況だった。
 能天気かつ知った声が部屋に響いたのは。

 その声は明らかに俺の親友の声であった。

「アゲハか」

「イエスイエス!」

 アゲハはダブルピースで俺の返事に反応。
 天真爛漫な笑顔に多少は癒される。

 七海ななみ アゲハは可愛らしい感じの美少女だ。
 黒髪ショートで前髪をヘアピンで分けている。
 少し身長は低めで150後半程度。
 体に関しては…成長過程と記しておく。

「喧嘩売ってるのかな?」

「何のことでしょうか?」

 俺は思いっきりそっぽ向いた。
 アゲハの目に光が差し込んでいなかった。
 こんな時のアゲハには俺も敵わない。
 正直やばい。

 またアゲハは天翔に並ぶ力の持ち主だ。
 精霊やら魔獣を使役する力だ。
 また魔法の力も尋常ではない。
 ただしFPは俺の勝利。
 …でも魔法使いたかったなぁあああああー!!

 すると体にどっと疲れが押し寄せてきた。
 寝る時間が少な過ぎて自分の体が疲れているのるを忘れていた。

「…すまんマジで今、窶れてるから帰っーー」

「王様と交渉して勇馬くんがお休み二日間取れるようにしたよー」

「ありがとうございます。アゲハ様」

 光の速さで土下座!
 ありがとう!
 本当にありがとう!
 これで一日中寝れーーー

「というわけで明日、みんなでショッピング行ーーー」

 ダッ!!

 ガシッ!!

「どこに行こうとしてるのかな? 勇馬くん?」

「離してくれ!! 俺には二日間寝るという使命があるんだ!」

「それやることないブラック企業会社員の休日の過ごし方だよ!!?」

 あながち間違いじゃないな!

「とにかく俺は寝るんだ! 邪魔をするというならば俺の屍を超えーー」

「ちなみに王都にはもふもふなぬいぐるみがたくさんあります」

「お前支度遅いな。早く行くぞ?」

「早っ!!? いつのまに準備してたの、その荷物!!?」

 伊達にFP4桁でないとでも言っておこう。

「あと蓮ちゃんと園田くんも来るはずだから、相談しよ。しば

「了解だ」

 そうして俺は駆け出した。

「待ってぇええーー!!!!」

 やはりFP4桁は伊達などではなかった。
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