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【オマケ】α、β、Ωで結婚したら\無職/だった
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「だからって、そんなんじゃ店がたちゆかなくなるだろーが!!」
「うっせえ、俺には俺のやり方があんだ、嫌なら出てけ!!」
クビだクビ、明日から来るな、ここは俺の店だと親父は言い捨てると、ふんっと鼻息も荒く、流助に背を向けた。
二人とも頭に血が上ってつかみ合い寸前、流助も売り言葉&買い言葉で「は、誰がこんな店。こっちからやめてやる」と捨て台詞を吐き、つけていた手ぬぐいと前掛けをテーブルにたたきつけた。ガラピシャとわざと大きな音をたてて引き戸を開け、外に飛びだした。
「ってことで、俺、無職になっちゃった」
てへっと、流助が舌をだすと、ダイニングテーブルをはさんで前に座っていたイオは、難しい顔でガタンと席を立った。
あー、これは怒られる、説教始まるなあと思っていると、肩をがしっとつかまれ、ますます身構える。
これまでも流助はイオに、短絡的な行動や幼稚な態度をたしなめられたり、小言を言われたりと、お前俺のお母さんかよ、と言いたくなるようなことが多々あった。面倒くさいのを覚悟した。
しかし、イオがとった行動は流助にとって予想外のものだった。
「……よくぞ言った!!」
「へ?」
「えらいぞ、流助!!」
あれ、どういうこと?
イオは、キッチンやキャビネットをあさって家中の酒をかきあつめはじめた。それを次々とテーブルの上に、ドン、ドンと並べてゆく。
「飲むよ」
「うわあ、昼酒ー☆」
ペシッと缶ビールのプルトップをあけた。
流助も続く。
二人ぐいぐいと一気にあけた。
ぷはーっとやると、単純な流助は、もう親父とケンカしたことなどどうでもよくなってくる。
なんかつまみあったっけ、さきいかあった気がするなあ、マヨつけて食べたいなあと思っていると、イオが不敵に宣言する。
「流助、ぼくも決めた」
「え?」
イオはスマホを取りだすと、その場で電話をかけだした。
「はいっ、ええ、……。契約更新はなしで。……ええ、はい、今までありがとうございました。……ええ、大丈夫です、それでは失礼します」
電話をぽちっと切ると、わはははははははと高笑いをして、自分のひざをバシバシ叩いた。
「ガツンと言ってやたぜ!!ざまあ!!」
ガツンとな?いや、すごく丁寧だったけど。
「なんかあったの?イオ」
流助が水をむけると、イオは、つもりつもった所属事務所への不満を爆発させた。
「ぼくはさ、三流だし無名だから仕事を選んだりしません、何でもどんどんください、って立場だし実際確かにそう言ったよ?パンツだろうが全裸だろうが、なんでも喜んで撮られますよ。でもさ、着ぐるみはないよね?細長さがちょうどいいからって。テンさんの着ぐるみはない」
「サボテンのテンさん!?」
国営放送のあの有名なゆるキャラ、テンさんですと?!流助は思わず食いついた。
「好きだよぼくも。テンさん。もしぼくが着ぐるみアクターならそれはそれはテンションあがっただろうよ。でもね、流助、ぼくは腐ってもモデル!!顔と身体見られてなんぼ!!なんでもやるったって、着ぐるみは……着ぐるみは、顔も身体も隠れちゃってみえない!!」
だあん、と飲み干した空き缶を叩きつけるようにテーブルに置く。そして新たに「ストロングマックス・微炭酸糖質ゼロ」をペシッと開け、ぐいぐいとあおる。
そのよく動くのどぼとけを見て、流助は気持ちが大きくなって快哉を叫んだ。
「……っだ!!そうだ!!やめてやれ、そんな仕事!!テンさんなんか着てたまるかーー!!イオはなあ、モデルだぞーー!!こんなかっこいいのに、着ぐるみとは何事だーー!!」
流助が気勢を上げると、イオは口元をぬぐいながら、だひゃひゃ、と笑った。
「っだよなあ!!」
二人バシバシと肩をたたきあった。
さあて次は流助のターンだ。
高卒資格をとりたくて勉強をしなおしている流助は、しみじみと数字を見るようになって、今まで気にもしなかった店の経営について興味が出てきた。店の帳簿がどうなっているのか、気になるようになった。
まあそれなりにうまいことやっているんだろうと思って、ちらっと見たのが昨日の話だ。目が点だ。仕入れ担当の親父がどんぶり勘定すぎて、ずっこけた。
「原価率とかなーーんも考えないんだよ、あのクソ親父は。……したらさあ、金じゃねえ、お客さんにうまいもん食わせたい、とかなんとかいいこと言いはじめちゃって。つぶれたら、全部意味ねえっつうの」
原価率。覚えたての言葉を使うと、すごく自分をかっこよく感じる。
「ほんっと流助の言うとおりだよ。お義父さんもさ、ちゃんと流助の意見、聞くべきだよ!!」
流助はイオに肯定され、ますます気炎を上げる。
「老兵は去れーー!!」
「世代交代じゃーー!!」
自分たちがうまくいかない愚痴を勢いにのせ、どんどん悪口がでて、ぎゃははと二人笑う。酒、進む進む。
「俺おつまみ作るね」
「やったー!!」
「今日は飲むぞー!!」
「おーー!!」
「だだいま」
鳥飼がドアを開けるとその惨状にびくっとなった。イオと流助が玄関の床で酒盛りをしているのだ。そして二人は鳥飼をみるやいなや、その場で三つ指ついて、深々と頭を下げた。
「夫さま~おかえりなさいまし~」
「なさいまし~」
「あ、え、はい、うわ」
ゲラゲラ笑いながら、鳥飼の両脚にまとわりつく。
「えっへっへ好き~」
「誠さん~好き~おかえり~」
「うっせえ、俺には俺のやり方があんだ、嫌なら出てけ!!」
クビだクビ、明日から来るな、ここは俺の店だと親父は言い捨てると、ふんっと鼻息も荒く、流助に背を向けた。
二人とも頭に血が上ってつかみ合い寸前、流助も売り言葉&買い言葉で「は、誰がこんな店。こっちからやめてやる」と捨て台詞を吐き、つけていた手ぬぐいと前掛けをテーブルにたたきつけた。ガラピシャとわざと大きな音をたてて引き戸を開け、外に飛びだした。
「ってことで、俺、無職になっちゃった」
てへっと、流助が舌をだすと、ダイニングテーブルをはさんで前に座っていたイオは、難しい顔でガタンと席を立った。
あー、これは怒られる、説教始まるなあと思っていると、肩をがしっとつかまれ、ますます身構える。
これまでも流助はイオに、短絡的な行動や幼稚な態度をたしなめられたり、小言を言われたりと、お前俺のお母さんかよ、と言いたくなるようなことが多々あった。面倒くさいのを覚悟した。
しかし、イオがとった行動は流助にとって予想外のものだった。
「……よくぞ言った!!」
「へ?」
「えらいぞ、流助!!」
あれ、どういうこと?
