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8、失恋と旅行

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「イオくん、もし無理なら遠くから姿を見るだけでも」
「それもきついかもしれない」
「じゃあわたしが先に行って様子をみてきましょうか」
「なんでそこでそんな風に言うかな。そこは『がんばれ』って言うとこでしょ」
 イオがだんだん面倒くさいことになってきた。鳥飼は、困り果てて「すみません」と謝った。
「やっぱ迷惑じゃないかな。ぼくらの顔みて嫌な顔とかするかも。どうする、そしたら。もうそんな顔されたら一生立ち直れないよ。二年ぶりだし」
 イオはぐるぐるとさっきから同じことを言っている。こうなると扱いにくい。鳥飼は、辛抱強い性格なので、ひたすらそれを聞いてしまい、ある意味とりこまれてしまう。
「やっぱり帰ろう」
 イオは思いつめた顔で言った。
「イオくん、ここまで来てそれはないでしょう」
「あ、干物美味しいって! あれ買って、それで帰ろう」
 ああでもないこうでもないともめていると、目の前の土産物屋風の店の扉ががらっと開いた。
「鳥飼さんとイオじゃん。こんなところで何してんの」
 その懐かしい声に二人同時に振り返る。
 流助が立っていた。大漁旗をデザインした前掛けをしている。髪が前よりのびていて、長さのせいか、くせ毛が落ち着いていて、前より大人びてみえた。久しぶりに見る流助は記憶より小さく感じた。前掛けが大きすぎて、子どものお手伝いのように見えた。
「こんな田舎、目立つよ、二人」
「……あ」
「うん」
 再会は、気が抜けたみたいなテンションであっけなくはたされた。二人はもごもごと口の中でしゃべり、目の前にいる流助を見つめた。
「俺ね、ここでバイトしてるの。あとちょっとで終わるから、待ってて」
 流助は店に入っていった。三十分ほどたつと戻ってきて、「ごめん、ちょっと急ぐ」と言って、速足で歩きだす。二人は顔を見合わせる。そうしている間にも流助はどんどん歩くので、その背中を追った。
 五分もかからず、小さな保育園の前についた。流助が園に入って出てくるまで、二人はまた、待った。
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