イオは、キッチンやキャビネットをあさって家中の酒をかきあつめはじめた。それを次々とテーブルの上に、ドン、ドンと並べてゆく。
「飲むよ」
「うわあ、昼酒ー☆」
ペシッと缶ビールのプルトップをあけた。
流助も続く。
二人ぐいぐいと一気にあけた。
ぷはーっとやると、単純な流助は、もう親父とケンカしたことなどどうでもよくなってくる。
なんかつまみあったっけ、さきいかあった気がするなあ、マヨつけて食べたいなあと思っていると、イオが不敵に宣言する。
「流助、ぼくも決めた」
「え?」
イオはスマホを取りだすと、その場で電話をかけだした。
「はいっ、ええ、……。契約更新はなしで。……ええ、はい、今までありがとうございました。……ええ、大丈夫です、それでは失礼します」
電話をぽちっと切ると、わはははははははと高笑いをして、自分のひざをバシバシ叩いた。
「ガツンと言ってやたぜ!!ざまあ!!」
ガツンとな?いや、すごく丁寧だったけど。
「なんかあったの?イオ」
流助が水をむけると、イオは、つもりつもった所属事務所への不満を爆発させた。
「ぼくはさ、三流だし無名だから仕事を選んだりしません、何でもどんどんください、って立場だし実際確かにそう言ったよ?パンツだろうが全裸だろうが、なんでも喜んで撮られますよ。でもさ、着ぐるみはないよね?細長さがちょうどいいからって。テンさんの着ぐるみはない」
「サボテンのテンさん!?」
国営放送のあの有名なゆるキャラ、テンさんですと?!流助は思わず食いついた。
「好きだよぼくも。テンさん。もしぼくが着ぐるみアクターならそれはそれはテンションあがっただろうよ。でもね、流助、ぼくは腐ってもモデル!!顔と身体見られてなんぼ!!なんでもやるったって、着ぐるみは……着ぐるみは、顔も身体も隠れちゃってみえない!!」
だあん、と飲み干した空き缶を叩きつけるようにテーブルに置く。そして新たに「ストロングマックス・微炭酸糖質ゼロ」をペシッと開け、ぐいぐいとあおる。
そのよく動くのどぼとけを見て、流助は気持ちが大きくなって快哉を叫んだ。
「……っだ!!そうだ!!やめてやれ、そんな仕事!!テンさんなんか着てたまるかーー!!イオはなあ、モデルだぞーー!!こんなかっこいいのに、着ぐるみとは何事だーー!!」
流助が気勢を上げると、イオは口元をぬぐいながら、だひゃひゃ、と笑った。
「っだよなあ!!」
二人バシバシと肩をたたきあった。
さあて次は流助のターンだ。
高卒資格をとりたくて勉強をしなおしている流助は、しみじみと数字を見るようになって、今まで気にもしなかった店の経営について興味が出てきた。店の帳簿がどうなっているのか、気になるようになった。
まあそれなりにうまいことやっているんだろうと思って、ちらっと見たのが昨日の話だ。目が点だ。仕入れ担当の親父がどんぶり勘定すぎて、ずっこけた。
「原価率とかなーーんも考えないんだよ、あのクソ親父は。……したらさあ、金じゃねえ、お客さんにうまいもん食わせたい、とかなんとかいいこと言いはじめちゃって。つぶれたら、全部意味ねえっつうの」
原価率。覚えたての言葉を使うと、すごく自分をかっこよく感じる。
「ほんっと流助の言うとおりだよ。お義父さんもさ、ちゃんと流助の意見、聞くべきだよ!!」
流助はイオに肯定され、ますます気炎を上げる。
「老兵は去れーー!!」
「世代交代じゃーー!!」
自分たちがうまくいかない愚痴を勢いにのせ、どんどん悪口がでて、ぎゃははと二人笑う。酒、進む進む。
「俺おつまみ作るね」
「やったー!!」
「今日は飲むぞー!!」
「おーー!!」
「だだいま」
鳥飼がドアを開けるとその惨状にびくっとなった。イオと流助が玄関の床で酒盛りをしているのだ。そして二人は鳥飼をみるやいなや、その場で三つ指ついて、深々と頭を下げた。
「夫さま~おかえりなさいまし~」
「なさいまし~」
「あ、え、はい、うわ」
ゲラゲラ笑いながら、鳥飼の両脚にまとわりつく。
「えっへっへ好き~」
「誠さん~好き~おかえり~」
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